#スウェーデン

★世界が加盟に動く 新たな2極化なのか

★世界が加盟に動く 新たな2極化なのか

   これはロシアのプーチン大統領の「敗北」を意味しているのかもしれない。国連憲章違反であるにもかかわらず偽旗を掲げてウクライナを侵攻して500日が過ぎ、さらに国連安保理を拒否権で機能不全に落とし込んでいるロシアに対して世界の多くの国々が疑心暗鬼になっている。これまで伝統的に中立政策を掲げてきた北欧のスウェーデンとフィンランドでさえ、NATOの加盟を申請し、フィンランドはことし4月に正式加盟。スウェーデンも難色を示してきたトルコが議会で批准の手続きを進めることになり、加盟に向け前進することになった(11日付・NHKニュースWeb版)。

   プーチン大統領にとってはNATO拡大そもののがロシアの脅威に映っているに違いない。そして、ウクライナも去年9月にNATOへの加盟を正式に申請している。ただ、NATOは第三国からの攻撃に対し加盟国が互いに防衛参画することで合意しているため、ウクライナの加盟がNATOとロシアの全面的な対立となる可能性もあるとして、加盟に慎重な国もある。そのNATOの首脳会議が11日から12日まで、ロシアと国境を接するバルト三国のリトアニアで開かれる。この会議でウクライナの加盟についてどのような議論が交わされるのか。

   「ブレグジット(Brexit)」と呼ばれ、イギリスがEUから離脱したのは2020年1月だった。そのイギリスが今月16日にニュージランドで開催されるTPP(環太平洋連携協定)の閣僚級会合で加盟を認めることが正式に承認される。IMFによると、イギリスの加盟によりTPPの経済圏は世界全体のGDP合計額の15%を占めることになる(今月8日付・Bloomberg-Web版日本語)。

   TPPは当初、アメリカを含めた12ヵ国の協定だったが、2017年にトランプ大統領が離脱を決め、日本など11ヵ国で「CPTPP(環太平洋パートナーシップ経済連携協定)」として再出発した。日本は引き続きアメリカに復帰を求めている(同)。ただ、アメリカは対中包囲網の構築に向けて、ローバルサウスの代表格であるインドとインドネシアを加えた新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の構築を進めている。

   軍事の対ロシア包囲網をNATOが、経済の対中国包囲網をアメリカが、それぞれ担っている。世界の新たな2極化の動きでもある。

⇒11日(火)午後・金沢の天気    くもり

★「飛び恥」からカーボンニュートラルへ

★「飛び恥」からカーボンニュートラルへ

   先日、友人たちと会って「コロナ禍」後のことについて語り合った。「世界の人々の海外旅行の欲求が一気に高まり、ビッグバン(大爆発)のようなブームが起きるかもしれない」と話すと、友人の一人が「そうそう、CO2の削減が世界の課題で、ヨ-ロッパでは飛び恥より鉄道での旅行がブームらしい」と。「飛び恥って」と聞き返すと、「環境問題を考えるなら、CO2排出量の多い飛行機を使わないという意味だよ」と友人は教えてくれた。このとき初めて「飛び恥」という言葉を知った。

   ネットで「飛び恥」を検索してみると、この言葉は、若き環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが育ったスウェーデンが発祥の地のようだ。2019年9月、16歳のグレタさんが参加した国連気候行動サミット(国連本部)には、温室効果ガス排出量が大きい飛行機には乗らないと、太陽光パネルと水中タービン発電機が付いたヨット船で父親らと大西洋を横断してニューヨーク港に着いたことが、世界のメディアに大きく取り上げられた。

   HUFFPOST日本語版(2019年11月14日付)の記事を以下引用。多くのスウェーデン人にとって、飛行機での旅行は自慢の対象ではなくなっており、ヨーロッパを移動する際には、鉄道を利用するのが一種のトレンド。「飛び恥(Flygskam/ 英語ではflight-shaming)」「鉄道(列車)自慢(Tågstolthet/英語ではTrain Pride)」という言葉ができている。個人旅行だけでなく、ビジネスでの出張を減らそうという動きもある。ビジネスパーソンたちも、国際会議を減らしたり、なるべくスカイプに切り替えたりしている。

   HUFFPOSTは、グレタさんの母親でオペラ歌手のマレーナ・エルンマンさんは「なぜ飛行機に乗らないか」(2017年)というコラムを書いて、地球温暖化に警鐘を鳴らしている著名人の一人だと紹介している。確かに、スウェーデンは1972年にストックホルムでの第1回地球サミット「国連人間環境会議」のホスト国を務めるなど環境問題には熱心で、二酸化炭素の排出量が世界で最も少ない国として注目されている。そして、地球温暖化を数値で予測可能にした真鍋淑郎氏にノーベル物理学賞を贈ったのはスウェーデン王立科学アカデミーだ。 

   では、スウェーデンはなぜここまで二酸化炭素と地球温暖化問題に熱心なのか。以下憶測だが、ツンドラ地帯の永久凍土の融解や生態系の変化など北欧諸国では地球温暖化の影響が目に見えて変化しているのではないだろうか。とくに、永久凍土が融けると大規模な地盤沈下が起きると言われている。

   話を冒頭に戻す。では、「飛び恥」でこれから航空産業は衰退するのだろうか。むしろ、大気中のCO2濃度を増やさないカーボンニュートラルな航空機燃料、つまりバイオジェット燃料の増産が解決策ではないだろうか。ことし6月、バイオジェット燃料を使い、鹿児島から羽田まで930㌔を飛んだことがニュースになった(6月29日付・NNNニュースWeb版)。 バイオベンチャー企業「ユーグレナ」が、ミドリムシと廃食油でバイオ燃料をつくることに成功。国内初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントを2018年11月に横浜市で完成させている。

    日経新聞Web版(10月8日付)によると、ANAとJALは廃油や植物を原料にした環境負荷の少ない「持続可能な航空燃料(SAF)」の活用推進に向け、共同で市場調査を実施した報告書をまとめたと発表した。日本の航空大手2社が環境関連の活動で手を組むのは初めてと報じている。

   ようやく「飛び恥」からカーボンニュートラルへ。CO2をめぐる航空産業界の動きが一段と加速しそうだ。

⇒12日(火)午後・金沢の天気      あめ

★「コロナとの共生」は人類の知恵か誤解か

★「コロナとの共生」は人類の知恵か誤解か

   今も感染拡大が続く新型コロナウイルスへの各国の防止対策の中で、独特なのはスウェーデンのやり方だ。日本のように「最低7割、極力8割」の外出自粛の要請も、あるいは欧米各国のようなロックダウンもしない。学校や企業も通常通りで、あくまでも個人の自主性を尊重するという独自路線をとっている。

          スウェーデンの対策のキーワードは「集団免疫」だ。集団免疫を獲得する方法が2つあり、それはワクチンと自然感染。今回ワクチンはまだ開発されていないので、自然感染を戦略として選んだ。これは人口の大多数がウイルスに感染することで、人の体内で抗体がつくられ感染が広がりにくくなる効果を狙っている。

   4月28日付の「USA TODAY」Web版はスウェーデン公衆衛生局コロナウイルス対策の責任者で、疫学者の アンダース・テグネル(Anders Tegnell)氏へのインタビュー記事を掲載している=写真=。見出しは「Swedish official Anders Tegnell says ‘herd immunity’ in Sweden might be a few weeks away」(意訳:テグネル氏はスウェーデンでの「集団免疫」は数週間先にと語る)。記事を以下まとめてみる。

    ストックホルムを含む首都人口の25%が新型コロナウイルスに感染して、あと数週間先には集団免疫を獲得する公算がある。積極的に集団免疫を目指したわけではなく、医療への負担を最小限にとどめる方策も勘案してこのような対策になった。商店営業など容認にしているので経済への影響は比較的少ない。

   インタビューの最後のコメントは印象的だ。「Coronavirus is not something that is just going to go away. Any country that believes it can keep it out (by closing borders, shuttering businesses, etc.) will most likely be proven wrong at some stage. We need to learn to live with this disease.」。(意訳)コロナウイルスは長期間存在する。国境を閉ざし、企業を封鎖してウイルスを排除できると考える国はいつか間違いに気がつくだろう。私たちはこの感染症と共生することを学ばなければならない。

   上記の記事を読むと理想的な疫学対応であり、人類の知恵のように感じてしまう。が、一方でスウェーデンでは感染者が2万1092人、死者2586人(4月30日・ジョンズ・ホプキンス大学集計)となり、厳格な外出規制を実施している隣国のフィンランドなどと比べて高い致死率だ。このままの戦略で良いのか、と思ってしまう。

   WHOが29日に行った記者ブリーフィングで、緊急対応責任者がスウェーデンの集団免疫の効果について記者から質問を受け、こう返答している。「感染が広がったエリアでは免疫を持つ人のパーセンテージは低い傾向にあるのではないか」「一時的に治まってもウイルスの勢いはぶり返す可能性もある」と述べている(WHO公式ホームページ会見動画)。

⇒1日(金)午後・金沢の天気   はれ時々くもり