#コラム

★G7「広島サミット」来年開催にアメリカ世論はどう動く

★G7「広島サミット」来年開催にアメリカ世論はどう動く

   これは今回の日米首脳会談の最大の成果ではないだろうか。岸田総理はアメリカのバイデン大統領との会談後の共同記者会見(23日)で、来年日本で開催されるG7サミットを広島市で開催することの同意をバイデン氏から取り付けたと語った。そして、会見でのコメントは同選挙区の政治家らしい言葉だった。

   「唯一の戦争被爆国である日本の総理大臣として、私は広島ほど平和へのコミットメントを示すのにふさわしい場所はないと考えている。核兵器の惨禍を人類が二度と起こさないとの誓いを世界に示し、バイデン大統領をはじめG7の首脳とともに平和のモニュメントの前で平和と世界秩序と価値観を守るために結束していくことを確認したい」(23日付・NHKニュースWeb版「共同記者会見・詳細」)

   当地の広島県庁の公式サイトをチェックすると、湯崎知事=写真・上、左=も広島市で開催する意義について述べている。「ウクライナ侵略で損なわれた対話やルールに基づく国際協調を再び取り戻し、将来、ウクライナの人々が復興に向けて前進する際の『希望の象徴』にもなるものと考えています。核兵器廃絶に向けて、かつてないほど厳しい状況におかれている今だからこそ、広島で開催する意義が高まっていると考えます」

   被爆地でG7サミットが開催されるのは初めてのことだ。2016年の「伊勢志摩サミット」終了後の5月27日、アメリカの現職大統領として初めてオバマ氏が広島を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花した当時外務大臣だった岸田氏は原爆ドームなどについて通訳を介さずに英語でオバマ氏に説明を行ったことは知られている。史上初の原爆投下(1945年8月6日)で広島市では少なくとも14万人が死亡。3日後に長崎市でも原爆が落とされ、さらに7万4000人が死亡した。ただ、オバマ氏は献花の際、原爆投下について謝罪はしなかった。

   オバマ氏が「ヒロシマへの道」をつけてくれたので、バイデン氏も「広島サミット」の開催には同意しやすかったのだろう。では、オバマ氏と同様に「献花はすれど、謝罪はせず」なのだろうか。オバマ氏が謝罪をしなかったのは、世論が背景があったからだ。アメリカでは原爆投下が甚大な惨禍をもたらしたものの、戦争を終結させたのだから正当性はあるとの声がいまだ根強くあり、オバマ氏は世論に配慮した。その世論をもう少し詳しく見てみる。

   オバマ氏訪日のおよそ1年前の世論調査だ。アメリカの調査会社「ピュー・リサーチ・センター」は2015年4月に原爆投下に関する日米での世論調査の報告書「Americans, Japanese: Mutual Respect 70 Years After the End of WWII」をまとめている。アメリカ人の56%は「核兵器の使用は正当だった」と答え、34%が「そう思わない」と答えている=写真・下=。世代間格差もある。65歳以上のアメリカ人の70%が「正当だった」と答えているが、18歳から29歳の若い世代では47%と過半数を割る。また、共和党員の74%が、民主党員の52%が「正当だった」と答えている。調査から7年経つが、いまでも「正当だった」が根強いのかどうか、ピュー・リサーチ・センターのその後の調査は行われていない。

   バイデン氏は「核なき世界」を理想に掲げている。今後、どのようなヒロシマ発言をするのか注目したい。そして、ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は「電光石火」という表現で核攻撃をちらつかせている。こうした動きにアメリカ世論はどう反応していくのか。

⇒24日(火)夜・金沢の天気   はれ

☆「バイデン訪日」めがけた弾道ミサイルと核実験の可能性

☆「バイデン訪日」めがけた弾道ミサイルと核実験の可能性

   アメリカのバイデン大統領が20日からの韓国と日本の訪問中に、北朝鮮が長距離弾道ミサイルの発射、あるいは核実験に踏み切る可能性があるとアメリカのサリバン大統領補佐官は記者会見で述べたと報道された(5月19日付・NHKニュースWeb版)。アメリカによる衛星観測の結果、過去のICBM発射時に現れたのと同じ兆候(平壌近くの発射場所、発射装備、燃料供給、車両と人員配置など)が確認されたからだ(18日付・CNNニュースWeb版日本語)。

   ところが、訪韓中に発射はなかった。憶測だが、19日に金正恩総書記のかつての「後継者教育担当」とされた軍の元帥が死去。22日午前4時25分から国葬が営まれた。労働党機関紙「労働新聞」Web版(23日付)には、金総書記が棺を持ち先頭を歩く姿が掲載されている=写真=。国葬が営まれ本人が参列する状況下で、弾道ミサイル発射の指示は出せなかったのだろう。これまで、長距離弾道ミサイルの発射は本人の立ち会いのもとで行われていたからだ。

   では、きょう23日の日米首脳会談、あるいは、24日の東京での日米豪印(クアッド)首脳会合に向けて、弾道ミサイルの発射、あるいは核実験は可能性があるのか。北朝鮮では、新型コロナウイルスとみられる発熱症の感染拡大が止まない。金総書記は「建国以来の大動乱」と位置づけ、今月12日にロックダウンの徹底を指示した。国民にはワクチン接種が施されず、医薬品も不足し、医療制度そのものも貧弱とされる。国内の食糧は限られていて多くの人々は栄養失調の状態にあり、ロックダウンが徹底されれば、国民が瀕死の状態に追い込まれることは想像に難くない。常識で考えれば、この状態下で弾道ミサイルの発射、あるいは核実験はないだろう。

   しかし、WHOは北朝鮮にデータや情報の共有を求め、検査キットや医薬品、ワクチンなどを供給することを伝えたが、北朝鮮は「政府による決定」としてワクチン接種などを拒んでいる(19日付・ニューズウイークWeb版日本語)。国際社会の支援を受け入れれば、道義上からも弾道ミサイル発射や核実験はできないだろうが、薬草による治療などで自力更生の立場を貫いている以上はありうる。ここが北朝鮮の怖いところかもしれない。

   新潟日報Web版(22日付)によると、林外務大臣は新潟市内で講演し、北朝鮮への支援を検討する必要があるとの認識を示し、「あそこの国とは国交もない。だから放っておけばいいとはなかなかならない」と述べた。北朝鮮による拉致被害の原点でもある場所であり、支援を表明することで解決の糸口をつかみたいとのメッセージを込めたのだろう。気持ちは理解できるが、果たしてこのメッセージは伝わるのだろうか。

⇒23日(月)午後・金沢の天気     はれ

★能登半島・輪島から「SDGs観光」の発信を

★能登半島・輪島から「SDGs観光」の発信を

   内閣府は国連のSDGs(持続可能な開発目標)に沿ったまちづくりに取り組む自治体を「SDGs未来都市」として選定している。ことし新たに能登半島の輪島市や新潟県佐渡市など30自治体が選ばれた。選定は2018年に始まり、今回含め154の自治体が選ばれている(内閣府地方創生推進事務局公式サイト「2022年度SDGs未来都市及び自治体SDGsモデル事業の選定について」)。

   輪島市のテーマは「“あい”の風が育む『能登の里山里海』・『観光』・『輪島塗』 ~三位一体の持続可能な発展を目指して~ 」。「“あい”の風」とは日本海沿岸で冬の季節風が終わり、沖から吹いてくる夏のそよ風を言う。ところによっては「あえの風」とも言う。キーワードに世界農業遺産「能登の里山里海」、観光、輪島塗の3つを入れている。ちなみに佐渡市のテーマは「人が豊かにトキと暮らす黄金の里山・里海文化、佐渡 ~ローカルSDGs佐渡島、自立・分散型社会のモデル地域を目指して~」。トキと佐渡金山がキーワードになっている。

   輪島市の提案書を読もうと思い、市役所公式サイトにアクセスしたがまだアップはされていなかった。後日、内閣府の公式サイトで一括して掲載されるようだ。多様な地域の特性をSDGsの視点で見直し、「誰一人取り残さない」「持続可能な社会づくり」に活かしていこうというまさに地方創生の実現に向けた取り組みだ。

   輪島の朝市や千枚田、海女漁を見ればSDGsが体現された地域であることが理解できる。朝市はもともと農村や漁村のおばさんたちが農作物や魚介類を持ち寄って物々交換したことがルーツとされる。作り、採ったものが余った場合、廃棄するのではなく、物々交換という取引で豊かさを共有する場だった。「もったいない精神」と言えるかもしれない。同時に、SDGs目標12「つくる責任つかう責任」である。

   そして、海女漁はまさにSDGs目標14「海の豊かさを守ろう」だ。現在200人いる海女さんたちのルーツは1569年、福岡県玄海町鐘崎から船で渡って来た13人の男女だったと伝えられている(1649年「海士又兵衛文書」)。24種もの魚介類を採ることで生業(なりわい)を立てているだけに資源管理には厳しいルールがある。アワビ漁については、貝殻10㌢以下の小さなものは採らない、漁期は7月から9月の3ヵ月、時間は午前9時から午後1時、酸素ボンベは使わず素潜り。こうした厳格な自主規制で450年余り経ったいまでもアワビを採り続けている。

   千枚田では自然災害と向き合ってき人々のSDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」の精神が見えてくる。1684年、この地区では大きな地滑りがあり、棚田があった山が崩れた。「大ぬけ」といまでも地元では伝えられる。いまで言う深層崩壊だ。その崩れた跡を200年かけて棚田として再生した。まさにレジリエンスだ。それだけでない、いまも地滑りを警戒して、千枚田の真ん中を走る国道249号の土台に発砲スチロールを使用するなど傾斜地に圧力をかけないようにと工夫をしている。

   持続可能な人々の営みというのは、その歴史を検証すことで見えて来る。輪島市には今回のSDGs未来都市の認定で、「SDGs観光」という新たな情報発信をしてほしいものだ。

⇒22日(日)午前・金沢の天気    はれ

☆イギリスに受信料廃止の風は吹くのか

☆イギリスに受信料廃止の風は吹くのか

   NHK受信料制度の見直しにつながる動きになるかもしれない。イギリスの「デジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS)」が4月28日に発表した放送政策全般を見直す年次報告書(白書)『Up Next The Government’s vision for the broadcasting sector』が注目されている。その中にはことし100年の歴史を刻む公共放送BBCの改革の方針が述べられている。そのホワイトペーパーがDCMS公式サイトにアップされているのでチェックした=写真、人物はナディーン・ドリスDCMS担当相=。

   前置きで「The UK’s creative economy is a global success story, and our public service broadcasters (PSBs) are the beating heart of that success. (イギリスのクリエイティブな経済は世界的なサクセス・ストーリーであり、公共放送局はその成功の脈動する心臓に相当する)」と評価しながらも、改革は避けられないとそのポイントを上げている。

   直面するのはネット環境だ。イギリスの視聴者の「メディア消費」のあり様が大きく変化していることを数値を紹介している。イギリスでは79%の世帯がネットに接続されたテレビを所有している。このため、放送局の番組を視聴する時間の割合は2017年の74%から2020年の61%に減少。逆に有料制の動画サービスの視聴時間における割合は2017年の6%から2020年の19%に増加している。さらに、コンテンツのグローバル化問題を指摘している。アメリカ発の動画配信サービス「ネットフリック」などはイギリスの放送業者よりもはるかに大きな予算でコンセンツ制作を展開している。

   このような時代の変化にも関わらず、国民は世帯当たり年間で159ポンド(およそ2万5000円)の受信料(ライセンス料)をBBCに払い続けている。国民の間では不公平感が募っている。また、ライセンス料の支払いを拒んだ場合は刑事裁判がある。件数は示されていないが、2019年に支払いを拒否して有罪判決を受けた人々の74%は女性だったと白書で記載されている。イギリスでは、テレビを見たい視聴者は近くの郵便局で1年間有効の受信許可証を購入する。この許可証がなければ、電気屋でテレビそのものが買えないシステムだ。ネット時代で、この受信許可モデルは不公平感を増長するだけではないだろうか。

   BBCの放送事業の認可であるロイヤルチャーター(女王の特許状)は2027年にいったん切れる。それまではライセンス料の徴収は継続する。白書では、「BBCの受信料制度について見直しを進める」、さらに「BBCの商業部門の限度額(広告枠)を2倍以上に増やす」などと記載されてはいるが、具体案はない。「We will set out more details in the coming months.」と数か月後に詳細を提示すると述べている。

   ジョンソン首相は、BBCの受信料の廃止と視聴する分だけ金を払う有料放送型の課金制(サブスクリプション)への移行を公約として掲げてきた。一方で、受信料が廃止されることで、収入が不安定になり報道の質の高さや公共性が失われるという懸念もある。公共放送の経営と安定、視聴者の不公平感の解消、次なるメディアのコンテンツのあり様、さまざまな課題が凝縮されている。そして他人ごとではない。

⇒20日(金)午後・金沢の天気    くもり

★クマに注意、ズーノーシスに警戒

★クマに注意、ズーノーシスに警戒

    新聞を読むと、このところ毎日のようにクマの目撃情報が掲載されている。きょう19日付でも石川県内のかほく市、津幡町、羽咋市の4ヵ所に現れている。記事によると、羽咋市のある小学校では集団で登下校し、屋外活動は中止、市は防災行政無線で付近住民に注意喚起し、警察署と登下校時にパトロールしている。

   石川県自然環境課が今年4月下旬に行った調査で、県内10ヵ所の山林のうち、8ヵ所でクマのエサとなるブナの実が凶作だった。このことから、県は大量出没の危険があると判断し、今月10日付で人身被害を未然に防止するための「出没警戒準備情報」を発表した(石川県公式サイト「ツキノワグマによる人身被害防止のために」より)。県内では2020年、クマに襲われる人身事故が立て続けに発生して1年間で15人が負傷した。この事態を受け、県はブナの実のなり具合を調べる調査をこれまでの6月と8月の年2回に加え、昨年から4月にも花のつき具合などを調べている。また、県内の各市町では独自に捕獲用の檻を設置するなど対策を進めている。

   山から人里に下りてきているのはクマだけではない。金沢の住宅街にサル、イノシシ、シカが頻繁に出没するようになった。エサ不足に加え、中山間地(里山)と奥山の区別がつかないほど里山が荒れ放題になっていて、野生動物がその領域の見分けがつかず、人里や住宅街に迷い込んでくる、とも言われている。里山の過疎化で人がいなくなり、野生動物たちは山から下りてきて作物を狙い始めている。

   懸念されるのは人身事故だけでない。UNEP(国連環境計画)がまとめた報告書に「ズーノーシス(zoonosis)」という言葉が出てくる。新型コロナウイルスの発生源として論議を呼んでいるコウモリなど動物由来で人にも伝染する感染病を総称してズーノーシス(人畜共通伝染病)と呼ぶ。人間の活動が野生動物の領域であるジャングルなどの山間地に入れば、それだけ野生動物との接触度が増えて、感染リスクが高まる、という内容だ。最近、欧米を中心に感染が懸念されている天然痘に似た感染症「サル痘」、エボラ出血熱や中東呼吸器症候群(MERS)、HIVなどこれまで人間が罹ってきた感染症はズーノーシスに含まれる。

   少々乱暴な言い方になるが、日本でも「ズーノーシス」が起きるのではないか。ズーノーシスに感染した野生生物が人里や住宅街に頻繁に入ってくることで、新たな感染症がもたらされるかもしれない。

⇒19日(木)夜・金沢の天気      はれ

☆北のICBM発射と核実験はこのタイミングか

☆北のICBM発射と核実験はこのタイミングか

   朝鮮戦争は終わっていない。1953年7月にアメリカなど国連軍と中国・北朝鮮の連合軍が休戦協定に署名した。まもなく69年になるが、平和条約ではなく休戦協定であるため、韓国と北朝鮮は現在も形式上は戦争状態にあることに変わりない。

そうなると、アメリカ世論もアフガンのケースと同様にいつまで韓国に軍隊を駐在させる必要があるのかと撤退の声が高まる。北朝鮮の狙いはそこにあるのではないだろうか。

   前置きが長くなった。アメリカのバイデン大統領は今月20日に韓国を訪れ、尹錫悦大統領と会談し、22日に日本を訪れ、24日に東京都内で日米豪印(クアッド)首脳会合に出席する予定だ。CNNニュースWeb版日本語(5月18日付)によると、アメリカ情報当局の担当者の話として、北朝鮮は今後48~96時間のうちにICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験を行う準備を進めているとみられる。平壌近郊にある発射場の衛星画像から、過去の実験に向けた準備期間と同じ動きがみられるという。足場などの設置作業や燃料、車両や人員の動きを指すとみられる。北朝鮮は今月4日にICBMを発射している。また、豊渓里(プンゲリ)核実験場でも準備が進んでいるとみられ、今月中に地下核実験を実施する可能性もあると当局者は指摘している、と伝えている。

   一方、北朝鮮では新型コロナウイルスとみられる発熱症状の拡大が止まらない。北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」(18日付)は発熱者が相次ぎ、17日午後6時までの1日で、新たに23万2800人余りに症状が確認され6人が死亡したと伝えた。先月下旬以降の発熱者の累計は171万5900人余り、死者は62人に上っている(18日付・NHKニュースWeb版)。

   普通に考えれば、国内がコロナ禍でパンデミック状態にあれば、ICBM発射や核実験は人心を惑わすことにもなり中止するだろう。北朝鮮国営メディアは5月4日、7日、12日に発射した弾道ミサイルについて、3回とも公表を控えている。公表を控えてでも、ICBM発射や核実験は続けるということか。先月25日に「朝鮮人民革命軍」創設90年にあわせて軍事パレードを開催した金正恩総書記は「核戦力を最速ペースで強化・開発するため、措置を取り続ける」と表明している(4月26日付・BBCニュースWeb版日本語)。あさって20日の米韓首脳会談に向けて、か。朝鮮戦争は終わっていない。

(※写真は、ことし3月25日付・BBCニュースWeb版が「N Korea claims successful launch of ‘monster missile’ Hwasong-17」の見出しで報じた、全長23㍍の「モンスター・ミサイル」)

⇒18日(水)夜・中能登町の天気   はれ

★渡り鳥シギが舞い降りる千里浜の風景

★渡り鳥シギが舞い降りる千里浜の風景

   きのう能登半島の「千里浜なぎさドライブウェイ」を久しぶりに車で走行した。波打ち際を車で走ると爽快な気分になる。乗用車やバスで走行できる海岸は世界で3ヵ所と言われる。アメリカ(フロリダ半島)のデイトナビーチ、ニュージーランド(北島)のワイタレレビーチ、そして能登半島の千里浜だ。砂のきめの細かさと、適度に海水を含んで引き締まっていることでビーチが道路のようになる。

   千里浜はもう一つの名所でも知られる。春と秋の波打ち際にシギやチドリといった渡り鳥の群れが次々と降りてきて、人々を和ませる。この日は、シギの一群が舞い降りていた=写真=。渡り鳥はオーストラリアから日本を経由してシベリアを往復する。この季節は、冬場をオーストラリア周辺で過ごした渡り鳥が夏場の産卵のためにシベリアで行うに向かう。その途中に能登半島に立ち寄る。

   シギのお目当ては全長5㍉ほどの小さなエビ、ナミノリソコエビだ。波が引いた砂の上に残るナミノリソコエビを次の波が打ち寄せるまでのごくわずかな時間でついばむ。このエビは環境に敏感なことでも知られる。砂質が粗くなり汚泥がたまると生息できなくなる。逆な言い方をすれば、シギやチドリが舞い降りる海岸はきれいな海のバロメーターでもある。

   いつまでも渡り鳥が舞い降りる千里浜であってほしいと願うが、難題もいくつかある。砂浜の浸食は以前から問題となっている。河川災害を予防するためにつくられた砂防ダムや、コンクリートの護岸が設置されて、陸からの砂が海岸に運ばれなくなった。とくに、金沢港に建設された長い堤防の影響で、砂を含んだ加賀地方からの海流がせき止められて、千里浜への流れが少なくなってしまった。県や関係自治体では2011年に「千里浜再生プロジェクト」を設置して対策を講じてはいる。

   砂浜の浸食だけでなく、能登半島の対岸の国で捨てられたポリタンクやペットボトル、食品トレー、医療系廃棄物(注射器、薬瓶、プラスチック容器など)の漂着が相次ぐ。海洋プラスティックごみによって、海岸の汚染が懸念される。さらに、地球温暖化による海面の上昇も気懸りだ。気象庁の調べによると、1960年から2020年までの海面水位の変化を海域別に見た場合、北陸から九州の東シナ海側で他の海域に比べ大きな上昇傾向がみられる(気象庁公式ホームページ「日本沿岸の海面水位の長期変化傾向」)。

   海岸の浸食や漂着物、海面上昇によって、ナミノリソコエビの生息環境が失われつつあるのではないか。そんなことを案じながらの、なぎさのドライブだった。

⇒17日(火)夜・金沢の天気     はれ 

☆熱病と飢え、ミサイル発射は断末魔の叫びか

☆熱病と飢え、ミサイル発射は断末魔の叫びか

   北朝鮮では「原因不明の熱病」が大流行しているようだ。NHKニュースWeb版(13日付)によると、北朝鮮は12日、4月下旬以降、発熱の症状があった人が全土で35万人余りに上り、これまでに18万人以上が隔離されたり治療を受けたりしていると明らかにした。12日だけで全土で1万8000人が発熱した。

   北朝鮮の労働新聞Web版(13日付)をチェックすると、「경애하는 김정은동지께서 국가비상방역사령부를 방문하시고 전국적인 비상방역상황을 료해하시였다」との見出しで、金正恩総書記が12日、国家緊急防止司令部を訪れ、感染状況について報告を受けたと伝えている。熱病によってこれまで6人が死亡しているが、うち1人から新型コロナウイルスが確認されたとしている。金氏は、首都圏の周辺で感染が同時に広がっていることから、これまでの予防体制に落ち度があったと認め、「最大非常防疫態勢」に移行すると発表。すべての市や郡などを封鎖するよう指示した。

   今ごろなぜと思うと、妙に納得できた。先日テレビのニュースでやっていた朝鮮人民革命軍の創設90周年記念の軍事パレード(4月25日)には大勢の人民が動員されていた。4月下旬から感染爆発ということなので、ひょっとしてそれはパレードの準備や練習で「三密」状態になり、感染拡大が一気に進んだのではないか、と推測した。

   北朝鮮は人口が2500万人とされる。これまでのニュースでも報じられているように、2年以上にわたって国境を封鎖し、食糧は限られていて多くの人々は栄養失調の状態にある。医薬品も不足し、医療制度そのものも貧弱とされる。最悪のケースを想定すると、ロックダウンによって多くの人々が自宅で瀕死の状態に追い込まれる可能性さえある。

   その一方で不穏な動きもある。北朝鮮はきのう12日午後6時28分ごろ、半島の西岸付近から3発の弾道ミサイルを東方向に向けて発射した。最高高度は約100㌔で、350㌔ほど飛翔し日本のEEZ(排他的経済水域)外に落下した(12日付・防衛省公式サイト「報道資料」)。今月10日に韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が発足して初めての発射となる。さらに、韓国の聯合ニュースWeb版(13日付)によると、韓国大統領室はきょう日、北朝鮮が7回目の核実験を行う可能性に関連し「核実験の準備はできているようだ。ただ、核実験の前に各種ミサイルの発射実験を行う可能性もあるのではないか」との見解を示した。

   国内では新型コロナウイルスとも推測される原因不明の熱病でパンデミックが起き、さらに飢えが広がる。そして、核実験と弾道ミサイルの発射だ。核・ミサイル開発に対する国連安保理の制裁により貿易制限はさらに続く。かの国の断末魔の叫びのようにも思える。

(※写真は、マスクをした金正恩総書記が12日、国家緊急防止司令部を訪れた様子=13日付・CNNニュースWeb版)

⇒13日(金)夜・金沢の天気    あめ

★直言連発のイーロン・マスク氏にお願いしたいこと

★直言連発のイーロン・マスク氏にお願いしたいこと

   EV大手テスラの経営者、イーロン・マスク氏の直言を世界が注目している。3月14日にツイッターの投稿で、「私はここにて、ウラジーミル・プーチン氏に決闘を挑む。懸けるのはウクライナだ」と表明。さらに、プーチン氏の公式英語アカウントにロシア語で「この決闘を受け入れるか」と問い掛けたことがニュースになった(3月15日付・AFP時事Web版)。マスク氏はインターネット通信衛星「スターリンク」の端末をウクライに提供し、ロシア軍の攻撃を受けている地域にネット接続環境を配備していることことから、「決闘宣言」の本気度が分かる。

   その後、マスク氏はツイッターの買収合意を取り付ける。BBCニュースWeb版(4月26日付)によると、ツイッターの取締役会はマスク氏による買収提案を受け入れることで合意。買収総額は440億㌦となる見込み。同社は上場廃止となるため、買収案について株主の承認を求め、買収手続きは年内に完了する見通し。マスク氏は「言論の自由は機能する民主主義の礎石で、ツイッターは人類の未来に不可欠な事柄が議論されるデジタルの町の広場だ」と意欲を示した。

   言論の自由を強調したマスク氏はさっそく動き出す。ツイッターで「永久凍結」とされているドナルド・トランプ前大統領のアカウントについて、凍結を撤回するつもりだと述べた(5月10日付・同)=写真・上=。2020年1月、大統領選に敗れたトランプ氏の支持者らによるアメリカ連邦議事堂への襲撃事件が起きた。トランプ氏が暴徒を「愛国者だ」などとメッセージを投稿したことから、ツイッターやフェイスブック、グーグルなど各社は公共の安全が懸念されるとしてトランプ氏のアカウントを相次ぎ凍結したのだ。

   凍結についてマスク氏は「倫理的に間違っており、全くおかしい」ものだと指摘。一方で慎重な物言いだった。「私はこの永久凍結を覆すつもりだが、まだツイッターを所有していないので、必ずやるというわけではない」と買収完了後を強調した(同)。確かに、トランプ氏のSNS凍結にはアメリカでも世論が分かれいるようだ。それがツイッターの株式買収に障害を及ぼすかもしれないと懸念したのかもしれない。

    以下余談になるが、そもそも、ツイッターを政治の舞台で活用し、その存在感を高めたのはトランプ氏だった。2017年1月の大統領就任前からゼネラル・モーターズ社やロッキード社などに対し、ツイッターで雇用創出のために自国で製造を行えと攻撃的な「つぶやき」を連発し注目された。就任後もホワイトハウスでの記者会見ではなく、140文字で大統領の方針を発信するという前代未聞のやり方だった。その後、世界の政治家がトランプ氏を見習うようにSNS活用を始め、いまでは政治家の必須アイテムになっている。

   そして、マスク氏が日本に直言した今月8日付のツイッター「Japan will eventually cease to exist.」=写真・下=は衝撃的だった。出生率が死亡率を超える変化がない限り、日本はいずれ消滅する、それは世界にとって大きな損失だ、と。日本の総務省が発表した人口が2021年、過去最高の64万4000人減少との記事データについてのコメントだった。

   人口減少は多くの日本人が心の奥底に抱いている懸念ではないだろうか。マスク氏には8人の子がいる。この際、日本の人口を増やす対策について、岸田総理や野田少子化対策担当大臣が「日本の救世主になっていただきたい」とマスク氏にお願いし、率直なアイデアやアドバイスをもらってはどうだろうか。

 
⇒12日(木)午後・金沢の天気     あめ

☆トキが再び能登の空に舞うとき

☆トキが再び能登の空に舞うとき

   では、能登が放鳥候補地に選定されたとして、トキの生息は可能化なのか。2007年、金沢大学の「里山里海プロジェクト」の一環として、トキが再生する可能性を検証するポテンシャルマップの作成に参加したことがある。珠洲市や輪島市で調査地区を設定した。まず始めたのは生物多様性の調査だった。奥能登には大小1000以上ともいわれる水稲栽培用の溜め池が村落により維持されている。溜め池は中山間地にあり、上流に汚染源がないため水質が保たれている。ゲンゴロウやサンショウウオ、ドジョウなどの水生生物が量、種類とも豊富である。溜め池の多様な水生生物は疏水を伝って水田へと分配されている。

    また、能登はトキが営巣するのに必要なアカマツ林が豊富である。また、能登はリアス式海岸で知られるように、平地より谷間が多い。警戒心が強いとされるトキは谷間の棚田で左右を警戒しながらドジョウやタニシなどの採餌行動をとる。豊富な食糧を担保する溜め池と水田、営巣に必要なアカマツ林、そしてコロニーを形成する谷という条件が能登にあることが分かった。ただ、14年前の調査なので、その後の環境に変化はあるかもしれない。

   2011年6月に「能登の里山里海」が世界農業遺産(JIAHS)に認定されて10年になる。候補地に選定されることで、トキの放鳥が里山里海のあり様を描く次なるメルクマールになるに違いない。

(※写真のトキは1957年に岩田秀男氏撮影、場所は輪島市三井町洲衛)

⇒11日(水)夜・金沢の天気    くもり