#コラム

☆「旅するチョウ」アサギマダラが舞う季節

☆「旅するチョウ」アサギマダラが舞う季節

   「旅するチョウ」と称されるアサギマダラが能登や加賀の空に舞う季節がやってきた。このチョウは春は日本列島の北の方へ、秋には南の方へ。その距離は2000㌔にも及ぶと言われる。金沢大学に在職中はこの時季に学生や留学生といっしょに、能登半島で一番高い山である宝達山(637㍍)によく登った。山頂付近にはエサとなるフジバカマやホッコクアザミが繁っていて、東北方面からやってきたアサギマダラを間近に観察できた。

   地元でアサギマダラの保護活動を取り組んでいる人たちに同行してもらい、アサギマダラを捕獲し、マーキングして放す様子を見せてもらった。面白いのは捕獲の様子だ。右手で白いタオルを振り回すと、そのタオルをめがけてふわふわとまるでダンスを踊っているようにアサギマダラが飛んで来る。近寄って来たところを、左手に持ったネットで捕まえる。

   なぜアサギマダラは回るタオルに寄って来るのか。解説も面白かった。寄って来るタオルの色は白色と水色。白色と水色でも、回転しないタオルには寄って来ない。ゆっくり回すより、はやく回すと寄って来る。アサギマダラには回転する白や水色のタオルはどのように見えているのだろうか。吸蜜植物のホッコクアザミやフジバカマ、ヒヨドリバナなどお花畑が広がる光景のように見えるのかもしれない。

   ところで、「アサギマダラ」という名前はなぜついたのだろうか。ネットで調べると、「前ばねは黒、後ろばねは茶色の地色ではねの中央に透き通るような部分があります。この白い部分が新鮮な個体では青みがかっており、日本古来の色『あさぎ色』に見えることからアサギマダラの名前がついています」(「愛媛県総合科学博物館」公式サイト)との解説がある。

   アサギマダラの命は羽化後4、5ヵ月とされる。その間に2000㌔の旅をする。いま能登で蜜を吸って、これから小笠原諸島や与那国島、さらに台湾まで移動する。この時節は台風の季節でもある。向かい風をどう乗り切って南に向かうのか。そして、なぜ過酷な旅をするのか。人の人生というものを連想させる、不思議なチョウではある。

(※写真は、世界農業遺産「能登の里山里海」情報ポータル公式サイトより) 

⇒16日(金)夜・金沢の天気     はれ

★内閣支持率がドロ沼化 「聞くチカラ」の限界

★内閣支持率がドロ沼化 「聞くチカラ」の限界

   内閣支持率は下がる一方で、底が見えない。NHKの世論調査(電話・9月9-11日)によると、岸田内閣を「支持する」と答えた人は、前回調査(8月5-7日)より6ポイント下がって40%だったのに対し、「支持しない」と答えた人は12ポイント上がって40%となった。

   内閣支持率の足を引っ張っているとされるのが、安倍元総理の「国葬」(今月27日)の実施についてだ。「国葬」を行うことについて、「評価する」が32%、「評価しない」が57%だった。さらに「国葬」についての政府の説明は十分だと思うかとの問いでは、「十分だ」が15%、「不十分だ」が72%だった。

   そして、岸田内閣をさらに支持率低下へと引きづり込んでいるのが、自民党と世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)との関係だろう。自民党は、今後、統一教会や関連団体と一切関係を持たないことを基本方針とし、党所属の国会議員との関係を点検して公表したが、自民党の対応は十分だと思うかという問いでは、「十分だ」が22%、「不十分だ」が65%だった。「国葬」と合わせ、統一教会についても大半の有権者は納得いく説明がなされていないと感じているのだ。

   内閣支持率の低下は他のメディアの世論調査でも同様の結果が出ている。時事通信の世論調査(今月9-12日)によると、内閣支持率は前月比12ポイント減の32%と急落した。不支持率は同11ポイント増の40%で、初めて不支持率が支持率を上回った。「国葬」については「反対」が51%で、「賛成」は25%だった(15日付・時事通信Web版)。

   また、読売新聞の世論調査(今月2-4日)では、内閣支持率は50%と前回調査(8月10、11日)の51%と横ばいだったものの、不支持率は41%で、前回調査34%よりアップしている。「国葬」を決めたことに対する評価では、「評価しない」が56%で、「評価する」38%を上回っている。読売の調査でも、岸田総理がその意義や理由を十分に説明していないという不満が、否定的な評価として現れている。

   内閣支持率はドロ沼化している。内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」と言われる。「聞くチカラ」を岸田総理は強調してきたが、いま必要なのは説得ある政策の実行だろう。政権が反社会的な宗教団体との関係性を絶つには、税務調査と警察による情報収集で実態解明に着手すること。その上で、問題が露呈すれば非課税などの優遇措置の解除、場合によっては解散命令(宗教法人法第81条)を検討すると有権者に公約することだ。 

   苦境に陥っている岸田内閣をいま高笑いして眺めているのは、むしろ統一教会の教団幹部ではないだろうか。「岸田さん、地獄の底までお付き合いさせていただきますよ」と。

⇒15日(木)夜・金沢の天気   くもり

☆ドングリ実らぬ秋の山 クマ出没警戒アラート

☆ドングリ実らぬ秋の山 クマ出没警戒アラート

   「クマが出るので注意を」。石川県はきのう、メディアなどを通じてツキノワグマ出没警戒情報を出した=写真・上=。県庁公式サイトによると、ことし1月から8月までに報告されたクマの目撃情報は208件で、過去最多のペースで増えている。クマ出没警戒情報が出されるのは15人の人身被害が出た2020年以来だ。

   ふだんは山奥にいるクマが人里に降りてくるのは、エサ不足が主な原因とされる。とくに冬眠前になるとクマも必死にエサを探し求めて人里に降りてくる。そのエサとなるブナの実のドングリが、県が調査した24ヵ所中16ヵ所で「大凶作」ないし「凶作」だった。このことから、秋の深まりとともにクマの出没頻度が高まると予測される。

   クマは場所を選ばない。これまで金沢市内のいろいろなところに出没している。金沢の野田山は加賀藩の歴代藩主、前田家の墓がある由緒ある墓苑だ。市街地とも近い。お供え物の果物を狙って出没する。なので、「お供え物は持ち帰ってください」との看板が随所にかかっている=写真・下=。

   クマは中心街にも出る。兼六園近くの金沢城公園で、たびたび出没していたことから、捕獲用のおりを仕掛けたところ体長1㍍のオスがかかったことがある(2014年9月)。周辺にはオフィスビルなどが立ち並ぶ。

   クマは柿が大好物だ。一度食べたら、また翌年も同じところに柿を食べにくると言われる。知人から聞いた話だ。痩せたクマが金沢市街地の民家の柿木に登って、無心に柿の実を食べていた。通報を受けたハンターが駆けつけたが、その無心に食べる姿を見て、「よほどお腹がすいていたのだろう」としばらく見守っていた。満足したのか、クマが木から下りてきたところをズドンと撃った。クマはたらふく食べることができてうれしかったのか、目に涙が潤んでいたという。

    クマの出没は県内では金沢や加賀地方を中心だが、その余波が能登地方にも及ぶ。まもなくキノコ採りのシーズンを迎えるが、出没警戒情報が出されるとクマの出没が比較的少ない能登地方に金沢や加賀地方のキノコ採りの人々がやってくる。能登の人々にとっては迷惑な話なのだが、能登の人たちが目指しているキノコはコノミタケと地元で呼ぶホウキダケの仲間だ。コノミタケと能登牛のすき焼きは季節の料理として人気がある。

   一方、金沢や加賀地方からやってくる人たちは、能登ではゾウゴケ(雑ゴケ)と呼ぶシバタケがお目当て。目指すものが異なるので、山でトラブルになったという話は余り聞いたことがない。ただ、マツタケがはえる山には縄を張って、立ち入りを警告する山主もいる。クマの話がいつの間にかキノコに逸れた。

⇒13日(火)午後・金沢の天気   はれ

★「ニュース砂漠」広がるアメリカ

★「ニュース砂漠」広がるアメリカ

   アメリカのメディアの現状を理解する上で興味深いが調査報告がノースウエスタン大学の公式サイトに掲載されている。「As newspapers close, struggling communities are hit hardest by the decline in local journalism」の見出し=写真・上=で、新型コロナの感染拡大が始まった19年末以降で日刊や週刊などを合わせた地方紙が360紙超が廃刊となっていて、過去17年間では地方紙全体の4分の1以上にあたる2514紙を失ったとしている。「ニュース砂漠(news deserts)」がアメリカ全土に広がっていて、「草の根の民主主義」の危機と訴えている。

   地方紙が廃刊に追い込まれる理由として、社会のデジタル化と、リーマン・ショックやコロナ禍による広告収入の減少が原因としている。確かに、地元で何が起きているかを住民が知ることができない「ニュース砂漠」化は地域に深刻な問題をもたらすかもしれない。実例がある。

   カリフォルニア州ベル市(3万5000人)では1998年ごろに地元紙が休刊となり、市役所に記者が来なくなった。2010年にたまたま同市を訪れた「ロサンゼルス・タイムズ」の記者が市の行政官(事務方トップ)の年俸を聞いて驚いた。オバマ大統領の年俸の2倍に相当する78万7000㌦を受け取っていた。市議会の承認を得て、議員や警察署長、公務員給与も引き上げ、まさにお手盛りの高額給与。低所得の労働者が住民の大半で、住民の6分の1が生活保護レベルの貧困を強いられている市で起きていた出来事だった。メディアの記者が入ればチェックできた行政の汚職が10年余りはびこっていた。(※写真・下は、ベル市幹部の汚職摘発を報じるロサンゼルス・タイムズ紙=2010年7月23日付)

   新聞紙だけでなく、記者も激減した。1990年代に5万6千人とされたが2014年には3万8千人に減った(アメリカ連邦通信委員会=FCC)。新聞だけでなく、ネット動画配信が普及し、コードカッティング(Cord Cutting)と呼ばれる「テレビ離れ」も深刻で、テレビ業界の経営も危ぶまれている。

   アメリカのこうしたアナログメディアの減少による、「ニュース砂漠」「取材空白地」といった現象は日本でも起こりうるのか。そもそも新聞の収入構造がアメリカと日本では異なる。アメリカの新聞は販売収入が2割、広告収入が8割とされ、経営は広告に左右されやすい。日本は戸別配達が普通で販売収入が7割、広告収入が3割であり、経営は広告に左右されにくいとされる。が、購読者の減少などで苦戦が強いられているのが現状だ。

   テレビはどうか。「2021年 日本の広告費」(電通)によると、インターネット広告費が2021年に2兆7000億円となり、マスコミ4媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)の広告費(2兆4000億円)を初めて上回った。テレビ広告費は巣ごもり・在宅需要などで前年比で二桁増となったものの、先行きは楽観できない。日本のアナログメディアも遠からず、アメリカの後追いをすることになりかねない。

⇒12日(月)午後・金沢の天気    はれ

☆「9・11」から21年、アメリカの徹底した対テロ戦争

☆「9・11」から21年、アメリカの徹底した対テロ戦争

   きょうは2001年に起きたアメリカでの同時多発テロ事件「9・11」から21年となる。国際テロ組織アルカイダによるテロは現地時間で午前8時46分だった。ニューヨ-ク・マンハッタンの高層ビル「ワールドトレードセンター」に民間航空機が追突した。日本でも当初、航空機事故としてテレビ朝日の報道番組「ニュースステーション」などは生中継で伝えていた。間もなくして、2機目が同じワールドトレードセンターの別棟に突っ込んできた。世界中の視聴者がテロリズム(terrorism)の目撃者になった瞬間だった。日本人24人を含む2977人が死亡した。

   アメリカは「テロとの戦い(War on Terrorism)」を錦の御旗に掲げ新たな戦いを始める。当時のブッシュ大統領はアフガニスタンで政権を握っていたタリバンが、テロ事件の首謀者とされたオサマ・ビン・ラディンをかくまっていると非難。同年10月にはアメリカが率いる有志連合軍がアフガンへの空爆を始め、タリバン政権は崩壊する。

   テロとの戦いはオバマ大統領に引き継がれ、2011年5月1日、パキスタンのイスラマバードから60㌔ほど離れた、ビン・ラディンの潜伏先をステルスヘリコプターなどで奇襲し殺害。DNA鑑定で本人確認をし、アラビア海で待機していた空母カール・ビンソンに遺体を移送し、海に水葬した。

   ことし7月30日、アメリカはもう一人の首謀者とされていたアイマン・アル・ザワヒリを潜伏先のアフガンのカブール近郊のダウンタウンで、無人攻撃機に搭載した2発のヘルファイアミサイル(空からの対戦車ミサイル)で攻撃し殺害した。ホワイトハウスでの声明で、バイデン大統領は「Now, justice has been delivered and this terrorist leader is no more.」とアルカイダとの戦いの集結を宣言した。

   これで、対テロ戦争は終わったのか。テロリズムはテロ集団と国家だけではなく、国家と国家という図式もアメリカにはある。ブッシュ大統領が「9・11」の翌年2002年の一般教書演説で述べた「悪の枢軸」がこれだ。それ以前からイランやイラク、北朝鮮などを「テロ支援国家」や「ならずもの国家(rogue state)」などと称して敵視してきた。いまでもアメリカではこの認識は根強い。

   では、日本人はこの「9・11」から何を学んだのだろうか。その後も欧米で自爆テロなどが繰り返され、遠巻きながら日本人もテロに恐怖心を抱き、身構えるようになった。JR駅からゴミ箱が撤去されたのはその一例。2017年には北朝鮮による弾道ミサイル発射を警戒した全国瞬時警報システム「Jアラート」が作動するようになった。

   そのJアラートなどを用いた住民避難訓練について、政府は今月から北海道や沖縄県など8道県の10市町村で実施を再開する(今月10日付・時事通信Web版)。2018年6月に米朝首脳会談が行われて以降、緊張緩和が進んだとして政府は実施を見合わせていた。4年ぶりだ。

⇒11日(日)午後・金沢の天気     はれ

★天皇が参列するイギリスの国葬、しない日本の国葬

★天皇が参列するイギリスの国葬、しない日本の国葬

   前回のブログの続き。イギリスの君主として歴代最長となる70年にわたって在位してきたエリザベス女王が96歳で亡くなった。女王の国葬は2週間以内にウェストミンスター寺院で執り行われる予定(9日付・BBCニュースWeb版)。

   NHKニュースWeb版(10日付)によると、エリザベス女王の国葬には天皇陛下が参列される方向で政府と宮内庁の間で調整が進められている。皇室とイギリスの王室は、昭和28年(1953年)に上皇がエリザベス女王の戴冠式に昭和天皇の名代として出席するなど、古くから親密な関係にある。天皇陛下は2019年5月に即位後、2020年にエリザベス女王からイギリスに招待されていたが、新型コロナウイルスの影響で延期となっていた。こうした経緯など踏まえてイギリスでの国葬に参列する調整が進められている、という。

   エリザベス女王の国葬には、天皇陛下が参列する。そして、安倍元総理の国葬(今月27日)には、秋篠宮夫妻ら皇族の参列を宮内庁が調整していると報じられている(8月29日付・毎日新聞Web版)。葬儀委員長を務める岸田総理から宮内庁に「皇族各殿下」の国葬への参列依頼が文書で出されていた。「皇族各殿下」には天皇、皇后両陛下と上皇ご夫妻は含まれない。両陛下と上皇ご夫妻は使者を派遣するとみられる。1967年の吉田元総理の国葬には、当時は皇太子夫妻だった上皇ご夫妻が参列し、昭和天皇ご夫妻は使者を派遣した。2020年の中曽根元総理の内閣・自民党合同葬には秋篠宮夫妻が参列し、両陛下と上皇ご夫妻は使者を派遣している(同)。

   上記の記事を読んでの印象だが、日本の国葬には天皇、皇后両陛下はこれからも参列しないだろう。国葬に関して取り決めた法律がない、また、国葬に値する人物の基準もないので当然と言えば、当然だろう。議論を呼ぶような国葬にあえて両陛下が参列するはずもない。岸田総理は国会の閉会中審査(今月8日)で「憲政史上最長(通算8年8ヵ月)の政権を担った」「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜くという決意を示す」などと国葬を実施する理由を繰り返し述べていたが、政権の単なる理屈にすぎない。

   国葬は国民がこぞって賛同するような価値基準がない限り難しい。内閣府設置法という法律の枠組みの中で「国の儀式」が出来るから国葬を行うというのでは、今後さらに有権者の反発を招くのではないか。

(※写真は、2020年10月17日に都内のホテルで営まれた中曽根元総理の「内閣・自民党合同葬」=総理官邸公式サイトより)

⇒10日(土)夜・金沢の天気   はれ

☆女王の威厳を讃えるイギリスの国葬

☆女王の威厳を讃えるイギリスの国葬

   イギリスのエリザベス女王が亡くなった。イギリスの君主として歴代最長となる70年にわたって在位し、96歳で亡くなった。BBCニュースWeb版(9日付)は「Nation mourns Queen with flowers, gun salutes and address from new King」の見出し=写真=で、女王の死去を受け、長男のチャールズ皇太子が国王に即位したと伝えている。女王に敬意を表してウェストミンスター寺院、セントポール大聖堂、ウィンザー城で鐘が鳴り、女王の人生を記念して96発の銃による敬礼がハイドパークなどで発射される。女王の国葬は2週間以内にウェストミンスター寺院で執り行われる予定で、正確な日はバッキンガム宮殿によって後日発表される、という。

   エリザベス女王の死去を受けて、天皇陛下のお気持ちを宮内庁が文書で発表した(TBSニュースWeb版)。「女王陛下は、70年の長きにわたり英国女王として同国並びに英連邦諸国の国民を導き、励まされました」「我が国との関係においても、女王陛下は両国の関係を常に温かく見守ってくださり、英王室と皇室の関係にも御心を寄せてくださいました。私の英国留学や英国訪問に際しても、様々な機会に温かく接していただき、幾多の御配慮をいただいたことに重ねて深く感謝したいと思います。 また、女王陛下から、私の即位後初めての外国訪問として、私と皇后を英国に御招待いただいたことについて、そのお気持ちに皇后とともに心から感謝しております」

   天皇のお言葉からも、70年の長きにわたってイギリスの女王として威厳を保ち続けたことが伝わって来る。さまざまな王室スキャンダルの嵐が吹き、イギリスそのものもかつてはEU離脱という国論を二分するよう状況下もあった。その中でも、威厳を湛えながら国をまとめていた。

   エリザベス女王の国葬は2週間以内にウェストミンスター寺院で執り行われる。誰もが弔意を持って、その日を迎えることだろう。これが本来の国葬のあり様でもある。日本の「国葬」と比較するつもりはいっさいない。

⇒9日(金)夜・金沢の天気      くもり 

☆台風一過 晴れぬ天気、五輪汚職 積もる賄賂

☆台風一過 晴れぬ天気、五輪汚職 積もる賄賂

   北陸地方に38.5度の熱波をもたらした台風11号は昨夜午後9時に日本海で温帯低気圧に変わった。台風情報はテレビやネットでチェックしていたが、そのルートが不気味だった。8月28日に南鳥島近海で発生し、日本の南を西へ進みながら猛烈な台風(最大風速54㍍以上)になる。沖縄の南で一時停滞し、その後、北上して今月3日に東シナ海に、6日には対馬海峡を通って日本海に入り、時速80㌔のスピードで北東に進んだ。日本列島を挟むようにした「V字」のコースを描いていた。

   不気味というのも、日本海側を通る台風は被害が大きいという、これまでのイメージがある。1991年9月の台風19号では、能登半島の輪島市では最大瞬間風速57㍍を超す記録的な暴風で建物や森林が甚大な被害に見舞われ、青森県では収穫前のリンゴが大量に落下して、「リンゴ台風」とも言われた。2004年9月の台風18号でも猛烈な風で北海道大学のシンボルのポプラ並木がなぎ倒され、「ポプラ台風」と呼ばれた。

   今回の台風11号が温帯低気圧に変わって、ヤレヤレと思い、台風一過の秋晴れを思い描いていたが、けさからどんよりしたくもり空だ。台風にしばらく気を取られていたが、東京オリンピック・パラリンピックを巡る汚職事件や安倍元総理の国葬について展開があったようだ。

   まずは円安から。きょう7日の東京外国為替市場で円相場は一時1㌦=144円台まで値下がり。1998年以来およそ24年ぶりの円安水準を更新した。発表された経済指標からアメリカの景気の底堅さが確認され、FRBによる大幅な利上げが今後も続くという観測が広がり、円を売ってドルを買う動きが強まってる(7日付・NHKニュースWeb版)。近くのガソリンスタンドでは1㍑170-173円の看板が目につく。景気が後退していく中でインフレと物価上昇が同時進行するスタグフレーションがさらに加速するのか。

   東京オリ・パラをめぐる汚職事件。大会スポンサーだったAOKIに続いて、KADOKAWAが摘発を受け、東京地検特捜部は6日、元専務ら2人を逮捕、大会組織委員会の元理事を受託収賄容疑で再逮捕した(同)。これで賄賂は総額にして1億2000万円だ。「オリンピック神話」は汚職に染まった。2030年冬季オリ・パラの招致を目指す札幌市だが、市長が今月中旬に予定していたIOC本部への訪問を中止すると発表した(6日付・毎日新聞Web版)。   

   読売新聞の世論調査(今月2-4日)では、政府が今月27日に安倍元総理の国葬を決めたことに対して、「評価しない」が56%で、「評価する」38%を大幅に上回った。こうした世論に配慮してか、政府は6日、国葬の経費について、総額16億6000万円程度を見込んでいると明らかにした(7日付・同)。ただ、世論の憤りは、国葬を行う法的な基準がなく、そのときの内閣が「国葬にふさわしい」と判断すれば、国民の税金を使って国葬ができる、という今回の一連の流れだろう。「通算8年8ヵ月」総理の座にあれば誰もが国葬なのか。「丁寧な説明」と「有権者の納得」にずいぶんと乖離がある。

⇒7日(水)午後・金沢の天気    くもり 

★台風11号が北陸にもたらした38度の熱波と乱れ雲

★台風11号が北陸にもたらした38度の熱波と乱れ雲

   これが「災害級の暑さ」なのだろう。午後2時ごろ、自宅の二階に上がると、まるでサウナに入ったような蒸し暑さだった。窓を開けたが、さらに蒸し暑さ加速すると判断して閉めた。近くのコンビで買い物するため外に出るとムーッとする熱気と風、熱波だ。ふと空を見上げると、乱れたような雲が不気味に思えた。高積雲と高層雲、積雲が入り混じったような複雑なカタチだ=写真・上、午後2時46分ごろ金沢の西の空を撮影=。

   外に出て数分すると頭がクラクラとなる感じがして、急いで自宅に戻った。大型で強い台風11号が北陸地方に接近し、南寄りの風、そしてフェーン現象による高温多湿。自身の体温より熱さを体感したので、明らかに38度はあったろう。

   石川県と新潟県には「熱中症警戒アラート」が出されている。NHKのローカルニュースでは、日中は外出をなるべく避け、特別の場合以外は運動を行わないほか、がまんせず冷房を適切に使用する、こまめに水分を補給する、屋外で会話が少ない場面などではマスクを外して休憩する、などと呼び掛けている。確かにマスクをしての外出は息苦しさを感じた。外を歩く人のほとんどがノーマスクだった。

   午後4時過ぎから分厚い雨雲が空を覆い始めた=写真・下、午後4時13分ごろ金沢の北西の空を撮影=。5時ごろには雨も降り始め、今度は風雨になった。午後5時現在で外気温を調べると28度と暑さは和らいでいる。午後6時45分現在、風は止んだが雨は続いている。外気温は23度になっている。

   金沢のテレビ局の夕方のニュースによると、金沢では午後2時18分に38.5度を観測した。金沢の38.5度は120年前の1902年(明治35年)9月8日の記録に並び、観測史上最も高くなったと報じている(6日付・北陸放送ニュースWeb版)。

⇒6日(火)夜・金沢の天気     あめ

☆国葬問題 世論の憤り

☆国葬問題 世論の憤り

   大型で強い台風11号があす6日午後には北陸地方に最も接近するようだ。メディア各社が報じている。北陸地方では南寄りの強風と高波、そしてフェーン現象による高温と乾燥。金沢の予想気温はなんと36度だ。

   そして、民意もヒートアップしている。きょうの読売新聞によると、世論調査(今月2-4日)で内閣支持率は50%と前回調査(8月10、11日)の51%と横ばいだったものの、不支持率は41%で、前回調査34%より大幅にアップした。まさに、支持する、しないの世論が二分されるような状態だ。

   さらに、政府が今月27日に安倍元総理の国葬を決めたことに対する評価では、「評価しない」が56%で、「評価する」38%を大幅に上回っている。7月に国葬の実施を決めて以降、岸田総理がその意義や理由を十分に説明していないという不満が、今回の否定的な評価として現れたのだろう。

   TBS系列によるJNN世論調査(今月3、4日)でも、内閣支持率が48%で、前回調査(8月6、7日)の57%から9ポイント急落。不支持率は48%で、前回調査の39%より9ポイント上昇した。安倍元総理の国葬については「反対」が51%と前回調査から6ポイント上昇し、「賛成」38%を上回った。国葬の意義について岸田総理の説明で納得しているかどうかは、「納得していない」が63%、「納得している」が25%だった。

   きのう放送されていたNHK番組「日曜討論」を視聴していたが、安倍元総理の国葬をめぐる自民党の茂木幹事長の説明は、いわゆる国葬ありきの発言だった。「国内外から多くの弔意が寄せられていて、海外からの参列者も招いて、敬意や弔意を表す機会を国の儀式として行うのは国際的に見ても適切なこと」「国葬は現行の内閣府設置法で閣議決定しているので、法的には問題ない」。このような説明で有権者は果たして納得するだろうか。

   国葬は法的な基準がない。しかし、そのときの内閣が「国葬にふさわしい」と判断すれば、国民の税金を使って国葬ができる。世論が憤っているのはこのことだ。いとも簡単にやすやすと国葬なんてやるんじゃない、と。

⇒5日(月)夜・金沢の天気    はれ