#コラム

☆質問権から解散命令請求へ「最後の審判」の道のり

☆質問権から解散命令請求へ「最後の審判」の道のり

   前回のブログの続き。NHKの国会中継が実にアリルで面白い。きょう19日午前の参院予算委員会で岸田総理に質問した立憲民主党の議員は「朝令暮改にもほどがある」と声を張り上げていた。何が朝令暮改だったのか。

   岸田総理は17日の衆院予算委で、世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)の霊感商法や献金強要などさまざまな問題をめぐり、宗教法人法に基づく調査の方針を固め、同法が規定する「質問権」を行使すると表明。組織の実態を調べた上で、裁判所への解散命令請求の適否を判断したいと述べた。ただ、18日の衆院予算委では、宗教法人法は「法令に違反し、著しく公共の福祉を害する行為をした場合」などが解散命令の事由に当たると定めているが、法令違反の要件については民事裁判の判決(民法の不法行為)では根拠にならず、刑事罰などが必要になるとの認識を示した。

   それが、きょうの参院予算委では一転して、解散命令を請求する要件について「民法の不法行為も入りうる」と述べ、前日の答弁を修正した。質問した小西洋之議員(立憲民主党)は「私も12年間、国会議員をやっていますけども朝令暮改にもほどがある。自民党政治と旧統一協会の癒着構造の迷走劇、成れの果てだ」と、ようやく認めた岸田総理を「朝令暮改」と揶揄した。

   紆余曲折はあったものの、これでようやく政府と野党側の方向性が一致した。その後、岸田総理は「(旧統一教会の問題は)組織性、悪質性、継続性が明らか」と述べた。さらに、宗教法人を所管する永岡文科大臣は「質問権」行使を検討する際、被害者弁護団が持っている教団本体や関連団体の民事裁判の資料など情報提供を受けたいとの考えを表明し、解散命令請求の動きに弾みがついたとの印象だ。

   また、旧統一教会をめぐり、 自民、立憲、維新の3党の国対委員長はきょう国会内で会談し、▽悪質献金などによる被害救済のための与野党協議会の設置や、▽救済法案を与野党で作成し、今の国会での成立を目指すことで合意した。早ければ今週中にも協議会をスタートさせる(TBSニュースWeb版)。

   質問権を使った旧統一教会への調査は今後、専門家会議が開かれ、どのような質問をするかなど内容が決まり、調査スタッフが調べを開始する段取り。ここで教会の違法性が確認された場合に裁判所へ解散命令を請求する。裁判所によってその違法性が認められれば宗教法人格が剥奪される。正体を隠した勧誘やマインドコントロールによる献金強要など教団の不法行為がようやく白日の下にさらされる。審判が下るときが来た。

⇒19日(水)夜・金沢の天気    はれ

★1㌦=150円目前、「悪い円安」なのか「良い円安」なのか

★1㌦=150円目前、「悪い円安」なのか「良い円安」なのか

   ドル・円のレートが急激に円安・ドル高に振れていて、きょうは1㌦=149円になった。去年の終盤は1㌦=115円台だったので、30%ほど円安になった計算だ。メディア各社は、アメリカの長期金利が再び4%台に乗せたことで日米の金利差が拡大し、円売り・ドル買いの動きが加速したと伝えている。

   きょう午前中のNHKの国会中継。衆院予算委員会で野党の議員が日銀の異次元の金融緩和が円安を加速させていると、黒田東彦総裁の責任を問い質していた。以下。

階猛議員(立憲民主党):「日銀は円安を加速するような異次元の低金利をやってる。金融政策を正常化したり、あるいは柔軟化したりするためにも、今すぐ退くべきだと考えます。総裁、どうですか」
黒田総裁 :「ご指摘のような量的・質的金融緩和がまったく失敗したというのは事実に反する」
階議員 :「だから、辞めるか、辞めないか、どっちなんですか」
黒田総裁 :「辞めるつもりはありません」

   怒りを募らせたような野党議員の質問には前段があった。きのう17日の衆院予算委員会で、野党側の質問に、黒田総裁は「(物価の見通しについて)エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により、年末にかけて上昇率を高める可能性が高い」「円安の影響によって輸入品価格が上昇していることが影響している」と答えていた。物価はまだまだ上がると、まるで他人事のような答え方だった。

   「良い円安」「悪い円安」といった議論が沸き起こっている。「良い円安」は、金利低下により住宅景気を押上げ、かつ企業の投資環境もよくした。 円安は海外への工場移転を停止させ、雇用を国内に戻す効果ある。さらに、 輸出競争力も高まる、といった論拠だ。

   一方、「悪い円安」は、日本からの輸出が多かった時代は円安のメリットはあったものの、産業構造が変わり、日本企業の製品の多くが海外で生産されるようになった現在ではそのメリットはない。8月の貿易収支は2兆8千億円の大幅赤字となっており、このまま貿易赤字が定着すれば、日本経済は窮地に立たされる、などの論拠だ。

   アメリカが利上げを続け、日銀が異次元緩和を続行すれば、1㌦=150円も単なる通過点だ。ただ、懸念されているアメリカの景気悪化が進行すれば、ドル安・円高に振れる可能性もあるだろう。先が読めない。

⇒18日(火)夜・金沢の天気    はれ

☆朝刊一面に踊る「統一」の文字

☆朝刊一面に踊る「統一」の文字

   読売新聞と日経新聞の朝刊一面の見出しに「統一」の文字が踊るように出ていた=写真=。読売は「台湾統一」と「旧統一教会」、日経は「台湾統一」の見出し。きょうのトップニュースはこれだ。

   5年に1度の中国共産党大会が16日、開幕した。党トップの習近平総書記(国家主席)は活動報告で、台湾統一について「必ず実現しなければならないし、実現できる」と語った。5年前の報告より大幅に表現を強めた。党大会では異例の3期目続投を決める見通し。習氏は超長期政権を視野に、台湾統一を事実上の「公約」に掲げたかたちだ(17日付・日経新聞)。

   約1時間45分の報告で人民大会堂にひときわ大きな拍手が起きたのが台湾統一の部分だった。習氏は「決して武力行使の放棄を約束しない」とも語り、台湾に軍事圧力をかけた(同)。

          中国はすでに新疆ウイグル自治区などでの人権問題で欧米など世界から厳しい視線が向けられている。台湾統一を公約にしたことで、世界との隔たりがさらに拡大するのではないか。これで世界経済はどうなる、か。

   世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)のさまざまな問題をめぐり、政府は宗教法人法に基づく調査に踏み切る方針を固めた。同法が規定する「質問権」を初めて行使する。組織の実態を調べた上で、裁判所への解散命令請求の適否を判断する構え(17日付・読売新聞)。岸田総理はようやく、腹をくくったのかとの思いがした。

★統一教会と北朝鮮のSLBMとの因縁

★統一教会と北朝鮮のSLBMとの因縁

   北朝鮮の弾道ミサイル発射について、このブログで取り上げている。文字入力をしながら、ずっと思い出せないことが一つあった。かつて、世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)が北朝鮮の兵器開発に関わったという事件だった。「あっ、これだ」とようやくたどり着いた。TBSニュースWeb版「JNN NEWS DIG」(今月14日付)の特集「旧統一教会関連会社が北朝鮮に潜水艦を仲介 日本人信者の献金が北の兵器開発に使われていないか」の記事だ。   

   記事を要約する。1994年1月にロシアから北朝鮮にミサイル発射装置が付いたままの潜水艦が売却された。売却を仲介したのか東京・杉並区にあった商社だった。潜水艦を「鉄くず」と偽って申告して取引を成立させていた。商社は社員4人の小さな会社だが、全員が統一教会の合同結婚式に出ていた信者だった。

   当時この「鉄くず」潜水艦の売却については当時、ニュースになったものの、警察による刑事事件にはならず、その後、報道は沙汰止みとなった。再びニュースになったのは韓国の国防部の2016年8月の報告だった。北朝鮮がSLBM潜水艦発射型弾道ミサイルを打ち上げた際に、統一教会の信者が仲介してロシアから北朝鮮に渡った「鉄くず」潜水艦が開発の元になっていたとの報告を国会で行った(同)。(※写真は、2016年に北朝鮮が打ち上げたSLBM「北極星」=防衛省・令和4年7月「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」より)

   TBSの特集で、全国霊感商法対策弁護士連絡会の渡辺博弁護士は「1991年に文鮮明さんが訪朝した際は3000億円とか持参したといわれてます」と述べている。また、北朝鮮にある文鮮明の誕生地を訪ねる「生地巡礼ツアー」が1990年代から行われて、日本人信者が年間1000人参加。ツアーには信者が1人100万円を献金として持参し、生誕の地に捧げるという名目で北朝鮮側に渡っていたとみられる、と指摘している。

   日本の信者から集めた巨額の献金が韓国の統一教会から北朝鮮に渡り、さらに、生地巡礼ツアーと称して北朝鮮に追い銭を投げている。統一教会の関連会社がロシアの潜水艦を北朝鮮に仲介し、その潜水艦を元にSLBMが開発されていたとすれば、まさに言語道断だ。この国防上の問題を政府が徹底解明し、旧統一教会を解散に追い込むこと、さらに反セクト法の制定が急務だろう。
 
⇒16日(日)夜・金沢の天気    くもり

★セイタカアワダチソウは「厄介な雑草」なのか

★セイタカアワダチソウは「厄介な雑草」なのか

   きょうは秋晴れのすがすがしい一日になりそうだ。庭にはセイタカアワダチソウが黄色の花を咲かせ、時折そよぐ風に身を揺らしている=写真=。ただ、この植物は植えた覚えはなく、いつの間にか庭に生えていた、いわゆる外来種の雑草ではある。

   なのに、春と夏の草むしり(除草)の際は、数本だけ残している。観賞用でもないのだが、「雑草という草はない。どんな植物でもみな名前があって、それぞれ自分の好きな場所で生を営んでいる」(昭和天皇のお言葉)という有名なフレーズを妙に覚えていて、根こそぎの除草はしていない。ところが、この季節に休耕田や河原、空き地に一面に群生している様子を見るとその勢いに圧倒されそうになり、複雑な思いに駆られることもある。

           そうした見た目のよくない印象もあるのだろう、セイタカアワダチソウは花粉症の元凶と誤解されたこともかつてあった。今でもそう思っている人も多いかもしれない。風に揺れる様子を見ていても分かるように、花粉がほとんど飛ばない。花粉は量が少なく、比較的重いためとされる。いわゆる「風媒花」ではなく、花に寄って来た虫によって受粉する「虫媒花」なのだ。

   以前、植物研究者から聞いた話だが、セイタカアワダチソウは生命力が強い植物であり、さまざま薬効もあるようだ。葉にはポリフェノールの一種であるクロロゲン酸などが含まれていて、煎じて飲めば、血糖値や血圧の上昇を抑える効果がある。また、フラボノイドも含まれていて、ヨーロッパなどでは葉を潰して虫刺されや外傷の止血剤としても用いられている。入浴剤としても使われている、とか。今では見かけないが、日本では、草丈が1㍍から2㍍と長いことから、かついては簾(すだれ)の材料として活用されていた。

   さまざまに活用方法があるものの、人々の暮らし方の変化にともない、厄介な雑草としか見られない植物になった。こう考えると、才能がある人物を活かしきれず、厄介者扱いにする人間社会も同じ、かと思ってしまう。

⇒13日(木)午前中・金沢の天気    はれ

☆番組の制作意図をさらけ出した、あの一言

☆番組の制作意図をさらけ出した、あの一言

    テレビ朝日公式サイトの「社長定例会見」のページに今月4日の会見の内容が記載されている。その中で、篠塚社長は報道局の社員3名の懲戒処分を当日付で行ったと以下述べている。報道局情報番組センター所属で『羽鳥慎一モーニングショー』のコメンテーター、玉川徹を謹慎(出勤停止10日間)とした。玉川は先月28日、番組で事実に基づかない発言を行い、その結果、番組および会社の信用を傷つけ、損害を与えたことによりと処分した。番組担当のチーフプロデューサー2名を譴(けん)責とした。

   記者からの「出勤停止の後は番組に復帰するのか。また、どのような再発防止策を講じていくのか」との質問に、篠塚社長は関係者のヒアリングなども含めて、会社の規定に従って処分を決定した。出勤停止が明けた段階では番組に復帰するという予定だ。番組も本人も含めて深く反省しているので、改めて指導を徹底して、と返答している。

   舌鋒鋭い玉川コメンテーターだが、今回問題となった発言はネット上のユーチューブ動画に数々上がっている。安倍元総理の国葬(9月27日)で菅元総理が友人代表として弔辞を読み上げ、感動的だったとの絶賛の声がSNSで広がっていた。これについて、翌日の番組で玉川氏は、「演出側の人間として、テレビのディレクターをやってきましたから、それはそういうふうにつくりますよ。政治的意図がにおわないように、制作者としては考えますよ。当然これ、電通が入ってますからね」などとコメントした。

   素直に聞けば、菅氏の弔辞は電通が作成したとも受け取れ、「電通黒幕」のような物言いだ。それが一転して、玉川氏は翌日の番組で「事実ではなかった」と謝罪した。社とすれば、この事実誤認を単に番組で詫びるだけでは済まなかった。テレビ業界と密接につながる電通側に対し、社として陳謝するという意味を込めて今回の処分になったのだろう。

   以下は憶測だ。経営陣にはもう一つ、憤りがあったのではないかと。玉川氏の発言の「政治的意図がにおわないように、制作者としては考えますよ」の部分だ。思い起こすのが、あの「椿発言」だ。1993年、テレビ朝日の取締報道局長だった椿貞良氏(2015年12月死去、享年79)が日本民間放送連盟の勉強会で、総選挙報道について「反自民の連立政権を成立させる手助けになるような報道をしようではないかと報道内部で話した」などと発言した。当時、非自民政権が樹立され、細川内閣が発足していた。この内輪の会合の椿氏の発言が産経新聞=写真・下、1993年10月13日付=で報じられ、テレビ報道の公平公正さが問われた。同氏は責任をとって辞任。その後、国会に証人喚問されるという前代未聞の展開となった。

   玉川氏の発言は椿発言とは真逆の立場ながら、表に出すべきでない番組制作の意図というものをさらけ出してしまった。椿発言がトラウマとなっている経営陣にとってはなおさら気に障ったのではないか、とも憶測した。

⇒12日(水)午前・金沢の天気    くもり時々あめ

★沈黙破り「弾道ミサイル」「核戦力」を強調する背景は

★沈黙破り「弾道ミサイル」「核戦力」を強調する背景は

   北朝鮮の労働新聞Web版(11日付)は、9月25日からの今月9日まで7回におよんだ弾道ミサイルの発射について、「경애하는 김정은동지께서 조선인민군 전술핵운용부대들의 군사훈련을 지도하시였다 」(意訳:金総書記は人民軍の戦術核作戦部隊の軍事訓練を指揮した)の見出しで記事と写真で紹介している。記事を読むと、この日はどこを狙ったなどと具体的に記していて実に生々しい。

   記事によると、9月25日に発射した弾道ミサイルは、貯水池に設けられた水中発射施設からの発射だった=写真・上=。水中発射ということは、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)なのだろう。記事では、「設定された高度で正確な弾頭爆発の信頼性が検証された」としている。同28日の弾道ミサイル発射は韓国の飛行場への攻撃訓練で、戦術核弾頭を想定したと記載している。具体的な核攻撃目標が飛行場であり、リアルさを感じる。

   今月4日に日本列島を通過する中距離弾道ミサイルが発射され、太平洋に落下した。写真では、金総書記がパソコンのモニターを見ながら、想定飛行を確認する様子が映っている=写真・下=。記事では、「地上中長距離弾道ミサイル」の発射は朝鮮労働党中央軍事委員会の決定によるもので、「敵に対してより強力で明確な警告を発した」と記載している。この中距離弾道ミサイルの飛翔距離は4600㌔と推定され、距離としてはこれまでの弾道ミサイルで最長だった。この射程内には、アメリカ軍のアジア太平洋地域の戦略拠点であるグアムがすっぽりと入る。核弾頭が搭載して高いステルス性能を持つB2戦略爆撃機などが展開するアンダーセン基地がある。

   記事の最後は、「敬虔な同志金正恩は、核戦力が我が国の尊厳、自己主権、射撃権の重大な義務を認識し、最強の核対応態勢を維持し、より後方を強化することへの自信を表明した」(意訳)と結んでいる。5月4日以降、弾道ミサイル発射について、国営メディアは関連記事を掲載していなかった。今回、「沈黙」を破って掲載した狙いはどこにあるのか。「核戦力」を強調するためか。7回目となるであろう核実験への連鎖はあるのか。

⇒11日(火)午前・金沢の天気   くもり時々あめ

★SLBMを繰り返す北朝鮮の執念「瀬戸際戦略」

★SLBMを繰り返す北朝鮮の執念「瀬戸際戦略」

   今度は海からの弾道ミサイルの発射だ。防衛省公式サイト(9日付)によると、北朝鮮はきょう未明、午前1時47分と同53分の2回、半島東岸付近から東方向に向けてそれぞれ1発の弾道ミサイルを発射した。2発とも最高高度は100㌔程度で、約350㌔飛翔したものと推測される。ことし5月7日にも半島東岸付近から、1発のSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルを発射している。今回も、海岸付近という発射場所などから、SLBMの可能性が高い。弾道ミサイル発射は9月25日以降7回目(計12発)だが、未明の発射は初めて。

   去年10月19日にも半島東部の潜水艦の拠点となっている新浦(シンポ)付近から、SLBMを東方向に発射させている。このときの労働新聞(同20日付)は「조선민주주의인민공화국 국방과학원 신형잠수함발사탄도탄 시험발사 진행」(国防科学研究所が新型潜水艦発射弾道ミサイルを試験打ち上げ)の見出し=写真=で、2016年7月9日にSLBM「北極星」を初めて発射した潜水艦から再び新型SLBMの発射に成功し、国防技術の高度化や水中での作戦能力の向上に寄与したと記事を掲載している。

    防衛省資料「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」(令和4年度版)によると、北朝鮮は弾道ミサイルを発射可能な潜水艦を1隻保有し、その潜水艦にはSLBM1発が搭載可能。さらに、北朝鮮はより大きな潜水艦の開発を追求しているとの指摘もある。例えば、北朝鮮メディアは金総書記が「新たに建造された潜水艦」を視察したと発表(2019年7月)している。これは、通常の攻撃用潜水艦(24隻)を改造して、SLBMを3発搭載可能にするという指摘もある。SLBM搭載の潜水艦の開発は、弾道ミサイルによる打撃能力の多様化のほか、敵からの攻撃に対して残存性が高いため報復攻撃を狙っているとされる。

          「残存性」を別の言葉で解釈すれば、敵に対してはSLBMでしつこく攻撃する、復讐を繰り返す、そんな意味だろう。北朝鮮の「瀬戸際戦略」の執念がここに見えるようだ。

⇒9日(日)午後・金沢の天気   あめ

☆金沢の茶席で見たトンボ絵の茶器のこと

☆金沢の茶席で見たトンボ絵の茶器のこと

      きょうは3連休の初日。空模様を気にしながら、3年ぶりに開かれた「金沢城・兼六園大茶会」(石川県茶道協会など主催)に足を運んだ。「大茶会」と言うのも、4つの会場で茶道7流派の12の社中が日替わりで茶席を設ける形式。4つの会場は金沢城や兼六園の近くにあり、それぞれ趣きのある場の雰囲気にひたりながら茶の湯を楽しむことができる。

   最初に訪れたのは金沢21世紀美術館の敷地の一角にある茶室「松涛庵」。もともとは加賀藩主が江戸時代の末期に東京の根岸に構えた隠居所だった。その後、金沢に移築されて茶室に改装、平成13年(2001)に金沢市が取得して一般公開している。露地は枯山水の造り。モダンアートを展示する「21美」とは真逆の伝統的な和風空間でもある。

   ここで表千家の社中が立礼(りゅうれい)席を設けていた。立礼は椅子に座ってお茶を点てる作法=写真・上=。客も椅子に座り、抹茶碗はテーブルの上に置かれる。まさに和洋折衷の風景だ。一説に、明治5年(1872)に西本願寺などを会場として京都博覧会が開かれ、裏千家が外国人を迎えるために考案したものとされる。文明開化といわれた激変する時代に対応するアイデアだったのだろう。

   その立礼でお茶を点てる様子を眺めていた。すると、お点前の女性が手に持った茶器がキラリと光った。何だろうと思い、茶道具の一覧を記した会記を見ると、茶器の作者は「SUZANNEZ ROSS」、作品名は「KINDRED SPIRITS」と記されていた。「あっ、スザーンさんの作品だ」と心でつぶやいた。茶器は粉の抹茶を入れる漆器で、茶杓で抹茶を碗に入れ、お湯を入れて点てる。茶席に欠かせない道具の一つ。 

   スザーンさんには9年前、金沢大学の社会人講座で講演をいただき、輪島市の工房も訪問したことがある。ロンドン生まれのスザーンさんが漆器と出会ったのは19歳の時、美術とデザインを学んでいて、ロンドンの博物館で見た漆器の美しさに魅せられた。 22歳で日本にやって来て、書道や生け花、着付けなど和の文化を学んだ。その後、漆器を学ぶために輪島に移住。1990年から輪島漆芸技術研修所で本格的に学んだ。

   輪島塗には100を超える作業工程があり、分業システムが確立されていて「輪島11職」とも称される。ところが、スザーンさんは木地造り以降の作業をすべて自分一人で手掛けている。漆器の魅力をこう話していた。「器も木で出来ていて生きている、漆も生きているし、私も生きているから、3つの生き物を合わせて一つ。 うまくいく日と、いかない日がある。でも、それが楽しい」

   茶器には蒔絵で秋雲とトンボが描かれていて、トンボの羽には螺鈿(らでん)が施されている=写真・下=。キラリと光ったのはこのトンボの羽だった。では、「KINDRED SPIRITS」をどう日本語に訳するか。「心の友」だろうか。手塩にかけて仕上げた作品が心を癒してくれる、それは友のようでもあり、漆器という「生き物」に込めた想いかもしれない。チャンスを見つけて本人にお会いして作品名について尋ねてみたい。

⇒8日(土)夜・金沢の天気   くもり   

★国連安保理は機能不全 付け込む弾道ミサイル

★国連安保理は機能不全 付け込む弾道ミサイル

   国連安保理が事実上の機能不全に陥っているが、きのう6日朝の北朝鮮の弾道ミサイルの発射はそれに付け込んだかのようなタイミングだった。国連安保理は、北朝鮮が4日に日本列島を通過する中距離弾道ミサイルを発射したことを受けて緊急会合を開いた。その会合の終了間際に、北朝鮮が日本海に向けて発射したのだ(6日付・NHKニュースWeb版)。

   会合そのものも、常任理事国である中国とロシアが「朝鮮半島周辺でアメリカが日本や韓国と軍事演習を行い緊張を高めた結果だ」と反発したことから、アメリカやヨーロッパの各国と一致して安保理決議違反であるとの声明を出すことはできなかった(同)。ロシアによるウクライナ侵攻も同様で、ロシアは常任理事国で拒否権があるため、安保理は法的な拘束力がある決議を何一つ成立させていない。

   そもそも、中国とロシアがなぜ国連安保理の常任理事国なのか。中国の場合。もともと常任理事国は第2次世界大戦の戦勝国である国民党の中華民国だった。それが中国共産党に追われ台湾に逃れる。アメリカのニクソン大統領の中華人民共和国への訪問が公表され、国際社会がにわかに動いた。1971年10月のいわゆる「アルバニア決議」によって、国連における中国代表権は中華人民共和国にあると可決され、中華民国は常任理事国の座から外され、国連を脱退することになる。代わって中国が国連に加盟し、台湾の常任理事国を引き継ぐことになった。では、常任理事国として相応しいとする正当性はどこにあったのだろうか。

   ロシアも同じだ。もともと、戦勝国であるソビエトが崩壊した。それを、ロシアが常任理事国として拒否権を持ったまま引き継いでいる。それが、ウクライナ侵攻やウクライナ4州併合という行為があっても国連安保理は機能不全、という現実問題を生み出している。

   解せないもう一つの国連の姿がある。国連憲章(第53、107条)の「敵国条項」だ。日本はいまだに第二次世界大戦の「敵国」だ。ある国を攻撃する場合は国連安保理の承認が必要だが、「敵国」に再侵略の企てがあるとみなせば先制攻撃が可能で、安保理の承認は不要という規定だ。北朝鮮やロシア、中国はいつでも日本に対する先制攻撃が可能なのだ。

   日本人にはある意味で「国連離れ」という現象が起きている。データは少々古いが、アメリカの世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」は2020年10月、国連の実績について先進14ヵ国で実施した世論調査を発表している。その中で、日本は国連に対する好感度は14ヵ国中で最も低く、「好感を持つ」29%、「好感を持たない」55%だった。

   アメリカでも国連に対する評価は低下している。ピュー・リサーチ・センターがことし6月に発表したアメリカ国内調査では、「国連の影響は弱まっている」が39%だった。「変わらない」が46%、「強まってる」が16%だった。ウクライナ侵攻を仕掛けたロシアに非難声明すら出せない国連安保理への憤り、そして無力感ではないだろうか。

(※写真は、国連安全保障理事会の会議室。バックの壁画はノルウェーの画家ペール・クロフが描いた「灰から飛び立つ不死鳥」=国連広報センター公式サイト)

⇒7日(金)夜・金沢の天気     くもり時々あめ