#コラム

☆豆を投げつけたい「ミサイルの鬼」「偽旗の鬼」

☆豆を投げつけたい「ミサイルの鬼」「偽旗の鬼」

   きょう2月3日は「節分」。季節を分けるとの意味があり、あす4日の「立春」の前触れだと小さいころに教わった。伝統行事として、冬をしのぎ暖かな春の訪れを前に、邪気を払う「節分豆まき」が行われる。「鬼は外、福は内」と。

   「鬼は外」と叫びたいのは、頻繁に日本海に向けて弾道ミサイルを発射する北朝鮮だ。新年早々のことし元日にも弾道ミサイルを発射し、朝鮮半島東側の日本のEEZ外に落下させている。去年は37回、計70発を日本海に向け発射。2017年3月6日に能登半島の輪島市の北200㌔、去年11月18日に北海道・渡島大島の西約200㌔のEEZ内に着弾させている。朝鮮労働党機関紙「労働新聞」(ことし1月1日付・Web版)によると、党中央委員会総会で、金正恩総書記は演説し、戦術核兵器を大量生産する必要性を述べ、「核弾頭の保有量を幾何級数的に増やす」と方針を示している。

   ロシアのプーチン大統領がウクライナのゼレンスキー政権を「ネオナチ」と称して偽旗を掲げて去年2月24日に侵攻を始めてまもなく1年になる。その後の4月4日、ロシアのセルゲイ・ミロノフ下院副議長がロシアのオンラインメディアで「どんな国でも、隣国に対して権利を主張することはできる」「多くの専門家によると、ロシアは北海道に対してあらゆる権利を持っている」と述べた。同じ4月20日、ロシアは北部アルハンゲリスク州にあるプレセツク宇宙基地の発射場から新型のICBM「サルマト」を発射し、およそ5700㌔東のカムチャツカ半島にあるクーラ試験場の目標に命中させている。プーチン大統領が「北海道の権利の奪還」という偽旗を掲げて動き、プレセツク宇宙基地の発射場に再びICBMを構え、日本に向けた場合、反撃能力は可能なのだろうか。

   豆を投げてみたい「鬼」がいる。ドイツやオーストリアなどヨーロッパの一部の地域で伝承されている、「クランプス(Krampus)」。頭に角が生え、毛むくじゃらの姿は荒々しい山羊と悪魔を組み合わせたとされ、日本の伝承行事「ナマハゲ」や「アマメハギ」の鬼面より迫力と威圧感がある。家庭を回って、親の言うことを聞かない悪い子に警告して罰を与えると信じられている。欧州の子どもたちに豆を持たせて、「鬼は外」とクランプスに投げつけてはどうか。(※写真は、ドイツ・ミュヘン市の公式ホームページ「Krampus Run around the Munich Christmas Market」より)

⇒3日(金)午後・金沢の天気   くもり

★歴史と記憶、未来を紡ぐ能登半島「さいはての芸術祭」

★歴史と記憶、未来を紡ぐ能登半島「さいはての芸術祭」

  前回ブログの続き。能登半島の尖端に位置する珠洲市が力を入れて取り組んでいるイベントがある。それは「奥能登国際芸術祭」。ことしは第3回展となり、9月2日から10月22日まで51日間の予定で開催される。日本海に突き出た半島の尖端の芸術祭のキャッチフレーズは「最涯(さいはて)の芸術祭、美術の最先端」である。

   総合プロデューサーの北川フラム氏は「さいはてこそが最先端である」という理念と発想を芸術祭で問いかけている。かつて江戸時代の北前船の全盛期では、能登半島は海の物流によって栄えたが、近代に入り交通体系が水運から陸運中心へとシフトしたことで、「さいはて」の地となった。そこで、北川氏はアーチストたちと岬や断崖絶壁、そして鉄道の跡地や空き家など忘れ去られた場所に赴き、過疎地における芸術の可能性と潜在力を引き出してきた。

   2017年の作品の一つ、『神話の続き』(作者:深沢孝史)。珠洲の海岸に創作された「鳥居」である=写真・上=。かつて能登には寄神(よりがみ)信仰があった。大陸からさまざまな文明がもたらされた時代、海から漂着した仏像や仏具などは神社にご神体として祀られ、漂着神となった。神は水平線の向こうからやってくるという土着の信仰だ。時代は流れ、現代の「寄神」は大陸からもたらされる大量の漂着物(廃棄物)なのである。作者はその漂着物を地元の人たちといっしょに拾い集めて、作品を創った。文明批評を芸術として表現した。

         新型コロナウイルス感染拡大で一年延期となった2021年の第2回展で、北川氏は家仕舞いが始まった市内65軒の家々から1600点もの民具を集めて、モノが主役の博物館と劇場が一体化した劇場型博物館『スズ・シアター・ミュージアム』を造った。8組のアーティストが民具を活用して、「空間芸術」として展示している。

   江戸、明治、大正、昭和など各時代の文物を珠洲じゅうから集めたとあって、中には博物館として目を見張る骨董もある。「海揚がりの珠洲焼」がそれ=写真・下、「奥能登国際芸術祭2020+」公式ホームページより=。珠洲は室町時代にかけて中世日本を代表する焼き物の産地だった。各地へ船で運ぶ際に船が難破。海底に眠っていた壺やかめが漁船の底引き網に引っ掛かり、幻の古陶が時を超えて揚がってくることがある。まるで上質なタイムカプセルに触れるような心癒される作品だ。

   第3回展のことしはどのような作品にお目にかかれるのか。「より深く地域の潜在力を掘り起こし、諸外国にも珠洲の魅力を伝えていきたい」と北川氏は抱負を語っている(2023年度版パンフから引用)。インバウンド観光を意識した何か仕掛けがあるのかもしれない。

⇒2日(木)夜・金沢の天気   くもり

☆「SDGsネイティブ」を育てる能登半島の最先端

☆「SDGsネイティブ」を育てる能登半島の最先端

   能登半島の尖端に位置する珠洲市が内閣府の「SDGs未来都市」に選定されたのは2018年6月だった。SDGsは国連が進める持続可能な開発目標で、社会課題の解決目標として「誰一人取り残さない」という考えを込めている。先日、SDGsの取り組みについて同市の担当者から話を聞く機会を得た。採択から5年目、その成果は。

   SDGs未来都市の認定を受けて、「能登SDGsラボ」を開設した。大学の研究者や、地元の経済界や環境団体(NPOなど)、地域づくり団体が加わっている。取り組みの話を聞いていて、「時代の最先端」と感じたのは、SDGsを取り込んだ学校教育だった。市内の9つの全小学校は「生き物観察会」を実施しており、児童たちは里山里海の生物多様性を実地で学んでいる。そのサポートをSDGsラボに加わっている自然生態学の研究者や環境系NPO、地域住民らが学校の教員とプログラムを組んで行っている。

   その生き物観察会をベースに「SDGs学習」を小学校低学年の段階から行っている。学習に使われているテキストを見せてもらった。SDGsラボが作成した『みんなの未来のためにできること』。SDGsの基本となっている17の持続可能な開発目標がイラストで分かりやすく紹介されている=写真・上=。SDGsラボのメンバーでもあり、金沢市に研究拠点を置く国連大学OUIKの研究員がオランダの漫画家マルフレート・デ・ヘール氏の作品『地球と17のゴール』をネットを見つけ、メールで本人から日本語訳と出版の許可の了解を取り付けた。もちろん、販売目的ではない。

   さらにテキスト『みんなの未来のためにできること』に特徴的なのは、市内9つの小学校がそれぞれに「すず市 SDGs こども せん言」=写真・下=を掲げていることだ。ある小学校のテーマはゴール7「エネルギーをみんなに そしてクリーン」で、児童たちの「せん言」は「電気のムダ使いをしないようにします」「電気を使えることに感謝します」「電気を生み出す自然を大切にします」を掲げ、「テレビを見ない時はときは消す」などと具体的なアクションを記している。

   こうした小学校低学年から始めるSDGs学習は高校生になるまで続く。このため、小学校から高校の教員が定期的に会合を開いて、授業の進め方などについて意見交換を行い、さらに地域と連携するSDGs学習を行っている。

   こうした地域と一体性のあるSDGsプログラムが面白い展開につながった事例がある。高校の同級生だった女子生徒がそれぞれ大学生になり、地元のカボチャ生産農家が規格外品の捨て場などに困っていることを知り、食品ロスと地域課題の解決のためにと、カボチャの種から抽出した油を天然由来の植物オイルと調合してシードオイルの化粧品の開発を手がけている。2人は高校時代に地元の上場企業のインターンシップに参加しアドバイスを受け、去年4月に会社を立ち上げている。

   「SDGsネイティブ」を育てる珠洲市の5年目の取り組みである。地域経済は多様な人材の集合体でもある。地域資源を活用したコミュニティビジネスや地域課題を解決するソーシャルビジネスの芽がこの地で大きく膨らみつつある。

⇒1日(水)夜・金沢の天気    くもり

★能登の断水に支援 元旦プロスレ知事に忠告

★能登の断水に支援 元旦プロスレ知事に忠告

   前回のブログの続き。寒波の影響で、石川県の能登地方を中心に水道管の凍結や破裂による断水が相次いでいる。NHKニュースWeb版(29日付)によると、一部は復旧したのもの4つの市と町のあわせて9000世帯余りで断水が続いている。全面復旧の見通しはまだ立っていない。

   きょう所用で、220世帯で断水が続く宝達志水町に立ち寄った。同町では空き家320戸について調査しているが、これまでに10数ヵ所で漏水が見つかり、水道の元栓を雪中で探して閉めるなどを措置を行っている。町の施設に「応急給水所」が設けられていた=写真・上=。住民が次々と訪れて、ビニールパックに入った水を受け取っていた。パックには「非常用飲料水 金沢市企業局」と書かれてあるで、金沢市からの支援物資だ。金沢市民の一人としてうれしくなり写真に収めた=写真・中=。

   同町の公式サイトによると、あす30日からエリアを区切って試験通水し、給水再開の準備を進めるようだ。ただ、水道管の洗浄をしながら作業で、試験通水であっても濁り水が発生するので、「トイレには使用できますが、飲めません」と呼びかけている。

   「支援」の次は「忠告」の話。石川県の馳浩知事の後援会が主催する新年互例会が28日、金沢市内で開かれ、馳氏は招いた自民党の萩生田光一政調会長との対談に臨んだ。地元メディア各社のニュースによると、対談は40分にわたって行われ、冒頭で萩生田氏は「会場にリングが作ってあるのではないかと心配した。もうプロレスをやっている場合じゃないですよ」と、馳氏が元日にプロレスリングに上がり参戦したことに言及した。

   去年3月の知事選では、当時経産大臣だった萩生田氏が応援に駆けてつけていて、馳氏は「萩生田大臣は文教政策をともに磨いた同志」と昵懇の仲であることを強調していた。その萩生田氏から「プロレスをやっている場合じゃない」と忠告された。会談後、記者団にも萩生田氏は「地方自治に専念し、国政とのパイプを大いに使ってパワフルに頑張っていただきたい」と期待を述べた。

   もう一つ。当初、新年互礼会は報道陣に完全非公開とする異例の対応がとられていた。しかし、萩生田氏の出席に伴う自民党側からの申し出により馳氏が態度を一変させ、冒頭のみ取材可能となったようだ。馳氏はメディアに対して不信を募らせているのかもしれない。

⇒29日(日)夜・金沢の天気    あめ

☆能登の断水1万戸で自衛隊派遣 過疎化問題の深刻度

☆能登の断水1万戸で自衛隊派遣 過疎化問題の深刻度

   10年に一度という記録的な寒波の影響で石川県内では生活インフラに重大な障害が起きている。メディア各社の報道によると。能登方面の5つの市と町で水道管の凍結や破裂が相次いでいて、1万戸世帯余りが断水となっている(28日付・NHKニュースWeb版)。

   マイナス気温が連日続くと、水道管の中の水が凍結し膨張することで水道管が部分的に破裂。気温上昇によって氷が水分となって、破損個所から漏水が起きる。漏水が広範囲で起きると、上水道の水を蓄えておく「配水池」の水が急減して、今度は地域全体が断水になる。冬場の断水はよく起きるが1万戸余りにも及ぶと、これは広域的な災害だ。

   県庁は自衛隊に災害派遣の要請を行った。陸上自衛隊金沢駐屯地の公式ツイッターに掲載されている=写真=。「 陸上自衛隊第10師団第14普通科連隊は、令和5年1月27日(金)21時40分、石川県知事の災害派遣要請を受理し、輪島市で発生した水道管凍結に伴う給水支援のため、28日(土)午前5時30分、部隊を派遣しました」。たまたま、陸上自衛隊の災害救助の動き調べようとネットで検索して、自衛隊がツイッターを使っていることを知った次第。おそらく若手の隊員獲得のためのツールの一つなのだろう。

   断水は輪島市だけでなく、かほく市や羽咋市、七尾市、宝達志水町など能登方面に集中している。2018年1月にも1万世帯におよぶ断水が能登を中心にあった。なぜ、能登で断水が問題となるのか。指摘されるのは空き家での断水問題だ。能登の場合、集落で共同運営している配水池から水道水をひく場合が多い。空き家で水道管が破裂しても気付かないため、漏水が続き、配水池の供給が追いつかなくなったことで被害が拡大するのだ。

   水道業者がメンテに回っても、水道管が雪に埋もれていると漏水している箇所が確認できないという問題もあり復旧は簡単ではない。さらに、水道管として使われる塩化ビニール管は最近のものは氷の膨張に強いものの、築年数を経ている空き家では旧型が多く、破損しやすいことも指摘されている。

   断水被害が起きないようにするために、行政は住民に対して水道の蛇口から少し水を出し放っぱなしにして水道管の凍結や破裂を防ぐよう有線放送などで呼び掛けているが、空き家ではこうした対策が取られないという現状がある。報道によると、同じ日本海の新潟県佐渡島でも全2万4千世帯のうち5割以上の1万3000世帯で断水や減水が起きている。断水問題はまさに過疎化問題なのだ。

⇒28日(土)夜・金沢の天気     ゆき

★寒々しい森発言 ウクライナ侵攻で岸田批判のそもそも

★寒々しい森発言 ウクライナ侵攻で岸田批判のそもそも

   国連憲章違反であるにもかかわらず偽旗を掲げてウクライナに侵攻し、国連安保理を拒否権で機能不全に落とし込んでいるロシアに対して世界の多くの国々が疑心暗鬼になっている。これまで中立を掲げてきた北欧のスウェーデンやフィンランドでさえ、NATOの加盟を申請している。ウクライナには負けてほしくないという世界の動向が顕著になっている。

          NHKニュースWeb版(25日付)によると、アメリカのバイデン大統領は25日、ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナに対して、アメリカの主力戦車「エイブラムス」31両を供与すると発表した。また、ドイツ政府も、ドイツ製の戦車「レオパルト2」を供与すると発表した。レオパルト2を保有してポーランドやフィンランドなどもウクライナへの戦車供与を表明した。

   現在ウクライナ側が地上戦で使っている戦車は旧ソ連製で、消耗が激しく、砲弾も枯渇気味という。今回、アメリカとドイツが供与する戦車は火砲や機動力面で性能が高く、弾薬補給や修理を継続的に受けられるなどメリットがある(26日付・読売新聞)。日本は軍事支援を行っていないが、越冬のための発電機262台を供与するなど人道や復旧・復興、財政支援を中心に13億㌦の支援を表明している(総理官邸公式サイト「日本はウクライナと共にあります」)。

   こうした欧米や日本のウクライナ支援の動きと裏腹に、気になったのが森喜朗元総理の発言だ。メディア各社の報道によると、東京都内で25日に「日印協会創立120周年記念レセプション」があった。会長に就任した菅義偉前総理があいさつ。岸田総理も来場してあいさつなどして10分ほどで帰った。その後、あいさつに立った森氏はウクライナを支援する日本政府の対応を疑問視し、「こんなにウクライナに力を入れてしまって良いのか。ロシアが負けることは、まず考えられない」と述べた。さらに、「せっかく(日露関係を)積み立てて、ここまで来ている」として、ウクライナに肩入れしすぎれば日露関係が崩壊しかねないとの認識を示した(25日付・共同通信Web版)。

   さらに、「ロシアが負けるってことはまず考えられない。そういう事態になればもっと大変なことが起きる。そういうときに日本がやっぱり大事な役割をしなきゃならん。それが日本の仕事だと思います」(同・朝日新聞Web版)

   森氏の発言は地元・石川県では理解できないことでもない。森氏の父親の故・茂喜氏はロシアのソ連時代に交流関係を築いた先駆者で、町長を務めた根上町(現・能美市)はシェレホフ市と姉妹都市関係を結んだ。茂喜氏の遺言で同市に墓が造られ、森氏が総理だった2001年3月にはイルクーツクで日露首脳会談を行い、当時のプーチン大統領とともに墓参している。父の遺志を引き継ぎ、ロシアとは浅からぬ縁がある森氏はプーチン氏と昵懇の仲と評されている。

   なので、ウクライナ侵攻が勃発したとき、森氏はプーチン大統領を諫(いさ)めに行くべきではないかと地元ではささやかれていた。それもなく、今ごろになって立ち去る岸田総理の背中に向けて石を投げるような今回の発言だ。そして、もしロシアが敗北することになれば、助けるのが「日本の仕事」とまで述べている。実に違和感がある。寒々しい森発言、また物議かもすかもしれない。

⇒27日(金)午前・金沢の天気    くもり   

☆強烈寒波がもたらす「絶対零度下の生活」と「スタック」

☆強烈寒波がもたらす「絶対零度下の生活」と「スタック」

   「最強寒波  県内襲来」「強烈寒波 1万戸停電」。朝刊各紙の見出しは派手に踊っている。けさ(午前8時ごろ)の気温はマイナス3度と寒いが、自宅周囲の積雪を物差しで測ってみると15㌢ほどだ。金沢に住む人たちは朝の雪の具合を見て、「大したことない。車が出れる。よかった」とひと安心したのではないか。金沢市内の小中学校は、大雪予想のため臨時休校となった。子どもたちは「雪で学校休み、もうけた」と喜んでいるかもしれない。

            ただ、「10年に一度の最強寒波」とあって記録が更新されている。金沢市の気温は午前0時過ぎにマイナス5.1度を観測し、最低気温が1997年以来26年ぶりにマイナス5度を下回るなど記録的な冷え込みになった。最高気温も氷点下の予報だ。かつて読んだ小説『絶対零度下の鋼(はがね)』(作者:夏之炎)を思い出した。小説の中身はほとんど記憶にないが、「絶対零度」をネットで検索すると、絶対零度はマイナス273.15度。東京工業大学の熱力学の研究者が発見した下限温度。熱振動(原子の振動)が小さくなり、エネルギーが最低になった状態、つまり、原子の振動が完全に止まった状態の温度のこと。

   マイナス273度とまではいかなくても、気温マイナス3度は震えるくらい寒い。まさに、生活の中の絶対零度下だ。そのマイナス気温で心配なのが、車の「スタック」現象が起こりやすいことだ。英語で「stuck」、「立ち往生」のことだ。積雪の多い道路では、道路の雪のわだちにタイヤがはまり、前にも後ろにも進めなくなる。わだちでの立ち往生は冬場では当たり前の光景だったが、「スタック」という言葉が3年ほど前から出始め、意外な効果もあった。

   この言葉が報道などで用いられるようになると、金沢市の除雪作業本部では2021年12月から除雪計画を見直し、それまで15㌢以上の積雪で除雪車を出動させていたが、10㌢以上積もれば除雪作業を行うことにした。市内幹線の雪道の安全度は確実に高まった。(※写真は、車道を除雪するショベルカー。大雪の道路では車の立ち往生が頻発する=金沢市内)

 

⇒25日(水)夜・金沢の天気    くもり時々ゆき

★寒波襲来に雪国は耐える 「冬来たりなば春遠からじ」

★寒波襲来に雪国は耐える 「冬来たりなば春遠からじ」

   「10年に一度のレベルと言われている強烈な寒波が襲来し、きょう日本海側では大雪による災害に警戒が必要です」とテレビのニュースや情報番組では何度も繰り返されている。少々聞き飽きた感がある。雪国に住んでいると、これが当たり前だからだ。寒波は2波、3波とやってくる。強烈な寒波は昔から「冬将軍」と称して、メディアに言われなくても身構える。

   メディアがしつこく報道するのは、日本海側の大雪もさることながら、太平洋側にも雪雲が流れ首都圏などでの積雪が予想されるからだろう。日ごろ雪が降らない都市では少しの雪でも、生活を直撃する。スノータイヤを履いていない車はスリップ事故が起きる。電気や水道などの生活インフラにダメージが起きる。さらに、配送など物流が滞る。

   今回の寒波で身の回りのことを言えば、あす25日に出席予定だった金沢での会議が延期になった。きょう午後4時ごろ、風雪の中で車を運転すると、マイナス3度となっていた。そのせいで、フロントガラスやバックミラーになどに雪がこびりついて運転に危なさを感じたので=写真=、ほどなくして自宅に引き返した。

   北陸ではこうした強烈な寒波に備えて、乗用車をスノ-タイヤに履き替え、庭木には雪吊りを施してリスクに備えている。ただ、雪国で慣れているとはいえ、屋根雪下ろしは滑って落ちることもあり緊張する。屋根に1㍍余りも雪が積もると、天上からミシッ、ミシッと音がすることもあり、これも緊張する。

   夕方のテレビニュースによると、ヤマト運輸が猛烈な吹雪により高速道路の通行止めなどが見込まれることから、石川県など北陸3県と新潟県で荷物の配送や集荷を停止した。また、石川県内のほとんどの自治体で、あす25日は小中学校の臨時休校を決め、多くの県立高校も臨時休校を予定している。

   金沢地方気象台は雪のピークについて24日夜から25日朝にかけてと予想している。寒波襲来、冬本番だ。「冬来たりなば春遠からじ」(イギリスの詩人シェリー)の言葉を思い起こしながら、雪国に人々はこの季節を耐える。

⇒24日(火)夜・金沢の天気    ふぶき

☆身を切らずして、安易に増税と言うなかれ

☆身を切らずして、安易に増税と言うなかれ

   ことしの政権の行く末を占うような世論調査が次々と出ている。テレビ朝日系ANNの1月の世論調査(今月21、22日実施)によると、岸田内閣の支持率が政権発足以来、最も低い28.1%となった。前回調査(12月17、18日)より3ポイントの下落。不支持率は47.5%で前回より4.2ポイント上昇した。防衛費の財源として段階的に増税する方針については「支持しない」が58%、「支持する」が30%となっている。    

   朝日新聞社が実施した1月の世論調査(今月21、22日)によると、内閣支持率は35%だった。前回調査(12月17、18日)は31%で岸田内閣発足以来最低を記録したが、今回は4ポイント上昇しやや持ち直した。不支持は52%で前回より5ポイント減少した。防衛費を増やすために、およそ1兆円を増税する方針については、「賛成」が24%、「反対」が71%だった。

   産経新聞社とフジテレビ系FNNの合同世論調査(今月21、22日)によると、内閣支持率は37.7%で、前回調査(12月17、18日)より0.7ポイント増だった。7ヵ月連続で下落していた内閣支持率が下げ止まった。不支持率は前回比0.6ポイント増の58.1%だった。政府が防衛力強化のため防衛費を大幅に増額する方針を決めたことについては「賛成」が50.7%で、「反対」42.8%を上回ったものの、必要な財源を法人税や所得税、たばこ税を段階的に増税して賄うことについては「反対」が67.3%を占め、「賛成」28.9%だった。

   時事通信の世論調査(12月13-16日)によると、内閣支持率は26.5%で、前回調査(12月9-12日)より2.7ポイント下落。政権維持の「危険水域」とされる20%台は4ヵ月連続となった。不支持率は43.6%で前回より1.1ポイント上昇した。防衛力強化に伴う増税方針の表明や一段と進む物価高などが影響したとみられる。

   きょう午後2時からのNHKの国会中継で、岸田総理は施政方針演説を行った=写真、総理官邸公式サイトより=。去年12月、安保関連3文書を改定し、「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有を宣言。新年度から5年間の防衛費を総額43兆円と1.5倍にし、増税で年1兆円強を捻出する方針も決めている。この増税が内閣支持率の低迷の要因になっていることは上記の世論調査の数字でも見て取れる。

   国会議員には毎月給与が129万円、そして300万円以上のボーナスが年に2回支給される。「第二の財布」もある。給与とは別に月額100万円の「調査研究広報滞在費」が支給される。領収書は不要で、使途報告や残金返還の義務はない。さらに、「立法事務費」では所属の党を通じて議員一人当たり65万円。これも領収書の提出や使途報告の必要はない。国会で寝ていても、欠席しても年間4200万円余りが支給される。

   岸田総理がこの議員の第二、第三の財布をカットすると宣言し、増税に踏み込むのであれば国民の理解が得られ、内閣支持率も上がるだろう。身を切らずして、安易に増税と言うなかれ。

⇒23日(月)夜・金沢の天気    はれ

★魚醤「いしる・いしり」とイタリア料理のマリアージュ

★魚醤「いしる・いしり」とイタリア料理のマリアージュ

   前回ブログの続き。魚醤はイタリア料理にも欠かせない。とくにパスタとの相性がいい。ペペロンチーノのようにシンプルなオイルパスタの仕上げに数滴添えるだけで天然の旨みというものが加わるから不思議だ。魚醤は隠し味、あるいは名脇役のような調味料なのだ。

   能登の「いしる・いしり」加工業者からかつて聞いた話によると、イタリアの魚醤には2つのタイプがある。それは、「ガルム」と「コラトゥーラ」と呼ばれる。ガルムは、アジやサバ、イワシ、マグロなどの魚をツボに塩と共に入れて発酵させてつくる。熟成期間は20日ほどと短めのようだ。コラトゥーラは、アンチョビの原料でもあるカタクチイワシのみでつくる魚醤で、木の桶に頭と内臓を取り除いて塩を入れて発酵させる。9ヵ月ほど熟成させる。

   魚の内臓を素材として使うということで、ガルムは能登のいしる・いしりと製造方法が近い。能登の加工業者によると、イタリアのガルム加工業者はスペインなどからも魚醤を取り寄せて、加工販売している。そして驚くことに、能登産いしる・いしりも原料を輸出していて、イタリアのガルムとして世界に販売されているそうだ。

   いしる・いしりは能登の郷土料理の隠し味というイメージだったが、オリーブオイルと混ぜてサラダのドレッシングにしたり、パスタはもちろん、魚や肉料理の万能調味料としてグローバルにイタリア料理の隠し味として活用されているようだ。

   そうした能登のいしる・いしりなど発酵食品を活かして、「能登イタリアン」の料理を出すのが、能登町にある民宿「ふらっと」。シェフのベンジャミン・フラットさんはかつてオーストラリアのシドニーのイタリアンレストランでヘッドシェフ(料理長)をしていた。オーストラリアで日本語教師をしていた妻の船下智香子さんと知り合い結婚し、智香子さんの実家がある能登町で民宿を開業した。

   妻の父親がイカの内臓でつくる「いしり」の加工業者だったこともあり、フラットさんはイタリアンと能登の発酵食のマリアージュにのめり込んでいく。一度民宿に訪れた時に、いしりとイカスミを使った手打ちパスタをいただいた。能登で味わう絶品のイタリアンだ。能登の豊かな自然でつくられる「いしる・いしり」と、それに魅了されてつくられるイタリアンの話は尽きない。

⇒22日(日)夜・金沢の天気    はれ