#コラム

★ デジタル広告で横行する詐欺、ブランド毀損とは

★ デジタル広告で横行する詐欺、ブランド毀損とは

   このところネット上での詐欺が横行している。パソコンやスマホに、「ネット銀行」などを装って「不正ログインの確認」や、「銀行取引の制限」、さらに「振込の失敗」を知らせるメ-ルが入って来る。偽のサイトに誘導して、IDやパスワードを盗み取る、いわゆる「フィッシング詐欺」だ。

   以前、Eメールで「VISAカード 重要なお知らせ」が届いた。「VISAカード利用いただき、ありがとうございます。このたび、ご本人様のご利用かどうかを確認させていただきたいお取引がありましたので、誠に勝手ながら、カードのご利用を一部制限させていただき、ご連絡させていただきました」と。さらに、「ご回答をいただけない場合、カードのご利用制限が継続されることもございますので、予めご了承下さい」。お願いと脅しの文言を織りまぜて、暗証番号などを入力させる魂胆だ。手が込んでいる。

   「月刊ニューメディア」編集部ゼネラルエディターの吉井勇氏から届いたメールマガジン(25日付)によると、インターネットでのデジタル広告にも深刻な事態が起きているという。日本の広告市場をリードする企業が集まる「日本アドバタイザーズ協会」(JAA)が24日に開催したオンラインセミナー「デジタル広告の課題 広告主が知るべきこと、取り組むべきこと」を要約したものだ。以下、メールマガジンを引用。   

   デジタル広告業界で不正な広告取り引きとして問題となっているが、実際には人が見ていないのに、ボットなどの自動プログラムを使って、表示回数やクリック数を増加させ、不正に広告料をだましとる「アドフラウド」だ。もう一つが、「ブランドセーフティ」という問題で、広告の配信表示されるサイトが、例えばエロサイトであったり、暴力的なシーンのサイトであったりと、広告主の商品イメージを貶めるようなサイトに運用型で自動配信されているものがある。

   こうしたデジタル広告の詐欺被害について、日本経済新聞はことし3月5日付で「広告、閲覧水増し詐欺拡大 国内被害は昨年1300億円」の見出しで記事を掲載している。また、広告ではないものの、マンガの違法ダウンロードサイトによって正当な有料サイトの被害額は推定で約2兆円という数字もある。さらに問題なのは、この違法なダウンロードサイトに運用型の出稿で一般広告主の広告料が流れ込んでいることだ。

   マスメディア広告と違ってデジタル広告では、「広告がどこに出ているかわからない」ことや「広告がどのように出ているかわからない」、「どのプレーヤーがどう関わっているかわからない」という3つの「わからない」が闇を生んでいると言われる。そのためにJAAは他の広告協会などと協力して「デジタル広告品質認証機構」(略称:JICDAQ)を設立し、広告詐欺、ブランド毀損などへの対策に動き出している。

   今回のメールマガジンで、デジタル広告が社会的な犯罪構造に巻き込まれている現状の一端が見えてきた。

⇒26日(水)夜・金沢の天気   くもり

☆韓国の尹大統領に感じる「実務家」田中角栄のイメージ

☆韓国の尹大統領に感じる「実務家」田中角栄のイメージ

   韓国の尹錫悦大統領がワシントンポストの単独インタビューで日韓関係について触れ、「欧州は過去100年間に数度の戦争を経験したが、それでも戦争を行った国は、未来に向けて協力していく方法を見つけた」「100年前の歴史のために日本がひざまずいて許しを乞うべきだという考え方を受け入れることはできない」と発言した。メディア各社も記事を引用するカタチで報じている(※写真は、4月24日付・ニューズウイーク日本語Web版)。

   尹大統領は日本との未来志向の外交関係を改めて述べたことになる。ことし3月16日、大統領として初来日し、岸田総理と首脳会談に臨み、トップが互いの国を訪問する「シャトル外交」を復活させることや、ミサイル発射を繰り返す北朝鮮に対して日米韓の連携を強化すること、経済安全保障に関する協議体の創設、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の正常化、そして、拉致問題について協力を約束するなど前向きな姿勢を示した。

   尹大統領の日本との未来志向の関係づくりは一貫していて、韓国の閣議(3月21日)で言及した内容からも読み取れる。イギリスのウィンストン・チャーチル首相の言葉を引用して、「もし、われわれが現在と過去を競わせたら、必ず未来を逃すことになるだろう」と述べた。そして、「私は去年5月の大統領就任以来、存在自体、不透明になってしまった韓日関係の正常化の方策について悩んできた。まるで出口のない迷路の中に閉じ込められた気分だった。しかし、手をこまねいてただ見ているわけにはいかなかった。日増しに激しくなる米中競争、サプライチェーンの危機、北の核脅威の高度化など、韓国を取り巻く複合的な危機の中で韓日協力の必要性はさらに高まっている」(3月22日付・NHKニュースWeb版)

   「私も、目の前の政治的利益のための楽な道を選び過去最悪の韓日関係を放置する大統領になる可能性もあった。しかし、昨今の厳しい国際情勢を後回しにして、私までもが敵対的ナショナリズムと反日感情を刺激して国内政治に利用しようとするなら、大統領としての責務を裏切ることになると思った」(同)

   上記の尹大統領の言葉からは「親日家」という言葉は浮かんでこない。むしろ、「実務家」という言葉がふさわしい。日本の歴代の総理にたとえるならば、就任わずか85日で日中国交回復をなし遂げた田中角栄のようなイメージだ。

⇒25日(火)夜・金沢の天気     あめ

★岸田総理とメディアの「解散・総選挙」めぐる緊張感

★岸田総理とメディアの「解散・総選挙」めぐる緊張感

   前回ブログの続き。衆参5つの補選で自民党候補4人が勝利して一夜明けた24日、岸田総理は報道陣に囲まれ、「この勢いで解散・総選挙を近く実施されますか」などと質問を受けた。岸田氏は「重要政策を一つ一つ前進させ、結果を出すことに尽きる。いま、解散・総選挙は考えていない」と答えていた(24日付・NHKニュース)。

   メディアが尋ねた「解散・総選挙を近く実施」は、5月に開催する「G7広島サミット」を乗り切り、6月に「異次元の少子化対策」などの「骨太の方針」をまとめて提示し、6月21日の国会会期末までには解散という段取りか、と念押ししたのだろう。衆議員の任期満了は2025年10月30日なので、本来ならば同年10月に総選挙だろうが、自民党の党総裁任期は20249月に満了するので、それまでに政権基盤を固めておく必要がある。それは総選挙勝利という実績をづくりだ。

   メディアはこれまで何度も「解散・総選挙は近く実施されますか」と質問を向けてきた。岸田総理が3月21日にウクライナを電撃訪問し、G7広島サミットの議長国としての存在感をアピールしたときもそうだった。

   メディアがこのような質問をするのは、世論調査の内閣支持が上がっているという背景もある。読売新聞の4月の世論調査(14-16日)で、内閣支持率は47%に上り、前月調査より5ポイントも上昇。2022年9月以来、7ヵ月ぶりに支持が不支持を上回った。テレビ朝日系ANNの4月調査(15、16日)も前月から10.2ポイントも上昇しての45.3%だった。G7広島サミットを無事乗り切れば、さらには内閣支持率は「うなぎのぼり」に上昇する、かもしれない。

   総選挙は勝てると判断したときに打つ。前回は2021年10月の内閣発足から10日後という戦後最短で衆院を解散し、総選挙に勝利して政権基盤を確保した。メディア各社はこの岸氏の「サプライズ解散」を体感しているだけに、オウム返しのように「解散・総選挙は近く実施されますか」と尋ね、岸田氏は「いま、解散・総選挙は考えていない」と繰り返す。岸田総理とメディアの緊張関係でもある。

⇒24日(月)夜・金沢の天気    はれ

☆衆参補選で問われたこと、選挙は変わるか

☆衆参補選で問われたこと、選挙は変わるか

   衆参院5つの選挙区で補欠選挙(衆院:千葉5区、和歌山1区、山口2区、同4区、参院:大分)、そして統一地方選の投開票がきょう行われた。午後8時、投票が終了するやいなやテレビの「当選確実」の速報が出たのは山口4区の衆院補選だった。安倍元総理の死去に伴い、安倍氏の後継として立った自民新人の吉田真次氏が立ち、本来ならば「弔い選挙」というイメージなのだが、立憲民主党から有田芳生氏が立候補したことで、「統一教会問題を問う選挙」でもあった。

   何しろ安倍氏と旧統一教会との関わりが襲撃事件の引き金となり、その後、連日のようにワイドショーなどでは統一教会による多額献金問題がクローズアップされ、旧統一教会問題に詳しいジャーナリストの有田氏が出演していた。選挙の結果は吉田氏が5万1961票で初当選、有田氏は2万5595票だった。得票率にして、63.5%と31.3%だった。NHKなどの報道によると、安倍元総理の昭恵夫人が候補者選びから選挙戦にも関わるなど、後継者の吉田氏を全面支援したことで、「弔い選挙」となり他の候補を寄せ付けなかったのだろう。

   ただ、山口県選管の発表によると、山口4区の確定投票率は34.71%で前回選挙(2021年10月31日)を13.93ポイントも下回り、過去最低となっている。また、前回、安倍氏は8万票余りを獲得していた。数字だけ眺めると、「弔い選挙」とは言え、山口4区の有権者はさめていたのではないだろうか。むしろ、有田氏が31%の得票率を得たことが気にかかる。落選の報道を受けて、有田氏は「保守王国、自民党王国と戦後ずっと言われてきた山口4区において、それが溶けはじめてきていると本当に確信を持っている」と述べている(23日付・産経新聞Web版)。

   今回の衆参の補選で目立ったのは、女性候補の躍進ではないだろうか。5人の当選者のうち、3人が女性だった。統一地方選挙が行われた石川県でも、市議選で無投票を含めて19人が当選してる。金沢市議選(定数38)では7人が当選を果たしている。これから選挙の様相が変わりそうムードを感じた選挙だった。

⇒23日(日)夜・金沢の天気    はれ

★五輪汚職の初判決で読む 大会組織委の機能不全ぶり

★五輪汚職の初判決で読む 大会組織委の機能不全ぶり

   この判決からはオリンピック組織委員会そものが機能不全の状態だったことが浮かび上がってくる。東京オリンピック・パラリンピックを巡る汚職事件で、紳士服大手「AOKIホールディングス」前会長の青木拡憲被告が大会組織委員会の高橋治之元理事に大会スポンサー契約をめぐり、2800万円を提供したとして贈賄罪が問われていた裁判。東京地裁はきのう21日、懲役二年六月、執行猶予四年(求刑懲役二年六月)の判決を言い渡した。青木被告以外には元副会長ら2人も有罪判決が下された。まさに、「紳士服の青木」に泥を塗ったカタチだ。

   一連の汚職事件では、「みなし公務員」だった高橋元理事に対する賄賂の総額はAOKIホールディングスや出版社「KADOKAWA」、広告会社など5ルートから1億9800円に及んでいる。収賄側は高橋被告を含む3人、贈賄側は12人が起訴されていて、今回は初めて判決。

   メディア各社の報道によれば、電通元専務の高橋元理事はスポンサー選定にかなりの権限を持っていた。逆に言えば、ほかにスポンサー集めのプロがおらず、大会組織委としては、実績がある高橋元理事に「お任せ」だったのだろう。マーケティング担当として任命したのは大会組織委の会長だった森喜朗元総理だった。

   今回の判決文でも高橋元理事の「強権ぶり」が述べられている。「当時、組織委員会の森会長を交えた会食の場などで、高橋理事の影響力の強さを認識し、その影響力を頼って犯行に及んだ。高橋被告の影響力を利用し、自社の利益を追求しようとした」。AOKI側は高橋元理事にスポンサーの選定や日本選手団の公式服装の優先供給権などを依頼した。コンサルタント料として「みなし公務員」である高橋元理事の会社を経由して5100万円を供与を受けた。ただ、AOKI側から5100万円を受領したと起訴されたものの、贈賄罪の公訴時効は三年で、それ以前の提供分は立件されていない。

   比較するのはお門違いかもしれないが、青木被告は大会組織委の会長だった森元総理に「現金200万円を手渡した」と供述(2022年9月1日付・産経新聞Web版)。これに対し、高橋元理事には5100万円なので、ケタ違いだ。とてつもない「影響力」のある権限を高橋元理事はなぜ振るうことができたのか。その一つには、東京オリ・パラそのものを誘致するロビイストだったという背景がある。ロイター通信Web版(2020年3月31日付)は、五輪招致をめぐり招致委員会から820万㌦(8億9000万円)の資金を受け、IOC委員にロビー活動を行っていたと報じている。ロビー活動については、国際的にも問題が指摘されていた。この疑惑では、フランス司法当局の捜査対象となったJOCの当時の竹田恒和会長が2019年6月に退任している。

   「何をどう言われようが、東京五輪を誘致したのはオレさまだ」、そして「スポンサー集めは電通専務だったオレしかできない」との強烈な自負心があったのだろう。大会組織委は高橋元理事の独壇場だったに違いない。

⇒22日(土)夜・金沢の天気    はれ 

☆油断大敵「地震、カミナリ、火事、コロナ」

☆油断大敵「地震、カミナリ、火事、コロナ」

   街に出て、通行人でマスクをしている人が減っているように思える。道路ではノーマスクでも、建物や室内に入るときはマスクを着用するのかもしれない。新型コロナウイルス感染の話題やニュースもずいぶんと減った。ところが、紙面をチェックすると感染が拡大している。

   石川県感染症対策本部はきのう20日、新たに152人が感染したと発表した。内閣官房「新型コロナウイルス感染症対策」公式サイトをチェックすると、都道府県別の直近1週間の人口10万人当たりの新規感染者(19日現在)は、石川が「全国最多」になっている。人数は76人、福井も同数、3位が山形と長野の72人と続く。ちなみに、石川の1週間の新規感染は892人、入院は現在74人で、病床使用率は13.9%となっている。

   今月19日に開かれた厚労省の専門家会合では、新規感染者数は全国的に増加傾向にあり、5月の大型連休明けに感染が拡大が予想されると分析。専門家会合の有志は、「第8波」を超える規模の「第9波」が起きる可能性もあるとする文書をまとめた(19日付・NHKニュースWeb版)。かつて、油断せずに恐れるものとして「地震、カミナリ、火事、おやじ」という言葉があったが、「おやじ」の存在感はすっかり薄れた。いまや、「地震、カミナリ、火事、コロナ」かもしれない。

   油断大敵なことがもう一つ。能登半島の尖端で起きている地震だ。きのう20日正午すぎにも震度3の揺れがあった。2020年以降で気象庁による緊急地震速報が発出された能登地震は8回におよぶ。去年6月19日には震度6弱(マグニチュード5.4)、翌日20日には震度5強(同5.0)と続いた。一連の能登地震で気を揉んでいるのは珠洲市の奥能登国際芸術祭の関係者ではないだろうか。

   2017年に始まった奥能登国際芸術祭は3年に一度のトリエンナーレの芸術祭。2020年はコロナ禍で1年間延期となり、2021年に「奥能登国際芸術祭2020+」として開催された。市内の民家から古民具や生活用具など1500点を集めた劇場型博物館『スズ・シアター・ミュージアム』では、作品の一つ一つが地震で展示棚から落ちないように固定する工夫がなされていた。3回目となることしは9月2日から10月22日まで、14の国・地域の55組のアーティストによる作品が展示される。

   コロナ禍、そして地震に揺られながらも、芸術の魅力を発信し続ける珠洲市関係者の熱い思いと同時に、困難をしなやかに乗り越えようとする地域力を感じる。

⇒21日(金)夜・金沢の天気     くもり

★ポカポカ陽気の金沢 声響くウグイス嬢とインバウンド客

★ポカポカ陽気の金沢 声響くウグイス嬢とインバウンド客

   けさ玄関の戸を開けると、暖かな風がそよいでいた。家の中の方が寒い。気温予想を見ると25度、なんと夏日だ。午前中、ポカポカ陽気に誘われて金沢の街中を歩いた。

   街中では、暑いせいかアイスクリームを食べながら歩く若者たちの姿も目立った。そして、大通りでは選挙カーからのウグイス嬢の声が響き渡る。23日投開票の金沢市議選(定数38)には46人が立候補している。選挙ポスターの掲示板=写真・上=を眺めると、争点や論点を訴えるポスターが少ない。「金沢市民の暮らしを守り 未来を切り開く」や「多彩な人材が活躍できる 活力ある金沢市に」「金沢に活力を 決断・突破・実行力」などと訴えているが、いま一つピンと来ない。

   選挙公報を読むと、面白いキャッチもある。「とりあえず 迷惑な選挙運動はNO!」の見出しで、「候補者の名前を叫んで回る選挙カー、ホント迷惑ですよね。ああいう他人の迷惑をかえりみない古臭い選挙を変えましょう」と訴えている。同感なのだが、ただ、具体的にどのような選挙運動にすべきなのか。ぜひ、辻立ちで訴えてほしい。市議選が面白くないと市政は盛り上がらない。前回の市議選(2019年4月)の投票率は36.33%で過去最低だった。さらに投票率が下がるのではないか、そのようなことを思いながら選挙ーが行き交う街中を歩いた。

   兼六園に足を延ばした。遅咲きの桜で知られる「兼六園菊桜」が満開を迎えていた。その下にはツツジが赤い花を一面に咲かせている。春から初夏への季節の移ろいを感じさせる。

   入場者のほとんどがインバウンド観光客かと思う。何しろ、英語や中国などが飛び交っている。金沢港ではコロナ禍の水際対策で2020年にストップしていた国際クルーズ船の受け入れが3月に再開され、台湾のエバー航空も今月から小松-台北便を毎日運航で再開している。園内の名所の一つの琴柱灯籠(ことじとうろう)をバックに写真撮影をするインバウンドの人たちが列をなしていた=写真・下=。 

   そして、インバウンド観光客がカメラを向けていたのは、すげ笠をかぶり黙々と雑草を抜き取り、落ち葉をかいて掃除する作業員たちの姿だった。すげ笠が珍しかったのか、雑念を払う修行のような清掃作業に美の原点を感じたのか、などと思いめぐらしながら兼六園を後にした。

⇒20日(木)午後・金沢の天気    はれ

☆政治家へのテロ行為 根深い恨みなのか義憤なのか

☆政治家へのテロ行為 根深い恨みなのか義憤なのか

   戦後、政治家への襲撃事件を起こした3人の若者に共通点はあるのか、探ってみたい。解散総選挙を控えた昭和35年(1960)10月12日、東京の日比谷公会堂で当時の自民党と社会党、民社党の党首演説会が行われた。社会党の浅沼稲次郎委員長が演説中に壇上に駆け昇ってきた17歳の山口二矢(おとや)に刃物で脇腹や胸を刺され死亡した。逮捕された山口は東京少年鑑別所に入れられたが、事件の3週間後の11月2日、首吊り自殺した。山口は、銀座・数寄屋橋での辻説法で知られた赤尾敏(1899-1990)が率いた大日本愛国党に入党するなど、右翼思想に傾倒していた。

   今月15日、和歌山市の漁港で選挙の応援に訪れていた岸田総理に向かって手製の爆発物が投げ込まれた事件。逮捕された木村隆二容疑者24歳は、被選挙権を30歳以上とする規定や供託金(300万円)を必要とする規定などがあり参院議員選挙に立候補できなかったのは憲法違反だとして、国に損害賠償を求める裁判を起こしていた(18日付・NHKニュースWeb版)。

   木村容疑者が起こした裁判は、代理人の弁護士をつけない「本人訴訟」で行われている。裁判所に提出した準備書面で、憲法15条の3項で「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」と定められているのに、被選挙権の年齢制限や供託金の制度が設けられているのは実態は「制限選挙」であり、憲法違反だとして批判していた。また、ツイッターで、岸田内閣は安倍元総理の国葬を閣議決定のみで強行したと主張し、「このような民主主義への挑戦は許されるべきものではない」などと訴えていた(同)。

   去年7月8日、奈良市で街頭演説中の安倍元総理を手製の銃で撃って殺害したとして、同市に住む山上徹也容疑者41歳が殺人と銃刀法違反の罪で逮捕された。2005年まで3年間、海上自衛隊の広島県呉地区の部隊で勤務していた。今後、裁判員裁判で審理されることになるが、殺害の動機とされるのが、母親が世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)へ高額な献金をしたことから家庭が崩壊し、恨みを募らせたことが事件の発端とされる。安倍氏は祖父・岸信介の代から三代にわたって旧統一教会と深いつながりがあり、山上被告は安倍氏にも恨みを抱いていたとされる。

   3人の凶行で思い当たるのは、「義憤」という言葉だ。山口の場合は、浅沼稲次郎が1959年に中国を訪問した際に、「アメリカ帝国主義は日中両国人民の共同の敵」と演説したことが、日本の赤化(共産化)を図ろうとする許し難き人物と義憤をたぎらせた。木村容疑者は制限選挙は憲法違反、さらに、世論の反対が多いにもかかわらず安倍元総理の国葬の決行したことは民主主義への挑戦と。また、山上被告はいわゆる「宗教2世」として貧困を体験して、旧統一教会と関わりが深かった安倍元総理に銃を向けた。

   義憤は「道理に外れたことや、公平ではないことに対する怒り」と解釈している。山上被告の場合は当事者であり体感型の義憤、山口の場合は思想型の義憤、木村容疑者は被害者意識型の義憤と言えるかもしれない。彼らの行為を正当化するつもりはいっさいない。

⇒18日(火)夜・金沢の天気    くもり

★庭に咲く白い花の妖精たち

★庭に咲く白い花の妖精たち

   庭先を眺めると、季節の白い花があちらこちらに咲いている。リキュウバイは花盛りだ=写真・上=。漢字で表記すると「利休梅」。清楚な白いは、茶花として床の間を飾る。晩春から初夏の、花が少ない時季に咲くので重宝されている。ネットなどで調べると、中国の揚子江下流域を原産とするバラ科ヤナギザクラ属の落葉樹。明治時代末期に渡来したとされる。ではなぜ、「利休梅」と名付けられたのかと調べても、明確は答えにはたどり着けない。そこで自己流の勝手解釈を。

   千利休に関するさまざまエピソードが語り継がれている。ある雪の日、千利休が茶室に客人を招いた。ところが、その席の床の間には掛け物も花も何も飾ってはなかった。客人に向って利休は、「雪も花である。 雪の日に花は要らぬ」と語ったという逸話だ。リキュウバイの白い花はふっくらとした、ぼたん雪に似ている。そこで、雪を花にたとえた利休が花の名として冠されるようになったのではないだろうか。花言葉は「控えめな美しさ」や「気品」。

   スノーフレーク(鈴蘭水仙)は釣鐘型の白い花を咲かせている=写真・中=。これは上記のリキュウバイと違って、雪がちらちらと落ちる様子にも見えるので、「snowflake」(雪片)と名付けられたのだろう。原産地は東ヨーロッパだ。葉など外観がニラと似ているため、ニラの近くではスノーフレークを栽培しないように呼び掛けている自治体もある(広島県公式サイトなど)。有毒なアルカロイドを含有しているため、誤食すると吐気や下痢などの症状が出るようだ。花言葉は「純潔」「汚れなき心」だが、手ごわい植物でもある。。

   イチリンソウ=写真・下=は1本の花茎に一つ花をつけるので「一輪草」の名だが、一群で植生する。「スプリング・エフェメラル(春の妖精)」と称されるように、春に芽を出し、白い花をつけ結実させて、初夏には地上からさっと姿を消す。一瞬に姿を現わし、可憐な花をつける様子が「春の妖精」の由来ではないだろうか。これも上記のスノーフレークと同様、可憐な姿とは裏腹に有毒なのでむやみに摘んだりすると皮膚炎を起こしたり、間違って食べたりすると胃腸炎を引き起こすといわれる。

   ナルコユリ(鳴子ユリ)も白い花も咲かせ始めた。庭に咲き競う花を愛で、きょうという日を楽しむ。

⇒17日(月)夜・金沢の天気     くもり時々あめ

☆北方四島は日本領と認めず その中国の思惑は何か

☆北方四島は日本領と認めず その中国の思惑は何か

   前回ブログの続き。北海道の根室の目と鼻の先にある歯舞諸島など北方領土で、ロシアは軍事演習を行う。極東を拠点とする太平洋艦隊を戦闘態勢に移行させ、サハリン本島と日本の北方領土周辺で仮想敵の上陸阻止を想定した軍事演習だ。時期は明らかにしていない。

   ロシア側は去年3月21日、日本との平和条約交渉の中断を一方的に表明して以降、立て続けに北方領土などで軍事演習を行っている。4月には国後島と択捉島にある2ヵ所の演習場で、1000人以上の兵士と軍事装備を投入し、対戦車ミサイルシステムや自走砲などの実弾発射を実施した。「北方四島は固有の領土」との立場を貫く日本を牽制し、ロシアの実効支配を強くアピールする狙いだろう。

   さらに気になるのは中国が、北方四島をめぐるロシアの領有権に軟化の姿勢を表明したことだ。共同通信Web版(4月4日付)によると、3月20-21日に習近平国家主席がプーチン大統領と行った会談で、北方四島の領有権問題について「(どちらか一方の)立場を取らない」と表明していたことが分かった。中国関係筋が明らかにした。中国は1964年に最高指導者だった毛沢東が北方四島は日本領だと明言して以降、その認識を崩していなかったが、ロシア側に歩み寄り、中立の立場に変更したことになる。

   表明した経緯はこうだ。会談でプーチン氏がロシアが去年3月に北方四島に設置した免税特区の活性化が重要だと指摘。先月16日の日韓首脳会談で日韓関係が改善したため、韓国企業による投資は望めないとの認識を示し、中国企業の投資を要請した。これに対し、習氏は領有権問題については「立場を取らない」と表明した。特区への投資に参加するかどうかは、経済政策を担う国家発展改革委員会の担当者に検討させるとのみ述べ、明確な回答は避けた(4月4日付・共同通信Web版)。

   以下はあくまでも憶測だ。この記事の発信は【北京共同】とあり、中国側から共同通信に伝わった情報だ。日本で報道されることで、日本側の反応を中国はうかがっているのだろう。さらに一歩踏み込んで、「免税店特区」と表現されているが、これはたとえで、プーチン氏は「軍事基地」への中国参加を促したのでないだろうか。習氏はとりあえず、領有権問題については「立場を取らない」と返答するにとどめた。北方四島をめぐり中露による何らかの駆け引きが始まっている、との憶測だ。別に根拠があるわけではない。(※地図は、外務省公式サイト「日本の領土をめぐる情勢」より)

⇒16日(日)夜・金沢の天気      くもり