#コラム

★福井県立大に「恐竜学部」 地域に寄り添う新学部が続々

★福井県立大に「恐竜学部」 地域に寄り添う新学部が続々

   地域と大学が連携する「地域創生」「地域活性化」にはいろいろなパンターンがある。平成19年(2007)に学校教育法が改正され、大学にはそれまでの「教育」「研究」に加え、「社会貢献」という新たな使命が付加された。教育と研究の成果や人材を地域社会に活かすことが必須となった。各大学では社会貢献室や地域連携センターといった名称の担当セクションも設けられている。

   文科省ではこれまで地域のニーズに応じた人材養成として「地域再生人材創出拠点の形成」事業や「地(知)の拠点整備(COC)」事業を実施してきた。COCは「Center of Community」のこと。大学が自治体とタイアップして、全学的に地域を志向した教育・研究・社会貢献を進めることで、人材や情報・技術を集め、地域コミュニティの中核的存在としての大学の機能強化を図ることを目指している。

   そして最近目につくのが、地域のニーズに応じた新しい学部や学科の創設だ。北陸エリアで言えば、金沢大学は2022年度に観光デザイン学類を設置した。「観光価値をデザインするための多面的な最新の知見」「未来課題を理解し、ひと・もの・ことに関する多様な情報を収集・分析する力」「課題解決や社会展開に向けて論理的に考える力」などを学び、グローバル人材を育成する(金沢大学公式サイト)。兼六園や武家屋敷、金沢21世紀美術館といった多彩な文化資源を有する金沢や加賀、能登での学びを通じて国際的に通用する観光人材を育てるのが狙いだ。

   さらにマニアックのなのが、福井県立大学が2025年4月の開設をめざす「恐竜学部」(仮称)だ。日本有数の恐竜化石の発掘地として知られる勝山市にある県立恐竜博物館の隣接地に学部棟を整備する。恐竜学や地質・古気候学などを学ぶ全国初の学部となる。(※写真は、福井県立大学ブックレット「福井恐竜学」) 

   学生たちが学ぶのは発掘や地質調査だけではない。ある意味でデジタル技術だ。脊椎動物を発掘する古生物学や考古学の最近の先端的な研究は、CTスキャンを駆使して掘らなくても発掘する技術開発の時代に入っている。つまり、デジタル科学の研究でもあるのだ。

   地域の特色を活かした大学の研究と教育は社会貢献と直結する。さらに、研究成果が国際的な発信力を持てばグローバル・スタンダードとして注目を集める。

⇒13日(火)午後・金沢の天気    はれ時々くもり  

☆梅雨入り晴耕雨読とりとめのない日常

☆梅雨入り晴耕雨読とりとめのない日常

          北陸も梅雨に入り、金沢のきょう一日の天気はどんよりとした曇り空、そして雨が時折ぱらついた。この時節は、二十四節気の一つ「芒種(ぼうしゅ)」のころ。次候に「腐草蛍と為る」とある。ホタルが明かりをともして、飛び交うころだ。昔の人は、腐った草がホタルに生まれ変わると信じていたようっだ。

   光っては消えるゲンジボタルの明滅の間隔が東日本と西日本では違うことは知られている。西日本では2秒に1回、東日本では4秒に1回と観測されている。オスが交尾相手を探す際に見せる明滅なのだが、なぜ東西で間隔が異なるのかよく分かっていない。では、西日本と東日本と中間にある金沢ではどうか。以前、同じ関心を持った仲間たちと金沢大学の角間キャンパスで計測したことがある。すると、おおむね2秒間隔だった。金沢は西日本の生態系ということになる。

   話は変わる。夏を迎え、我が家の和室も障子戸を外して簾(すだれ)に架け替えた。床の間の掛け軸も『五月晴れ』から『青山緑水』に取り換えた=写真=。山の木々は青々と輝き、山から流れ出る川水に緑が映える。生命力あふれる自然の情景を感じさせる。

   禅語辞典をくってみると『青山緑水是我家』という書もある。各地を行脚して歩く禅の修行僧の境涯を表現したもの。自然界では人の奢り高ぶった気持ちは通用しない。自然を我家として修行に励むことで、人は全ての生き物と同じように大自然の中に生かされているということを改め感じ、悟りをひらく。

   掛け軸の下の花入には、庭に咲いていた額アジサイ、ツキヌキニンドウ、シマササの3種を生けた。草むしりなど野外の作業はせずに、取り留めなくのんびりと過ごした晴耕雨読の日だった。ただ、能登半島の尖端区域は先月5日の震度6強の地震で地盤が緩んでいる恐れがある。大雨にならないことを祈る。

⇒12日(月)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

★「負けとられん珠洲」 円相の熱いメッセージ

★「負けとられん珠洲」 円相の熱いメッセージ

   「負けとられん 珠洲!!」。5月5日に震度6強の揺れに見舞われた能登半島の尖端・珠洲市の知人から、メールで写真が送られてきた。ことし9月に同市で開催される「奥能登国際芸術祭2023」の企画発表会がきのう(10日)、多目的ホール「ラポルトすず」であり、作品紹介と同時に震災復興をアピールするロゴマークが公開された。それが、「負けとられん 珠洲!!」のキャッチコピーの作品=写真=という。「負けとられん」は能登の方言で、「負けてたまるか」の意味だ。

   今回の震災で同市では1人が亡くなり、30人余りが負傷、全壊28棟、半壊103棟、一部損壊564棟(5月30日時点・石川県調べ)など甚大な被害を被った。知人は発表会に参加していて、メールでロゴの制作者のことも述べていた。考案したのは金沢美術工芸大学の研究生の男性で22歳。実家が珠洲市で最も被害が大きかった正院町にあり、自宅の裏山が崩れて祖母が負傷したのだという。

   別の背景もメールに書かれてあった。奥能登国際芸術祭には毎回、金沢美大の学生チームが市内の古民家で作品を発表していたが、震災で作品制作を予定していた民家が使えなくなり、今回は出展を断念したということだった。そこで、奥能登国際芸術祭を主催する市側は、断念した金沢美大の学生チームに地震からの復興のロゴマークの制作を依頼した。学生チームには研究生も加わっていて、身内の負傷と出展断念の2重の痛手を乗り越えて、このロゴの制作に携わったようだ。

   送られてきたロゴの写真を視ると、文字を取り巻く「円」が印象的だ。しかも、下から「円」が力強く描かれて、下で切れている。いわゆる「円相」だ。中国・唐代の禅僧である盤山宝積の漢詩である「心月孤円光呑万象」(心月  孤円にして、光 万象を呑む)をイメージして描いたのが円相と言われる。円は欠けることのない無限の可能性を表現する。そう解釈すると、被災者である市民が心を一つにして、災害を乗り越えようという、力強いメッセージのようにも読める。

   3回目となる奥能登国際芸術祭は当初の開催予定より3週間遅れて9月23日から11月12日まで開かれ、14の国・地域から59組のアーティストが参加する。実行委員長である泉谷満寿裕市長が発表会で、「国際芸術祭が珠洲の復興に向けた光になればと思う」とあいさつしたとメールで書き添えられていた。市長のあいさつからも、「負けとられん珠洲」の熱いメッセージが伝わってくる。

⇒11日(日)夜・金沢の天気   くもり

☆マイナンバーカードの利用価値とは何なのか

☆マイナンバーカードの利用価値とは何なのか

   「突破力の政治家」と称される河野太郎氏なのだが、いつの間にか「旗振り役」を演じているようだ。改正マイナンバー法が今月2日の参院本会議で可決成立した。紙の健康保険証を2024年秋に廃止して、マイナンバーカードに一本化するほか、給付金などを個人に迅速に配布するため、口座の登録を広げる措置なども盛り込んだ。法案の推進役となった河野氏には、いろいろな機能をマイナンバーカードに付加することで利用価値を高め、普及を徹底させる狙いがあるようだ。

   さらに、カード取得者らに最大2万円分のポイントを付与する「マイナポイント」の申し込み期限をことし9月末に延長するなど、あの手この手だ。こうした取り組みの甲斐あって、ことし4月末現在の人口に対する交付率は69.8%(総務省公式サイト「マイナンバーカード交付状況について」より)となっている。2021年4月1日時点の交付率は28.2%、2022年4月1日時点の交付率は43.3%だったので、ことしの伸び率は高まっている。さらに、これまでのマイナンバーカードの申請の受付率だと77.1%(6月4日現在・同)となっていて、今年度内の交付率はかなり高まりそうだ。

   この背景には、岸田総理がマイナンバーカード普及を「デジタル社会の基盤」と位置づけ、去年8月10日に発足した第2改造内閣で河野氏を旗振り役のデジタル大臣に任命したことが功を奏したのかもしれない。ただ、ここにきて取り組みの「ずさんさ」が露呈している。メディア各社のニュースによると、河野氏は7日の記者会見で、マイナンバーカードにひもづけされた公金受取口座で、本人以外の家族名義の口座が13万件あったと明らかにした。会見では詳しく述べられていなかったが、子どもの受取口座として親が自分の口座を登録したケースが多かったのではないだろうか。小さな子を持つ親なら考えそうなことだ。

   問題は、河野氏も会見で述べていたように、デジタル庁が2月にこの「家族口座」の問題を把握していながら、問題を明らかにせず対策もとらなかった、という点だろう。十分予想できたことなので、事前に周知を徹底して本人名義以外は登録できない仕組みにすべきだったのではないか。

   そもそも論ではあるが、マイナンバーカードは市区町村長が交付するもので、取得は義務ではなく任意である。なので、普及のポイントはマイナンバーカードに国民が便利性や利用価値を感じるかどうか、だ。加えて、カードを紛失した場合の簡単便利な対応マニュアルを周知させることだろう。デジタル庁は2026年中にも偽造防止のため、暗号技術などを採用する新たなマイナンバーカードの導入を目指す方針を示している。この際、河野大臣に提案したいのは、指紋あるいは顔認証だけでも受付がOKな仕組みにしてはどうだろうか。もちろん、顔認証で個人情報が盗み取られないようなセキュリティ-対策は必要だ。

⇒9日(金)夜・金沢の天気     はれ

★「尾張名古屋は城でもつ」エレベーターめぐる論議

★「尾張名古屋は城でもつ」エレベーターめぐる論議

   「尾張名古屋は城でもつ」という言葉がある名古屋城が、復元を予定する天守閣にエレベーターを設置するかどうかをめぐって揺れているようだ。名古屋城と言えば、徳川家康が造った城で、1930年に城郭として初めて国宝に指定されていた。ところが、1945年に空襲で焼失。残った石垣などが「史跡名古屋城跡」として1957年に国の特別史跡に。1959年には鉄筋コンクリートで天守閣などの外観が復元された。

   本来の天守閣は5層5階・地下1階で構成され、天守台19.5㍍、建屋36.1㍍の合計55.6㍍にもなり、18階建ての高層建築に相当する。ただ、再建された天守閣は5層7階、城内と石垣の外側にエレベーターがそれぞれ設置されており、車椅子で5階へ昇ることができるバリアフリー構造となっている。5階から最上階の展望室までは階段で上がる。ただ、現在の鉄筋コンクリートの天守閣は耐震性に問題があるとの指摘を受けて、2009年に名古屋市の河村たかし市長はコンクリートから木造に建て直すことを本格的に検討すると計画プロジェクトチームを発足させた。(※写真は、Wikipedia「名古屋城」より)

   2013年には、本来の木造建築に建て直す復元事業に着手すると発表。当初は2020年夏の完成を目指したが、文化庁の許可も必要なことから完成時期は見直しとなった。ことし3月にようやく、木造の天守閣の完成時期を最短で2032年度との見通しを公表した。

   そこで議論になったのが、エレベーターの設置問題。河村市長は「史実に忠実な復元」を掲げ、史跡としての名古屋城の価値を高めたいとしている。そうなれば、本来の5層5階・地下1階を木造で忠実に復元し、エレベーターはもともとなかったので、設置しないということになる。一方で、名古屋城を観光名所として未来へ継承するとして、公開を積極的に行うとしている(「特別史跡名古屋城跡保存活用計画」)。そうなれば、観光客のためのバリアフリ-化の配慮は必要で、エレベーターの設置は必然となる。そこで、河村市長は妥協案として「設置は1階から2階までにすべき」との考えを示し、大型エレベーターではなく小型の「昇降機」の設置を提示している。これに市民団体などは従来通り5階まで設置すべきと抗議している。

   河村市長は来週12日に開かれる「名古屋城跡全体整備検討会議」までに結論をだすとの考えを示している(6月6日付・中京テレビNEWS)。バリアフリー化なのか忠実な復元なのか、簡単に結論が出る話ではない。まずは、現在閉館となっている天守閣の耐震化工事を行った方がより現実的な対応ではないだろうか。

⇒8日(木)午後・金沢の天気   くもり時々あめ

☆震度6強から1ヵ月 揺れ止まぬ能登は日本の縮図なのか

☆震度6強から1ヵ月 揺れ止まぬ能登は日本の縮図なのか

   能登半島の尖端を震源とするマグニチュード6.5、震度6強の地震が発生してきょう5日で1ヵ月が経った。地震は断続的に続いていて、きのう4日朝にもマグニチュード3.0、震度2の揺れがあった。震度1以上の揺れはことしに入って171回目となった(金沢地方気象台「震度1以上の日別震度回数・積算震度回数」より)。被災地では再建に向けて動き出しているが、課題も浮かんでいる。

   震度6強の揺れから10日目の15日に被害が大きかった珠洲市を訪れた。同市の全壊家屋は28棟、半壊103棟、一部損壊が564棟となった(5月30日現在・石川県庁調べ)。市内でもとくに被害が大きかった正院地区では、「危険」と書かれた赤い紙があちらこちらの家や店舗の正面に貼られてあった。貼り紙をよく見ると、「応急危険度判定」とある。   

   危険度判定は自治体が行う調査で、被災した建築物がその後の余震などによる倒壊の危険性や、外壁や窓ガラスの落下、設備の転倒などの危険性を判定し、人命に関わる二次的被害を防止するのが目的。判定結果は緑(調査済み)・黄(要注意)・赤(危険)の3段階で区分する。ただ、法的な拘束力はない。現地を訪れたときも、赤い紙が貼られている家だったが、買い物袋を持った住人らしき人たちが出入りしていた。危険と分かりながらも住んでおられるのかと思うと、自身も複雑な気持ちになった。

   地域経済にも深刻な被害をもたらしている。西村康稔経済産業大臣が今月3日に珠洲市を視察し、焼酎の製造会社で仕込み用タンクの損害や、「かめ」や「たる」が壊れて中身が流れ出たことについて説明を受けた。また、地元の伝統工芸品である珠洲焼の窯が壊れた状況を視察した。その様子を当日のNHKニュースが報じ、西村大臣は「事業を再開、再建できる支援をしていきたい。さまざまな補助金などがあるのでニーズに合わせて対応していく」と述べていた。また、同行した同市の泉谷満寿裕市長は「500以上の事業者が被害を受けた。事業者が再建をあきらめないように国の支援をお願いした」とインタビューに答えていた。

   能登半島では過疎高齢化が進み、空き家も目立っている。そこに追い打ちをかけるようにして、今度は震災に見舞われた。インタビューに答えていた泉谷市長は切実な表情だった。いつ揺れが止むか見通しが立たない。少子高齢化と地震多発の日本の縮図がここにある。災害復興のモデル地区として再生して欲しい、そう願わずにはいられない。

⇒5日(月)午前・金沢の天気    はれ

★レーダー照射問題で日韓の未来志向外交は視界不良に

★レーダー照射問題で日韓の未来志向外交は視界不良に

   2018年12月21日、当時の岩屋防衛大臣は緊急記者会見を行った。能登半島沖の日本のEEZ内で、韓国海軍の駆逐艦が20日午後3時ごろ、海上自衛隊のP1哨戒機に対して火器管制レーダーを照射した。P1は最初の照射を受け、回避のため現場空域を一時離脱した。その後、状況を確認するため旋回して戻ったところ、2度目の照射を受けた。P1は韓国艦に意図を問い合わせたが、応答はなかった。照射は数分間に及んだ、と公表した。いわゆるレーダー照射事件だ。

  岩屋大臣の会見から7日後の28日、防衛省はP1が韓国駆逐艦を撮影した動画をホームページで公開した=写真=。レーダーの電波を音に変換してヘッドホンで聞いているP1の操縦士たちが「出しています」と電波を感知すると、「避けた方がいいですね」「めちゃくちゃすごい音だ」と緊迫した会話が録音されている。その後、P1から駆逐艦に向けて、「KOREAN NAVAL SHIP, HULL NUMBER 971, THIS IS JAPAN NAVY, We observed that your FC antenna is directed to us. What is the purpose of your act ? over.」とレーダー照射の目的を無線で3度問い合わせている=写真・防衛省ホームページより=。問い合わせに対する駆逐艦からの応答はなかった。テロップは付けてあるものの、画像の編集はなく、13分7秒の実録である。

   「事実上の攻撃着手」であり、日本側は証拠を示して重ねて抗議してきた。これに対し、韓国側は当初、「海自哨戒機が低空飛行で威嚇した」と反論していたが、ことし3月の韓国国会では国防大臣が「照射はしなかった」と発言するなど、事件自体を認めない姿勢に転換した。

   このような状況にありながら、きょう4日、浜田防衛大臣は訪問先のシンガポールで、韓国のイ・ジョンソプ国防大臣と会談した。日韓大臣会談が行われるのは2019年11月以来、およそ3年半ぶりとなる。会談で、両大臣は日韓の防衛当局間の協力を進展させる必要性を確認したものの、レーダー照射問題については両国の事務レベルで再発防止策を含めた協議をすることにした(4日付・NHKニュースWeb版)。

   日本側とすれば「けじめ」をつけて、次なる日米韓の軍事協力に会談のステージを上げたいのだが、韓国側が国会で「照射はしなかった」と発言している以上、事務レベルで解決の糸口が見いだせるとは思えない。今後の展開がますます見通せなくなってきた。

⇒4日(日)夜・金沢の天気    はれ

☆「日々好日」薄茶を一服

☆「日々好日」薄茶を一服

    きのうから開催されている「金沢百万石まつり」のイベントの一つとして市内の各地で茶会が催されている。その一つの旧中村邸の茶席に赴いた。床の間には「日々好日」の掛け軸が下がっていた=写真=。「にちにちこうにち」と読む。四字熟語では「日々好日」だが、いわゆる禅語では「日々是好日」。有名な言葉だ。   

   掛け軸には「金獅峯 興宗」の署名と落款がある。「金獅峯」は金沢にある曹洞宗の寺院、大乗寺のこと。「興宗」は住職だった板橋興宗氏だ。興宗氏は大乗寺の住職を経て、大本山總持寺(横浜市)の貫首や曹洞宗管長を務められた。晩年は「猫寺」で知られる御誕生寺(福井県越前市)の住職に。2020年7月に93歳で亡くなられた。大乗寺の住職をされていたころ、自身は新聞記者として何度か取材に訪ねたことがある。新米の記者だったが、いつも笑顔で丁寧に対応いただいた姿が印象に残っている。
 
   説法も聴いたことがある。「人間だけが勝手に迷って悩んで右往左往している。成功や失敗は人生を彩る風景のようなもの。起こった出来事に目くじらをたてるより、ひと呼吸、ひと呼吸に命(いのち)を実感する生き方のほうが、はるかに自由で豊か」「ゆったり、のんびり、遠回り。渋柿もいつかは熟すものです」と。冒頭の「日々好日」を語った説法だったかもしれない。

    そんなことを思い出い起こしながら、茶席で薄茶を一服いただいた。外ではメインイベントの百万石行列が動き出し、獅子舞や加賀とびはしご登りのにぎやかな演技が始まっていた。

⇒3日(土)夜・金沢の天気     はれ

★株高33年ぶり、出生率最低1.26、子ども自殺最多512人

★株高33年ぶり、出生率最低1.26、子ども自殺最多512人

           政府の少子化対策の推進とは裏腹に出生率は確実に減っている。厚労省の公式サイト「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況」(2日付)によると、出生数は77万747人で、前年の81万1622人より4万875人減少(率換算で5%減)となった。1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は1.26だった。低下は7年連続で、新型コロナウイルス禍での婚姻数の低迷などが影響した。

   さらに暗い統計がある。厚労省がことし3月の「自殺対策強化月間」にあたって、全国の自治体首長にあてたWeb版メッセージ「いのちを支える自殺対策の推進のために」によると、令和4年の年間自殺者2万1843人のうち、小中高の児童・生徒の自殺者は512人で過去最多だった。

   この事態を受けて、ことし4月に発足した「こども家庭庁」は各都道府県に専門家による対応チームを設置するなど対策の強化に向けた取り組みを行う(2日付・NHKニュースWeb版)。

   話を変える。きょう2日の東京株式市場の終値は1日より376円高い3万1524円となり、バブル期以来33年ぶりの高値を更新した。メディア各社の分析によると、アメリカの議会上院が債務の上限を一時的になくす法案を可決し、アメリカ国債の債務不履行が回避されたことを受けて買い注文が広がったようだ。アメリカのダウ平均株価も一時、200㌦を超える値上がりとなるど活気づいている。

   この背景には、アメリカの債務不履行の回避と同時に、FRBがアメリカの経済指標から景気の先行きへの警戒感が和らいだと判断して、今後、利上げを一時的に停止するとの見方が広まっているようだ(2日付・NHKニュースWeb版)。

   それにしても、日本の株価は上がれども、少子化は止まらず、子どもの自殺者数が増えている。これが日本の現実かと思うと暗たんたる気分に陥る。

⇒2日(金)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

☆拉致問題めぐる日朝首脳会談が実現したとして・・・

☆拉致問題めぐる日朝首脳会談が実現したとして・・・

   このところ気になるニュースを。岸田総理は今月27日に開かれた「拉致被害者の即時帰国を求める国民大集会」で、「現在の状況が長引けば長引くほど、日朝間の実りある関係を樹立することは、困難になってしまいかねない。日朝間の懸案を解決し、共に新しい時代を切り開いていく観点から私の決意をあらゆる機会を逃さず伝え続けるとともに、首脳会談を早期に実現すべく、私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい」(27日付・NHKニュースWeb版)と述べ、条件を付けずに会う意思を明らかにした。

   この報道を受けて、北朝鮮外務省のパク・サンギル副首相は「もし日本が過去にとらわれず、変化した国際的な流れと時代にふさわしく、お互いをありのままに認める大国的な姿勢で新たな決断を下し、関係改善の道を模索しようとするのであれば、朝日両国が会えない理由はないというのが共和国政府の立場だ」と談話を発表した(29日付・韓国中央日報Web版)。

    冒頭の「このところ気になる」と述べたのは、万が一、日朝の首脳会談が実現した場合、どうなるのだろうか。韓国の尹錫悦大統領は日米韓の連携強化と北朝鮮への対抗姿勢を軸に外交を展開している。北朝鮮とすれは、その中で拉致問題を重視する日本に揺さぶりをかけ、日米韓の連携に亀裂を入れる意味で、「両国が会えない理由はない」と述べたのではないだろうか。首脳会談が実現した場合に、北朝鮮側が「日本がすべての制裁を解除すれば拉致した日本人を即刻帰国させる」と述べた場合、日本側はどう対処するのか。これに日本側が応じれば、間違いなく日米韓の同盟に亀裂が入る。そして、日本の国内世論も割れるだろう。

   拉致被害者の家族会は今年の新しい活動方針に「親世代が存命のうちに被害者全員の帰国が実現するなら、政府が北朝鮮に人道支援を行うことに反対しない」と明記した。家族会が北朝鮮への「支援」に踏み込んだのは初めてのことだ。拉致問題から46年がたち、今も健在な親は横田めぐみさんの母親の早紀江さん87歳と、有本恵子さんの父親の明弘さん94歳の2人となり、家族会として焦燥感があるのかもしれない。

   国論を割るような交渉を進めるべきではない。このような北朝鮮側の条件を拒否すべきだろう。そこで、日本側から条件を付ければよい。「弾道ミサイルの発射を即時停止するれば制裁解除は可能だ」と。ここから改めて交渉が始まるのではないだろうか。もちろん、仮定の話だ。

⇒1日(木)夜・金沢の天気   あめ