#コラム

★「貯蓄から投資へ」 日本人のマインドはなびくか

★「貯蓄から投資へ」 日本人のマインドはなびくか

    「貯蓄から投資へ」。いよいよ岸田総理の本気度が試される。岸田総理は21日(日本時間22日)、訪問先のアメリカのニューヨークで、ニューヨーク連銀総裁が会長を務める「ニューヨーク経済クラブ」で金融関係者200人を前に英語で講演を行った。この中で、アメリカの資産運用会社の日本進出を促す考えを表明し、英語のみで行政対応が完結する「資産運用特区」の構想を打ち出した。また、海外投資家のニーズを制度改革に反映させるため、日米を基軸に「資産運用フォーラム」を立ち上げ、世界の投資家を日本に招聘する「ジャパン・ウイークス」を展開すると述べた(首相官邸公式サイト「ニューヨーク経済クラブ主催による岸田総理大臣講演」より、写真も)。

   来年1月からは少額投資非課税制度(NISA)を拡充・恒久化する「新NISA」がスタートするので、海外勢の参入との両輪で、国民の資産形成を後押しする狙いなのだろう。

   日銀調査統計局「家計の金融資産構成」(2023年8月25日付)によると、日本の家計の金融資産は2043兆円で、このうち現預金は54%を占め、株式等は11%、投資信託は4%だ。一方、アメリカの家計における金融資産では現預金は13%しかなく、株式は39%、投資信託は19%を占めている。岸田総理はことし6月の骨太方針で「資産運用立国」構想を打ち出し、アメリカ並みの投資に向けて大号令をかけている。

   ただ、これまで貯蓄を美徳としてきた日本人のマインドがそう簡単に投資へと変化するだろうか。さらに日経新聞Web版(5月2日付)によると、総務省の全国家計構造調査や家計調査をもとに、家計の預貯金について2021年時点での世帯主年齢別の保有額を推計すると、60歳以上で600兆円を上回り、預貯金全体に占める割合も64%に達している。高齢者は慎重で、運用よりも貯蓄商品に回すのではないだろうか。

   日本人には「赤信号 みんなで渡れば怖くない」という集団心理もある。はたして、「貯蓄から投資へ」と人々の心はなびくのか。

⇒23日(土)夜・金沢の天気   はれ

☆北陸新幹線の敦賀延伸 どうする「乗り換え」ストレス

☆北陸新幹線の敦賀延伸 どうする「乗り換え」ストレス

   時間をうまく短縮することを「タイパ」、タイム・パフォーマンスとよく言われる。移動手段での最高のタイパは新幹線だろう。北陸新幹線の金沢・敦賀間が来年3月16日に開業する。ところが、金沢に住む一人として、関西と中京が少々遠くなった気もする。それは「乗り換え」という煩わしさ、ストレスだ。

   北陸新幹線の金沢・敦賀間の開業によるJR西日本の運行計画概要(8月30日付ニュースリリース)=図=によると、金沢と大阪方面を結ぶ特急「サンダーバード」、そして、名古屋方面を結ぶ特急「しらさぎ」は敦賀止まりとなる。金沢から北陸新幹線に乗って大阪に行く際は敦賀でサンダーバードに乗り換え、名古屋に行く際も敦賀でしらさぎに乗り換えになる。時間は短縮されるだろうが、これまで直行だった列車が、乗り換えとなると不便さを感じるのではないだろうか。もちろん、当初から予定されていたことであり、いまさら言うのも適切ではないかもしれない。

   この乗り換えによって、戸惑っているのは関西や中京の客が多い北陸の温泉街ではないだろうか。「関西の奥座敷」とも呼ばれる加賀温泉郷(山中、山代、片山津)へはサンダーバードやしらさぎで関西や中京と直行列車で結ばれているが、来年からは乗り換えの手間が客に煩わしさを感じさせるのではないだろうか。(※イラストは、敦賀市役所公式サイト「新幹線敦賀駅前広場のイメージ図を作成しました!」より)

   懸念を深めているのは能登半島の代表的な温泉地である七尾市の和倉温泉かもしれない。現在、1日1往復だけだが、サンダーバードが大阪駅から乗り入れている。来年3月からは、関西の客は敦賀で新幹線「つるぎ」に、金沢で特急「能登かがり火」にと2度の乗り換えとなる。JRでは能登かがり火について、1往復増やして5往復で対応するとしているものの、2度乗り換えで客側に時間や不便さを感じさせるのではないだろうか。一方で、温泉への旅の感覚では乗り換えはそれほど苦にはならないかもしれない。

   この乗り換え問題にJRはどう対処するのか。地元メディアによると、金沢駅では新幹線ホームに向かって横に移動する必要があるが、敦賀駅では3階にある新幹線駅の真下、1階に在来線特急が到着する。上下の移動だけでホームを移動できるため、乗り換え時間は5分ほど。この仕組みの実現のため、敦賀駅舎は整備新幹線では最も高い37㍍となった(2023年3月16日付・北陸中日新聞)。まさに12階建てのビルに匹敵する。
 
   京都・大阪方面への北陸新幹線の延伸計画は、2046年度に新大阪開業が予定されている。それまで、敦賀乗り換えは、出張するサラリーマンにストレスを与え続けることになるに違いない。折に触れて、このテーマを検証してみたい。
 
⇒21日(木)夜・金沢の天気    くもり

★白い花のヒガンバナ 「彼岸の入り」あれこれ

★白い花のヒガンバナ 「彼岸の入り」あれこれ

   きょうは「彼岸の入り」。これまでよく、「暑さ寒さも彼岸まで」と季節の会話を交わすことはあったが、ことしは使えそうもない。きょう金沢の予想最高気温は30度、最低気温は25度と真夏日だ。あすも32度だ。

   きのう近くのお寺の境内を歩くとヒガンバナが咲いていた。ヒガンバナというと、赤い花というイメージがあるが、この寺のヒガンバナは白い花で知られる=写真=。40年ほど前に白い花が咲いていたのを檀家が株分けして数を増やしていったという伝えがある。そのせいか、花だけでなく境内も整備されて、ちょっとした「お寺の公園」というイメージだ。

   話は少し逸れる。近くに「野田山墓地」という山そのものが墓苑という広大な墓地がある。加賀藩の藩祖・前田利家の墓などあり、金沢で由緒ある墓地といえる。たまに通るだけなのだが、10年ほど前に比べて「無縁墓」が増えている。放置されて雑草が生い茂っている。一部は墓石が傾いて、倒壊しそうなものもある。

   この光景を見て、能登の「一村一墓」のことを思い出す。能登半島の尖端・珠洲市三崎町の大屋地区での伝え話だ。江戸時代に人口が急減した「天保の飢饉」。能登も例外ではなく、食い扶持(ぶち)を探して、若者が大量に離村し人口が著しく減少した。村のまとめ役が「この集落はもはやこれまで」と一村一墓、つまり集落の墓をすべて集め一つにした。そして、ムラの最後の一人が墓参りをすることで「村じまい」とした。しかし、集落は残った。江戸時代に造られた共同墓と共同納骨堂は今もあり、一村一墓は地域の絆(きずな)として今も続いている。現在の「共同墓」の先駆けだったかもしれない。

   以前、東京に住む友人から共同墓の権利を購入したとのメールをもらった。費用が安く、供養してもらえるようだ。ただ、遺骨は永久供養ではなく33回忌で、他の遺骨と一緒に合祀されるとのこと。「家族に迷惑がかからない分、すっきりしていい」と本人は納得していた。

   葬式や墓造りには当然ながら多額の費用がかかる。墓を造ると墓守りもしなければならない。死後になぜこれほど経費をかけるのか、むしろ残された家族のために使うべきだという発想が現役世代には広がっているのではないだろうか。
   彼岸の入りにあれこれ思ったことをしたためた。意図した文脈があるわけではない。

⇒20日(水)午前・金沢の天気   くもり時々あめ

☆北海道が熱い 地価調査で見える地域の経済

☆北海道が熱い 地価調査で見える地域の経済

   国土交通省はきょう19日、都道府県の地価調査(7月1日時点)を公表した。全国平均の住宅地はプラス0.7%、商業地はプラス1.5%といずれも2年連続で上昇し、上昇幅も拡大している。

   日本海側では石川県の商業地の平均がプラス0.5%で、4年ぶりに上昇している。新型コロナウイルス禍からの回復で観光客が増加するなど金沢市などの観光地を中心に活気が戻っている。「ひがし茶屋街」と呼ばれる金沢市東山1丁目は、市内で最も上昇率が高いプラス5.3%で、1平方㍍あたり40万円だった。そして、県内で最も高かったのは、金沢駅に近い金沢市本町2丁目で、プラス3.6%の1平方㍍あたり102万円だった。

   観光だけでなく、北陸新幹線効果もある。来年3月の金沢・敦賀間の開業を控えた小松駅周辺は県内全体で最も上昇率が高かった。駅から300㍍離れた小松市日の出町1丁目はプラス6.7%だった。去年のプラス3.5%から上昇の幅が拡大し、1平方㍍あたり9万5000円だった。この周辺では北陸電力の複合ビルや観光交流センターなどが立ち並ぶことになる。

   一方で顕著なマイナスもあった。ことし5月5日に震度6強の地震に見舞われた能登半島の尖端・珠洲市飯田町は去年に比べてマイナス8.1%で、下落率は全国で最も高かった。

   全国地図を眺めて、全国でも住宅地で地価の上昇率が高かったのは、なんと北海道だ。北海道千歳市栄町5丁目でプラス30.7%、2位が千歳市東雲町5丁目でプラス30.5%、3位が千歳市みどり台北4丁目でプラス29.0%と北海道勢が占めている。千歳市では、先端半導体の国産化を目指し、トヨタ、デンソー、ソニー、NTT、NEC、ソフトバンクなどが出資した半導体メーカー「ラピダス」の新たな工場の建設が進んでいて、従業員の住宅などの需要が高まっているようだ。地域の経済がそのまま地価の高騰に反映している。

⇒19日(火)夜・金沢の天気   はれ

★「敬老の日」ニュースあれこれ ピンピンコロリな生き方

★「敬老の日」ニュースあれこれ ピンピンコロリな生き方

   午前6時ごろだった。叩きつけるような雨音と雷鳴で目覚めた。1時間ほどで雨は止んだが、それにしても激しい雨だった。スマホをチェックすると、大雨に関する石川県気象情報が出されていて、「上空約6000㍍には氷点下3度以下の寒気が流れ込んでいるため、石川県では大気の状態が不安定となっています。このため、19日にかけて雷を伴った強い雨の降る所があるでしょう」とのこと。1時間に予想される雨量は25㍉とのこと。

   朝刊各紙を開くと、「人口推計 80歳以上10人に1人 65歳以上29% 世界トップ」の見出しに目が向いた=写真・上=。きょうの「敬老の日」にちなみ、総務省が公表した人口推計。記事によると、総人口に占める65歳以上の割合は日本が29%で一番高く、2位イタリア24%、3位フィンランド23%と続く。面白いのは高齢者の就業率だ。65-69歳は50%、70-74歳の33%が働いていて、これも過去最高となってる。就業先は卸売業・小売業、サービス業、そして医療・福祉の順で多い。自身もそうありたいと願うのだが、元気で働いて天寿を全うしたいものだ。「ピンピンコロリ」、日本人のこの人生モデルはひょっとして世界のモデルとして注目されるかもしれない。

   8月5日付のこのブログで取り上げた石川県内にあるビッグモーターが街路の植栽を伐採してコンクリートで舗装していた件で動きがあった。メディア各社の報道によると、かほく市にある「ビッグモーター イオンモールかほく店」前の植栽がコンクリートで舗装された件について、土地を管理するイオンリテール(千葉市)は10月31日付で土地賃貸借契約を解約することを発表した。

   解約の理由についてイオンリテールは「ビッグモーター社に対して聞き取り調査を行った結果、弊社の承諾を得ずに木を伐採し、コンクリート舗装した」ことを挙げた。植栽部分はイオンモールかほくが進出した2008年からイオンが環境整備の一環で植樹を進めていた。問題となった箇所はコンクリート幅は2㍍、長さ100㍍にわたって覆われている=写真・下=。

   ただ、ブログでも述べたように、ビッグモーターはある意味でイオンモールの入り口の一つに位置する。このような重要なポイントなのに、これまでイオン側はコンクリート化に気が付かなかったのだろうか。黙って見過ごしていたという訳ではないだろうが、少々解せない。

           朝日新聞が行った全国世論調査(電話、16・17日)の結果が掲載されている。内閣支持率は37%と前回8月調査より4ポイント増え、不支持率は53ポイントと1ポイント減った。内閣改造人事に関しては「評価しない」が57%、「評価する」が25%だった。女性閣僚を5人起用するなどした改造人事だったが、その効果は限定的だったようだ。

   きょうも真夏日、30度を超える。季節外れの暑さが続く。

⇒18日(月・祝)午後・金沢の天気  くもり時々はれ

☆高速鉄道とマンション 中国の「縦・横インフラ」巨額負債

☆高速鉄道とマンション 中国の「縦・横インフラ」巨額負債

   世界最高速と名高かった中国の上海リニアに乗ったのは2008年1月だった=写真・上=。最高時速430㌔の車窓からの風景がコマ送りの状態で見えたのが印象的だった。上海浦東国際空港から終着駅・龍陽路まで距離にして30㌔、時間にして7分20秒だった。その上海リニアが2020年2月から最高時速300㌔に減速。新型コロナウイルスの感染拡大で浦東国際空港の利用者数が減少が影響しているようだ(Wikipedia「上海トランスラピッド」)。

   リニアだけでなく、中国では全長4万2000㌔にもおよぶ高速鉄道網が整備されている。幹線ルートでは最高時速350㌔で走行し、そのほかの路線では時速300㌔で運転している。この「中国版新幹線」は日本の新幹線の13倍にもおよぶとされているが、人口が少なく需要が見込めない地方都市にも延伸を重ねていて、赤字路線が多いとされる。

   日経新聞Web版(5月2日付)によると、高速鉄道を運営する国有企業「中国国家鉄路集団」は2022年12月期の最終損益が695億元(約1兆3800億円)の赤字となり、21年12月期(498億元の赤字)から悪化した。売上高は0.4%減の1兆1272億元だった。新型コロナウイルスの抑え込みを狙った「ゼロコロナ」政策の影響で旅行・出張客が減った。さらに、同社が公表している財務資料によると、22年末の負債総額は6兆1068億元(約121兆円)で前年末比で3%増えている。中国のGDPの5%に相当する大きな額だ。

   無軌道な拡大で不採算路線が増え、足元の負債が膨らんでいるにもかかわらず、「景気底上げを目指す政府の意向をくみ、2035年に路線を現在より7割増やす方針」(22年7月5日付・同)ようだ。このニュースを読んで中国の経済リスクの感じ取った。横に伸びる高速鉄道、縦に伸びる高層マンション。国家的な金融リスクが誘発されるのではないだろうか。(※写真・下は、浙江省で撮影したマンション群=2012年8月)

⇒17日(日)午後・金沢の天気   はれ時々くもり

★石川県民にとって複雑な気持ち、そして残念な事件

★石川県民にとって複雑な気持ち、そして残念な事件

   この事件をコラムで書くべきか、書くべきでないか迷った。石川県民にとって複雑な思いがする。それほど残念なニュースだ。

   去年6月29日午後7時45分ごろ、大分県別府市の交差点で、信号待ちをしていた2台のバイクに軽乗用車が追突。バイクに乗っていた2人がはね飛ばされ、当時19歳の男子大学生が死亡し、別の男子学生が軽傷を負った。軽乗用車を運転していた当時26歳の男性会社員は応急処置や警察への届け出をせずに車を放置して現場から逃走した。警察庁はきのう15日、全国の警察を挙げて捜査をする「重要指名手配」に指定し、容疑者を追っている。ひき逃げの犯人が重要指名手配に指定されるのは全国で初めてのケースとなる(15日付・NHKニュースWeb版)

   重要指名手配に指定された理由として、これまでの警察の捜査で、容疑者は▽事件前、大学生を呼び止めて言いがかりをつける様子が目撃されている、▽時速100㌔近くのスピードでブレーキをかけずに、はねたとみられる(同)。故意に起こした悪質な事件として指名手配されている。手配されているのは、八田與一容疑者27歳。

   冒頭で「残念なニュース」と述べたのも、このブログで「八田與一」の名前が何度も登場する。台湾の日本統治時代、台南市に当時東洋一のダムと称された「烏山頭ダム」が建設された。不毛の大地とされた原野を穀倉地帯に変えたとして、台湾の人たちから日本の功績として現在も高く評価されている。ダム建設のリーダーが、金沢生まれの土木技師、八田與一(1886-1942)だった。石川県では誉れの高い人物であり、「金沢ふるさと偉人館」にその業績が紹介されている。

   八田容疑者に関する記事をチェックすると「石川県生まれ」とある。以下は憶測だ。おそらく「與一」と名付けた両親、あるいは祖父母は故郷の偉人にちなんで、立派に育ってほしいとの想いを込めたのだろう。石川県民の一人として、容疑者には警察に自首し、罪を償い、更生してほしいと願う。

⇒16日(土)午前・金沢の天気    はれ

☆「変化を力にする内閣」も支持率は上がらず

☆「変化を力にする内閣」も支持率は上がらず

   第2次岸田再改造内閣の発足を受けて、新聞メディア各社が緊急世論調査を行い、その結果を報じている。結果を比較すると、内閣支持率が「横ばい」と「上昇」の2つの結果に分かれている。

   読売新聞が今月13日と14日に実施した調査では内閣支持率が35%で前回調査(8月25-27日)と同じだった。不支持も50%で前回と同じだった。日経新聞の調査(13、14日)も支持率が42%で前回(8月25-27日)と同じだった。不支持は51%で前回より1ポイント上昇した。一方、共同通信の調査(13、14日)では支持率が39.8%で前回(8月19、20日)より6.2ポイント上昇した。不支持率は39.7%で前回より10.3ポイントも減少した。

   G7広島サミットの議長国を無難にこなした5月の内閣支持率は上昇したものの、その後、総理長男の秘書官辞任やマイナンバーカードをめぐる一連のトラブルで内閣支持率が続落していた。本来ならば、内閣改造と自民党役員人事の入れ替えがあれば、支持率が上がるのが通例なのだが、今回はメディアによって数字のバラつきがあるのはなぜか。

   調査手法の違いかもしれない。調査方法は3社とも、コンピューターで無作為に数字を組み合わせて番号をつくり、固定電話と携帯電話の番号にかけて調査を行う、いわゆる「RDD(Random Digit Dialing)」方式で行っている。

          違うのは質問の仕方だ。読売、日経の両社は内閣支持率の質問で「支持」か「不支持か」を尋ねるが、「言えない・分からない」と答えた回答者に再度、「支持しますか、支持しませんか、お気持ちに近いのはどちらですか」と1回だけ重ね聞きするルールを採用している。なので、重ね聞きをしない場合と比べ、「支持」「不支持」の数字がそれぞれ上積みされる傾向にある。それが、前回の調査と比べて数字が動かなかったということは、今回の改造内閣発足では「支持」を増やすまでには至らなかった、ということになる。共同通信は重ね聞きを採用していないが、前回低くかった支持率がやや持ち直したのかもしれない。

   自民党支持層が多いとされる読売や日経の調査で支持率が上がらなかったことに、むしろ自民党関係者は焦りを募らせているかもしれない。

⇒15日(金)夜・金沢の天気    くもり時々はれ

★「変化を力にする内閣」が問われる山積する課題

★「変化を力にする内閣」が問われる山積する課題

   2021年10月に岸田内閣が発足したときは「新しい資本主義」がキャッチフレーズだった。次に2022年8月の第2次岸田改造内閣を「政策断行内閣」と名付けた。そして、きのう第2次再改造内閣が発足したときは「変化を力にする内閣」だ。

   最初に掲げた「新しい資本主義」は成長戦略の旗印で、「科学技術によるイノベーション」「デジタル田園都市国家構想による地方活性化」「カーボンニュートラルの実現」「経済安全保障の確立」の目標だった。中でも、「デジタル田園都市構想による地方活性化」は、「地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めていくことで、世界とつながる『デジタル田園都市国家構想』の実現」(内閣官房公式サイト)を目指した政策で、じつに斬新なイメージで期待感があった。

   ところが、国際情勢が急変する。新型コロナウイルスの感染再拡大や、2022年2月からのロシアによるウクライナ侵攻が始まり、これらに起因したインフレなど世界経済に動揺が走る。日本も円安の急速な進行などに迫られている。こうなると、第2次岸田改造内閣では喫緊の重要な課題への対応が迫られる。そこで、有事に対応する「政策断行内閣」を掲げた。

   そして、きょう本格始動した第2次再改造内閣で岸田総理は、「経済、社会、外交・安全保障の三つの柱で政策を進めていきたい」と官邸で記者団に強調。物価高対応や構造的な賃上げ実現、人口減少による少子化対策に向け、経済対策策定を月内に閣僚に指示する方針を示した(14日付・共同通信Web版)。

   きょうの朝刊各紙=写真=の一面のトップ記事は「旧統一教会 解散請求 来月にも 政府方針 首相『最終の努力』」(読売)、「女性抜擢 刷新感アピール 4閣僚、旧統一教会と接点」(朝日)、「首相『賃上げの流れ継続』 投資拡大へ税改正」(日経)など見出しにかなりのバラツキがある。読み方によっては、政界を巻き込んだ旧統一教会問題や物価高対応や賃上げなど課題が山積し、岸田内閣は臨機応変な対応が迫られている。それが、「変化を力にする内閣」なのか、と。   

   それにしても、「新しい資本主義」の目玉政策の一つだった「デジタル田園都市国家構想による地方活性化」はいつの間にか影が薄くなった。

⇒14日(木)午後・金沢の天気    くもり

☆北の偵察衛星は開発支援 ロシアへの武器供与は沈黙

☆北の偵察衛星は開発支援 ロシアへの武器供与は沈黙

   この弾道ミサイル発射は祝砲なのか・・・。北朝鮮はきょう午前11時台に2発の弾道ミサイルを半島の西岸付近から日本海に向けて発射した。防衛省公式サイトによると、11時41分に発射した弾道ミサイルは最高高度がおよそ50㌔で、約350㌔飛翔したと推測される。2発目は11時51分の発射で、最高高度がおよそ50㌔、約650㌔飛翔したと推測される。落下した場所は日本のEEZの外側だった。

   防衛省が落下箇所を記したイメージ図を見てみると、ウラジオストクのほぼ真南に位置する。発射された時間帯は、北朝鮮の金総書記が列車に乗って、ウラジオストクから約1000㌔離れたアムール州の「ボストーチヌイ宇宙基地」に向かっていた途中だ。タイミングといい、距離感といい、金総書記にロシアのプーチン大統領との首脳会談が成功裏に運ぶようにと願った祝砲のようにも思える。あるいは、ロシアと北朝鮮の同盟関係を誇示した、日米韓同盟に対する威圧行為なのか。

   では、ボストーチヌイ宇宙基地での首脳会談でどのような内容が交わされたのか。BBCはWeb版で「Vladimir Putin signals help for Kim Jong Un but quiet on weapons」の見出しで、プーチン大統領は金総書記に支援の合図をするも、武器に関しては沈黙、と伝えている。そもそも、なぜ宇宙基地が会談場所として選ばれたのか。記事によると、ロシアが北朝鮮の偵察衛星の開発を支援するかどうか、記者に尋ねられたプーチン氏は、「これが我々がボストーチヌイ宇宙基地に来た理由だ」と述べた。つまり、偵察衛星の打ち上げに2度失敗している北朝鮮に対し、プーチン氏は衛星の開発を支援する意思を明確に示した。実際に、金氏はロケットの組み立てや発射施設などを視察した。

   では、プーチン氏は金氏に何を求めたのか。金氏はロシアのウクライナ侵攻の支持を表明した。「われわれは常にプーチン大統領とロシアの指導者の決定を支持する。われわれは共に帝国主義との闘いに加わる」とロシアへの支持を改めて伝えた。ただ、会談では北朝鮮のロシアに対する武器供与の話が明らかになっていない。

   BBCは、北朝鮮はロシアに対して「応急措置」として武器を提供する可能性もある、と伝えている。この場合、北朝鮮の武器がロシアによってウクライナで使用されたことが明らかになれば、国連の北朝鮮に対する追加の制裁を引き起こす動きが出てくる。そこで、プーチン氏はあえて「quiet on weapons」だったと解説している。

⇒13日(水)夜・金沢の天気    はれ