#コラム

☆古民家とハイテク車のコラボ

☆古民家とハイテク車のコラボ

 先日、このブログ「自在コラム」で紹介した金沢大学創立五十周年記念館「角間の里」に設置した「炭ストーブ」。 かなり反響が大きく、ついにきょう(1月16日)、NHK金沢放送局が「角間の里」から生中継を行うことになった。リポーターはNHKの酒井菜穂子さん、角間の里山自然学校からは研究員と、キャンパスでの炭焼きを目指す学生サークル 「CLUB炭焼き」の代表が出演する。NHK金沢放送局の夕方のワイド番組「デジタル百万石」 で午後6時30分ごろ放送だ。

  それにしても、このNHKの中継車と記念館「角間の里」のアングルはなかなかのコラボレーションだ。「角間の里」は築300年の豪雪地帯・旧白峰村から譲り受けた再生古民家。そして、中継車は衛星回線で世界中に映像と音を伝送できる「SNG(Satellite News Gathering)車」と呼ばれるハイテク車である。ハイビジョンカメラの映像を、赤道上空3万6千㌔の通信衛星を介して、放送局に送る。写真では見えないが、車の中は映像と音をミキシングするオペレーションルームになっている。まさに、先端の放送と通信技術の塊(かたまり)だ。

  古民家は、玄関の入り口でパラボラアンテナを広げるハイテク車に決してものおじしていない。むしろ「ハイテクよ、よく来た」と出迎えているかのように堂々としている。アナログとハイテクの絶妙なバランスが見えて面白いのである。

 ⇒16日(火)午後・金沢の天気   くもり

★木炭ストーブで温まる夢

★木炭ストーブで温まる夢

 先日、私のオフィスである金沢大学創立五十周年記念館「角間の里」に設置されたストーブの話題を取り上げた。そのストーブにこの10日、いよいよ火が入った。

  かつて小学校にあった石炭ストーブではなく、炭を燃料としている。仕組みは ストーブに取り付けたタンク内で温まった水が、設置された配管内を循環し、部屋を暖めるというもの。当初、2005年8月ごろに、 金沢大学のOBで、バイオマス燃料の研究に取り組む北野滋さん(55)=明和工業社長(石川県能美市)=が炭ストーブの開発を大学へ提案。築300年の「角間の里」の木造の雰囲気と、そこを拠点に活動する「角間の里山自然学校」 のコンセプトとマッチしていたので、「角間の里」に設置が決まった。05年初頭の設置予定だったが、防災設備やスチームの配管、煙突の構造、 建物の外観とのすりあわせなどの問題をクリアーするのに遅れ、ようやく完成にこぎつけた。

   この炭ストーブにはちょっとした「夢」が託されている。現在は市販の炭を利用してスタートしたが、将来的には大学のキャンパスで活動する市民ボランティア「角間の里山メイト」や学生グループがつくる竹炭や木炭を利用することにしている。メイトがキャンパスの里山の保全活動(竹林整備、雑木林の管理など)に取り組んでくれているが、活動で出た間伐材(竹、木)の処理に一番頭を悩ませている。これらの材で炭(燃料)を生産し、ストーブで消費できれば、里山の保全活動と燃料の確保につながる。使用後の燃え残りの灰は肥料や土壌改良剤として山や畑にかえす計画。竹炭は市民ボランティア「竹ん子くらぶ」が生産中。木炭は、学生サークル「CLUB炭焼き」が現在炭窯を製作中で少し時間がかかる。

  大学キャンパスの限られた地域の中での木質バイオマスエネルギーとはいえ、持続可能なエネルギー循環のミニモデルなのだ。こうした仕組みは、これからの里山保全のモデルケースになるのではないかと思い描いている。

 ⇒12日(金)朝・金沢の天気  くもり

☆メディアのツボ-36-

☆メディアのツボ-36-

 テレビ局には「モルモット」といわれる番組がある。深夜帯にこれまで使わなかったタレントを起用して試しに番組をつくる。それが、視聴率を稼げると判断するとゴールデンタイムなどに持ってくる。実験動物にたとえた「モルモット番組」はタレントだけでなく、若手のディレクターの登竜門になったりする。 しかし、得てしてこのような野心的な番組には落とし穴が多い。

     「モルモット番組」

 その代表格の番組がテレビ朝日系・火曜日夜9時の「ロンドンハーツ」かもしれない。何しろ、系列内部では「平均14%を超える高い視聴率をマークした」と評判がすこぶるいい。中でも05年10月に放送された「青木さやかパリコレへ!」は19.2%を獲得して、裏番組のガリバー「踊る!さんま御殿!!」を9.8%と1ケタに落とすというテレ朝にとっては「快挙」も成し遂げた。

  正確に言うと、「ロンドンハーツ」は冒頭に記したモルモット番組ではない。同じテレビ朝日系の深夜0時45時の番組「ぷらちなロンドンブーツ」の主力スタッフが制作していたため、「ぷらちな」のゴールデン昇格番組と思われているが、実際は99年のスタート同時期では「ぷらちな」も放送されていたので兄弟番組である。

  落とし穴というのは、その後、「ロンドンハーツ」は日本PTA全国協議会が小学5年生と中学2年生の保護者らを対象にした「子どもとメディアに関する意識調査」で、子どもに見せたくないテレビ番組の1位になる。しかも、3年連続である。PTAの調査内容をもう少し細かく紹介すると、「ロンドンハーツ」は親の12.6%が見せたくない番組に挙げ、2位の日本テレビ系「キスだけじゃイヤッ!」(8.3%)を大きく引き離している。若者には14%を超える人気番組かもしれないが、子を持つ親には「2ケタもの反感」を買っているのだ。

  これまで見た番組の印象では、女性タレントが言い争うコーナー「格付けしあう女たち」が人気のコーナーだが、冷静に考えば、ギスギスした人間関係を助長し、「だからそれが何だ」と思いたくもなるシーンもある。そしてコーナータイトルも「ドすけべホイホイ」など、子どもからその意味を聞かれて親が返答に窮する内容なのだ。

  テレビ局側は「頭の固いPTAが感情論で…」などと軽んじないほうがよい。子どもを持つ親たちは感情論ではなく、医学や発達心理学の論拠を得て理詰めで、テレビが子どもたちに与える影響を考え始めている。そして、NHKを含めテレビ業界を見つめる社会の目は年々厳しくなっている。

 野心的で若手ディレクターの登竜門となる番組を制作をすることはテレビ局の生命線である。ただ、その評価の尺度が視聴率だけであってよいのか、いまがその価値基準に一定の線引きをする潮目の時だろう。

 ⇒10日(水)朝・金沢の天気  くもり

★メディアのツボ-35-

★メディアのツボ-35-

 一部の事務職を法定労働時間規制から外し、残業代をゼロとする「日本版ホワイトカラーエグゼンプション」制を導入するための労働基準法改正案は、今月25日召集予定の通常国会への提出が微妙になってきる。これには、与党内に「賃金の抑制や長時間労働を正当化する危険性をはらんでいる」(丹羽自民総務会)といった慎重意見があるためだろう。

    残業「青天井」のワナ

 法案を出す出さないは内閣が今夏の参院選挙をにらんだり、各種の経済指標と照らし合わせてを決定することで論評する気はない。ただ、私自身、この残業問題というのは、この言葉を聞いただけでも正直うんざりするくらい憂鬱な気分になる。この問題で2年間苦しんだことがある。

  民放テレビ局の部長だったころ。もう6年前のことだ。その頃、民放業界では高収入にもかかわずら20代や30代の社員が自己破産するという現象が相次いでいた。その構図は実に単純だった。報道記者や制作ディレクターは残業が上限なしの「青天井」だった。すると月80時間ぐらい残業をすると数十万円になる。これを「第二本給」と称していた。第一と第二の本給を合算すると非組合員である部長クラスの給料を軽く超えるくらいになる。恒常的に続くとこれが当たり前になり、高級車や一等地のマンションをローンを買う。ところが、社内異動となり総務や編成といった事務部門に回されると途端に残業が少なくなり、組んだローンが返せなくなり、デフォルト(債務超過)に陥るというパターンなのだ。当時「独身貴族」と称された層に多かった。

  これは当時、東京のキー局の事例で聞いた話だ。報道部門から営業部門に異動となり、ある20代の男性社員が「残業のワナ」にはまってしまったことに気がついた。その社員は残業代を何としても稼ぎたいので、しなくてもよい残業をするようになった。そうなると机にかじりつくようにして離れない。用件もないのに残業をしているので上司が「そんな残業は認められない」というと、「訴えてやる」と社員はくってかかるようになった。残業代を稼ぐために「理由なき残業」をする。完全な労働のモラルハザートに陥ってしまった。

  自分自身の話に戻る。そのころ報道記者職にも裁量労働制が法的に認められていた。一定の時間分を固定的に残業代として支給し、さらに記者に不利益が出ないようにフレックス制(出退社時間を自分で調整)とセットで導入した。その導入までの2年間は職場討論を繰り返し、その導入までのプログラムとスケジュールの作成、要は何を基準にして固定時間数(見なし残業)を算出するか苦痛の連続だった。そのころテレビ業界でも数社が裁量労働制の導入を組合に提案し、ことごとく潰されていた。かろうじて1社が導入したが、組合との軋轢を生む要因になっていた。

  一人ひとりの出勤簿に記載された残業時間とその理由の分析は深夜に及ぶ孤独な作業だった。それを1年間続けた。「これで誰も損はしないはず」と導入に踏み切った後も、あからさまに不満を口にする者もいた。他人の給料に手をつけることの怖さである。

  いまでは報道職場の残業が青天井というテレビ局は少ないだろう。CM収入が落ち込む中、特にローカル局はデジタル化投資の返済で自社番組の制作予算そのものを抑制している。ニュース番組の枠も縮小傾向にある。独身記者のデフォルト問題はもう過去の話かもしれない。

 ⇒8日(祝)午後・金沢の天気  くもり

☆煙突が立った日

☆煙突が立った日

 私の自慢のオフィスは創立五十周年記念館「角間の里」。 白山ろくの豪雪地帯で築300年の養蚕農家を移築、いわゆる古民家を再生したものだ。去年4月に完成。黒光りする柱や梁(はり) のどっしりとしたたたずまいに、訪れた人は「和みますね。田舎の実家に来たようです」と好印象を述べてくれる。その記念館に先日、ストーブの煙突が立った。

  この建物はかつて村の文化財だったものを譲り受けたもので、なるべく本来の姿を生かすという建築思想のもと、冷暖房の設備は最初から取り付けてなかった。このため、夏はスタッフ一同でクールビズを徹底した。また、土間を通る風は天然のクーラーのような涼しさがあり、扇風機を緩やかに回すだけで十分にしのぐことができた。問題は冬である。今度はウオームビズで着込んではいるが、さすがに冷えるので事務室だけはエアコンを入れ、板の間の部屋には持ち運び式の石油ストーブを置いた。残るはこの建物の最大の空間である土間の暖房対策となった。

  環境ベンチャー企業の方から「この建物にふさわしいのはバイオマス・ストーブではないでしょうか」と提案があり、半ばボランティアでストーブを設置していただいた。バイオマス・ストーブは廃材や木炭など木質系を燃料とするもの。実は、大学ではモウソウ竹が繁茂しコナラを枯らすので頭を悩ませていて、市民ボランティアに竹林の整備をお願いしている。竹用の炭焼き窯もあり、結構この炭焼きが学生にも人気がある。整備と燃料の確保、消費のサイクルがキャンパスの中で循環すれば研究にも広がりが出来る。

  また、タインミングよく、学生サークルに炭を焼く「クラブ炭焼き」が誕生した。現在、メンバー8人が「角間の里」の背戸の山で炭窯を製作中だ。自分で焼いた炭で暖をとる学生たちの姿も目に浮かぶ。この館が持つ、どこか懐かしい里山のイメージがなければ企業の方からのストーブの提案がなかったわけで、その意味では「角間の里」に感謝しなければならないと思っている。今月10日、正式に火入れして完成を祝う。これはいわば、金沢大学における「木質バイオマス記念日」なのだ。

 ⇒6日(土)夜・金沢の天気   雷雨

★メディアのツボ-34-

★メディアのツボ-34-

 「ちょっと待て」と言いたい。今回のNHK紅白歌合戦で不評を買った、DJ OZMAのヌードスーツについてのNHKの釈明が問題だ。

    公共放送の「トップレス」事件    

  NHKホームページの紅白歌合戦のページでお詫びが出た。3日午後11時ごろにチェックした。文面は以下だった。「DJ OZMAのバックダンサーが裸と見間違いかねないボディスーツを着用して出演した件について、NHKではこのような姿になるということは放送まで知りませんでした。衣装の最終チェックであるリハーサルでは放送のような衣装ではありませんでした。今回の紅白のテーマにふさわしくないパフォーマンスだったと考えます。視聴者の皆様に深いな思いをおかけして誠に申し訳なく考えております」

  ところが、インターネットのポータル(ヤフーなど)のニュースで「NHKがDJ OZMAを突き放す」などと掲載されると、今度はその紅白ページのくだんのお詫び文を消去したのである(4日午前1時30分現在)。「ちょっと待て」と冒頭に書いたのは、そうした「お詫び掲載」と「消去」の真意と一貫性がどこにあるのかと問いたいからである。

  もともとお詫びには、「責任の所在はNHKにはない。DJ OZMAがゲリラ的にやったことで、NHKも被害者だ」というニュアンスが感じられた。これはこれで問題なのだが、他メディアに取り上げられたから消去する(隠滅という表現が正確かもしれない)というのは合点がいかない。

  こう推測した。このお詫び文は、ヌードスーツの反響の大きさに反応した現場の責任者(プロデューサークラス)判断でホームページ制作担当者に指示してお詫び文をアップロードした。その後、そのお詫び文がさらに他メディアに取り上げられ、上部層の知るところとなった。そして、上部層がホームページのアップを指示した責任者に「橋本会長の会見前に火に油を注ぐことはするな」と一喝したのだろう。そこでお詫び文を消去した。そんな構図が見えるようである。

  ともあれ、きょう4日のNHKの橋本会長の記者会見の釈明を聞きたい。何しろ、この公共放送のヌードスーツ事件、すでに「国際ニュース」になっているのである。※写真はヤフー・アメリカで掲載されたロイター電

                                       ◇

 NHKの橋本会長は4日、職員に向けた年頭のあいさつで、「視聴者に不快な思いをさせるパフォーマンスがあり、『これがNHKの品格か』と厳しい意見をいただいた。視聴者に方々に申し訳なく思う」と謝罪した(サンケイ新聞インターネット版)。

⇒4日(木)朝・金沢の天気   くもり

☆「自然産業の世紀」

☆「自然産業の世紀」

 この正月に読んだ「自然産業の世紀」(創森社、編集・アミタ持続可能経済研究所)には考えさせられた。なにしろ、京都にあるこの民間の研究所は自らをシンクタンクと呼ばない。現場主義を貫き行動するシンクタンクだとして、「ドゥタンク」と称している。

  「人類はどこから来て、どこに行くのだろうか」という壮大なテーマを掲げて、持続可能な社会とは何かを徹底して論理的に実践的に追求する、そんなドゥタンクなのだ。設立は2005年7月、京都市上京区室町道にある築150年の京町屋に研究所を構えている。

  本の中身を紹介する。琵琶湖ではブラックバスが幅を利かせている。ルアーでのバス釣りファン(バサー)に分け入って、市民らで構成する「外来魚バスターズ」がスズキのエビまき釣りを応用してブラックバスの大物をどんどんと釣り上げる。バサーたちは釣りの魚信を楽しんでまた湖に放す(C&R=キャッチ・アンド・リリース)。バスターズたちの楽しみは駆除だ。バスの大物が駆除され、その制圧力が失われると、在来魚のフナを中心とするコイ科の中型魚が勢力を取り戻し、ブルーギルや小型のバスを駆逐する。だから、湖の生態系を守るためには大物バスをまず釣り上げ駆除する必要があるのだ。

  バスを湖に放流したのは誰か。琵琶湖と言わず、日本中の湖沼にバスが放たれた。バス釣りブームが起き、儲けた者たちがいる。そして2005年6月に外来生物法が施行され、バスはその一次指定種となる。なぜ法律までつくらなければならなかったのか。これは「密放流の上に成立したブラックバス釣り産業の問題だ」と断じる。そして話は駆除のためのエコマネーへと展開していく。実は、2003年から3年計画で行政が予算をつけ、実際にエコマネーが実施される。すると、ホームレスの人々が琵琶湖に来て、簡単な釣り竿とミミズをエサに外来魚を釣りまくるという「意外な活躍を見せた」とエピソードを紹介している。

  内容は生態系にまつわる事例から、衣料にも及ぶ。京都のある「裁縫カフェ」を話の切り口に、オーガニックコットンの話が展開される。コットン(綿)は栽培に大量の農薬と化学肥料を使い、さらに製品加工に蛍光増白剤などの化学薬品を使用する。この量が半端ではない。しかし、少々コストはかかるが、農薬を使わない栽培方法が進んでいる。スポーツ衣料の最大手・ナイキもこのオーガニックコットンを採用し、2010年までにすべての綿製品を切り替えるという。もう綿衣料の国際的なトレンドは決まっているのだ。

  ところで、タイトルにある「自然産業」とは何か。いまの日本の自然資源を長く継続的に利用して発展させるさまざまな経済活動を定義する。アジア・モンースの恵まれた気象環境の中で、農薬を散布しない安心で安全な米作りを我々の先祖は何千年にもわたってしてきたではないか、そんな風にこの本は読者に語りかける。

  研究所が出版した本というと「机上の物語」の印象が強く、すぐ飽きがくる。しかし、ドゥタンクをめざすだけあって、この本の記述は現場目線に徹していて具体的、かつ面白い。話の切り出しはローカルのネタながら、論理の展開はグローバルに広がっていく。

 ⇒3日(水)夜・金沢の天気  くもり

★元旦、晴天に映える兼六園

★元旦、晴天に映える兼六園

 2007年の元旦、金沢はよく晴れた。午後から兼六園に隣接する金沢神社に初詣に出かけた。案の定、観光客の混み合いと参拝客で周辺はごった返していた。初詣の列もこれまでになく長いと感じた。

  家人を列につけさせ、私は無料開放された兼六園にカメラのアングルを求めて入った。お目当ては兼六園の中でも見栄えがする、唐崎(からさき)の松の雪つりである。ごらんの通り、青空に映える幾何学模様の雪つりである。このほか、冬桜を撮影して列に戻った。思ったほど列は進んでいない。

  列に並んで、ふと気がついた。若者も相当いるのに、携帯電話をかけている人が少ない。これまでだと無邪気に周囲かまわず電話をかける姿を必ず見たものだ。そして女性の和服姿が例年より多いことにも気づいた。何か青空と関係があるのか知れないと思ったが、根拠らしいものは考え出せなかった。ひょっとして偶然かもしれない。

  ことろできょう2日、大晦日のNHK紅白歌合戦の視聴率が発表された。関東地区で第1部30.6%、第2部39.8%(関西地区は1部28.5%、2部37.6%)となり、第1部で1990年と並び過去最低、第2部でも2004年に次ぐワースト2位だった。前年にやや持ち直していた視聴率も第1部で4.8ポイント、第2部で3.1ポイントそれぞれダウンである。

  しかも今回は、「DJ OZMA」の演出の中で、女性ダンサーが上着を脱いで上半身裸になったように見えるシーンがあり、ひんしゅくを買った。ボディスーツとは言え、そのボディスーツに女性の裸体が描かれているのだから、気がついた視聴者は誰だって「トップレスで踊りか。いくら視聴率稼ぎでも露骨」と思ったに違いない。私は気味の悪さを感じた。

 本来、本番前のリハーサルでプロデューサーやディレクターのチェックがあるはずだ。あるいは、それより以前の打ち合わせ段階でNHKの衣装担当が必ずチェックするものではないか。これがすんなり通っていたとすれば、NHKの制作現場は「あの程度は問題ない」、あるいは「それを問題にする視聴者がおかしい」くらいに済ませていたのか知れない。

  テレビを見た視聴者の中で、義憤に感じてわざわざテレビ局に電話をする人が仮に1万人に1人だったとする。今回750本もの苦情電話(NHK調べ)があったのだから、750万人の人が憤っていたと考えたほうが素直だ。それにしても、あのダンサーの演出が事前に問題にならなかったとは、視聴者感覚と随分とズレた話ではある。

 ⇒2日(火)午後・金沢の天気   くもり 

☆チャンネルレビュー2006「視聴率」

☆チャンネルレビュー2006「視聴率」

 ことしのテレビの年間視聴率(1月1日-12月24日)のランキングが30日付の北陸中日新聞で掲載されていた。サッカー・ワールドカップやトリノオリンピックなど大型のスポーツイベントがあり、総合ベスト10のうち、スポーツが9つも占めるという結果になった。そこから何が見えるのか。視聴率の調査会社「ビデオリサーチ社」が公開している視聴率データ(関東地区)をもとに振り返る。

  ことしの総合トップは52.7%で「サッカー・2006FIFAワールドカップ 日本VSクロアチア」(6月18日・テレビ朝日)だった。試合はドローだったが、175分の緊張感はこのゼロの試合展開で保たれ、高視聴率に結びついた。以下8位まで「ワールド・ベースボール・クラシック」「ボクシング・亀田兄弟ダブルメイン」「トリノオリンピック」と続く。9位にようやくドラマ「HERO」31.8%(7月3日・フジテレビ)がランキングされてくる。そして、10位で「ボクシング・世界ライトフライ級 亀田興毅VSファン・ランダエタ」となる。つまり、年間の高視聴率10番組のうち、9つもスポーツものがランキングされた。

  数字だけを眺めれば、日本のテレビ局はスポーツコンテンツに頼らざるを得ないのか、という気分になってくる。が、つぶさに数字を追っていくとスポーツ番組の中で異変が生じているのが分かる。

  3月21日の「ワールド・ベースボール・クラシック」43.4%は、キューバとの決勝に勝ち日本が世界一となったため。しかし、これを除けば、日本のプロ野球コンテンツは上位にランキングされていないのである。序盤に巨人が首位を快走しながら数字が伸び悩み、巨人の負けがこみ出すとさらに低下した。そして、7月の巨人戦ナイターの月間平均視聴率が7.2%に落ち込むと、フジテレビが8月以降の地上波での中継をやめるという事態になった。

  さらに、読売グループの日本テレビは来季の巨人戦の主催試合(72試合)について、地上波は40試合しか放送しないと発表した(12月14日)。系列のCS放送では全試合を放送する。つまり、もう地上波の放送コンテンツとして営業的に限界線を超えているとの判断だろう。

 ちょうど10年前の1996年の視聴率ランキングでは、日本シリーズ第2戦・巨人VSオリックスと総選挙開票スペシャル番組を同一画面で見せた日本テレビが43.3%を稼ぎ、年間ランキングで2位。ほかにもベスト10のうち、巨人戦がらみの3つの中継番組が入った。こうした数字とことしを比較すると、日本テレビの危機感は相当のものだろう。民放キー局の9月中間決算でも、日本テレビの売上高は対前年同期比でマイナス5.5%となり他キー局に比べ際立った。

  スポーツ以外の番組視聴率はどうか。世界で起きていることを事実に基づき検証するといった報道番組となると、「教育・教養」のジャンルで10位にランキングされてる「筑紫哲也・安住紳一郎NYテロ5年目の真実」17.4%(9月11日・TBS)ぐらいである。それではエンターテイメントの娯楽番組はいうと、これは1位が「SMAP×SMAP」26.6%(3月13日・フジテレビ)。視聴率とすると悪くはない。「面白くなければテレビではない」のフジテレビは健在だ。

  そこで注目が集まるのは、きょう31日夜のNHK紅白歌合戦の視聴率だ。かつて大晦日の風物詩、あるいは国民的行事とまでいわれた番組も2000年以降、一度も視聴率50%を超えていない。面白いのは、フジテレビはきょうの紅白歌合戦に最近人気のフィギュアスケートをぶつけてくる。全日本選手権を制した浅田真央ら大会上位選手が顔をそろえる華やかなアイスショーの収録もの。さらにNHKはこれを意識して、紅白歌合戦の特別ゲストにトリノオリンピックのフィギュアスケート金メダリスト、荒川静香を起用している。

  不祥事が続き、受信料不払い、命令放送などなど、この1年も揺れに揺れたNHKはこの番組だけは死守したい。あやかれる人気にすべてあやかりたい、そんな思いが滲む。おそらくNHKの目標は1部40%(前回35.4%)、2部45%(同42.9%)だろう。しかし、他のマスメディアの関心事は2部が40%を切るかどうか、その一点に違いない。NHKを見る目線はいまだに厳しい。

 ⇒31日(日)午後・金沢の天気  はれ 

★ニュースアングル2006「敗北か」

★ニュースアングル2006「敗北か」

 ことしのニュースで印象深かったもの、それは12月10日の剣道世界選手権だった。男子団体が準決勝にアメリカに敗れた。37年目にして喫した敗北だった。各紙が歴史的な敗北として、「剣道敗れる。日本の国技危うし」「剣道最大の危機」などど見出しを立てた。折りしも、ハリウッド映画「ラストサムライ」がヒットしただけに、日本のプライドが傷ついたのかも知れない。しかし、当の外国人は勝負のレベルでこの試合結果を考えているのだろうか、と思う。

 このニュースを読んで、去年7月、金沢大学で講演いただいたイギリスの大英博物館名誉日本部長、ヴィクター・ハリス氏=写真=の言葉を思い出した。ハリス氏は日本の刀剣に造詣が深く、宮本武蔵の「五輪書」を初めて英訳した人物だ。ハリス氏はヨーロッパ剣道連盟の副会長の要職にあった。そのハリス氏が講演の最後の方に以下のような苦言を呈した。

 日本の剣道は精神文化の一つの行き着く先でもある。それを、国際的なスポーツにしようと意識する余り、勝ち負けという小さな世界に押し込めるのはいかがなものか、と。「ヨーロッパで剣道を始める人のほとんどは、勝ち負けを超えた、その精神性にあこがれて入門している」と。剣道をオリンピックの競技種目にとの声が日本人から発せられていることを牽制したかたちだ。「誇り高い精神修養を勝ち負けだけの判断基準であるスポーツに貶(おとし)めるな」とハリス氏は強調したのを覚えている。

 この点からいくと、アメリカチームが日本チームを凌いだことは意味がある。ハリス氏流に解釈すれば、剣道の宗家である日本に勝つことは宮本武蔵に一歩近づくことと同じなのだ。サムライの中のサムライ、宮本武蔵に近づいたという実感がアメリカチームに湧き上がったに違いない。

 勝ち負けではなく、ストイックに技を極めるプロテスタントの精神と剣道は合理性が合っているのかもしれない。ふとそんなことを考えさせるニュースだった。

⇒28日(木)夜・加賀市山代温泉の天気  あめ