☆2012ミサ・ソレニムス~2
「地球は温暖化しているはずなのに、この寒さは何だ」と叫びたくなる。朝起きてみると、自宅に周囲は20㌢ほどの積雪だ。2005年12月の異常寒波を思い出す。当時、厳しい寒波の原因として気象庁や専門家が注目したのは「北極振動」と呼ばれる現象だった。北極振動(AO、Arctic Oscillation)。北極は寒気の蓄積と放出を繰り返している。蓄積中は極地を中心に寒気の偏西風は円状に吹くが、ひとたび放出に切り替わると、北半球では大陸の地形から寒気が三方向に南下し、日本列島を含むユーラシア大陸などを蛇行する。今回はサンタならぬ、クスマス寒波だ。さて、「2012ミサ・ソレニムス~2」は事件簿を振り返る。
善良な市民であり、凶悪な警察官であり…
ことし記すべき事件簿ならば、本来、兵庫県尼崎市の連続変死事件だろう。ところが、殺人と逮捕監禁容疑で逮捕されていた主犯とみられる角田美代子容疑者(64歳)は留置場内での自殺(12月12日)。周辺で6人の遺体が見つかり、なお3人が行方不明の事件の捜査はこれから本格化するところだった。事件すら、衆院総選挙ですっかりかすんでしまった。
年末に驚く事件が報じられた。現職の警察官が殺人と放火という前代未聞の罪を犯した。富山県警が22日、警部補で休職中の加野猛容疑者=54歳、富山市=を殺人と現住建造物等放火、死体損壊の疑いで逮捕したと発表した。ただ、続報でも、その殺しの動機が一切伝わってこない。なぜだ。
報じられていることをまとめると、加野容疑者は高岡署留置管理課に勤務していた2010年4月20日正午ごろ、富山市大泉のビル2階の住居で、会社役員(当時79歳)と妻(同75歳)の首を、ひもで絞めて殺したうえ、持ち込んだ灯油をまいて放火し、死体を損壊した疑い。容疑者はこの日休みだった。殺された夫妻は2004年まで容疑者の住む同市森地区に住んでいて、夫妻とは30数年来のつきあいがあった、という。容疑者は消費者金融などから200万円前後の借金があったとも伝えられている。
殺害があった5ヵ月後の2010年9月、自宅で睡眠導入剤を大量に飲み、自殺を図ったこと。当時勤めていた高岡署の上司や家族に宛てた複数の遺書が見つかっていたが、自殺を図った動機を「健康問題や家族の悩み」と説明していたという。夫婦殺害には触れていなかった。容疑者は当時、殺害された夫妻とつきあいがありマークされてた。ことし10月と11月に2度、地方公務法(守秘義務)で2度逮捕されている。9月、勤務していた高岡署内で、留置人の差し入れに訪れた男性に、男性の知人の暴力団員が近く逮捕されることを、別の知人男性には覚醒剤事件の捜査情報を漏らした疑い。
一方で、容疑者はことし4月から町内会長を務めていた。世話好きだったらしい。また、採集した昆虫の標本を地区の文化祭に出展したり、育てたカブトムシを子どもたちに配ったりして、「昆虫博士」として地域で知られていた、と。
奇妙なキャラクターではある。自殺を図る心理状況と、町会長を引き受けるテンションの高さ。昆虫標本の作成と生物分類の集中力と、捜査情報をつい知人に漏らすルーズさ。善良な市民であり、凶悪な警察官、この2面性は何だろう。
⇒25日(火)朝・金沢の天気 ゆき
去年の今頃、気持ちはフィリピンにあった。年賀状で書いた文面はこうだった。「能登の里山里海が国連食糧農業機関の世界農業遺産(GIAHS)に認定されました(昨年6月)。半島の立地を生かした農林漁業の技術や文化、景観が総合的に評価されたものです。世界に12ヵ所あるGIAHS地域とネットワークを築くため、手始めに今月11日から6日間、フィリピンの『イフガオの棚田』に行きます。ささやかながら能登の明日に向けた新たな取り組みになればと思っています。2012年元旦」
興味が湧いたのは、現地では「田の神」ブルル=写真=の信仰があることだった。イフガオに米づくりをもたらした神様として崇められている。ここで日本では想像できない問題もある。フィリピンは多民族国家だが、9400万人の人口の8割はキリスト教徒だ。16世紀から始まるスペインの植民地化や、20世紀に入ってからのアメリカの支配による欧米化でキリスト教化されていったからだ。しかし、この地に根付くイフガオ族は歴史的にこうしたキリスト教化、地元でよくいわれる「クリスチャニティ(Christianity)」とは距離を置いてきた。コメに木に田んぼに神が宿る「八百万の神」を信じるイフガオ族にとって、キリスト教のような一神教は受け入れ難い。
現行の公職選挙法は、公示・告示後の選挙期間中は、法律で定められたビラやはがきなどを除き、「文書図画(とが)」を不特定多数に配布することを禁じている。候補者のホームページやツイッターなどソーシャルメディアの発信は、こうした文書図画に相当し、現行では認められていない。これまで、ネット選挙解禁についての論議は何度もありながらも、政治の混乱の中で法案は提出されてこなかった。たとえば、2010年の参院選挙の前に、民主、自民、公明の与野党は候補者・政党が選挙期間中にホームページやブログを更新できるとする公選法改正に合意していたのに、である。
テレビ朝日『選挙ステーション』では、20時34分に石川一区(金沢市)の出口調査の得票数をパーセントで発表していた。そのポイント。馳浩(自民)47.6%、奥田建(民主)23.4%、小間井俊輔(維新)19.3%、熊野盛夫(未来)5.5%と続いた。では、実際の得票率はどうだったのか。翌日の北陸中日新聞で掲載された確定票をもとにした獲得率は、馳浩47.87%、奥田建22.88%、小間井俊輔19.82%、熊野盛夫5.11%だった。馳の誤差はマイナス0.2、奥田プラス0.6、小間井マイナス0.5、熊野プラス0.4なのである。つまり、どの候補者も出口調査と確定票の得票率の誤差は1.0ポイント以下だったことになる。
猪瀬氏のキャラクターが面白い。国にものを言う前職の石原慎太郎氏とイメージがだぶる。さらに、小泉政権時代に、道路公団の民営化で無駄を徹底的に追及した行動力と改革力は記憶に新しい。そして、今回の選挙では、勝利したにもかかわらず、あえて万歳はせず、「東京は日本の心臓。東京から日本を変える」「東京が日本沈没を防がないといけない」など、官僚や国の規制に立ち向かう姿勢を強調した。前例の踏襲を嫌うタイプという。
その理由のいくつかを考えてみる。民主が分裂したこと。さらに、政党の離合集散で12政党が候補者を出し、まさに多党乱立。前回の「政権選択」といった明確な選挙の構図に比べ、争点が分かりにくかったことだろう。
一方、先日、金沢の知人から「あなたの英知に判断ゆだねる」とある候補者の推薦の葉書が届いた。能弁な友人なのだから自分の思いを葉書ではなく、電話なり、直接の会話で表現すればよいだろうと思う。日本全体がこの時期、人に向かって「私は○○候補に一票を投じたい。それの理由はこうだ」と話すことを控え、まるで自粛しているようだ。そのくせ、新聞やテレビの世論調査に目を凝らし、耳を傾けている。そして、最近声がかすれた候補者の乗った選挙カーが市内を走り回っている。この風景は何十年も変わらない。盛り上がらない、まさに、選挙停滞の風景なのだ。
昨日、北朝鮮が弾道ミサイルの技術を使って、自前の運搬手段で人工衛星を打ち上げた世界10番目の国になったと報じられた。最初に打ち上げたのはソビエト(当時、1957年)で、韓国も人工衛星を打ち上げているが、自前のものではなく、ランキング上では北朝鮮に抜かれた格好だ。
この過剰適合の悲劇は実際に日本の社会のあちこちで起きている。人種も言語も多様ではない、この国の社会は画一性を生み、工業化社会では断トツのチカラを発揮した。しかし、多様性が発揮される情報化社会では出遅れてしまった。その代表例が「民主主義と選挙」の関係ではないかと考える。
では、なぜそうしなけらばならないのか。これは法律で決められている。「新聞紙(これに類する通信類を含む)又は雑誌が、選挙に関し、報道及び評論を掲載する自由を妨げるものではない。但し、虚偽の事項を記載し又は事実を歪曲して記載する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない」(公選法第148条)