#コラム

★2014ミサ・ソレニムス~3

★2014ミサ・ソレニムス~3

  東洋英和女学院大4年の学生22歳が、ホステスのアルバイト経験を理由に日本テレビからアナウンサーの内定を取り消され、採用を求めた民事訴訟できょう26日、東京地裁で和解勧告が行われたと報じられた。

   ~ テレビ局の力量が問われる、アナウンサー内定取り消し問題 ~

 和解協議は非公開で、詳しい内容は不明だが、双方の代理人が出席し、日テレ側から学生側に和解案が提示されたとみられる。学生は来年4月のアナウンス職での入社を求め、日テレも徹底抗戦の構えを見せていたが、入社もしくは金銭での補償を含んだ提案で、強硬姿勢を崩したかっこうだ。第2回の口頭弁論は予定通り、来年1月15日となっているが、年明けにも引き続き和解協議が行われる予定だという。

  そもそもなぜ内定が取り消されたのか、その理由が理解できない。ホステスのアルバイトがよくないというのならば、募集段階からホステスなど風俗のアルバト経験者は不可と明示すべきだろう。もちろん、日テレが内定を取り消したのは、採用後に週刊誌などでスキャンダルとして掲載されることを恐れたのだろうことは想像に難くない。それだったら、アナウンス職での採用であっても、しばらくは表(画面)に出さなければよい。人事の裁量権でなんとでもなる。要は、筆記試験、社員面接、重役面接、社長面接など難関を突破したのだから、つまり会社が見込んだのだからアルバイト経験だけで切り捨てることは無理がある。逆に、そうした経験をキャラとして使いこなせばよい。それがテレビ局の技量というものだ。

  さらに話を総合すると、学生は2015年度入社のアナウンサーとしの採用内定通知を渡され、ことし3月に、人事担当者に以前、母親の知り合い筋の銀座のクラブで短期間アルバイトをしていたことがあるとを告げた。すると、4月に入り、クラブでホステスをしていた経歴は、アナウンサーに求められる清廉性に相応しくないとの理由で、内定辞退を求める文書が送られて来たという。学生が辞退しないと答えたところ、5月末に内定取り消しの通知が届いた。

  一部のメディアで紹介されていたが、フジテレビの亀山千広社長が11月28日の定例記者会見で、今回の日テレの内定取り消し問題について、「(フジの場合は)内定を出した以上は採用すると思う」と独自の見解を話し、清廉性については視聴者がどう見るかに委ねたいと語ったという。これが本筋の話しだろう。

⇒26日(金)夜・金沢の天気     あめ

  
  
  

  

  

☆2014ミサ・ソレニムス~2

☆2014ミサ・ソレニムス~2

  11月18日に実施した金沢大学の学生131人の意識調査では、メディアや政治に関する内容も問うた。とくに最近の近隣国との緊張した関係を学生たちはどう感じているのだろうかと気になったからだ。「尖閣諸島や竹島など領土問題で、日本と中国・韓国との関係悪化が指摘されていますが、中国に親しみを感じますか」という問いには、「まったく感じない」または「あまり感じない」を選んだ学生が合わせて54.9%だった。「とても感じる」「やや感じる」の15.3%を大きく上回った。「韓国に親しみを感じますか」との質問でも、「まったく感じない」「あまり感じない」が51.9%で、「とても感じる」「やや感じる」は24.4%だった。つまり、学生たちの半数以上は近隣国とに親しみを感じないというのだ。

  ~ 近隣国に親しみ感じない学生半数、しかし、「外交努力で友好」望む73% ~

  一方で、「安倍総理や現役閣僚の靖国神社参拝が、中国や韓国の反発を招いていますが、靖国問題をどう思いますか」という質問には、回答した125人のうち、「戦争犠牲者を弔うのは当然」など肯定的と判断される意見が73件、「他国を刺激するので参拝すべきでない」など否定的とみられる意見の20件を上回った。「亡くなった人をお参りして周囲が騒ぐのはおかしい。でも他国の反応は想像がつくので考えて行動すべきだ」など中立的と判断される意見は19件あった。以上の数字だけでを読めば、大方の学生たちは日本にいろいろと干渉する隣国に随分と不快感を持っているようにも思える。

  別の角度から数字を眺めてみる。いわゆる「ヘイトスピーチ」が問題になっている在日特権を許さない市民の会(在特会)の主張をどう思うか聞くと、「反対」「どちらかというと反対」との答えが33.6%で、「賛成」「どちらかというと賛成」は29.8%。「わからない」が36.6%だった。

  学生たちに近隣国との在り様を尋ねた。「近隣諸国との緊張状態が続く東アジアのなかで、日本はこれからどうすべきだと思いますか」という質問には、「外交努力で友好に務める」を選んだ学生が73.1%を占めた。「外交的圧力をかける」は13.8%、「軍備を増強して備える」は4.6%だった。つまり、近隣諸国とぎくしゃくし、親しみを感じられない学生が半数をしめながらも、外交努力すべきだという人が多く、冷静でバランスのとれた考え方の学生が多いのである。

  そして、「日中戦争の発端となった満州事変以来の戦争は侵略だったと思いますか」との質問には、「思う」「やや思う」が57.7%、「思わない」「あまり思わない」は17.5%だった。25.2%が「わからない」と答えた。戦争を引き起こしたことには日本に非があると思っている学生が半数以上だ。これは上記の「外交努力で友好に務める」73.1%の意識のバックにあるように推察できる。

  ジャーナリズム論を履修している学生に対する意識調査ということで、学生のスタンスを勘案しなければならないが、若者の政治や世の中への関心は決して低くない。消費増税など身近な話題から国際問題まで幅広く関心があると感じた。

⇒25日(木)午後の金沢の天気  ゆき  
 

★2014ミサ・ソレニムス~1

★2014ミサ・ソレニムス~1

  昨夜(23日)金沢市の石川県立音楽堂コンサートホールで催された、荘厳ミサ曲(ミサ・ソレムニス)の演奏に聴き入った。石川県音楽文化協会などの主催で、もう52回目となり、県内では季節の恒例のイベントとして定着している。「キリエ (Kyrie)憐れみの讃歌」、「グロリア (Gloria)栄光の讃歌」、「クレド (Credo)信仰宣言」、「サンクトゥス (Sanctus)感謝の讃歌」、「アニュス・デイ (Agnus Dei)平和の讃歌」と進むちうちに心が高まった。80分の演奏時間は、決して「長い」とは感じなかった。むしろこの一年の出来事が思い出され、脳裏が高揚感と清明感にあふれたのは私だけだろうか。今回のコンサートを聴きながら2014年を振り返るよいチャンスにもなった。「2014ミサ・ソレニムス」と題して、この1年を回顧したい。

      ~ 学生たちは総選挙に何を思ったのか、意識調査から推察したこと ~

  ことし1年の世情のニュースで衝撃だったのは、年の瀬の予期せぬ衆院選挙が。安倍内閣の支持率が下がっていたこのタイミングで、消費税増税の延期を国民に問うというシナリオで描かれた選挙だった。自民単独で290議席を確保した。民主党がアベノミクス(安倍政権の経済政策)の破たんを訴えたが、代案が見えてこないので国民は現政権をある意味で冷静に支持したのだろう。ただし、投票率は戦後最低に下がり52%だった。

  大学で学生たちに授業(メディア論)を行ったいて、いつも気になっているのが若者の政治参加のことだ。若者たちに政治参加する意欲や気持ちが失われれば、民主主義も早晩危ういと日頃感じているからだ。そんな折、12月14日の投開票の衆院選を、大学生はどう考えているのだろうかと調査する機会に恵まれた。朝日新聞社と北陸朝日放送の協力を得て、11月18日に金沢大の学生に、メディアや政治に関する意識調査を実施した。その中から、衆院選に関する質問についての回答を今回紹介する。回答者は私が担当する「ジャーナリズム論」の受講生131人。

  授業で選択式や自由記述の質問に答えてもらった。131人のうち男性は105人、女性26人で、18歳と19歳が112人を占め、文系が43人、理系が88人だった。

  「最近、気になるニュースは何ですか?(複数回答可)」という質問(回答は記述式)に対しては、「消費増税」の問題を30人が挙げ、最も多かった。続くのが「衆院の解散総選挙」に関する19人だ。このほか、「GDP(国内総生産)のマイナス成長」や赤サンゴ密漁をはじめ日中や日韓関係に関する問題が挙がった。「消費増税の先送りについて民意を問うという安倍総理の衆院解散について、党利党略という指摘がありますが、あなたは今回の衆院解散をどう思いますか」と聞くと(回答は選択式)、「賛成」または「どちらかといえば賛成」が計29.0%で、「反対」と「どちらかといえば反対」の計26.7%を上回った。ただし、44.3%は「わからない」と答えた。「党利党略という指摘」との説明がなければ賛成がもっと多かった可能性がある。質問の仕方が違うが、朝日新聞社の11月の世論調査では、「この時期の解散、総選挙」について「賛成」は18%、「反対」が62%だった。つまり、意識調査に参加した多くの学生たちには選挙権はないが選挙に賛成する傾向があった。その理由とは何だったのか。

 「選挙の最大の争点は何だと思いますか」という問い(記述式)では、回答した117人のうち55人が「消費増税」関連を書いた。続いて「アベノミクス」についての16人。このほか「憲法改正」「女性議員の登用」などが挙がり、「わからない」が26人だった。上記の数字から以下推察した。

 解散賛成が反対を上回った点について。円安で食料品を中心に値上がりしており、仕送りで生活する学生にとって消費増税はダブルパンチだ。そこで、増税延期への民意を問うというのだから選挙には賛成が多いのだろう推測した。気になるニュースや争点の質問でも増税やアベノミクスへの関心が高い。学生のアルバイトの時給がこのところ値上がり傾向で、アベノミクスを実感しているのは学生かもしれない。

  学生たちは自民や民主ほかの政治的な主張には耳を傾ける傾向は薄い。ただ、現実問題として政治が学生たちの生活にどうかかわるのかといった点では関心があるだろう。調査後に学生たちに感想を聞くと、「衆院選の争点が何かという設問が書きづらかった」(男性)、「政治に関する質問は、普段考えないので難しかった」(女性)という声があった。おそらく学生たちにとってこの意識調査が政治への関心の入り口になってほしいと個人的に期待したい。

⇒24日(水)朝・金沢の天気    くもり

  

  

☆上空に寒気の投票日

☆上空に寒気の投票日

  上空に寒気が流れ込んでいるせいかみ、14日朝から金沢の平野部でも10数㌢ほどの積雪となった。朝7時40分に自宅を自家用車で出発して、輪島市に向かった。途中、大学の関係者を乗せるため、小立野台と呼んでいる高台を走ると積雪が一気に30㌢ほどにも増えた。同じ市内でも高低差などでこれほど違う。そんな金沢の積雪差を指してこう言う。「香林坊は雨でも、小立野台はみぞれ、湯涌は雪」と。

  金沢から輪島に向かう縦貫道「のと里山海道」(全長83㌔)を走る。金沢から向かうので当然、積雪は金沢よりも多いと判断しがちだが、そうではない。「金沢が大雪でも。能登は小雪」ということもままある。そこで、9時ごろに目的地に電話を入れた。輪島市内の山間部でさぞかし大雪と思いきや、「20数㌢ほど。軽四でも大丈夫」との返事。「チェーンもスコップもいらない。スノータイヤで大丈夫」と安心し、車を走らせた。雪国に住んでいると日常的にそんなことをついつい考える。

  10時すぎに、目的地の輪島市三井町に到着した。「あえのこと」を撮影するためだ。ユネスコの無形文化遺産に登録されている「奥能登のあえのこと」は、田の神に感謝して、もてなす農耕儀礼として知られている。毎年12月5日、その家の主(あるじ)は田んぼに神様を迎えに行く。あたかもそこに神がいるがごとく身振り手振りで迎え、自宅に招き入れる。お風呂に入ってもらい、座敷でご馳走でもてなす。田の神は目が不自由であるとの設定になっていて、ピタリティ(もてなし)が行き届く丁寧な所作が特徴だ。

  こうした伝統的な農耕儀礼を踏襲しつつも、新しいスタイルで「あえのこと」を行っているグループがある。デザイナーの萩野由紀さんが主宰し、金沢大学の生物研究者たちが加わる生物多様性調査グループ「まるやま組」だ。毎月の田んぼや周囲の生物調査をベースに、調査で見つかった生き物の名前を記した「依り代(よりしろ)」をつくっている。この依り代を広げてみると、ことし確認された300種の植物と123種の水生生物、合わせて423種の名前と学名が記され、絶命危惧種は赤字、外来種は青字で示している。この依り代を手に田んぼで神様を呼び寄せて家に招き入れ、食の安全と豊作に感謝する。田の神という伝統的な概念を自然の恵みとも解釈し、生物多様性の保全と結びつけてる。

  解釈だけではない。田の神に感謝するのは生産者だけでなく、コメを食べる消費者も同じ視点でこの「あえのこと」の儀式に参加しようとグループでは呼びかけている。14日、関心を寄せて集まった人数は50人がそれぞれ田の神に捧げるお酒、甘酒、お菓子、煮物、漬物、ご飯、野菜など持ち寄った。これを輪島塗の赤御膳に並べて供し、そのほかは「お下がり」と称して、儀式の後、参加者全員でいただくのである。まるやま組の伝統儀礼と現代解釈の取り組みは、「国連生物多様性の10年日本委員会」が主催する「生物多様性アクション大賞2014」でアクション対象に選ばれた(11月30日)。日本の文化を大切にする、食べることを通じて生物多様性、自然のめぐみに感謝するといった、日本人の忘れかけている大切なことを今に伝えている、高く評価された。

  まるやま組の「あえのこと」を里山の新たな動きとして取材するため、カメラマンと金沢大学里山里海プロジェクトの研究代表、中村浩二特任教授に赴いたのだった。中村教授が現地でリポート(英語)、そしてインタビューした。昔取った杵柄(きねづか)で、収録ディレクターというのが私の役回りだ。一連の取材が終わって金沢に戻ったのは19時ごろだった。夕方からさらに風雪が強くなってきた。

  きょうは衆院選挙の投票日だ。いったん自宅戻り、近くの投票所(中学校体育館)に入ったのはギリギリの19時58分。ラストの投票者だった。一票を投じた瞬間に「ちょうど午後8時になりましたので投票所を閉鎖します」と係員の声が響いた。自宅に戻ると、テレビ各社の選挙特番が始まっていた。もうすでに出口調査で、自民は230議席と報じられている。まだ、開票前なのに、である。

  この日、もう一つ仕事が残っていた。21時30分、金沢市の開票作業始まるのに合わせて、金沢市営中央市民体育館(同市長町3丁目)に出かけた。学生たちを激励するためだった。新聞社からの依頼で、学生たち何人かに開披台調査の選挙アルバイトを勧めた。この調査は、双眼鏡で開票者(自治体職員)の手元を覗きながら、小選挙区の候補者名をチェックしていく。投開票日のその日には、テレビ新聞メディアは投票所では出口調査が、開票所では開披台調査を実施する。出口調査で大差がついていれば、20時からの選挙特番で「当選確実」の予想は打てるのだが、小差ならば開披台調査で当落を判断することがある。

  21時30分、新聞社の調査を勧めた学生たちが一人もいない。開票所に新聞社の連絡員がいたので、「どうなっているのか」と問うと、急きょ石川3区(能登地区)の開票所に学生たちが派遣された、とのこと。出口調査の段階で1区(金沢市)の自民と民主の候補者の間で12ポイントの差がついていた。3区では自民と民主の候補者の差が7.1ポイントの差だった。当然、開披台調査の主力部隊は3区に注がれる。3区の七尾市の開票所に向かおうかと一瞬考えたが、夜間なので路面の凍結(アイスバーン)のことが頭をよぎって、向かうのをためらった。上空の寒気に朝から夜まで惑われた一日だった…。

※写真・上は輪島市で執り行われた「まるやま組」の農耕儀礼「あえのこと」の様子。手前はダイコン、無効に押し花が飾られている。写真・下は金沢市中央市民体育館の衆院選石川1区の開票作業の様子(午後9時32分)

⇒14日(日)夜・金沢の天気  ゆき     

★初雪と衆院選挙

★初雪と衆院選挙

  いよいよ来た、という感じだ。しかも、いっしょに来た、である。雪の訪れと衆院選挙。衆院選挙は昨日(2日)に公示され、雪はきょう3日が初雪である。この初雪と衆院選挙のホットな身の回りの動きをいくつか。

  昨日、私の総合科目授業「ジャーナリズム論」「マスメディアと現代を読み解く」を履修してくれている学生たちにメールで呼びかけた。「メディアと選挙に関心のある学生のみなさんへ きょう2日は衆院選挙の公示日です。14日(日)に投票と開票が実施されます。「争点がみえにくい」と言われますが、安倍政権の中間評価が問われる選挙です。メディアもフルに動いています。そのピークはもちろん14日です。当落をいち早く予想するのです。朝日新聞金沢総局と北陸朝日放送では、選挙速報のための調査を14日夜、実施します。14日の当日19時から23時半まで、金沢市長町3丁目の同市中央市民体育館ほか石川県内の各開票場で実施します。もちろんバイト代やタクシー代は出ます。メディアによる選挙取材の裏ワザを勉強するよい機会ですので、参加希望者はメールで申し込んでください。5日(金)18時10分から地域連携推進センター2Fで説明会を開催します。メディアと選挙の勉強にきてください。」と。

  この調査はジャーナリズム論で提携している朝日新聞からの選挙調査の学生バイトの依頼だが、学生たちが選挙調査に関わることでメディアと選挙の在り様を学んだり、それより何より、選挙に関心を持ってもらうよい機会になればと思い協力している。この選挙調査は開披台(かいひだい)調査といって、開票場で作業を行う自治体職員の手元を双眼鏡でウオッチし、候補者の得票を数え、メディアの選挙報道センターにリアルタイムに伝えるもの。バードウオッチングのような手法だ。新聞社とテレビ局では、こうしたデータを総合的に分析し、当選確実の速報を打っていく。双眼鏡で手元をのぞき見する訳で違法ではないかと思われるが、各メディアが自治体の選挙管理委員会に事前に届けて行う、認知された行為である。

  昨日午後は少々慌てた。風雨が吹き荒れ、真冬の寒波並みだった。沿道に旗がバタバタと音をたててなびいている。よく見ると、「アベノミクス前進」「景気回復優先」などと書かれてある。このテの旗は野党の得意技だと思っていたが、自民が先手を打っているという印象を受けた。事前に綿密に計算された「選挙運動」ではある。

  昨日夕方、自宅に戻り、ノーマルタイヤからスノータイヤに交換するため予約を入れようとなじみのディーラーに電話した。すると、「今週はムリです」と素気ない。来週に予約を入れたが、路面の凍結を気にしながらの運転が続く。電話の後、しばらくして固定電話が鳴った。受話器を取ると、地元の新聞社からで選挙に関するアンケート調査に協力してほしい、という。「協力しますよ」と返事すると、「お宅に20代から30代の方がおられたら、電話を代わってもらえないか」と問うてきたので、「今はいません」と返事すると、「それでしたら結構です」と電話の向こうから謝絶してきた。20代や30代の声がなかなか集まっていないようだ。

  2014年師走の選挙はどう動くのか。14日までの選挙の動き、ランダムに記載したい。

⇒3日(水)朝・金沢の天気   みぞれ

  
  

☆ノーサイドの演出

☆ノーサイドの演出

  先月(10月)5日に投開票が実施された金沢市長選で前市長の山野之義氏(52)が自民・公明推薦の候補に大差をつけて当選したことの考察をこのブログで紹介した。その金沢市長選が昨日23日告示され、現職の山野氏のほかに立候補の届け出がなく、無投票で3選が決まった。山野氏は8月に1期目の途中で辞職し、先月の出直し選で再選された。公職選挙法の規定で任期は辞職前と同じ12月9日までのため、任期は次が2期目となる。何ともややこしい。

  さて、山野氏は、競輪の場外車券売り場の誘致をめぐって業者と不透明なやり取りをしていたとの批判を受けて辞職した。しかし、支援者らに経緯の説明を重ねていくなかで、「市民の審判を仰ぐ」と10月の出直し選への立候補を決意したのだった。フタを開けると、9万票以上の得票で自民・公明が推す候補らを寄せ付けず圧勝、再選された。しかし、議会は車券場問題を追及するため、山野氏や業者を招致して経緯の説明を求めてきた。10月下旬には、地方自治法に基づく調査特別委員会(百条委員会)が設置された。12月中に山野氏を証人喚問することも決まっている。

  ここで話はさらにややこしくなる。12月2日公示される衆院選石川1区に出馬する馳浩氏(自民)の選対本部顧問に山野氏が就任するというのだ。馳氏は、山野氏が8月に引責辞職した原因となった競輪場外車券売り場問題の新たな事実を自民党の会合で示し、政治問題化し、「山野下ろし」へと誘導した。10月の市長選では、自民・公明推薦の候補を支援し、選挙戦を通じて山野氏が出馬したことに、激しく批判する発言を繰り返していた。しかし、馳氏側は選対本部顧問の就任を山野氏に依頼した。10月の市長選で対立した関係から一転して、圧勝した山野氏との和解をアピールすることで、市長選のしこりが自らの選挙に及ぶことを抑える意図が見える。いわば、市長選の「ノーサイド」を演出したのである。

  地元メディアはこう報じている。「20日に市内で開かれた選対の準備会合後、本部長を務める中村勲石川県議が明らかにした。顧問は他に県関係の参院議員3人。中村氏によると、19日に山野氏に近い紐野義昭県議、高村佳伸金沢市議が顧問就任を要請、山野氏は二つ返事で引き受けた」(北陸中日新聞)と。つまり、山野氏は顧問を引き受けて損をすることはない。わだかまりを拭い去る、よいチャンスと状況を読んだのかもしれない。有権者には、すっきりと理解できない、すんなりとは腑に落ちない、両者の政治行動ではある。

写真説明:金沢市長選の候補者ポスター掲示板。山野氏の無投票当選だった。

⇒24日(祝)夜の金沢の天気    あめ

 

★イフガオにて‐下

★イフガオにて‐下

  イフガオの現地入りに先立ち、11月12日、JICAフィリピン事務所を訪ね、丹羽憲昭所長、小豆澤英豪次長に、JICA草の根技術協力(地域経済活性化特別枠)事業「世界農業遺産(GIAHS)イフガオの棚田の持続的発展のための人材養成プログラムの構築支援事業」の進捗状況を説明した。プロジェクトの実施責任者である中村浩二特任教授が昨年11月の事業採択内定から、現地パートナーとのミニッツ(合意文書)の締結、現地説明会、イフガオGIAHS持続発展協議会とイフガオ支援協議会(能登)の設立、カリキュラム作成、受講生募集、現地調整員の赴任、ワークショップ開催、講義の開始、能登研修などの流れを説明。「ソフト事業はカタチが見えにくいが、人材養成は大学ならでは試み」と述べたのに対し、丹羽所長からは「モデル事業として成功させてほしい」と期待が寄せられた。

      イフガオ州大学長「イフガオ棚田を今後2000年持続していく」

  14日、イフガオ里山マイスター養成プログラムの第6回の講義がイフガオ州大学で行われた。今回日本からのイフガオに訪れた講師陣は多彩な顔ぶれだった。能登里山里海マイスター育成プログラムの教員、小路晋作特任准教授とシュクル・ラフマン教務補佐員、国連大学サステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)のイヴォーン・ユー研究員の3人が講義を行った。

  小路氏は「“Noto Satoyama Satoumi Meister” Training Program: an outline」と「Ecosystem approach for Noto’s Satoyama Satoumi」の2つをテーマに能登里山里海マイスター育成プログラムの取り組みの現状と自然と共生する農林水産業について解説。シュクル氏は「Intangible Cultural Heritage」と「My Experience of Meister Program in Noto」と題して、能登の「アエノコト」などユネスコ無形文化遺産について説明し、能登里山里海マイスター育成プログラムの修了生たちの取り組みを紹介した。イヴォーン氏は「GIAHS monitoring and role of OUIK in GIAHS Twinnig Program」のテーマで世界農業遺産の発展させるためのモニタリング調査の重要性と国連大学の役割、今後の連携を説明した。

  ゴハヨン・イフガオ州大学長はイフガオ里山マイスター養成プログラムの意義についてこう述べた。「私たちは、能登マイスターと同じだけの情熱とエネルギーでイフガオ里山マイスターに取り組んでゆく。このプログラムが、FAOによって認定されたGIAHSイフガオ棚田を保全し、活性化することを信じます。イフガオ棚田は、私たちの祖先が、2000年かけて築き上げてきた遺産であります。私たちは、これをこれからの2000年にわたり持続してゆく」。学長のこの言葉にイフガオ再生を成し遂げる決意を感じた。

⇒15日(土)イフガオの夜   はれ  

  

  

☆イフガオにて‐中

☆イフガオにて‐中

  イフガオに入って2日目。イフガオ里山マイスター養成プログラムを現地で支援する「イフガオGIAHS持続発展協議会(IGDC=Ifugao GIAHS Sustainable Development Committee)が11月14日開催された。イフガオGIAHS持続発展協議会はことし3月25日に設立され、イフオガ州のアティ・デニス・ハバウエル知事が会長に就任した。今回の会合はイフガオ里山マイスター養成プログラムの活動状況を報告する目的で、州知事はじめ、バナウエ、ホンデュワン、マユヤオの3自治体関係者が参加した。

        州知事をうならせた受講生の課題研究プレゼン           

  開会挨拶のなかで、イフガオ州大学のセラフィン・ゴハヨン学長が、イフガオの棚田を保全する人材養成を支援するための学内組織「GIAHS支援センター(仮)」の設置を表明した。続いて、JICA事業「世界農業遺産(GIAHS)イフガオの棚田の持続的発展のための人材養成プログラムの構築支援事業」の日本側実施責任である金沢大学の中村浩二特任教授が能登里山里海マイスター育成プログラムの取り組みの進捗状況を説明。イフガオ州大学のダイナ・リチヤヨ教授がイフガオ里山マイスター養成プログラムこれまでの活動状況(6回の講義、能登研修など)を報告した。その後、受講生の中から選ばれた5人が課題研究の中間報告をプレゼンし、イフガオに伝わる農耕や文化資源の価値を再評価し、現代の視点で活かす試みを披露しました。この協議会のハイライトは前回のコラムでも掲載したように受講生たちの課題研究のプレゼンだ。

  アマラ・ダーエンさん=民間事務職員=の研究テーマは「伝統的な薬用植物」。イフガオの集落の多くは人里離れており、伝統的な薬用植物を自前で調達してきた。咳止めや糖尿病に効くといわれる薬用植物を10種類採取し、専門家の意見を聞きデータ収集。市販も視野に。ジェネリン・リモングさん=自治体職員(農業)=の研究テーマ「市販飼料と有機飼料による養豚の比較」。市販の飼料による養豚より、伝統の有機飼料の養豚の方がコストも発育も優れていることをデータにより示した。マリヤ・ナユサンさん=保育士=の研究テーマは「離乳食に活用する伝統のコメ品種」。保育士の立場から、離乳食の歴史を調べる。乳児の発育によいイフガオ伝統コメ品種を比較調査している。マイラ・ワチャイナさん=家事手伝い・主婦=の研究テーマは「伝統品種米の醸造加工」。親族が遺した伝統のライス・ワイン製造器を活用し、イネ品種や、イースト菌の違いによる酒味やコクを調査。売上の一部を棚田保全に役立てる販売システムを検討している。

  受講生たちの発表を受けて今後のイフガオGIAHS持続発展協議会の取り組みの方向性などが話し合われた。まず、議長を務めたハバウエル知事は、「かつて先ほどの発表のような伝統資源のビジネス化をテー マとした事業化を計ったことがあったがうまくいかなかった。今回のプレゼンを聞いて、研究調査計画がよく練られており、たとえばライス・ワインなどは市場価値が高いと感じている。州政府として今後予算化も含めて、イフガオ里山マイスター養成プログラムの受講生たちを支援する取り組みを始めなければならないと考えている」と高く評価した=写真・下=。

  ゴハヨン・イフガオ州大学長は「受講生たちはこれまでのマイスター授業(6回)で里山概論、土地利用、生態学的な視点、伝統的なコメづくり、地元食材の料理法などを学んでいる。その上で、イフガオ棚田を保全し、活性化することを自らのテーマとして選び、調査し、議論を重ねた上でプレゼンしている。これらの課題研究はイフガオにとって非常に有用で、可能性がある」と述べた。

⇒14日(金)夜・イフガオの天気    はれ
        

★イフガオにて‐上

★イフガオにて‐上

  今月11日に成田空港、マニラ空港を経由してフィリピンに入った。13日と14日に開催されるイフガオ里山マイスター養成プログラムの授業とワークショプに参加するためだ。イフガオ里山マイスター養成プログラムでは月1回(1泊2日)、イフガオ州大学を拠点に現地の若者(社会人)20人がフィリピン大学やイフガオ州大学の教員の指導で地域資源の活用や生物多様性と環境、持続可能な地域づくり、ビジネス創出について学んでいる。

         イフガオの文化・伝統資源を価値として活かす地域の若者たち

  イフガオの棚田は1995年にユネスコの世界文化遺産、2005年には国連食糧農業遺産に認定されている、壮大な棚田だ。その面積はざっと1万7000㌶、東京ディズニーランドとディズニーシーを合せた面積が100㌶なので、その170倍も広がる広大な棚田だ。さて、そのイフガオの棚田で起きている現実はこれまで何度かこのコラムで述べてきたように、若者の農業離れだ。現地の人が言うには、最近は若者だけでなく、中高年の田んぼ離れも広がっている、と。世界遺産でもある地域の文化を今度どう守って、継続的に発展させていけばよいのか、まったく日本と同じような、いや世界で起きているこの若者の農業離れという問題に向き合えばよいのか。そこで、金沢大学が国際協力機構(JICA)草の根技術協力事業で実施しているが、「世界農業遺産(GIAHS)イフガオの棚田の持続的発展のための人材養成プログラムの構築支援事業」、別称「イフガオ里山マイスター養成プログラム」。フィリピンでのカンターパートナーはイフガオ州大学、フィリピン大学オープン・ユニバーシティだ。

  13日はイフガオ里山マイスター養成プログラムの受講生20人による研究課題の中間発表会が開かれた。いつくか受講生たちの研究課題を紹介したい。ヴィッキー・マダンゲングさん(41)はイフガオ大学の教員で、研究テーマは「イフガオの民俗資料と写真展示」だ。本人の大学における研究テーマでもあるのだが、イフガオ里山マイスター養成プログラムの受講生の仲間を通じてさらに情報を収集したいとプログラムに応募した。実際にヴィッキーさんが大学で収集してる民俗資料を見せてもらい、少々驚いた。一部は日本、あるいは能登のそれとそっくりなのだ。

  たとえば、現地で今でも使用されているストーン・ミルだ。米などを挽いて粉に昔ながらのものだが、これが日本の石臼(いしうす)にそっくりなのだ。しかもサイズや石臼も回す取っての棒の配置なども、である。このほか、蓑(みの)やザル、カゴなど、懐かしさがこみ上げてくるようなものがさまざまに。1万年ほど前、中国の長江流域で稲作を中心とした農耕が始まったといわれる。その農耕文化が南に伝播してイフガオに、そして北に伝わり能登など日本に。そんな農耕文化のダイナミックな広がりを感じさせるのだ。ヴィッキーさんは「イフガオの民俗資料をまとめて文化遺産の価値や誇りを未来に伝えたい」と意欲を持っている。

  もう一つ気になる発表を紹介する。家業手伝いのマイラ・ワチャイナさん(29)の研究はライス・ワイン。当地では伝統的な酒づくり。大鍋を使って米を火で炒(い)る。こんがりきつね色になるまで炒って、水を入れて炊きく。そこに昔から伝わるイースト菌を入れてバナナの葉でくるみ、5日間発酵させれば出来上がり。イフガオ伝統のティブンと呼ばれるライスワイン。酸味が効いて、甘味があり、確かに日本酒よりもワインに似た味だ。マイラさんをこれを地酒としてだけではなく、海外にも広めたいと考えている。どの品種の米が醸造に向いているのか、どのような販促活動をしていくのか研究する課題は多い。が、本人は「イフガオの米はすばらしいと思う。そこからすばらしいライン・ワインを世に出したい」と研究に余念がない。

  地元であるイフガオの文化資源や伝統的な価値をもう一度見直して、地域を再生させたい、思いはまったく日本の現状と通じるのだ。

※写真説明:写真・上はイフガオの伝統的な高床式の茅葺家屋を説明するヴィッキー・マダンゲングさん(右)、写真・下はマイラ・ワチャイナさん(左から2人目)がつくったライス・ワインの試飲会

⇒13日夜・イフガオの天気  はれ

☆イフガオ州大学長からのメッセージ

☆イフガオ州大学長からのメッセージ

 先月(10月)11日、金沢大学が石川県能登半島の4自治体(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)などと連携して実施している、社会人の人材養成講座「能登里山里海マイスター育成プログラム」(実施代表・中村浩二特任教授)の第三期生入講式が、珠洲市の金沢大学能登学舎で執り行われた。この入講式は通算で7回目となるが、今回初めて海外からの参加があった。フィリピンのイフガオ州大学、セラフィン・ゴハヨン学長だ。イフガオ州大学は、先日このコラムで紹介したイフガオ里山マイスター養成プログラムを実施するにあたっての、金沢大学のカウンターパートでもある。入講式ではゴハヨン学長から祝辞をいただいた。イフガオからの心のこもったメッセージだった。

I am deeply honoured and privileged to be invited here again and be a witness to the enrolment of a new batch of trainees under the Noto Satoyama Satoumi Meister Training Project being spearheaded by Kanazawa University. We are always awed and inspired by your extraordinary commitment and passion towards sustaining your GIAHS. Since the launching of the Ifugao Satoyama Meister Training Program in March 25, 2014 various activities were already conducted. Our trainees attended various lectures such as overview of the satoyama landscapes in Japan and Philippines, land utilization, ecological concepts and practices, Natural farming system, management of heirloom rice production and training in native delicacy preparation. They also visited successful small scale industries in Ifugao such as taro production facility and traditional and modern rice wine facilities. But it is their visit and interaction with their counterpart trainees here in Japan that really opened their eyes and helped them internalize the objectives of the program that we are trying to achieve.Now, the 17 trainees in Ifugao have started their GIAHS conservation projects in their field of interests. These study projects were presented and shared with their counterparts/ experts here in Japan 3 weeks ago.

The Ifugao State University considers the Meister Program as one of its banner program. We commit to work with the same passion, commitment and indefatigable energy that you have in your meister program here. We are convinced that the program will surely help conserve and revitalize our Ifugao Rice Terraces, declared by FAO as a GIAHS site. This is a heritage developed by our forefathers for us. If it sustained them in the last 2000 years, surely, when harnessed, it can also sustain us in the next 2000 years to come.

Allow me to manifest our sincerest invitation to all of you, our partners here in Japan, to visit our place and see for yourself the various life changing initiatives of our trainees that is starting to unfold. Our university and province will be most happy to accord you with the same friendship and hospitality you have accorded us here.

 金沢大学が主導されている能登里山里海マイスター育成プログラムの三期生入講式に招待いただき、たいへん光栄です。能登GIAHSの持続的発展に向けた、金沢大学の日頃からの格別の取組と熱意に心から敬意を表します。本年3月25日にイフガオ里山マイスター養成プログラムが設立され、すでにいろいろな活動がスタートしています。受講者は、いろいろな講義を受けています。たとえば、日本とフィリピンの里山概論、土地利用、生態学的なものの見方、伝統的なコメつくり、地元食材の料理法などです。また、タロイモやライスワインの作業場も見学しました。しかし、能登訪問や能登里山マイスター達との交流こそが、かれらの目を開かせ、課題をグローバルに考えることに役立ちました。現在、17名のイフガオ受講生がそれぞれの関心分野において、GIAHS課題に取り組みはじめました。3週間前の能登訪問では、課題発表会とともに能登マイスター受講生やスタッフ、関係者と意見交換の場をつくっていただきました。

 イフガオ州大学では、マイスター・プログラムを、特別プログラムとして全学の旗印としています。私たちは、能登マイスターと同じだけの情熱とエネルギーでイフガオ里山マイスターに取り組んでゆく決意です。このプログラムが、FAOによって認定されたGIAHSイフガオ棚田を保全し、活性化することを信じます。イフガオ棚田は、私たちの祖先が、2000年かけて築き上げてきた遺産であります。私たちは、これをこれからの2000年にわたり持続してゆく決意です。

 私は、パートナーである皆さまをイフガオへ招待したく思っています。イフガオ・マイスターの活動が、イフガオの生活を変えつつあることを、ぜひ、ご自分の目で確かめて下さい。イフガオ州大学、イフガオ州政府は、いまこの能登において、皆さまが私にくださっている友情と歓待でもって皆さまをお迎えいたします。

⇒1日(土)朝・金沢の天気    くもり