#コラム

★続・グランドカバーの攻防

★続・グランドカバーの攻防

   庭にどのような樹木を植え、花を咲かせるか、楽しみの一つでもある。そのポイントは地面にどのような植物を生やすかによってもそのイメージが決まる。芝生であれば洋風ガーデンだが、コケ類だったら和風の庭だ。そのグランドカバープランツ(地べたに生やす植物)が雑草に覆われることがある。その手入れが大変だ。

   我が家の庭にはいろいろは雑草が生える。スギナ、ヤブカラシ、ドクダミ、チドメグサなどは通年で生えてくる。ことしはなぜかチドメグサの勢いが強い。これが我が家の芝生ゾーン、スギゴケ・ゾーンにびっしりと映えている。チドメグサは茎全体が横にはって、節から根を出し、どこまでも広がる。これが芝生ゾ-ン、スギゴケ・ゾーンに侵入し、急速に増殖しているのだ。これまではところどころで見かけたので、さほど気にはしていなかったが、ことしは勢いが随分と違う。専用の除草剤はあるのだが、なるべく使いたくないので手作業の草取りだ。

   手作業は地味だ。芝生ゾーンでは、芝生の根に絡まるようにして生えているので、芝生の根ごと除草することもある。スギゴケの場合、スギゴケをかき分けて、チドメグサの茎を捜し出して抜く。一人ではなかなか作業がはかどらないので、きょうは応援部隊を導入した。掃除代行サービスの「ダスキン」から5人のスタッフを派遣してもらった。ダスキンでは草取りも清掃作業の一つとして位置付けており、オーダーすると部隊を編成して派遣してくれる。10日前に担当者が下見をして、草取りの経験が豊富がスタッフをそろえてくれる。

   午前9時に5人の女性スタッフが帽子、手袋のいでたちでやってきた。気温はすでに30度を超えている。まず、芝生ゾーンの除草から始める。葉っぱを取るのではなく、網状になった茎を根こそぎ取る旨を説明し、作業に入った=写真=。作業スタッフの一人から「芝の根もむしってしまったのですが、よろしいですか」と声が上がった。「全然問題ありません。チドメグサの茎ごと取ってください」と返答。チドメグサとの闘いは本戦に入った。茎を縦横無尽に生やすチドメグサ、取っても取っても、切れた茎が残る。人海戦術による「根絶やし」作戦なのだが、そう単純ではない。

   2時間余りの攻防で、芝生ゾーンはなんとかすっきりした。続いて、スギゴケ・ゾーンに入る。スギゴケをかき分け、一本一本抜いていく。その作業の様子はまるでサルの毛づくろいのようだ。午前中3時間、契約の時間が終わった。作業量は20リットルのポリ袋で9個分の分量になった。

   炎天下の作業を黙々とこなしてくれた作業スタッフの皆さんには頭が下がる思いがした。ひょっとしてこうした地味な草むしりの作業をお願いできるは日本だけではないだろうか。そして、チドメグサを名指しで攻撃対象にする草取り作戦を展開するのは我が家だけか。旧盆前の「山の日」の休日、グランドカバーの攻防はひとまず終わった。しかし、茎は絶えてはいない。逆襲のチャンスをうかがっているだろう。次なる闘いが。

   と、友人にこの話をしたら、「雑草を非道の敵とみなして、闘い気分に浸るなんて、風車を巨人だと思い込んで突撃していくドン・キホーテのようだな」と軽く笑われた。

⇒11日(休)午後・金沢の天気   はれ

☆天皇のお気持ち

☆天皇のお気持ち

「憲法の下、天皇は国政に関する権能を有しません。そうした中で、このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ、これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました」

昨日(8日)テレビで放送された天皇のお言葉(ビデオメッセージ)にじっと聞き入った。なるほど、天皇はこう考えておられたのだ、ということを知った思いがした。とくに、天皇が国民との関係や距離をどう考え、自らの象徴天皇の役割を担ってこられたのか、改めて感じ入った。

  一つだけ、聞き慣れないお言葉があった。「天皇の終焉に当たっては、重い殯(もがり)の行事が連日ほぼ二ヶ月にわたって続き・・・」。「殯(もがり)」とは。調べてみると、人の死後に本格的に埋葬するまで、遺体を棺(ひつぎ)に納めて安置し、近親者が儀礼を尽くして幽魂を慰める習俗のことを指す。その目的は死者のよみがえり、あるいは死者の魂を呼び戻すことにあるという。

  これに似た葬送を実際に聞いた。これまで何度か訪ねたことがある、フィリピンのイフガオでの葬送の方法だ。死者を布でくるんで白骨化するまで自宅に置く。家族は死者を身近に置くことで、亡き人をしのぶ。その後、家族で洗骨の儀式を営み、埋葬する。2000年も前からこの地で田んぼを耕すイフガオ族の伝統的な葬儀だったが、さすがに現代では敬遠され、すぐ埋葬するのだという。

  イフガオでの話を聞いていたので、天皇が述べられた「重い殯」の意味合いを察した。2ヵ月続く皇室の伝統的な葬送「殯」は、心に重いのだろう。メディアでは「生前退位」を天皇が示唆されたと報じているが、あえて「重い殯」とお言葉にすることで、こうした皇室の伝統的な葬送の在り様も含めて見直したい、とのお気持ちを述べられたのではないだろうか。

⇒9日(火)夜・金沢の天気  はれ

★ヒロシマの祈り、法の形骸化の危惧

★ヒロシマの祈り、法の形骸化の危惧

  「6・9」の季節だ。広島に原爆が投下されたのが1945年8月6日、長崎が3日後の9日だった。あれから71年たつ。ことしも広島市の平和記念公園では昨日「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」が営まれた。午前8時からの式典には5万人が参列したという。ことし5月28日、アメリカのオバマ大統領が現職大統領として初めて平和記念公園の原爆死没者慰霊碑を訪れ、献花に臨んだこともあり、被爆者にとっても特別な思いがあったのではないかと察する。

   広島市長が読み上げた平和宣言では、あのオバマ大統領の広島演説の一節が引用されたようだ。「核兵器なき世界を追求する勇気を持たなければならない」。大統領の一文はこうだった。Among those nations like my own that hold nuclear stockpiles, we must have the courage to escape the logic of fear and pursue a world without them. We may not realize this goal in my lifetime, but persistent effort can roll back the possibility of catastrophe.(わが国のように核を保有する国々は、恐怖の論理から逃れ、核兵器なき世界を追求する勇気を持たなければならない。私たちが生きている間にこの目標は達成できないかもしれないが、たゆまぬ努力が大惨事の可能性を小さくする。)

   式典には91ヵ国とEUの代表も出席し、核保有国からはアメリカ、イギリス、フランス、ロシアの代表が出席(中国は欠席)し、成り行きを見守ったした。「核兵器なき世界を追求する勇気」は強調されたが、現実はどうなのだろうか。先月7月12日付の新聞各紙によると、ワシントン・ポスト紙の記事を引用し、オバマ大統領が「核先制不使用」の宣言を含めた核軍縮策を検討、さらに大胆な核軍縮・不拡散の方針を打ち出すことを模索しているという。

   このワシントン・ポスト紙の報道に連動して、民主党のサンダース上院議員らが、オバマ大統領あてに核先制不使用のほか、新型巡航ミサイルなどの核兵器近代化計画の見直しなどを求める書簡を送った。その中で「広島と長崎の原子爆弾(投下)の教訓は、核兵器を二度と使用してはならないということだ」と強調し、現政権での核政策の大胆な見直しを迫ったという(7月21日付・朝日新聞)。

   一方で、去年12月に国連総会で採択された、核廃絶への具体的、効果的、法的な手段を討議するための作業部会(ジュネーブ)の動きも注視したい。今年2月に第1回会合があり、5月に第2回会合が開かれた。今月8月下旬にも開催され、9月の国連総会で報告書が提出される。が、核保有国5ヵ国は欠席している。その対立の構図は、条約制定を急ぐメキシコやブラジル、インドネシアなど9ヵ国が核禁止のための法的措置についての交渉を来年2017年開始することを提案しており、核保有国との間の溝が深まっている。

   では、日本はどのような立場かというと、核保有国と非保有国を分断させるような議論の進め方には反対という立場だ。このスタンスは、日本だけでなく、NOTO(北大西洋条約機構)とも共同歩調をとっている。効果的、法的な手段での核廃絶ではなく、安全保障を重視しながら徐々に核兵器を減らすというアプローチを提唱しているのだ。

   この日本とNATOのスタンスは「どうせアメリカの核の傘に入っているからそう言っているのだろうと」と日本の国内メディアの論調でも一蹴されているが、やはり慎重に進めるという立場にならざるを得ないではないかと最近考える。それは、南シナ海の領有権問題をめぐってオランダ・ハーグの仲裁裁判所が先月12日に示した裁定ですら、「紙くず」と無視されているのが現状である。仮に核廃絶の法が非保有国などの賛成多数で成立したとしても同様に一部の核保有国に無視にされる可能性だってある。無理を通せば道理が引っ込むたとえのように、法が形骸化していくことを恐れる。どのようなプロセスで核廃絶に向かって踏めばよいのか。

⇒7日(日)朝・金沢の天気  はれ   

☆グランドカバーの攻防

☆グランドカバーの攻防

  庭の木もさることながら、地面に彩りを添え、庭全体の雰囲気を引き立たせるのがグランドカバープランツと呼ばれる下草だ。我が家でそれに相当するのがスギゴケと芝生。スギゴケは和風を醸すゾーンで、芝生は日当たりのよい場所ですくすくと育っている。もちろん手入れが必要なのだが。

  スギゴケは葉が直立して細い葉が並んでいる。スギの葉に似ている。日向よりも半日蔭のような場所が適している。群生している場所はまさに「和の空間」で、心が和む。ただ、夏場の日照りが続くと赤茶ける。結構手入れはしているつもりだが、最近、その場に増殖しているのがチドメグサだ。

  チドメグサはなんともおどろおどろしい名前だが、この葉の汁を傷口につけると血が止まることからつけられたようだ。学名は「Hydrocotyle sibthorpioides」。やっかいなのは茎全体が横にはって、節から根を出し、どこまでも広がる。これが芝生ゾ-ン、スギゴケ・ゾーンに侵入し、急速に増殖している。これまではところどころで見かけたので、さほど気にはしていなかったが、ことしは勢いが随分と違う。専用の除草剤はあるのだが、なるべく使いたくないので手作業の草ぬきだ。

  スギゴケ・ゾーンでの繁殖の場合、スギゴケを分けて、チドゲグサの根を探し出し、ネットを手繰り寄せるようにして抜く。ただ、スギゴケも抜けたりして痛み分けにもなるが、労力はそれほどかからない。根気で勝負する。問題は芝生だ。芝生の根が逆に作業をする手を邪魔してチドメグサの根を探し出すのが難しい。そこでチドメグサの葉を取ることになるのだが、根が残る。難物だ。

  きょうも金沢は日中36度の猛暑日、地べたではグランドカバーの熱い攻防が続く。放っておいたら、チドメグサが止まらない、我が家の庭を制する勢いなのだ。

⇒5日(金)午後・金沢の天気   はれ

  

★ポスト都知事選をどう読む

★ポスト都知事選をどう読む

  東京都知事選の投票が終了するやいなや、小池百合子氏の当選確実とNHKが選挙特番で伝えた。孤軍奮闘するジャンヌ・ダルクのように、元総務大臣の増田寛也氏=自民、公明など推薦=、鳥越俊太郎氏=民進、共産、社民など推薦=と戦って破った。初の女性都知事が誕生することになる。ただ、地方から眺めると「東京の課題は山積、大丈夫か」である。

   朝日新聞が人口や資本が東京都に一極集中する傾向について、全国の知事にアンケートした結果が今月22日に掲載された。それによると、43知事が回答し、東京一極集中について、35知事が「問題だ」と回答し、6知事が「ある程度問題だ」と答え、「どちらとも言えない」と2知事が返答した。長野県の阿部守一知事は「企業や大学の地方分散が進まず、東京圏への人口流入が続いている」、東海道新幹線が走り、東京への人口流出が顕著な静岡県の川勝平太知事は「人口減少の最大の元凶」「若者を吸い込む『アリ地獄』の様相」と酷評している。東京の合計特殊出生率は1.17と全国最低であることについて、石川県の谷本正憲知事は「若い世代が、出生率が低い東京圏へ集中することで、少子化・人口減少につながっている」と指摘している。

   東京が日本をけん引しているとの発想はすでに過去のものだ。多くの地方の知事は東京が日本の問題だと指摘している。具体的な問題は間もなくやってくる。団塊の世代が75歳以上となってくる2025年度には、東京圏では75歳以上の高齢者が175万人増加し、医療・介護施設が極端に不足してくる。このとき、地方の介護人材(ホームヘルパーや介護福祉士など)が東京圏に集中すれば、まさに「地方消滅」に拍車がかかる。東京発のこの日本の危機を脱するために、高齢者の地方への移住を含めた抜本的な解決策が必要となる。東京オリンピック後にやってくる「不都合な事態」だ。

   しかし、この問題に小池氏はビジョンを示していない。都知事選での公約は「セーフシティ」(住宅の耐震化・不燃化の推進、都道の電柱ゼロ化、技術開発支援、多摩格差をゼロへ)、「ダイバーシティ」(待機児童ゼロを目標に保育所の規制を見直し、ライフ・ワーク・バランスの実現・都庁が先行実施、満員電車をゼロへ、給付型奨学金を拡充し、英語教育を徹底)、「スマートシティ」(エコハウス・スマートハウスの補助強化、街灯や公共施設のLED化、東京ブランドを確立、観光・インバウンド客を増大)なのだが、少子化・人口減少や高齢者問題についてはそれらしきビジョンがない。

   それより何より、東京一極集中を問題視する他の多くの知事たちと共存のためのアラインスを組めるのだろうか。都知事選への立候補のプロセスを見ていると、小池氏のマスメディアを意識した独走的なパフォーマンスは見事だったのかもしれないが、周囲を説得する努力や根回しをするといったエフォートは感じられなかった。

    今後、要介護の高齢者を受け入れる施設や人材の不足が深刻になる想定として、高齢者の地方移住などをどう提案していくのだろうか。この意味で、東京都知事に必要なのは、近未来を見据えた東京圏と地方の共存の道筋を模索する発想だと思う。上記の東京を見つめる地方の知事の冷めた目線に小池氏はどのような政策を打ち出していくのか、注目したい。

⇒31日(日)夜・金沢の天気   はれ

☆「生前退位」という人間味

☆「生前退位」という人間味

   今月13日夜のNHKニュースを視聴していて、天皇の位を生前に皇太子さまに譲る「生前退位」の意向を天皇が示しているとアナウンスがあった。このとき初めて聞いた生前退位という言葉に戸惑ったものの、天皇陛下のなんとも人間らしい言葉かと感動したものだ。

  天皇陛下は82歳、皇后さまは81歳で、両陛下は実に多忙だ。報道によると、去年皇居で要人や海外の来客と面会したのは270件、全国植樹祭など地方訪問も75回あった。天皇の公務に関しては、憲法の第六条と七条に列記されている。「第六条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。「第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。二 国会を召集すること。三 衆議院を解散すること。四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。七 栄典を授与すること。八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。九 外国の大使及び公使を接受すること。十 儀式を行ふこと」と。

   このほかにも、公務として新年一般参賀、講書始の儀、歌会始の儀、天皇誕生日祝賀、園遊会、国賓として来日した外国の元首や王族との会見、外国の首相、大使らに対するご引見(謁見)、拝謁、宮中晩餐、宮中午餐、全国戦没者追悼式、日本学士院授賞式、日本芸術院授賞式、日本国際賞授賞式、国際生物学賞授賞式、全国植樹祭、国民体育大会秋季大会、全国豊かな海づくり大会、宮中でも神嘗祭、鎮魂祭、招魂祭、新嘗祭(大嘗祭)など。こうした公務や宮中の儀式はテレビでも放送される。昨年5月、石川県小松市で開催された全国植樹祭で、お手植えの行事に臨まれた両陛下の丁寧なしぐさをテレビでみて、感動したものだ。皇后さまは地べたに膝を着かれて、苗木を植えられたのだ。

   今回の生前退位は、こうした国事行為や公務を先々務めが果たせなくなることを見据えての天皇陛下のご意向だ、と。責任感から出てくる、人間味あふれるお気持ちだと考える。

   現在の公務の負担を軽減する手立てとして「摂政(せっしょう)」は今すぐにでも可能だ。憲法第五条では「皇室典範の定めるところにより、摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ」とある。天皇がご病気など理由に皇太子が摂政として天皇に代わり公務を執り行う(政を摂る)ことができる。

   天皇が生前退位にこだわるのであれば、皇室典範を改正して上皇(じょうこう)になることは可能だ。上皇は天皇を退き、死するまでの地位をいう。そうなれば、現天皇は「平成上皇」と称されることになるかもしれない。そのとき、果たして、上皇が皇位継承権を有するのかどうか、次なる難問が待っている。

⇒18日(祝)夜・金沢の天気  くもり

★続・東京一極集中を問う都知事選が面白い

★続・東京一極集中を問う都知事選が面白い

   14日の東京都知事選の告示に向け、自民党都連の推薦を得た増田寛也氏(元総務大臣、元岩手県知事)には『東京消滅~介護破綻と地方移住~』(中央公論新社)という著書がある。若者が集まる首都東京だが、そのバックヤードでは大変なことが起きている。団塊の世代が75歳以上となってくる2025年度には、東京圏では75歳以上の高齢者が175万人増加し、医療・介護施設が元々不足している東京圏では将来、介護施設を奪いあうことになりかねない、というのだ。このとき、地方の介護人材(ホームヘルパーや介護福祉士など)が東京圏に集中すれば、まさに「地方消滅」に拍車がかかる。東京発のこの日本の危機を脱するために、地方への移住を含めた抜本的な解決策が必要というのが著書の内容だ。まさに、東京オリンピック後にやってくる「不都合な事態」なのだ。

  報道によると、増田氏は昨日(11日)都庁で記者会見を開き、正式に立候補を表明した。増田氏は「この4年間で都知事3人が代わり、都政は停滞、混乱している。東京都に必要なことは積み重なった課題を早く解決することだ」と意欲を述べている。その取り組む政策として、「三つの不安の解消」と「三つの成長プラン」を提示した。

  解決すべき不安として、①子育て②超高齢化社会③首都直下地震などの災害をあげた。待機児童を解消するための緊急プログラムも策定すると述べた、という。三つの成長プランは①東京オリンピック・パラリンピックの成功②観光の一大産業化③2020年の後の東京発展の道筋、を示した。冒頭で述べた、東京発のこの日本の危機を脱するための方策は確実にやってくる。その心の準備と政策の備えができるのは増田氏以外の立候補予定者では無理だろう。

  増田氏はこれまで、著書や講演で東京への一極集中の弊害について論陣を張ってきた。今回会見では、総務大臣時代に、東京など大都市に集中した法人事業税を地方に再配分する税制改正を手がけたことなどが記者から問われたようだ。これに対して「一極集中は東京にマイナス面がある。東京や地方が抱える問題を先頭に立って解決したい」と述べている。法人事業税は本社がある東京だけに使うべきではない、支店や工場がある地方にも再配分するべきというのは道理である。しかし、東京にいると地方の実情は見えないだろう。それを税制改正を通じて見るようにしたのは増田氏の功績である。

  これまで東京一極集中を批判的に論じてきたことについて増田氏は「東京が日本全体をけん引することで、地方と共に繁栄する真の共生社会を実現する」と述べた。これまでの東京都のリーダーにはなかった地方目線ではないだろうか。いまの東京都知事に必要なのは、近未来を見据えた東京圏と地方の共存の道筋を模索する発想だと思う。

⇒12日(火)朝・金沢の天気    はれ

☆東京一極集中を問う都知事選が面白い

☆東京一極集中を問う都知事選が面白い

   参院選も最終版、きょうは「最後のお願い」の日だ。ところが、ここにきて、東京都知事選(14日告示、31日投開票)の動きが俄然面白くなってきた。

  昨日8日午後には、俳優の石田純一氏が記者会見した。「普通の市民と政治がかけ離れている。野党統一候補なら、思いを力に変換できる」と野党各党に統一候補になることを条件に出馬表明した。タレントだけに、すでに出演しているテレビCMのスポンサーとの調整も進めているという。その会見の様子を民放テレビが中継していたが、面白かったは靴だった。上下黒のスーツにネクタイ、しかし素足に革靴という異例の足回り。条件付き出馬表明も突厥なら、そのいでたちもバランスを欠く。今の言葉でいえば、エッジが効いたいでたちなのだが。

  自民党では小池百合子氏は党の推薦が得られなくて出馬するという。昨日8日の日本外国特派員協会の記者会見でも「有権者に選んでいただくのは、自民党のアベノミクス一丁目一番地は女性の活躍なので、自信を持って手を挙げた」と。小池氏は英語が堪能らしい。そこで、2020年のオリンピックでは適材と一部で評価する向きもあるが、それでよいのか。東京都が抱える問題は、待機児童問題一つをとっても多難で根が深い。東京の問題点を分析して政策としてまとめて、都民に問うというスタンスならばそれでよいが、そのスタンスがまったく読めない。

  このままでは、政策論議よりも、人気度や知名度が勝敗を左右する「劇場型選挙」になるのではないかと想像していた。ところが、冒頭で「がぜん面白くなってきた」と述べたのは、元岩手県知事、元総務大臣の増田寛也氏が都議会自民党などの要請で、出馬が濃厚になってきたからだ。

  きょう9日付の新聞各紙は増田氏が選挙明けの11日に正式に出馬表明するという。増田氏といえば、「このままでは896の自治体が消滅しかねない。若者が子育て環境の悪い東京圏へ移動し続け、人口減少社会に突入する」(『地方消滅~東京一極集中が招く人口急減』(中公新書)と言い続ける東京一極集中の是正論者でもある。実際の政策では、増田氏が総務大臣だった2007年、東京都の法人事業税の一部を国税に回し、地方に再配分できるように税制を改定。それ以降、都の予算が地方に回され、その額はこの9年間で1兆5千億円とする試算もある。

  こうした東京一極集中の是正論者を東京都民はどう評価を下すのか、あるいは増田氏はどのような新たな政策を打ち出して地方と東京がともに反映するバランス論を展開するのか、これが見ものだ。地域問題に取り組む地方の人たちにとってもなじみの深い人物だけあって、増田氏が出馬する今回の都知事には関心を寄せる人も多いことだろう。興味深い展開になってきた。

⇒9日(土)朝・金沢の天気   あめ
  

★庭での出来事

★庭での出来事

  庭に無数の穴を開け、ハチがブンブンと音をたてている=写真=。調べてみると、地面に穴を掘るハチのうち、黒くて細長い体つきをしているのがジガバチやアナバチの仲間。地下に巣を作るスズメバチは、少しズングリとした体型とある。やっかいなスズメバチかと思い、観察してみると体系はスリムなので、ジガバチやアナバチではないだろうか。

   この仲間は比較的大人しい種類が多いとされ、直接手でつかんだりしない限り刺される心配はない。現に飛び回る現場に分け入っても刺されなかった。たとえ刺されたとしても、ジガバチやアナバチの毒は攻撃用ではなく、幼虫のエサとなる虫を動けなくする麻酔薬程度なので、毒性は比較的弱いらしい。とはいえ、何かの拍子に刺されれば痛そうなので、ハチ駆除用のスプレーを購入して、プシュー、プシューと吹き付けた。

   数日してその場に行くと、ハチが数十匹固まりになって死んでいた。まるで団子にようなカタチをしていて、異様だった。ここからは推測だが、スプレーの駆除剤で死んだハチを仲間が食べに来た。すると、その死骸を食べたハチが死に、さらにそれを食べたハチが、というように何度か繰り返されたのではないか。駆除剤の効き目には驚いたが、その「死の連鎖」からポピュリズム(populism)という言葉を連想した。

   ポピュリズムを大衆迎合主義と解釈する向きもあるが、むしろ、民衆主義が当てはまるのではないだろうか。プロの政治家(政治エリート)や権力者が政策を立案して、国民を率いていくエリート主義と違って、民衆(有権者)の情緒的な支持を煽って、カリスマが民族主義的な政策を推し進める政治運動とも言える。

   ポピュリズムのシンボル的な事例として旧・ナチス政権がよく引用される。民衆に直接政策を問い、国民投票を何度も繰り返す。その結果として、とんでもない国家主義が醸成される。今回のイギリスのEU離脱もなんとなく、そんな匂いがする。テレビのインタビューで離脱支持者たちの「大英帝国の誇りが取り戻せる」「すべてを支配したがるEUにはうんざりだ」などの声が紹介されていて、ハッとした。こんな民衆の声はヨーロッパでは決して少数派ではないことが、今回イギリスが証明してくれたのではないか。次はひょっとしてアメリカなのか、などと。

   ところで団子のようになったハチの死骸からポピュリズムを連想した理由。ナチス政権がそうであったようにポピュリズムの末路は、民衆同士の憎しみによる死の連鎖だった。駆除剤をまいた本人が言うのも何か矛盾に満ちているが…。

⇒30日(木)午前・金沢の天気    くもり

☆EU離脱ショックと参院選

☆EU離脱ショックと参院選

   イギリス発で世界に激震が走った。数字的には日本の東証株価は1286円(7.9%)下げ、アメリカ・ニューヨークのダウ工業株価も610㌦(3.4%)下げた。日本は時差と週末だったということもあり、国際情勢が株価に敏感に反応した。それほど、イギリスのEU離脱はショッキンだった。一方で、参院選に突入した日本、このイギリスのEU離脱が参院選にどのような影響を与えるのか考察してみる。

      昨日(24日)午前11時30分、スマホでニュース速報が入った。「イギリス172ヵ所の開票所の集計終了、離脱支持が51.2%でリ-ド」と。さらに15分後の速報で「円相場が2年77ヵ月ぶり1㌦=99円台」と。そして正午ごろからはアジア外国為替市場でイギリス通貨ポンドが急落、東証株価が1000円下げなど次々と。このとき、「日本は参院選どころではなくなった」との思いが脳裏をかすめた。と同時に、伊勢志摩サミットでリーマンショックの再来を「予言」し、消費税増税を再延期を打ち出した安倍総理の先読みはある意味で正解だったのかもしれない、と。このニュース速報を見た多くの有権者は「先行き不透明な、混沌とした世界情勢に政治も経済も外交も突入していく。ならば、現政権で踏ん張ってもうらしかないのでは」との思いを共有したのではないか。

    さらに、EU離脱ショックと参院選との関わりを具体的に読み解いてみる。25日付の新聞各紙の参院選関連の扱いは一面も社会面もほとんどない。テレビ各局もほとんどイギリスのEU離脱が占めている。午後4時20分すぎ、イギリスのキャメロン首相の辞意が伝わり、EU離脱に関するニュースの時間どりがさらに増えた。週明けもさらにEU離脱ショックの記事が新聞やテレビ、インターネットを覆うことになる。つまり、メディアのニュースや情報番組で参院選はローカル扱いになってしまうのだろう。

    参院選の焦点の一つとなっているアベノミクス、正確に言えば安倍政権の経済政策に関する評価に関しては、円高、それにともなう株価下落が示すように前途多難であろうことは想像に難くない。ただ、大きな動きがあった。午後9時15分すぎに、G7(先進7ヵ国)の財務相・中央銀行総裁会談による緊急の共同声明を発表し、「国際市場の流動性供給のための手段を用いる用意がある」と強調した。つまり、為替市場を含む金融市場の安定に向けての財政出動など共同歩調を確認したのだ。

    これは、伊勢志摩サミットで議長だった安倍総理が、2008年のリーマン・ショック並みの危機(クライシス)が再発してもおかしくないほど世界経済が脆弱化する前兆があると説明し、G7各国に財政出動などの実施を共同声明に盛り込んだことがベースとなっている。G7が足並みをそろえて経済混乱に素早く対応できる態勢と整えることができたのも、安倍総理の功績として評価されよう。

    私は5月27日付のブログで、「リーマン・ショック並みの危機」を持ち出した安倍総理の行動を「☆救世主かほら吹きか」とのタイトルで皮肉った。今となっては正解だったと率直に認めたい。今後アベノミクスがこの経済危機にどのように対応していくの見極めたい。ちなみに、サミットのとき、「いわゆるクライシスとまで言うのはいかが」と発言したのはキャメロン首相だったとされる。これは歴史の皮肉かもしれない。

    最後に結論を。イギリスのEU離脱が日本の参院選に与える影響、それは自民に有利に働くということ。その理由は世界の大幅な経済減速が懸念される中、危機管理として現政権に政権運営を託するしかないとの思いが有権者の共有されたものと判断する、からだ。

⇒25日(土)朝・金沢の天気   くもり