#コラム

★ギョウカイの裏読み

★ギョウカイの裏読み

   テレビメディアの「劣化」を指摘する声をよく聞く。放送内容もさることながら、最近目立つのがテレビ業界(ギョウカイ)の不祥事だ。きょうもネットニュース(読売新聞Web版)で毎日放送(MBS、大阪市)の男性社員が同僚の女性社員を盗撮したとして、警察が迷惑防止条例違反の疑いで捜査していると報じられている。盗撮に気がついた女性が警察に被害届を提出し発覚した。MBSではことし4月にも男性の局長がセクハラで懲戒処分を受けている。山梨、山形で20代の3人の女性に性的暴行を加えたとして強姦致傷などの罪に問われ逮捕されたたNHKの記者がいた。ことし4月の判決で懲役21年の刑が言い渡されている。   

   折しも、報道関係者が集まってきのう(20日)ときょう札幌市で「マスコミ倫理懇談会」全国大会が開催されている。マスコミ倫理懇談会全国協議会のホームページをチェックすると分科会は7つあり、「岐路に立つ実名報道」、「極端化する災害と取材・報道」、「ネット時代を、マスメディアはどう生き抜くか」、「公文書管理と情報公開」、「働き方改革」、「国民投票法を考える」、「地方活性化と広告の可能性」とある。それぞれ重いテーマなのだが、「報道機関でパワハラ、セクハラ、性犯罪がなぜ起きるのか」を緊急案件として入れるべきではなかったのか。

    それにしてもタイミングが悪い。日本民間放送連盟(民放連)の大久保好男会長(日本テレビ社長)がきのう午後2時からの定例の記者会見で、憲法改正の際に賛否などを呼びかけるCMについて、放送時間の長さなどの量的な規制はしないことを決めたと述べ、物議をかもしている。民放連のホームページに会見の内容が記されている。以下引用。記者は「憲法改正の国民投票をめぐり、テレビCM規制のあり方が議論されているが、どのようにお考えか。また、自主規制について、民放連で検討が進んでいるのか」と質問した。

   これに対し、大久保会長は「憲法改正をめぐる国民投票運動のテレビCMのあり方について、私たちに検討が投げかけられており、国会の検討の場に招かれて説明も行った。本日開催した理事会で、この問題を担当する放送基準審議会から検討状況の報告があった。その中で、民放連として一律にCMの量的規制はしない方向で検討を進めていくとの説明があり、これを了承した。民放連がCM量についてどのような自主規制を行うのか、との問いに対して、現時点の考えを確認したものだ。今後、この基本的な考え方に沿って番組・CM全般の論点を検討していく」と述べた。文面そのままでは分かりにくいので以下考察する。 

   3選を果たした安倍総理は、憲法第9条の第1項と第2項を維持したまま、自衛隊の存在を規定する第3項を加える方向で憲法を改正を任期中に行う考えを示している。憲法改正には衆参両院の3分の2の賛成を得た上で国民投票で過半数の承認を得る必要がある。憲法改正の発議が本格化すれば、当然賛否の論が沸き、テレビを使ったキャンペーン(CM)が激しさを増すことは想像に難くない。

   というのも、国民投票法にもとづく国民投票運動は選挙運動と違ってかなり自由度が高い。例えば、選挙運動では街頭演説は午前8時から午後8時に限定されているが、国民投票運動には制限はない。選挙運動では禁止されている戸別訪問や自分で自由にビラやポスターを作って配布することもできる。インターネットや電子メールも制限なく使用できる。ただし、国民投票法では投票日14日前からのメディア(新聞、テレビなど)を使ったCMを禁止している。が、14日前までならばCMを大量に流してもよいのだ。記者会見で民放連会長はそのCMに関して国民投票運動は原則自由であり自主規制はしないと述べたのだ。ただ、CM内容で誹謗中傷がないかを放送前にチェックする考査について今後検討していくと述べた。

   資金力がある側(自民)が大量にCMを流すと公平性が保てない恐れがあると野党側はテレビ局側に量的な自主規制を求める声を上げていたが、民放連はそこには踏み込まなかった。自衛隊をめぐる憲法改正は安倍政権の総仕上げだ。昨年の自民党の政党助成金173億7400万円はダントツに多い。一方、2017年の日本の広告費(電通調べ)ではインターネット広告費は4年連続二ケタ成長であるのに対し、テレビは前年比99%と減少傾向にある。数年後にはテレビを抜く勢いだ。喉から手が出るほどCMがほしいギョウカイの下心が見えたか。
 
⇒21日(金)夜・金沢の天気   はれ

☆留学生が見たNoto

☆留学生が見たNoto

   先週13日から2泊3日で「能登の世界農業遺産を学ぶスタディ・ツアー」(単位科目)を実施した。履修学生14人のほかに留学生6人も参加して日本と海外(ドイツ、中国、インドネシア、ベトナム)の目線で能登を語り合いながらツアーを楽しんだ。

   私自身も能登のことを「日本の中のアジア」と説明したりする。文化や風土で独特のアジアっぽいカラーがある。留学生が「アジアですよ」と思わず感想を漏らしたのが祭りだった。14日に能登半島の尖端、珠洲市を訪れ、地域の伝統的な祭礼「正院(しょういん)キリコ祭り」を見学した。能登半島では夏から秋にかけて祭礼のシーズン。キリコは収穫を神様に感謝する祭礼用の奉灯を巨大化したもので、大きなものは高さ16㍍にもなる。この日、輪島塗に蒔(まき)絵で装飾された何基ものキリコが地区の神社に集い、鉦(かね)と太鼓のリズムが祭りムードが盛り上がっていた。

   中国ウイグルからの留学生が「アジア」と指摘したのは、そのキリコを担ぐ青年たちがまとっている、地元ではドテラと呼ばれる衣装だった。「これアジアの少数民族が祭礼のときに着る衣装とそっくり」と。自らも少数民族であり、装束に関心を持っていた。地元に人に聞くと、もともと女性の和服用の襦袢(じゅばん)を祭りのときに粋に羽織ったのがルーツと言われていて、同じ能登のキリコ祭りでもこのドテラを着るのは珠洲の特徴という。色は青のほかに、赤、紫、黄など色とりどりで、それに花鳥風月の柄が入る。一人で数着持っている人もいるとか。

   そして、相撲の力士が身に着ける化粧回しのようなものが「前掛け」。これにも趣味があって、龍や獅子、波などの刺繍を施して、一着何十万円の特別注文のものもあるそうだ。派手な刺繍だけではない、この前掛けにはいくつもの鈴が装着されていて、歩くとシャンシャンと音がする。着ている物も派手なら、担ぐキリコもとてもきらびやか。確かにどこかアジアっぽい雰囲気が漂う秋祭りだ。留学生の要望でキリコの前で写真を撮らせてもらった=写真・上=。

    今回のスタディ・ツアーの感想でドイツからの留学生の言葉が印象的だった。「能登の探検には何度か来たことがあるが、今回は謎を解き明かしてくれる人々と出会い、デープな能登を知ることができた。アメリカの大都会から能登の里山に移住したキャロラインさんの生き方は印象的だった。里山を愛するその生き方にはとても勇気づけられた」

    キャロライン渡辺さんは能登の里山で珠洲焼に取り組むアメリカ出身の女性。窯を訪ね、話を聞いた=写真・下=。ニューヨークで陶芸を志す日本人男性と知り合い、1987年に能登にやってきた。コロンビア大学で日本文化を学び、日本文化研究で知られるドナルド・キーン氏との親交もある。移住10年後に夫は他界したものの、自身は里山生活とアート活動が気に入り31年目になる。「里山での生活は私の人生そのもの。焼き物の窯は作品をつくるというより、炎を楽しむ祭りの様なものね」と。里山を歩き、田畑を耕し、土をこねて、窯の燃料となる薪は自身でつくる。冬場の除雪も自分でする。「自給自足の生活は自分に向いている。子育てするには最高の環境だったし、夫とともに夢中になってつくった窯で焼き物をつくり続けたい」

    豊かな里山の自然、そして里山に人生あり。日本人が忘れかけていたことを、キャロラインさんの言葉で留学生たちが気付いてくれた。

⇒17日(祝)午後・金沢の天気    はれ

★「ふるさと納税」への動機付け

★「ふるさと納税」への動機付け

   ふるさと納税が面白い。自身もことし7月に能登半島のある自治体に「能登牛(のとうし)」と「地酒」をセットで申し込み、届いた肉と日本酒で友人らを招いてすき焼きパーティーを楽しんだ。もう4回目ですっかり恒例行事となった。申し込みの際に届いたガイドブックに目を通すと、新しい「返礼品」が記載されていた。「お墓のお掃除代行」「雪かき代行」「草刈り代行」だった。

   墓掃除代行の項目。「お墓の一角分の清掃をシルバー人材センター1名の会員が2時間の範囲で行います。後日、清掃前後の写真をお送りします」と。さらに清掃の内容は「墓石等洗浄、草取り」とある。注意事項として、「墓石は水洗いのため、汚れが落ちない場合もあります」と。確かにそうだ。ひと昔前の安山岩系の墓石だとコケがこびりついて水洗いでは落ちにくい。

   雪かき代行の詳細。「家の周り、玄関周辺の雪かきをシルバー人材センター2名の会員が4時間の範囲内で行います。後日、雪かき前後の写真をお送りいたします」と。これも注意事項があって、「家の周り、玄関周辺の雪かきに限ります。屋根の雪下ろしはいたしません」と。草刈り代行はシルバー人材センター2名が8時間で住宅や土地の除草を刈り払い機を使って行う。竹林などの伐採は行わない。墓掃除は1万円、雪かきは5万円、草刈りは10万円の寄付金でやってもらえる。

   墓掃除や雪かき、草刈りはその地域の出身者にターゲットを絞った、本来の「ふるさと納税」だろう。盆に故郷に墓参りに行きたいが所用でどうしても行けない、あるいは故郷に一人暮らしの高齢の親がいる場合には冬場の雪かきを頼みたいなど、遠方に住む出身者のニーズはある。生まれ育った故郷の振興に役立てばとの想いも重ね合わせると、ふるさと納税へのストーリー性のある動機づけになる。 

   一方、このところニュースでふるさと納税が「悪役」になっている。ふるさと納税の返礼品の調達価格を寄付額の3割以下にするよう求める通知を守っていない自治体が全国自治体の14%にあたる246に上り、総務省はこうした自治体をふるさと納税の対象から外す方向で制度を見直すという。昨年度に135億円を超える寄付額を集めた大阪府泉佐野市の場合、返礼品として地場産品ではない全国各地の肉や果物、ビールなどを取りそろえていて、返礼品の調達価格が寄付額の5割に達するものもあったと総務省から指摘を受けた。

   ふるさと納税は個人が自治体に寄付するとその金額の一部が所得税と住民税から控除される仕組みなので、元が取れて返礼品を楽しむことができれば、投資感覚で寄付を楽しむ人もいるだろう。かつて財政健全化団体に陥ったこともある泉佐野市は寄付金集めに苦心したのだろう。同市の返礼品はそんな人たちのターゲットになったようだ。ただそこには「ふるさと」という発想はない。「ふるさと納税」の存続が問われている。(※写真は「珠洲市ふるさと納税ガイドブック」から)

⇒12日(水)朝・金沢の天気    くもり

☆災害列島に「想定外」はない

☆災害列島に「想定外」はない

        自然の猛威が止まらない。きょう10日も本州付近にどっかり停滞した前線の影響で能登半島ではまた大雨に見舞われ、1万5千人余りに対し一時的に避難勧告が出された。輪島市では道路ののり面が崩壊して集落が孤立、JR七尾線では運休が相次いだ。先月末に豪雨による河川の氾濫で住宅が冠水していて、泥掃除が終わったころに今回の大雨だ。「もう堪忍してや」と地域の人々の悲鳴が聞こえる。

   札幌市に住む友人とメールのやり取りをしている。かつて民放テレビ局にいて番組づくりを通じて知り合った。今はリタイアしている。メールで「悠々自適だったのに今回の震災で憂鬱な毎日です」と。さらに不安心理を煽っているのは「もう一つのドでかい地震」。昨年12月に政府の地震調査委員会が公表した、北海道の沖合にある千島海溝で起きるとされる「マグニチュード8.8程度以上」の巨大地震なのだという。

   千島海溝では、1973年6月の根室半島沖地震や2003年9月の十勝沖地震など繰り返し地震が起きている。地震調査委員会が公表した地震は350年ごとに繰り返している巨大地震で30年以内の発生確率は7%から40%と想定されてている。「今回の地震で誘発されるのはないか」と、友人は不安を隠さない。地震調査委員会がホームページ上で公表している「千島海溝沿いの地震活動の長期評価(第三版)」を読んでみた。確かに数字が具体的ですさまじい。

   根室沖では、過去およそ170年間にマグニチュード7.4以上の地震が3回起きていて、今回公表では8.5程度のものが今後30年以内の発生確率で60%程度から70%程度となっている。また、北方四島がある色丹島沖および択捉島沖でも巨大地震が発生する可能性があると指摘している。友人は「もう『想定外』という言葉は死語になった」と。

   地震調査委員会は2013年にも南海トラフについて公表し、マグニチュード8から9の巨大地震が今後30年以内に60%から70%の確率で発生すると指摘、世間を震撼させた。災害列島は次なるステージに入ったと言える。同時に日本人の価値観も今後大きく変動していくのではないだろうか。どのように変わっていくのか探ってみたい。(※写真は「千島海溝沿いの地震活動の長期評価(第三版)」より)

⇒10日(月)夜・金沢の天気     くもり

★震災あれど、花火を上げる心意気

★震災あれど、花火を上げる心意気

    日本は災害列島だ。ここ数ヵ月でも大阪北部地震(6月)、西日本豪雨(7月)、最大級の台風21号(9月)、そして今回の北海道地震。まさに非常事態だ。日本は自然災害と戦っている「紛争国」ではないだろうか。

    自然災害がもたらすこんな数字を思い起こす。今後30年以内に70-80%の確率で発生するとされる「南海トラフ地震」がM9クラスの巨大地震と想定すると、経済被害額は最悪の場合、20年間で1410兆円(推計)に達する(ことし6月7日・土木学会)。倒壊などによる直接被害は169兆5千億円、それに加え、交通インフラが寸断されて工場などが長期間止まり、国民所得が減少する20年間の損害額1240兆円を盛り込んだ数字だ。そして、奪われるであろう命は最悪30万人余り。

    自然災害に怯えてばかりはいられない。災害と共生するたくましい人々が北海道にいる。きょうのネットニュース(BuzzFeed Japan)にもなっていた。洞爺湖町で開催されている「洞爺湖ロングラン花火大会」(4月28日-10月31日)は、地震があったきのう6日夜も450発が打ち上げれたようだ。「震災で亡くなった人々がいるので不謹慎」と思う人もいるだろう。洞爺湖周辺の人々には自然災害と付き合ってきた長い歴史がある。

           昨年9月16-18日の休日を利用して北海道の洞爺湖を旅した。目的は「洞爺湖有珠山ジオパーク」だ。2009年、ユネスコ世界ジオパーク認定地として糸魚川、島原半島とともに日本で初めて登録された。ジオパークは大地の景観や奇観を単に観光として活用するというより、地域独特の地学的な変動を理解して、その大地で展開する自然のシステムや生物の営み、人々の生業(なりわい)、歴史、技術などを総合的に評価するものだ。

    洞爺湖有珠山ジオパークの価値を理解するため、ロープウエイに乗って、有珠山の噴火口に行き、あるいは洞爺湖を望んだりした。理解を深めるとっかかりはガイドの男性の意外なひと言だった。「有珠山はやさしい山なんです」。火山科学館で 有珠山のビデオ上映があった。1663年の噴火以来、これまで9度の噴火を繰り返してきた日本で最も活動的な火山の一つだ。映像は18年前の2000年の噴火を中心に生々しい被害を映し出した。この映像から有珠山の「やさしさ」の理由が解きほぐされる。

    2000年の噴火では、事前の予知と住民の適切な行動で、犠牲者がゼロだった。犠牲者ゼロが成し遂げられたのは、有珠山は噴火の前には必ず前兆現象を起こすことだった。その「山の声」を聞く耳を持った住民や気象庁や大学の専門家が観測をすることで適切な行動を起こすことができたからだ。この犠牲者ゼロの貴重な体験から「火山防災」あるいは「火山減災」という考えが地域に広まり、学校教育や社会教育を通じて共有の認識となる。さらに気象庁は火山の監視と診断(緊急火山情報、臨時火山情報、火山観測情報)の精度を高め、大学などの研究機関は予測手法の確立(マグマの生成、噴火に伴う諸現象など)をすることで「火山学」の理論構築を展開させた。

   定期的に噴火を繰り返す有珠山と共生するという周辺地域の人々の価値感は、噴火の事前現象を必ず知らせてくれる「やさしい山」なのだ。それだけではない、1910年噴火では温泉が沸き出し、カルデラ湖や火砕流台の自然景観は観光資源となり、年間301万人(平成27年度・洞爺湖町調べ)の観光客が訪れ、宿泊客は64万人。有珠山観光は地域経済を支える基幹産業である。火山を恵みとしてとらえ、犠牲者を出さずに火山と共生する人々の営みを創り上げた。

   防災、減災、リスクヘッジをひたむきに追求し、危機対応や被災に対する心構えがこの地には根付いているからこそ、被災地域を超えて「大地の公園」、ジオパークという発想に立つことができる。「花火は人が打ち上げるものだ。停電の闇夜(ブラックアウト)に明かりを」と言わんばかりに震災の日に花火を打ち上げた、洞爺湖観光協会の人々の心意気は十分に理解できる。(※写真は洞爺湖観光協会ホームページから)

⇒7日(金)夜・金沢の天気   あめ

☆災害列島の正念場

☆災害列島の正念場

  「震度7」、痛ましい。先日の台風21号に続いて、まさに「災害列島」。気象庁は地震の名称を「北海道胆振東部地震」に決定したと発表した。胆振(いぶり)という地名を入れる必要があるのだろうか。おそらくテレビ各局のアナウンサーも困っているだろう。「いぶりとうぶ」という読みは舌を噛みそうだ。「北海道地震」でよいのではないだろうか。何しろ東北の一部を含め北海道全体が揺れている=写真・上、気象庁ホームページより抜粋=。

   早朝にNHKニュースを視聴して「震度7」の状況を見たのは、厚真町(あつまちょう)の山々の土砂崩れだ。頂上の樹木を残して赤土の山肌がいたるところで露出している。震度7の揺さぶりの激しさを見た思いだ。土砂災害がこれほど大きくなると自衛隊の災害派遣が要請される。防衛庁のホームページによると。現在4900人が派遣され、今後2万5000人規模まで増派予定と。艦船は4隻、航空機は20機。陸上自衛隊は給水支援や人命救助活動を行っている=写真・下、防衛庁ホームページより抜粋=。海上自衛隊は救援物資の輸送を行っている。航空自衛隊は救助犬の派遣など行っている。自衛隊では海上と航空が「警備犬」を養成していて、爆発物の検索や不審者の追求、災害時における被災者の捜索を行う。犬種はドイツ・シェパードが多いようだ。

   大規模な震災では二次災害が起きる。とくに火災だ。電気機器やコードが損傷している場合は火災が起きる。消防庁の呼びかけで意外だったのは太陽光発電パネルの危険性だ。損傷した太陽電池パネルに日が当たると発電し、感電や火災につながる可能性があり、可能ならばパネルの表面に遮光を施す、たとえばブルーシートや段ボールで覆う、裏返しにするなどの対策をとってほしいと呼びかけている。文明の利器も災害時には凶器となるのだ。

    総理官邸ではどんなことがなされているのか。ホームページをチェックすると、関係閣僚会議で安倍総理が次のように指示している。北海道全域で発生していた停電は水力・火力発電所の再稼働を進めた結果、札幌市の一部など30万戸への送電を再開した。あす朝までに全体の3分の1に当たる100万世帯への供給再開を目指す。病院や上下水道、通信基地局などの重要施設向けては300台以上のタンクローリーを派遣して自家発電(非常用電源)に必要な燃料供給を行う。全国の電力会社から150台の電源車を確保し、今夜中に35台が現地に入り、重要施設への電力供給を行う。

    内閣も必死なのだろう。災害列島は正念場だが、ただ、これで終わることはない。「災害は忘れたころにやってくる」(寺田寅彦)は教訓だが、すでに現実味を失った。「天災は忘れないうちにやってくる」と心得た方がよい。

⇒6日(木)夜・金沢の天気     はれ 

★台風一過の兼六園、梢のざわめき

★台風一過の兼六園、梢のざわめき

    昨夜(4日)の金沢での最大瞬間風速は44.3㍍(午前6時前)だった。台風一過、けさは雲一つない青空だった。6時30分ごろ、兼六園に出かけた。名木が倒れているのではないかと気になった。入り口に札がかかっていた。「本日の早朝入園は中止します」。普段だと午前7時前ならば無料で入ることができる。その早朝入園が中止ということは、はやり名木が倒れるなど緊急事態が発生しているのではないかとますます気になった。

    午前7時に開門。入場料(310円)を払って入った。園内は落ち着いた名園の風景だった。早朝入園が中止は落ちた枝葉の清掃によるものだった。根が盛り上がっている根上松(ねあがりのまつ)や見事な枝ぶりで知られる唐崎松(からさきのまつ)は健在だった。44.3㍍の台風によく耐えたものだと安堵を得た。でも、その姿をよく見ると、根上松の枝に縄を張って補強が施され、さらに支柱がしてある=写真・上=。枝が強風で折れないように「台風対策」があらかじめ施されていたのだ。台風が去った後は速やかに撤去されるのだろう。名木あっての名園を守るということの意義に感じ入った。

           実は兼六園では「名木を守る」もう一つの手段が講じられている。台風で名木が折れた場合に備え、次世代の子孫がスタンバイしている。これは兼六園管理事務所の関係者から聞いた話だが、子孫とは、たとえば種子からとることもあるが、名木のもともとの産地から姿の似た名木をもってくる場合もある。兼六園きっての名木である唐崎松。これは、滋賀県大津市の「唐崎の松」から由来する。歌川広重(安藤広重)が浮世絵「近江八景之内 唐崎夜雨」に描いた名木である。近江の唐崎松は2代目だが、第13代加賀藩主・前田斉泰(在位1822-1866)が近江から種子を取り寄せて植えたのが現在の兼六園の唐崎松だ。

    兼六園管理事務所では、滋賀県の唐崎の2代目の種子で成長した低木を譲り受け、管理事務所で育てている。つまり「年の離れた兄弟」という訳だ。この兄弟の出番はいつか分からない。100年後か200年後か。ただ、名木に次世代がスタンバイするという在り様は永遠という時空をつけている。兼六園は四季の移ろいを樹木などの植物によって感じさせ、それを曲水の流れや、玉砂利の感触を得ながら確かめるという、五感を満たす感性の高い空間なのだ。その空間に永遠という時空をつけて、完成させた壮大な芸術品、それが兼六園だ。   

     ことじ灯ろう=写真・下=など30分ほど兼六園を散策して、随身坂口の門を出ようとすると風が頬をなでた。松の枝葉がサラサラと音を立てた。庭を愛したドイツの詩人、ヘルマン・ヘッセの作品を思い出した。「あの涼しい庭の梢(こずえ)のざわめきが私から遠のけば遠のくほど私はいっそう深く心から耳をすまさずにはいられない、あの頃よりもずっと美しくひびく歌声に」(『青春時代の庭』)。梢のざわめきがハーモニーのような美しい歌声に聞こえた。

⇒5日(水)午後・金沢の天気    はれ

☆ニュースの裏読み

☆ニュースの裏読み

     報じられるニュースと報じられないニュースがある。簡単に言えば、報じられるニュースは建て前、報じられないニュースは本音、あるいは不都合な真実と言ってよいかも知れない。その事例をいくつか。

     経団連中西宏明会長が2021年春以降に入社する学生への会員企業の採用活動に関し、経団連が定めている面接解禁などの統一ルールを廃止する意向を表明したと報じられた。これに対し、遊説先で安倍総理は「企業側ともよく話をした結果、『採用活動は6月開始』というルールをつくったところだから、このルールをしっかりと守っていただきたい」と述べ、経団連は指針を守るべきだと述べたという。

     経団連がつくった就活の統一ルールはすでに形骸化している。リクルートキャリアが発表した数字では、面接など企業の選考活動が解禁されたことし6月1日時点で、大学生の就職内定率は68.1%となっていた。このままでいけば、経団連に加盟する大企業が「貧乏くじ」を引くことになってしまう。そもそも、リクルートスーツで身を固めて会社訪問というパターン化された就活に違和感を持つ学生は多い。最近聞いた学生の話では、留学先(オーストラリア)から東京の企業にメールで問い合わせ、後日スカイプで面接をして内定。帰国後に企業訪問をして卒業後の具体的な仕事内容について段取りをしてきた、と。学生の本分である勉学が就職活動が早くなることで疎外されること懸念する向きもあるが、リクルートスーツで何十社と回るより時間的なロスが少ないのではないだろうか。

    障害者手帳は地方公共団体に認定を受けると発行される、障害を証明するための手帳である。手帳は2 年ごとに更新が必要だ。いま問題となっている障害者雇用の問題はこの手帳を持っているのか、いないのかが基準となっている。正直私だったらこの手帳を持ちたくない。実際に手帳を持っている人の話だ。精神に障害を持つ彼は、担当の医師に手帳の更新の申請書を書いてもらう。その時、医師は「症状は随分とよくなっていると思いますが、そのまま書くと手帳がもらえなくなるので少々きつく書いておきますね」と言われたそうだ。実際書かれた申請書に目を通すと「暴れる」「奇声を発する」など大げさに書いてあった。

    働くために手帳をもらう。手帳をもらうために症状の水増しが行われる。彼は「人格が傷つけたれた思いがした」「本音を言えば手帳はいらない。更新時が憂鬱だ」と。このような声はニュースにはいっさい出てこない。

⇒4日(火)朝・金沢の天気    くもり時々はれ

★27年ぶり「猛烈台風」

★27年ぶり「猛烈台風」

          豪雨の次は猛烈な台風だ。「非常に強い」台風21号が4日に本州に上陸する。気象庁のきょうのホームページで掲載されている台風の進路予想図では同日夜には北陸が暴風域のど真ん中に入るルートになっている。「非常に強い」勢力の台風が本州に上陸するのは1991年以降初めと警戒感が広がっている。

    1991年9月27日夜に北陸を直撃した「台風19号」。鮮明に覚えている。このとき、北陸朝日放送の報道制作局に所属していた。開局を4日後の10月1日に控え職場では準備で慌ただしかった。さらに台風の直撃。カメラマンと取材場所をどこにするかと議論になった。台風は長崎県に上陸し、山口県をかすめて、日本海を北上していた。防波堤に叩きつけるような波を撮影しようと、カメラマンには金沢港に向かってもらった。この日は社内に泊まり込んだ。

   ところが一夜明けて大変なことになっていた。金沢の観光スポット、兼六園の名木が何本も倒れて無残な光景に。輪島市にある輪島測候所の風速計が最大瞬間風速57.3㍍を記録した後に破損するという事態になっていた。映像は「ネット上げ」(全国ニュース用)にテレビ朝日に送った。北陸朝日放送の駐車場にあった取材用のワゴン車1台も横転していた。その後、台風は青森、北海道を通過した。映像で繰り返し放送されて有名になったのは、収穫を前に青森のリンゴが軒並み落下し、落胆する農家の様子だった。このことから台風19号は「リンゴ台風」とも呼ばれた。

   では、27年ぶりの「非常に強い」台風21号はどうか。気象庁の予測データでは、4日の最大風速は北陸で30㍍、最大瞬間風速は45㍍、5日朝までの24時間に北陸では300-400㍉の雨。気象用語では最大風速30㍍は「猛烈な風」だ。風速33-49㍍(約10 秒間の平均)で「屋根瓦が飛び、ガラス窓が割れる。ビニールハウスの被害甚大。根の弱い木は倒れ、強い木の幹が折れたりする。走っている自動車が横風を受けると、道から吹き落とされる」とある。台風19号を経験しているだけにリアリティを感じる。(※写真は気象庁の3日付のHPから抜粋)

⇒3日(月)朝・金沢の天気    はれ

☆「ため池ハザ-ド」

☆「ため池ハザ-ド」

    豪雨の峠は越えたようだが、能登半島を中心に石川県ではきのう(31日)の降り始めからの雨量が各地300㍉近くに達しているところがあり、テレビのニュースでは気象台が土砂災害に警戒するよう呼びかけている。能登の人たちの心配はむしろこれからだ。きのう夕方のNHKニュース(ローカル)で、避難所に身を寄せている高齢女性のひと言が心配を象徴していた。「堤が壊れるんやないかと不安でここ(避難所)にきたんや」

    堤は「ため池」のこと。能登半島は中山間地での水田が多く、その上方にため池が造成されている。能登半島全体で2000ものため池があると言われている。中には中世の荘園制度で開発された歴史的なため池もある。「町野荘」があったことで知られる能登町には「溜水」と書いて「タムシャ」と呼ぶ集落もある。今でも梅雨入り前に集落の人たちが土手を補修するなど共同管理している。インタビューで高齢女性が不安に思ったため池はおそらく、過疎高齢化で管理する人たちがいなくなったに違いない。中山間地のため池が決壊すれば、山のふもとにある集落には水害と土砂災害が一気に襲ってくることになる。

    ため池は普段どのように管理されているのだろうか。能登町矢波地区に行くと、公民館に「ため池ハザードマップ」=写真=が貼ってある。同地区には5つのため溜め池があり、決壊した場合どのような範囲で水や土砂が流れるのか地図上で示されている。溜め池の管理人が堤防の亀裂や崩れ、沈下、濁水、水位などに異常を確認した場合、区長に連絡し、区長は住民に避難の連絡をすると同時に行政とともに現地対策本部を立ち上げると明記している。これだけ用意周到な対策を講じていれば、地域住民は安心感を得ることができる。

    問題は管理されないため池の存在である。石川県農林水産部が珠洲市で行った「ため池の管理に関するアンケート」(2010 年1 月)ではまったく管理や補修がされていため池が1割あった。耕作放棄や河川からの引水で灌漑の機能を失ったためだ。この傾向は増える傾向にあることは言うまでもない。「もう3割は管理されていないのでは」と指摘する向きもある。

    ため池を放置すれば土砂崩れや水害のリスクが高まる。沼地化して、その後に樹木が生えて原野に戻っていくこともある。能登半島はコハクチョウや国指定天然記念物オオヒシクイなどの飛来地としても知られる。これらの水鳥はため池周辺の水田を餌場としても利用している。また、ため池は絶滅危惧種であるシャープゲンゴロウモドキやトミヨ、固有種ホクリクサンショウウオなど希少な昆虫や魚類の生息地でもある。ため池の管理が大きな曲がり角に来ている。

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