#コラム

☆タカサゴユリは敵か味方か

☆タカサゴユリは敵か味方か

   わが家の庭にタカサゴユリ(高砂ユリ)が咲き始めた。「立てば芍薬(シャクヤク)、座れば牡丹(ボタン)、歩く姿は百合(ユリ)の花」の花の美しさは見事だ。ヤマユリのような高貴な香りはないが、人目をひく花だ。

    タカサゴユリをよく見かけるのは斜面地で、日陰でも日なたでも同じように咲いている。肥料分の少ない斜面地でもすくすくと繁殖するチカラ強い植物である。植えた覚えはないので、おそらく種子が風に乗ってやっきて、わが家に落ちて育ったのだろう。旧盆が過ぎたこの時節は花の少ない季節で、茶花として重宝している。雑草の力強さ、そして床の間を飾る華麗さ。なんとも、したたかなタカサゴユリではないか。 

    しかし、立場が異なればタカサゴユリは外敵、目の敵だ。国立研究開発法人「国立環境研究所」のホームページには「侵入生物データベース」の中で記載されている。侵入生物、まるでエイリアンのようなイメージだ。これによると「和名」はタカサゴユリ、 ホソバテッポウユリ、 タイワンユリ、「学名」はLilium formosanum、「英名」はFormosa lilyだ。「自然分布」は台湾で、「生息環境」は荒地、道端、堤防、高速道路法面、温度選好性、亜熱帯~温帯とある。「繁殖生態」は風媒花、自家受粉可、種子を大量に風散布、 繁殖期:花期は7~9月。ここからが敵対的な表現だ。「生態的特性」として、日当たりの良い法面や道路わき、空き地などに侵入する、とある。「侵入経路」として、観賞用として導入、高速道路法面などでよく見かけるようになった、と。「侵入年代」は1923~1924年、「影響」として、在来種と競合、ウイルス媒介、交雑、影響を受ける生物:在来植物とある。

    「防除方法」は緑化資材にしない、抜き取り刈り取り。面白いのは「備考」だ。「近年各地で繁茂しているが花がきれいなためなかなか駆除されない。少なくとも外来種であることを周知する必要がある」と。そのきれいな容姿に国民はだまされてはいけない。「侵入生物」であることをもっと宣伝して駆除せねば、との苦々しい思いが伝わる文章ではある。

⇒22日(木)午前・石川県珠洲市の天気     あめ     

★夏の甲子園、場外論戦

★夏の甲子園、場外論戦

  夏の甲子園があす22日、決勝(星稜-履正社)だというのに、野球ファンの間でいまだに燻り続けているのが、岩手大会決勝戦で、163㌔の右腕、大船渡高校・佐々木朗希投手の登板回避問題だ。甲子園のマウンドというヒノキ舞台に立たなかったにもかかわらず、その是非はいまでも議論を巻き起こしている。佐々木選手は、星稜の奥川恭伸投手と並んでこの夏に注目された選手の一人かもしれない。

   金沢大学の学生で自ら高校時代にピッチャーだったという学生はこう述べている。夏の大会の厚さは疲労の蓄積のほかの時期に比べ格段に大きい。にもかかわらず、トーナメントが進むにつれて連戦が増えてきてしまう。これを解消するには日程の見直しが必要だ。多くの地区では7月から地方大会が始まるが、これを前倒しして6月から始めるのはどうだろう。梅雨と重なり雨天順延も多くなるかもしれないが。投手の故障を防ぐために、一部で球数制限というアイデアもあるが、これは投手の複数抱える強豪チームが有利になるので賛成ではない。

    元マスメディアの記者だった知人の意見。高校野球を主催する春のセンバツの毎日新聞、夏の甲子園の朝日新聞はそれぞれ、この問題をどう考えているのか見解を聞きたい。NHKも含めて。報道サイドからの問題提起が聞こえてこないのは不思議だ。このままだと、社内で「タブー」となっているのではないかと疑ってしまう。

   高校時代からの知人の話。マスコミは佐々木投手の160㌔を誇張しているが、これが原因ではないか。試合にどうしたら勝つことができるかが高校野球の本題であって、投げることが本題ではない。マスコミが騒ぐと、ファンもその気になって160㌔を期待する。すると投手本人には強烈なプレッシャーになる。この一件は、プレッシャー問題ではないのか。

   もう一つ、大学の研究者(スポーツ論)の話。「勝負は勝たなきゃダメ。ケガをするのは選手の宿命」とテレビで述べていた野球解説者がいたが、自分たちの経験値こそ正しいとか、科学的根拠のない精神論をかざしてのコメントは間違い。精神を鍛えることと、肉体を損ねることは別の話だ。大船渡の監督の決断は総合的な判断だと思うので評価する。

⇒21日(水)朝・金沢の天気     くもり

☆夏の甲子園、星稜レジェンド

☆夏の甲子園、星稜レジェンド

   竹を割るときは、ナタで最初の一節を勢いよく割ると、後は一気に割れていく。これを「破竹の勢い」と言う。甲子園球場で行われている夏の甲子園(第101回全国高校野球選手権大会)準々決勝、金沢市の星稜高校はきのう18日、4本のホームランと22安打で仙台育英を17対1で下し、20日の準決勝にコマを進めた。前日17日の三回戦では智弁和歌山に延長14回でサヨナラ勝ちをしていて、まさに破竹の勢いでの連勝だ。

   これまでの星稜は敗れて伝説を残してきた。40年前、1979年の第61回大会の三回戦で延長18回の死闘を箕島(和歌山)と演じ、敗れた。箕島はこの年の春のセンバツ大会で優勝していて、まさに春夏連覇がかかっていた。その箕島を最も苦しめた存在としての星稜だった。もう一つ、負けて名を上げた試合が1992年の第74回大会の二回戦の明徳義塾(高知)戦。星稜の4番・松井秀喜選手に対しては5打席連続の敬遠だった。松井選手は春夏含め4回甲子園出場で、高校時代の公式試合でホームラン60本を放っていた「怪物」だった。朝日放送の実況アナウンサーが「勝負はしません」と声を張り上げた。連続5敬遠が彼の名を一躍全国区に押し上げた。

   このとき、私は金沢のテレビ局で報道デスクをしていて、高校野球において勝利至上主義でよいのかとのテーマで特集を何度か組んだ。松井選手が逆境に強いとの印象を持ったのもこのころだった。父親の昌雄氏に何度か取材した。息子にこう言い聞かせて育てたそうだ。「努力できることが才能だ」と。無理するなコツコツ努力せよ、才能があるからこそ努力ができるんだ、と。松井選手がプロ入りしてから、ホームランの数より、むしろ連続出場記録にこだわったのも、プロとは本来、出場記録なのだと見抜いていたからなのだろう。

   それにしても高校野球は何かと話題を提供してくれる。夏の高校野球の岩手大会決勝で、県立大船渡の163㌔の右腕投手が肘の違和感を訴えていたので、監督が登板を回避した。球場では怒りのヤジが飛び交い、学校にまで抗議電話が殺到した。安全確保か勝負をさせるか、その是非が議論が今でもくすぶっている。話が横にそれた。星稜がベスト4に入ったのは1995年の第77回大会で、24年ぶりだ。20日は中京学院大中京(岐阜)との戦い。星稜には新たなレジェンドをつくってほしいと願う。(※写真は、星稜のベスト4入りを報じる19日付の朝刊各紙)

⇒19日(月)朝・金沢の天気    はれ 

★熱く不気味な「8月15日」の光景

★熱く不気味な「8月15日」の光景

    それにしても風が熱い。台風10号の接近でフェーン現象の影響で金沢は猛暑だ。能登半島の中ほどにある志賀町では午後2時ごろ、石川県内で観測史上最高となる40度を記録したと先ほどテレビが報じていた。このニュースを聞いて、きょう夕方からの庭の草むしりはやめにした。この危険な暑さで熱中症になろうものなら、「いい年をして、身の程知らず」と言われそうだ。

    熱波の次は大雨になりそうだ。台風10号が日本海に出て、きょう夜からあす16日昼前にかけて、雷をともなって激しいく雨が降る見込み。あす午前6時までに加賀地方で150㍉、能登地方で120㍉の予想。その後、さらに17日午前6時までの24時間に降る雨の量は加賀・能登ともに100から150㍉の見込み、とニュースは伝えている。ちょっと待てよ、17日は学生たち40人と輪島市の黒島天領祭という祭りに参加する予定でいる。豪華絢爛な曳山が街を練る祭りだ。台風よ早く去れ、と心で念じている。

     台風も気になるが、終戦の日の「8月15日」も気になる。政府主催の全国戦没者追悼式(東京・日本武道館)で、安倍総理は「いまだ帰還を果たされていない多くのご遺骨のことも決して忘れません」「戦争の惨禍を二度と繰り返さない、この誓いは昭和、平成、令和の時代においても決して変わることはありません」と淡々と式辞を述べた。韓国の文在寅大統領は日本統治からの解放を記念する「光復節」の式典で「今でも日本が対話と協力の道に出てくるなら、我々は喜んで手を握るだろう」と演説した(韓国・中央日報日本語版)。徴用工判決など歴史問題は輸出管理厳格化のホワイト国除外で対話を優先をしたいとの演説だろう。

    それにしても、北朝鮮が短距離弾道ミサイルなどの発射を繰り返していることについて文大統領はなぜ触れなかったのだろうか。今月24日に自動更新するかどうかの期限を迎える日本と韓国の安全保障上の協定「GSOMIA」についても何も触れていない。ある意味で不思議な8月15日の光景だ。

    最後は東京株式市場だ。全面安の展開で日経平均株価は前日14日より249円安い2万405円。ラインとされる2万円まであとわずかだ。14日のニューヨーク株式市場ダウが800㌦安い2万5479㌦と、値下がり率が実に3%を超えことが直撃した。世界経済の減速懸念が一段と強まったことが背景にあるが、投資家の心理は冷え込んでいるようだ。(※写真は、15日午前8時ごろの金沢の空。不気味な雲が覆う)

⇒15日(木)夕・金沢の天気     くもり

☆ファミリーヒストリー トランプ氏の後悔

☆ファミリーヒストリー トランプ氏の後悔

   それにしてもショッキングな見出しだ。「Trump pressured his alcoholic brother about his career. Now he says he has regrets.」。直訳すれば、「トランプ氏はアルコール中毒の兄弟に仕事について圧力をかけた。今彼はそれを後悔していると言う」となるだろうか。きのう(12日付)に続き、すし屋での話である。アメリカのトランプ大統領はアルコールを飲まないというのは知られたことだが、飲めないのか、飲まないのかの話になって、隣の客が「訳ありで飲まないらしい。先日(9日付)NHKのニュースでやっていた」と。帰宅して、NHKニュースWeb版をたどると確かにあった。ネタもとがアメリカのワシントン・ポスト紙とあったので、さらに同紙のWeb版をたどって記事を見つけた=写真=。 

    この記事を読み込んでいく。トランプ氏本人やファミリーに詳しい人物へのインタビューをまとめて記事は構成されている。トランプ氏はアメリカで深刻な問題となっている薬物依存症に触れて、自分の兄もアルコール依存症だったとすでに言及していた。ワシントン・ポスト紙はさらに突っ込んで、なぜ兄が依存症になったのかを取材したのだ。

    記事にはその核心部分として、トランプ氏本人へのインタビューが掲載されている。「“I do regret having put pressure on him,” Trump said. Running the family business “was just something he was never going to want” to do. “It was just not his thing. . . . I think the mistake that we made was we assumed that everybody would like it. That would be the biggest mistake. . . . There was sort of a double pressure put on him” by his brother and his father. 」

    前後の記事と合わせて要約する。トランプ氏と父が家業である不動産ビジネスに8歳上の兄フレッドに参加するようにとプレッシャーをかけてた。兄はパイロットになる希望を抱いて航空会社でトレーニングを受けていた。しかし、トランプ氏と父は「時間のムダだ」と反対し、繰り返し不動産業に入るようにプレッシャーをかけ続けた。このころから兄のアルコール依存症はひどくなり、航空会社を辞めざるを得なくなった。その後、兄は不動産ビジネスに参画したものの、依存症の悪化が原因で1981年に亡くなった。42歳だった。トランプ氏は兄のアルコール依存症を悪化させたのは自分だと後悔している。兄のこの一件があり、トランプ氏自身は酒を飲まないと決めた。

    記事は最後をこう締めくくっている。「“I guess you could say now I’m the chief of trying to solve it,” Trump said. “I don’t know that I’d be working, devoting the kind of time and energy and even the money we are allocating to it. . . . I don’t know that I’d be doing that had I not had the experience with Fred.” 」。トランプ氏はアメリカにおける薬物依存症問題にすべてを捧げる決意をしている。兄とのこうした経験があるからだ、と。

⇒13日(火)朝・金沢の天気    はれ

★『人間到る処青山あり 極鮨道』

★『人間到る処青山あり 極鮨道』

   昨夜(11日)は金沢のすし屋に入った。サザエのつぼ焼きから始まって、藻塩(もじお)を少しふってつまむバイ貝、アジの炙(あぶ)り、甘エビ、マグロ、アナゴと海の幸が彩りよく次々と出てくる。新鮮な素材と、店主のスピード感ある包丁さばきや握りの技術、そして6人掛けの小さなカウンターが絶妙な食の空間を醸し出す。

   カウンター向こうの壁に『粋』と墨書の大額が飾られている。その右下に『人間到る処青山あり 極鮨道』と。店主に、「じんかんいたることろせいざんあり すしどうをきわめる」と読み方を確かめると、「そうです。ほとんどのお客さんは『にんげん』と読まれますが、『じんかん』で正解です」と。世の中どこで死んでも青山(墳墓の地)はあるから、夢を達成するためにあえて郷里を出る。鮨道(すしどう)を極める。店主自らの書である。

   店主はもともと千葉の出身で、東京銀座の寿司店で修業を積んだ。金沢は縁もゆかりもなかったが、旅行で訪れた金沢の近江町市場に並ぶ魚介類の豊富さと鮮度の高さに惚(ほ)れ込んだ。すし屋として独立するなら金沢でと決めて単身で移住した。『人間到る処青山あり 極鮨道』は自らの決意の書でもある。北陸新幹線金沢開業の1年後の2016年3月開店にこぎつけた。しかし、金沢で「鮨道」を極めるには超えなければならない難関が待っていた。開店仕立てのころ、江戸前の銀シャリの味が金沢の食通の人に馴染まず、酢の配合が定まるまで試行錯誤の日々だったという。

   この話を聞いて、人間到る処青山ありの意味は単なる場所の移動ではなく、専門分野の技術革新(イノベーション)と解釈できないだろうかと直感した。専門分野に自らが閉じこもるのではなく、その専門性をベースにして広い視野に立ち、自らの可能性と生き様を追求する。江戸前の技術で北陸の食材を輝かせ、これまで金沢では味わえなかった「すし文化」を醸し出している。

   店主が秋田の日本酒を出してくれた。「美酒の設計」という銘柄で、酒米「山田錦」を55%まで精米した純米吟醸だ。透き通るような香味と洗練された酒質はまさに「上善(じょうぜん)水の如し」をイメージさせてくれる。そしてネーミングがいい

。試行錯誤を繰り返しながら美酒を醸すことに苦心しただろう。それをあえて気取らずに、醸造という科学の成果との意味を込めて「美酒の設計」とした心意気が、この店の雰囲気とも調和する。実に楽しい夜だった。

⇒12日(祝)朝・金沢の天気    はれ

☆「5G」絡めた東京と地方の税金分捕り論争

☆「5G」絡めた東京と地方の税金分捕り論争

  全国知事会が先月23、24日の両日、富山市で開催され「地方創生・富山宣言」が採択された。これを読むと、日本の地域課題が浮かび上がる。宣言では「今日の我が国は、他の先進国に例をみないスピードで進行する少子高齢化・人口減少により、離島や中山間地域の中には今後の存続が危機的な状況にある地域が増加しており、地域のあり方が改めて問われている。」と指摘。また、東京一極集中について、「過度な首都東京への一極集中は、出生率の低下、災害のリスク管理などの問題を生じさせるとともに、地方の担い手不足を招くこととなる。」と率直に記されている。

  全国知事会を報じたローカル紙を読むと、この東京一極集中について議論の応酬があったようだ。初日の23日、地方税財源の確保に関する国への提言案をめぐって、「地方創生の推進や東京一極集中の是正により、東京から地方 への人・モノ・金の流れを促進することで・・」との表現に対し、小池東京都知事は「国内で限られたパイを奪い合っても日本全体のためにはならない」「疑問を大きく感じる」と述べ、この部分の削除を要求した。これに対し、提言案を作成した石井富山県知事は「地方はどんどん人が減る一方で、東京にあらゆるものが集まり災害リスクなど過密の弊害が起きている」と是正措置に理解を求めた。小池知事はこの後、公務を理由に途中退席したため少々後味の悪さが残った。

  東京一極集中をめぐっては、昨年2018年度の全国知事会議で大都市に集中する地方法人税の偏在是正を求める提言を採択し、今年度の税制改正で東京都から地方自治体に計9000億円が再配分されている。小池知事とすれば、これ以上東京都を悪者扱いにしないでほしいとの思いがあったことは想像に難くない。結局、全国知事会では小池知事の主張を考慮し、「東京一極集中の是正」の文言ではなく、地方創生の取り組みをより強力に加速化させるという表現でこの件は決着した。

  1週間後の8月1日、全国知事会として自民党税制調査会に要望書を手渡した。その中で、「(2)地方創生・人口減少対策のための財源確保」として。以下2点を要望している。「まち・ひと・しごと創生事業費」(1兆円)を拡充・継続し、地方の安定的な財政運営に必要な一般財源を十分に確保すべき。「地方創生推進交付金」および「地方創生拠点整備交付金」については、拡充・継続を図るべきである。また、地方創生の更なる深化や取 組みの全国展開に向け、地方の実情を踏まえた、より弾力的で柔軟な 運用を図るべき。

  さらに要望書の中で目を引いたのは、「(3)地方における5G・ICTインフラ整備への財政的支援等」である。以下要望している。第2期「まち・ひ と・しごと創生総合戦略」において、5Gをはじ めとする未来技術の利活用を、来年度から次のステージを迎える地方創生の重要な柱の一つとして位置付け、併せて具体的な支援策を講ずるべき。

  全国知事会が「5G」(第5世代移動通信システム)について、これだけ明確に政権与党に働きかけていることは初めて知った。移動通信のトラフィック量は2010年と比較して千倍以上に増大するとされる5Gを地方創生の重要な柱として打ち出している。東京と地方の税金をめぐる分捕り合戦を5Gに絡めたところが面白い。(※写真は全国知事会ホームページより)

⇒11日(日)朝・金沢の天気     はれ

★政治と「実行力」、問われる夏

★政治と「実行力」、問われる夏

   きのう(8日)学生5人を連れて、輪島市をインターンシップの事前研修に訪れた。車中で女子学生と交わした話だ。こちらから「滝川クリステルが小泉進次郎と結婚するね」と水を向けると意外な言葉が返ってきた。「私だったら進次郎は避ける。お兄さん(孝太郎)がいい」と。その理由を尋ねと。「政治家の妻って大変じゃないですか。選挙もあるし」。少し間を置いて、「女子はみんなそう言ってますよ」と。

   なるほど、女性の視線からは選挙が大きなバリアに見えるのだ。逆に言えば、それを超えて進次郎と結婚を決めたクリステルの決断力は相当なものだったろう。記者会見(7日)で進次郎が発していた「(クリステルを)選挙には関わらせない」という言葉は、ひょっとしてクルステル側の結婚の条件だったのかもしれないと今ふと考える。

   話は変わるが、NHKが報じていた最近の世論調査(8月2、3日実施)で安倍内閣を「支持する」と答えた人は、3週間前の調査より4ポイント上がって49%、「支持しない」は2ポイント下がって31%だった。2017年10月の第4次安倍内閣では「49%」は最も高く、「31%」は最も低い。つまり、数字的には安倍内閣は絶好調ということだろう。

   支持する理由では「他の内閣より良さそうだから」が47%、「実行力があるから」が20%と続いた。3ヵ月前の5月の世論調査では「他の内閣より良さそうだから」50%、「実行力があるから」14%だった。相対評価が3ポイント下がり、実行力という絶対評価が6ポイント上がったことになる。この実行力とは何かを分析してみると、韓国を「ホワイト国」から除外したことだろう。8月の世論調査では、政府が韓国を輸出管理を簡略化する優遇措置の対象国から除外する決定をしたことについても尋ねている。この決定を「支持する」55%、「支持しない」8%、「どちらともいえない」27%の数字だった。つまり、「ホワイト国」除外が実行力としてイメージアップにつながったのではないだろうか。

   おそらく次に実行力が問われるのは「憲法改正」だろう。これも8月の世論調査で尋ねている。憲法改正に向けた議論を進める必要があると思うかとの問いに、「進める必要がある」34%、「進める必要はない」24%、「どちらともいえない」34%となっている。先の参院選挙(7月21日投開票)で「改憲勢力」と称される自民、公明、日本維新の会の議席は160となる、改憲の国会発議に必要な3分の2の(164)には届かなかった。

   ここに来て、アメリカが中東のホルムズ海峡の安全を確保するため結成を検討している「有志連合」に、日本を含む同盟国などに参加を呼びかけている。イギリスは参加を表明しているが、ドイツは不参加だ。自衛隊を有志連合に派遣するかどうか、改憲の肝(きも)が「自衛隊」の明記だけに安倍内閣はぎりぎりの選択を迫れるだろう。ちなみに、同じNHK世論調査では、自衛隊派遣に「賛成」22%、「反対」32%、「どちらともいえない」37%だ。(※写真は、小泉進次郎氏と滝川クリステルさんの結婚を伝える8日付の新聞各紙)

⇒9日(金)朝・金沢の天気    はれ

☆ビートルズ大学 「ハッピ・コート」の衝撃

☆ビートルズ大学 「ハッピ・コート」の衝撃

    イギリスのロックバンド「ザ・ビートルズ 」が来日したのは1966年6月29日だった。当時小学6年生だった私自身も少なからず影響を受けた。音楽に興味がわいていたころで中学生になり、ブラスバンド部に入った。トロンボーンを始めた。そして、2年生でエレキギターとドラムによる独自のバンドを結成したのだ。バンド名を「Bombs」とした。激しい音を出すので、「爆弾のようなバンドだ」と周囲からなじられ、bomb(爆弾)をバンド名にした。だた、ビートルズのように歌えるボーカルがいなかったので、ザ・ベンチャーズのインストゥルメンタル・サウンドにのめり込んでいった。そんなことを思い出しながら、今月3日に金沢市で開講した「ビートルズ大学」の講義を聴いてきた。

    「学長」は日本におけるビートルズ研究の第一人者で音楽評論家の宮永正隆氏=写真・上=。宮永氏は金沢市出身で、長らくオランダで家族と住んでいたが故郷に戻ることになり、金沢大学のオープンアカデミーの講座として「ビートルズ大学」を開講されることになった。場所はJR金沢駅西口から歩いて3分ほどにある金沢大学駅前サテライトの3階にある。土日祝に開講する。1講座50分で午前から夕方まで開講している。

    開講初日だった3日は午前10時20分から夕方午後5時15分まで、6講座をどっぷりと聴講させてもらった。語りで映像を交えた講義で、この日は40名余りが聴講した。居眠りしている人はいなかった。むしろ、体を揺らしながらビートズルの曲を楽しんでいる人もいた。冒頭のビートルズの来日に関する講座「ビ-トルズ来日学」ではビ-トルズが滞在した5日間のエピソードが語られた。講義の部屋にはビ-トルズが来日したときにJALフォーストクラスで配れらた記念品の扇子(俵屋宗達の画、本阿弥光悦の書)と同じ扇子=写真・下=や、武道館での公演の楽屋で使用されたコーヒーカップなどが展示された。これだけでも、どことなく当時の雰囲気が漂うから不思議だ。

     1966年6月29日午前3時39分に一行は羽田空港に到着した。実は台風の影響で11時間遅れだった。この時、タラップを降りた4人が羽織っていた法被にもエピソードがあった。宮永氏は当時法被を着せたスチュワーデスにインタビューしている。スチュワーデスには降りるときに法被を着せるという特命があった。何しろ「JAL」のネーム入りの法被だ。でも強制的に着せるわけにはいかない。そこで、臨機応変で対応してくれそうな人はジョン・レノンではないかと直感し、本人に「ハッピ・コートを着ていただけませんか」と頼んだところ率先して着てくれ、ほかの3人も追随したのだという。この「ハッピ・コートの演出」で来日のムードが国内でも一気に盛り上がった。

      講義では、こうしたビートルズにまつわる知られざるエピソードを宮永氏が取材し、その意義や音楽シーンに与えた影響について丁寧に語っている。

⇒7日(水)朝・金沢の天気      はれ
    

★「タラタラ質問してるんじゃね~よ」

★「タラタラ質問してるんじゃね~よ」

   心が弾むニュースだった。女子ゴルフの全英女子オープンで渋野日向子選手が優勝した。日本選手として樋口久子選手が1977年に全米女子プロ選手権で優勝して以来、実に42年ぶりのメジャータイトルでの優勝だ。気さくに笑いながらインタビューに応じるその姿は海外でも「スマイルシンデレラ」というニックネームがついているそうだ。きょう6日午後3時30分から、帰国してた羽田空港で渋野日向子記者会見を行う様子を民放各社が生中継しているのを視聴した。

   会見で記者が海外で「スマイルシンデレラ」というニックネームで親しまれていていることについて質問すると、渋野選手は「そうやって名付けてもらえるのはうれしかったが、シンデレラは良く言いすぎ」「ゴルフは自分が楽しんでやらないとみんな楽しくないのでそこは心がけている」「世界でも笑顔は共通だと思った」と話していた。ギャラリーとのハイタッチが負担にならないかという質問に対しては、「無視されるより、注目されるほうがずっといい。大会中は、どんどんタッチをしてくれる人が増えていってすごくうれしかった」と笑顔で話していたのが印象的だった。

   また、昨年7月の西日本豪雨で出身地の岡山県が大きな被害を受けたことを質問された渋野選手は「豪雨災害のときと同じタイミングでプロテストに合格した」「被災地の人たちに何も手助けができなくて、このままでいいのだろうかと思っていた」「豪雨災害の日のことを忘れたことはない。地元の皆さんを元気づけるには私が結果を出さないといけないと思っていた」と郷土愛がにじみ出た言葉だった。

   記者会見で違和感を感じた質問も多かった。「ゴルフとソフトボール、どっちが好きですか」「うれし泣きする瞬間はありましたか」「樋口久子さんに新人類と言わせるぐらいのメンタルを身につけた秘訣は」「優勝の実感はわいてきましたか」などなど。渋野選手は笑顔で答えていたが、視聴しているこちらの方がいらいらと。

   記者会見での質問は基本的に相手の心情を引き出すものだろう。「優勝の実感はわいてきましたか」などと抽象的な質問しても、本人は「だんだんとわいてくると思います」としか答えようがなかった。つい、こちらが「タラタラ質問してるんじゃね~よ」とつぶやいてしまった。(※写真は、渋野日向子選手の優勝を伝えるイギリス「BBCニュース」Web版)

⇒6日(火)夜・金沢の天気    はれ