#コラム

☆韓国の荒れた日

☆韓国の荒れた日

    台風18号から温帯低気圧に変わり、金沢でも今朝から非常に激しい雨が降っている。台風18号をネットで調べると、AFP通信(日本語版)が「韓国の行政安全省は3日、豪雨と強風を伴って同国に上陸した台風18号により、少なくとも9人が死亡、さらに数人が行方不明になっていると発表した。」と伝えている。この台風は2日夜に韓国に上陸し、洪水警報が発令された。同省によると、これまでに家屋1000戸以上が損壊したという。

    同じAFP通信によると、同日、ソウルでは文在寅大統領に退陣を要求するデモが開かれたと、写真(21枚)を掲載している=写真・上=。韓国の中央日報も「『チョ・グク法務部長官、辞退を』光化門~ソウル駅の2.1㌔㍍を埋め尽くした」との見出しで空撮映像を掲載している=写真・下=。産経新聞Web版によると、ソウル中心部で文氏退陣を求めるデモは数十万人規模。先月28日に行われた文大統領の支持デモと同規模で、「国論の二分が鮮明になった」と報じている。

    また、この日は疑惑の渦中にある曺国法相の妻である韓国東洋大教授のチョン・ギョンシム被告=先月23日に起訴=が検察に出頭し事情聴取が行われたとNHKなど日本のメディア各社も伝えている。チョン被告は、娘の大学進学に有利になるよう東洋大総長名義の表彰状を偽造したとし、私文書偽造の罪で在宅起訴された。韓国では逮捕状の請求に至るかどうかが注目されている。不正入学疑惑では、すでに娘や息子も聴取するなど異例の捜査展開となっている。検察改革を掲げる曺国法相との対立が増々深まっているようだ。

    文在寅大統領に退陣を要求するデモもこの国民不信によるものだろうか。韓国ギャラップのホームページをチェックすると、文大統領の支持率(9月第3週の調査)は支持率が40%(前回43%)、不支持率53%(同49%)で、支持率は落ち込んでいる。支持しない主な理由はやはり曺国氏を法相に任命した人事問題だった。

    3日は「開天節」と呼ばれる韓国の祝日で、建国記念日に相当するめでたい日だが、大荒れの日になったようだ。

⇒4日(金)朝・金沢の天気     あめ

★今ここにある朝鮮半島の夢と現実

★今ここにある朝鮮半島の夢と現実

  北朝鮮はきのう(2日)朝、東部の元山付近から弾道ミサイル1発を発射し、島根県隠岐諸島の北約350㌔㍍の日本のEEZ(排他的経済水域)内に着水した。防衛省ホームページによると、河野防衛大臣=写真=はきょう3日午後5時45分から5分間の臨時記者会見を行った。北朝鮮が発射した弾道ミサイルが新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)とみられ、打ち上げ角度を高くするロフテッド軌道での発射でなければ射程が2500㌔㍍に達するもので、準中距離弾道ミサイルとの見解を示した。陸上ではなく、沖合で発射されたが、実際に潜水艦が使われたかどうかは、さらなる分析が必要と述べた。記者との質疑は以下。

記者:今回の北朝鮮のミサイルの飛距離が2500㌔㍍におよぶSLBMということで、トランプ大統領は、短距離については問題にしないということで発言をしていたと思いますが、これは明らかに、問題になるような弾道ミサイルだと思いますが、その点はいかがでしょうか。
河野大臣:日米間では、短距離のミサイルであっても安保理決議に違反をしているということは問題であるという認識は、これまでも共有しております。当然に、このミサイルについても、そうした考え方は共有しております。トランプ大統領は、この米朝プロセスを進めるために、様々、発言をされ、あるいは、ツイートされておりますが、そういう目的でやられているということで、日米ともに了解しております。

記者:SLBMと断定するに至った、何か新しい情報はあるのでしょうか。差し支えない範囲で、どのような根拠でそうだと言えるのかを説明していただけますか。
河野大臣:分析の中身は申し上げられません。

記者:日韓の情報共有についてですが、昨日、日本政府は当初、2発発射というところから、その後1発が分離した可能性があると修正されていると思いますが、GSOMIAを含め、日韓での情報共有に支障を来たしているということはあるのでしょうか。
河野大臣:そのようなことはありません。

記者:潜水艦かどうかはともかく、中距離弾道ミサイルを発射するという北朝鮮の軍事行動が、日本の安全保障、あるいは、地域の安全保障にとって、どのような脅威になるとお考えでしょうか。
河野大臣:日本の安全保障にとって、深刻な脅威であるということは間違いないことでありますし、国際社会にとっても非常に大きな課題であるという認識は、広く国際社会で共有されていると思います。

記者:2段式ということですか。
河野大臣:2つに分離している可能性はあると思います。

   北は今年に入って弾道ミサイルを含む飛翔体を11回も発射していて、ミサイル技術の高度化が進んでいる。一方の韓国の文在寅大統領は8月15日の「光復節」で「2032年ソウル-ピョンヤン共同オリンピックを成功裏に開催し、2045年の光復100周年までには平和と統一で一つになった国(One Korea)として世界の中でしっかりと立つことができるように、その基盤をしっかりと固めると約束する」(8月15日付、韓国・中央日報Web版)と述べた。これが今ここにある夢と現実なのだろう。

⇒3日(木)夜・金沢の天気     あめ

☆新聞の価値、フェイクニュースと戦うこと

☆新聞の価値、フェイクニュースと戦うこと

   金沢大学で担当している共通教育科目 「マスメディアと現代を読み解く」(1単位)の授業(全8回)の学生たち75人にマスメディアとの接触度を尋ねるアンケートを行った。アンケートの設問は「あなたは新聞を読みますか 1・毎日読む 2・週に2、3度 3・まったく読まない」。その結果(回答者68人)は「まったく読まない」68%、「週に2、3度」22%、「毎日読む」10%だった。調査を始めた2016年から「まったく読まない」は漸減し、3年間で10ポイント減った。逆に「週に2、3度」は16%から22%に推移して、6ポイント増えている。「毎日読む」も6%から10%だ。数字で見る限り、下げ止まりから反転傾向は浮かんでくる。
 
   とは言え、若い世代で新聞は生活必需品となってはいないのが現状だ。きょうから始まった「消費税10%」だが、新聞は軽減税率が適応され、8%で据え置かれた。軽減税率の対象には「酒類・外食を除く飲食料品」のほかに、「週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)」が含まれている(国税庁ホームページ)。ただ、同じ新聞でも電子版での購読料は10%になる。アナログが軽減税率で、デジタルが増税、この違いはなぜだ。

   善意に解釈する。活字文化は単なる消費財ではなく「思索のための食料」という考え方がヨーロッパにはあり、新聞に税を課さない国(イギリス、ベルギー、デンマーク、ノルウェー)もある。EU加盟国では標準税率が20%を超えるが、新聞に対する税率を10%以下にしている国は多い。フランスは付加価値税が20%に対し、新聞は2.1%、ドイツは同19%、新聞は7%、イタリアは同22%、新聞は4%だ。

   日本新聞協会はきょう1日付で「消費税軽減税率の適用にあたって」と題して以下のような見解を発表している。以下要約。 

   私たちは報道・言論により民主主義を支え、国民に知識・教養を広く伝える公共財としての新聞の役割が認められたと受け止めています。民主主義の主役である国民が正しい判断を下すには、信頼できる情報を手軽に入手できる環境が必要です。私たちはそう考え、新聞の購読料への課税を最小限にするよう求めてきました。最近では、不確かでゆがめられたフェイクニュースがインターネットを通じて拡散し、世論に影響するようになっています。そうした中で、しっかりとした取材に基づく新聞の正確な記事と責任ある論評の意義は一段と大きくなってい ます。「知識に課税しない」という考えが定着する欧州各国では、新聞、書籍、雑誌の税率を軽減またはゼロにしています。電子新聞に適用する国も相次いでいます。私たちは軽減税率の対象が欧州と同等に拡大されるように、今後も求めてい きます。

   ネット世代の若者たちが読めば、なんとアナログな文脈と思うだろう。「知識に課税しない」はむしろインターネットに適用すべきだと思うのではないか。個人的に言えば、「軽減税率を機に新聞はフェイクニュースと戦う」と宣言してほしい。新聞はフェイクニュースと戦ってこそ存在価値を高めることができる。また、新聞しか戦えないと思う。軽減税率であることの意義をそこに込めたい。(※写真は「Finance Monthly」ホームペ-ジより)

⇒1日(火)夜・金沢の天気      はれ

★「京アニ事件」、その後

★「京アニ事件」、その後

         大学で担当するマスメディア論では、メディアの5のチカラを解説することから始める。ニュースや情報を集める取材力、ニュースを選び扱いの順番をつける編集力、毎日紙面(番組)をつくる制作力、何が起きてもすぐ説明する解説力、世論を形成する論説力だ。

        そのチカラを発揮するのが、マスメディアの業界用語で「発生もの」だろう。事件や事故、災害など予期せぬことが起きて取材する場合、「発生ものだ。はやく現場に行け」と本社の報道デスクは記者に指示を飛ばす。発生ものの場合、本社の社会部や地域の支局の記者が現地に取材に入ることになる。たとえば火災現場なら、火災が起きた現場に行く(接近)。現場で消防や警察の関係者、火災の通報者、近所に住む住民から情報を多面的に収集する(取材)。その情報を得て、失火なのか放火なのか火災の原因性を調べる(調査)。その原因性の真実はどこにあるのか調査する(探求)。それらの取材を経て読者や視聴者に伝える(報道)。この5のポイントは報道記者の基本動作と言ってよい。

   ことし7月18日午前10時35分に発生したアニメ制作会社「京都アニメーション」への放火事件では35人が死亡、34人が負傷した。この事件から75日になるが、不可解な点がいくつか残る。犯行の動機だ。容疑者の犯行について、「『小説を盗んだ』恨みを抱く」(7月20日付・毎日新聞)と報じられた。実際、京都アニメーションは「京都アニメーション大賞」を設け、アニメ化を前提に小説やシナリオを公募していた。これについて、「京都府警は青葉容疑者自身が書いた小説を応募したとみて、京アニ側から作品を入手。捜査関係者によると、小説はストーリーを伴い、『ちゃんとした小説になっている』という。」(8月18日付・朝日新聞Web版)。犯行動機とされる著作権侵害に対し、「京アニの代理人弁護士は形式面で1次審査を通過しなかったとし、『これまで制作された作品との間に類似の点はないと確信している』」(同)と応えている。犯行の強い動機となった著作権侵害があったのか、なかったのか、さらに突っ込んだ取材が必要だろう。

   この事件めぐる犠牲者の実名報道についても「違和感」がある。京都府警は8月2日に10人の実名を公表し、同月27日に25人の実名を公表した。警察側の判断では、葬儀の終了が公表の目安だった。メディア各社は公表された実名を報道した。府警は同時に「犠牲になった35人の遺族のうち21人は実名公表拒否、14人は承諾の意向だった」(9月10日付・朝日新聞Web版)と説明している。その拒否の主な理由は「メディアの取材で暮らしが脅かされる」だった。遺族側が警戒しているのはメディアという現実が浮かび上がっている。

   被害者や遺族に対するメディアスクラム(集団的過熱取材)は以前からさまざまに批判を浴びている。「報道被害」という言葉も社会的にはある。冒頭で述べた現場記者が取材の基本動作を守れば、当然遺族への取材は必然になる。この矛盾をどう正せばよいのか。メディアスクラム化を避ける代表取材であったとしても、記者が玄関のドアホンを鳴らしただけで、生活を脅かされたと敏感に感じる遺族もいるだろう。

⇒30日(月)夜・金沢の天気    はれ

☆仮想通貨リブラは世界を変えるのか

☆仮想通貨リブラは世界を変えるのか

     話題になるお金の話と言えば、ついこの間までは「MMT」だったが、最近は「リブラ」だろうか。先日も金融通の知人からメールが届いた。「キャッシュレス化が進む中国ではデジタル人民元の構想が進んでいるようだ・・・。リブラとガチンコ勝負になるのではないか」と。返信しようとしたが、デジタル人民元はなんとなく想像がつくが、リブラは無学に等しい。そこで、リブラのホームページをチェックすることから始めた。

A simple global currency and financial infrastructure that empowers billions of people. Reinvent money. Transform the global economy. So people everywhere can live better lives.(数十億人に力を与えるシンプルなグローバル通貨と金融インフラ。 お金を改革します。世界経済を変革します。そして、世界中の人々がより良い生活を送ることができます=グーグル翻訳)。単なるキャッシュレス通貨の構想ではなく、世界の金融革命を謳ったミッションがトップページに載っているではないか。

   フェイスブック社(アメリカ・カリフォルニア州)は今年6月18日、「リブラ」の仮想通貨(暗号資産)のサービスを来年2020年に始めると発表した。フェイスブックのユーザーは世界で20億人余りいるとされるので、とてつもない規模の通貨圏を創ることになる。おそらく、グーグル、アップル、アマゾンも黙ってはないだろう。さらなる巨大通貨圏が次々と構築されるのではないか。

   警戒を強めているのは各国の中央銀行だろう。フェイスブック社の発表に鋭く反応したのは、7月17日にフランス・シャンティイで開催されたG7(主要7カ国)の財務相・中銀総裁会議だった。議長を務めるフランスのルメール経済・財務相はリブラについて記者会見で「国家の主権を危険にさらすことはできない」と発言。「会議では、最近のリブラ計画発表を巡る懸念と、緊急の対応が必要との認識が共有された」と語った。各国がどのようにリブラに対応するのか、その方針を報告するよう各国の中央銀行総裁に対して要請が出された(7月18日付・ロイター日本版)。

   そもそもフェイスブック社は仮想通貨を発行するにほどの信頼性があるのかどうか。フェイスブック利用者8700万分のデータがイギリスの選挙コンサルティング会社に流れた事件があった。フェイスブックの検索ボックスにメールアドレスや電話番号を打ち込むことで利用者を互いに検索できるようにする機能を、悪意ある参加者が悪用していたという(2018年4月5日付・BBC日本語版)。「仮想通貨を発行をする前にセキュリティなど居住まいを正すべきだ」など、ユーザーからの声も当然あるだろう。

   もし、国際的な規制を受けながらもリブラが発行されればさまざまなことが起きるだろう。物価上昇が激しい国では現地の通貨がリブラに置き換えられることになるだろう。当然、その国の中央銀行は金融政策の制御を失うことにもなる。リブラはある意味でさまざまな場面での社会変革を起こすかもしれない。デジタル人民元との戦いも見どころかもしれない。ただ、知人への返信は勉強不足でまだ送れていないが。(※写真は、「リブラ」のホームページより)

⇒24日(火)夜・金沢の天気    はれ

★ラグビーW杯、開幕戦の裏で

★ラグビーW杯、開幕戦の裏で

   ラグビーのワールドカップが面白い。20日の東京スタジアムでの日本Vsロシアの開幕戦をテレビの中継で視聴した。最初から見ようと思ってリモコンを入れたわけではない。午後8時過ぎ、たまたま4チャンネル(日本テレビ系)で映っていた。実況アナが「松島幸太朗が逆転トライを決め・・」と選手名を言っているが、映像で見る松島の頭髪や顔が特徴的で「ハーフか」と思ったり、そのほかにもレゲエ風の頭髪の選手やあごひげの選手がいたり、ロシア人選手のタトゥーが気になったりしているうちに、前半が終わった。ラグビーは競技もさることながら、選手たちのキャラクターに醍醐味がある。

   後半では、松島がトライを決め、松田がゴールを決めて、30対10とリードを広げ、日本が初戦を飾った。前半の逆風に耐え、4トライでボーナスポイントも獲得。試合展開もさることながら、選手たちの風貌を見ていて飽きなかった。中継映像では、観客席の秋篠宮ご夫妻、メガネをかけ桜のジャージーを着た安倍総理が何度か写し出されていた。

   21日付の韓国の中央日報Web版をチェックすると、サムスン電子副会長の李在鎔氏51歳もこのラグビーW杯の開会式に出席し、開幕戦を観戦していたようだ。李氏はラグビーW杯の組織委員長を務める御手洗富士夫氏(キヤノン会長)から招待を受けたようだ(同紙Web版)。

   試合を観戦していた李氏の心中は穏やかではなかっただろう。先月(8月)29日、韓国の大法院(日本の最高裁)は執行猶予付きだったソウル高裁の二審判決を覆し、高裁に差し戻している。サムスンによる贈収賄事件で、朴槿恵大統領と旧知の崔順実氏に対し、馬3頭分を新たに含めて李氏が86億ウオンの賄賂を贈ったと大法院が判断した。韓国の国内法(特定経済犯罪加重処罰等に関する法律)では50億ウオン以上は執行猶予がつかないので、実刑が事実上確定したような状態だ。

         李氏の日本訪問は7月に日本政府がフッ化水素、フォトレジスト、フッ化ポリイミドの素材3品目に対する輸出規制に入った直後以来で、2ヵ月ぶりとなる。今年5月にも李氏は東京で移動通信事業者のNTTドコモとKDDIの経営陣に会った。当時サムスン電子は「日本国内の通信会社1・2位事業者と2020年の日本国内5Gサービス拡大とサービス定着のための相互協力を強化することにした」という報道資料を出した(同紙Web版)。この記事からも、日本と韓国の関係が悪化する中で、李氏は日本企業とのパイプをつなぎとめるために行動していることが分かる。

   ひょっとして、今回のW杯観戦は身柄が拘束される前に日本の関係者にしばし別れのあいさつに来たのではないか。御手洗氏もそれを承知で招待したのではないか。そんなふうに憶測すると、財閥企業のトップとは言え、政権に翻弄される姿がなんだか切ない。

⇒22日(日)夜・金沢の天気      あめ

☆北の武装船、日本海の一触即発

☆北の武装船、日本海の一触即発

   イギリスBBCテレビのWeb版をチェックしていると、日本海で北朝鮮がロシアとせめぎ合っている。「Russia holds 80 North Koreans on ‘poaching’ boats」の見出しの記事=17日付・BBCニュースWeb版=によると、ロシアの国境警備隊が今月17日、日本海のロシアの排他的経済水域(EEZ)で北朝鮮の密漁船2隻をだ捕し、乗組員80人以上を拘束したと発表した。ロシア側の説明によると、密漁船1隻から武力攻撃を受け、国境警備隊3人が負傷したという。

   ロシア連邦保安局(FSB)報道官はだ捕の経緯について、朝鮮半島とロシア、日本の間に位置する、日本海の好漁場「大和堆」で、北朝鮮のスクーナー(帆船)2隻とモーターボート11隻が密漁しているのを発見したと説明。さらに、ロシア外務省は北朝鮮の駐ロシア臨時代理大使を呼び出し、「深刻な懸念」を表明した。ロシア・インタファクス通信は、FSBの話として、拿捕された漁船は極東ナホトカ港に連行されたと伝えた。

   ロシアと北朝鮮がこの海域で争うのは今回が初めてではない。FSBは今月12日にもロシアのEEZでイカを密漁したとして北朝鮮の漁船16隻を拿捕し、250人以上を拘束したと発表していた。今年6月には、北朝鮮がロシア漁船をだ捕し、乗組員を逮捕した。北朝鮮側は今回のだ捕についてコメントしていない。

   懸念するのは北朝鮮の船の武装化だ。8月23日には、大和堆で武装した船員が乗った北朝鮮の船2隻を水産庁の取締船が見つけ、連絡を受けた海上保安庁の巡視船も駆け付けた。現場は日本のEEZ海域だった。北朝鮮海軍らしき旗を掲げた不審船は、小型高速艇と北朝鮮の国旗が船体に描かれた貨物船で、高速艇には小銃を持った船員がいたという。周辺では日本の漁船も操業していて、水産庁は漁船に対し、安全確保のため海域を離れるよう伝達した。日本海は一触即発の緊張感が漂っている。

⇒21日(土)夜・金沢の天気    はれ

★スタディ・ツアーNoto(下)

★スタディ・ツアーNoto(下)

  能登スタディ・ツアーの2日目(9月14日)、珠洲市の製炭所を訪れた。日本の伝統的な炭焼きを今も生業(なりわい)としている、石川県内で唯一の事業所でもある。代表の大野長一郎さんは43歳、炭焼き業の二代目。パワーポイントを交えながら、事業継承のいきさつや炭焼き業の課題と可能性についてレクチャーをいただいた。

   里山のカーボン・ニュートラル、里海のマイクロプラスティック除去

  その中で印象的な言葉は「里山と生物多様性、そしてカーボン・ニュートラルを炭焼きから起こすと決めたんです」。樹木の成長過程で光合成による二酸化炭素の吸収量と、炭の製造工程での燃料材の焼却による二酸化炭素の排出量が相殺され、炭焼きは大気中の二酸化炭素の増減に影響を与えない、とされる。しかし、実際はチェーンソーで伐採し、運ぶトラックのガソリン燃焼から出るCO²が回収されない。「炭焼きは環境にやさしくないと悩んでいたんです」

   そこで金沢大学の「能登里山マイスター養成プログラム」に参加し、研究者といっしょに6年分の帳簿から年間のガソリン使用量を計算し、どうすれば植林した樹木のCO²吸収量と相殺できるか検証した。結論は製造した炭の3割を燃やさない炭、つまり床下の吸湿材や、土壌改良材として土中に固定すればカーボン・ニュートラルが達成できることが計算上可能であることが分かった。これをきっかけに炭の商品生産の方針も明確になってきた。 

   付加価値の高い茶炭の生産にも力を入れている。茶炭とは茶道で釜で湯を沸かすのに使う燃料用の炭のこと。2008年から茶炭に適しているクヌギの木を休耕地に植林するイベント活動を開始した。すると、大野さんの計画に賛同した植林ボランティアが全国から集まるようになった。能登における、グリーンツーリズムの草分けになった。

   3日目(15日)、同市の塩田村を訪ねた。「揚げ浜式塩田」と呼ばれ、400年の伝統を受け継いでいる。塩をつくる場合、瀬戸内海では潮の干満が大きいので、満潮時に広い塩田に海水を取り込み、引き潮になれば水門を閉める(入り浜式塩田)。ところが、日本海は潮の干満が差がさほどないため、満潮とともに海水が自然に塩田に入ってくることはない。そこで、浜で海水を汲んで塩田まで人力で運ぶ(揚げ浜式塩田)。今では動力ポンプで海水を揚げている製塩業者もいるが、かたくなに伝統の製法を守る浜士(はまじ=塩づくりに携わる人)もいる。ひとにぎりの塩をつくるために、浜士は空を眺め、海水を汲み、知恵を絞り汗して、釜で火を燃やし続ける。機械化のモノづくりに慣れた現代人が忘れた、愚直で無欲でしたたかな労働の姿でもある。

  しかし、能登の海にも環境問題が押し寄せている。マイクロプラスティック問題だ。製塩業者は海水にマイクロプラスティックが含まれていないか定期的に検査している。製塩場を経営する中巳出理(なかみで・り)さんは徹底している。汲み上げた海水を5ミクロンと1ミクロンのフィルターのろ過装置に通し、マイクロプラスティックをはじめとするあらゆる固形物を除去した海水で伝統的な製塩作業を行っているのだ。

  さらに、塩の釜炊きに燃料は、ガソリンや石炭などの化石燃料を使わず、すべて能登の山林から切り出した間伐材を使っている。このことが、里山を保全することにもなる。伝統の塩づくりを守るということは実に奥が深い。(※写真は上から、大野長一郎のクヌギの林、「柞(ははそ)」とブランド名をつけた茶炭、塩の結晶がついた乾いた砂を垂れ船(たれぶね)に集める作業、海水のろ過装置)

⇒18日(水)夜・金沢の天気   くもり

☆スタディ・ツアーNoto(上)

☆スタディ・ツアーNoto(上)

   先週13日から2泊3日で「能登の世界農業遺産を学ぶスタディ・ツアー」(単位科目)を実施した。スタディ・ツアーには学生9人のほかに留学生6人(ケニア、中国、インドネシア、ベトナム)が参加した。能登は国連食糧農業機関(FAO)から世界農業遺産(GIAHS=Globally Important Agricultural Heritage Systems)に認定されている。その能登の文化や風土には独特のアジアっぽいカラーがある。能登の国際評価は学生・留学生たちにはどう見えたのか。

             留学生たちが見た「能登のアジア」

    最初にの国史跡「雨の宮古墳群 」(中能登町)=写真・上=を訪ね、学芸員から解説を聞いた 。北陸地方最大級の前方後方墳と前方後円墳が隣接する。4 世紀から5世紀(弥生後期)の古墳で山頂にある。邑知(おうち)地溝帯と呼ばれる穀倉地帯を見渡す位置に古墳はある。能登の王は自ら干拓した穀倉地を死後も見守りたいという思いではなかったか。

    この地域は能登における稲作文化の発祥の地でもある。1987年、雨の宮古墳近くにある「杉谷チャノバ タケ遺跡」の竪穴式住居跡から、黒く炭化したおにぎりが発掘された。化石は約2000年前の弥生時代のものと推定され、日本最古のおにぎりと話題になった。また、この地域の神社3社では収穫に感謝する新嘗祭で振る舞う濁り酒「どぶろく」を連綿と造り続けている。延喜式内社でもある天日陰(あめひかげ)比咩神社でどぶろくをいただき、日本酒の成り立ちを学んだ。

   山が海にせり出すリアス式海岸では神々しい光景を見ることができる。13日午後5時35分に輪島市曽々木海岸に到着した。すると、窓岩で知られる海に突き出た岩石の穴に夕日が差し込んできた=写真・中=。岩の穴と夕日がちょうど同じ大きさで、すっぽり収まったときは思わずため息が漏れるの神々しさとなる。同40分ごろから5分間の夕日と奇岩のスペクタルショーを楽しませてもらった。インドネシアの留学生は「バリ島のサンセットと同じだ」と。

   中国の留学生が「能登はアジアですね」と目を輝かせたのは祭りだった。14日に半島の尖端、珠洲市を訪れ、地域の伝統的な祭礼「正院(しょういん)キリコ祭り」を見学した。能登では夏から秋にかけて祭礼のシーズン。キリコは収穫を神様に感謝する祭礼用の奉灯を巨大化したもので、大きなものは高さ16㍍にもなる。この日、輪島塗に蒔(まき)絵で装飾された何基ものキリコが地区の神社に集い、鉦(かね)と太鼓のリズムが祭りムードが盛り上がっていた。

    キリコを担ぎ、太鼓をたたく若者たちがまとっているのは地元でドテラと呼ばれる衣装だ=写真・下=。もともと女性の和服用の襦袢(じゅばん)を祭りのときに粋に羽織ったのがルーツとされる。それに花鳥風月の柄が入る。祭りの心意気を感じる。インドネシアの留学生は「少数民族も祭りのときには多彩でキラキラとした衣装を着ますよ」と。

⇒17日(火)夜・金沢の天気    はれ

★「9・11」から18年、アメリカは

★「9・11」から18年、アメリカは

   「9・11」からもう18年になる。、アメリカで同時多発的にテロ攻撃が実行されたその日だ。イスラム過激派のテロ組織「アルカイダ」による犯行。死者は3千人ともいわれた。現地時間で午前8時46分、日本時間で午後9時46分だった。当時帰宅して、報道番組「ニュースステーション」が始まったばかりの同9時55分ごろにリモコンを入れると、ニューヨ-ク・マンハッタンの高層ビル「ワールドトレードセンター」に民間航空機が追突する事故があったと生中継の映像が映し出されていた。間もなくして、2機目が同じワールドトレードセンターの別棟に突っ込んできた。リアルタイムの映像で衝撃的だった。番組のコメンテーターが「これは事故ではなく、おそらくテロです」と解説していた。テロリズム(terrorism)という言葉が世界で認知されたのは、この事件がきっかけではなかったか。

   この同時多発テロはアメリカの中心部が初めて攻撃を受けた歴史的な事件でもあった。このころからアメリカ人の深層心理が揺らぎ始めたのではないかと推測している。デモクラシー(民主主義)という価値観を創造し、グローバルに展開してきたのはアメリカだったと言っても異論はないだろう。1862年9月、大統領のエイブラハム・リンカーンが奴隷解放宣言を発して以来、自由と平等、民主主義という共通価値を創り上げる先頭に立った。戦後、ソ連や北ベトナムなど共産圏との対立軸を構築できたのは資本主義という価値ではなく、自由と平等、民主主義という共通価値だった。冷戦終結後も、共通価値は性や人種、信仰、移民とへと広がり深化していく。アメリカ社会では、こうした共通価値を創ることを政治・社会における規範(ポリティカル・コレクトネス=Political Correctness)と呼んで自負してきた。

   ところが、アメリカの本丸が攻撃された同時多発テロをきっかけに、誰もが自由と平等だがそれが誰かの犠牲に上に成り立っているとすれば、それでは偽善ではないか、とアメリカ社会の白人層が考え始めた。2003年にアメリカを中心とする有志連合が始めたイラク戦争は大量破壊兵器の廃絶を名目とした軍事介入とされた。そこには自由と平等、民主主義という共通価値はすでになかった。ポリティカル・コレクトネスは政治的、社会的に公正・公平・中立的という概念だが、広意義に職業、性別、文化、宗教、人種、民族、障がい、年齢、婚姻をなどさまざまな言葉の表現から差別をなくすこととしてアメリカでは認識されている。しかし、ポリティカル・コレクトネスは同時に、本音が言えない、言葉の閉塞感として白人層を中心に受け止められている。心の根っこのところでそう思っていても、表だってはそうのように言わない人たちでもある。

   こうした「ポリティカル・コレクトネス疲れ」の白人層に支持されたトランプ政権のいまの在り様はポピュリズム(Populism)と称される。ポピュリズムは、国民の情緒的支持を基盤として、政治指導者が国益優先の政策を進める、といった解釈だろう。トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」を唱え、世界に難題をふっかけている。もう、アメリカではポリティカル・コレクトネスは死語と化しているのではないだろうか。

⇒11日(水)朝・金沢の天気    くもり