#コラム

★香港のめげない民主主義

★香港のめげない民主主義

   香港の民主主義は生きている。実施さえも危ぶまれていた香港の区議会議員選挙がきのう(24日)予定通り行われ、香港メディアは政府に批判的な立場の民主派が議席の3分の2にあたる300議席を超えると報じている。この様子を、「Hong Kong elections: Pro-democracy group makes big gains.」とイギリスBBC(25日付・Web版)は伝えている。あの騒乱の中で投票率が70%を超えて過去最高となり世界の注目を集めていた。冒頭で述べた言葉は「香港のめげない民主主義」と言い換えてよいかもしれない。

   注目したのは投票率だった。4年に1度行われる香港の区議会議員選挙(18区議会で452議席)は有権者(18歳以上)による直接投票のため民意を反映する選挙と言える。抗議活動が激しさを増しす騒乱状態の中、安全で公正に行えるのかという懸念の声が市民からも上がり、600余ある投票所すべてに重装備の警察官が配置されるなど厳重な警備態勢がとられたようだ。その状況下で、投票率は71.2%と、4年前を24ポイント上回った。香港の有権者は相当の覚悟を持って投票場に足を運んだに違いない。

        もう一つ注目していたのは開票の在り方だ。諸外国で見られる、票のすり替えによる権力側の不正などは香港ではできないシステムのようだ。と言うのも、開票作業はメディアや有権者への公開で行われていて、開票作業の様子を画像で掲載しているメディアもある(25日付・朝日新聞Web版)。余談だが、日本でも開業作業は公開されていて、その様子を双眼鏡でのぞくことも許可されている。日本のメディアは「開披台(かいひだい)調査」と呼び、候補者の得票を先読みする際に使う手法だ。開票作業の公開は民主主義を担保している。

    民主派の躍進で今後、中国政府はどのような手を打ってくるのか。香港の民意がはっきりしたことで、中国政府のあせりは相当であることは想像に難くない。むしろ、これを機会に中国政府が香港の一国二制度を担保し、人民解放軍を引き上げると宣言すれば、中国の国際評価はかなり上がると思うのだが。

⇒25日(月)朝・金沢の天気     あめ

☆政治外交の茶番劇

☆政治外交の茶番劇

    茶番劇とはこのことか。韓国政府はきのう(22日)、破棄を決定していた日本と韓国のGSOMIA(軍事情報包括保護協定)について失効を回避することを決めた。きょう午前0時が期限だったので土壇場での決定だろう。朝刊では各社が「さらなる関係悪化はひとまず避けられた」と述べているが、この決定を評価する読者はいるだろうか。「下手な芝居はもうやめろ」というのが率直な感想ではないだろうか。

    各社の関連ニュースをチェックすると、韓国側は破棄するとした通告を「停止する」と発表したのであって、「撤回する」と言っていない。つまり、輸出管理をめぐる今後の日本と韓国の対話の進展を必要とする「条件付き」の措置なのだ。優遇措置の対象国「ホワイト国」に戻さなければ、停止を撤回すると脅している。言葉遊びのようなことを繰り返している外交では、両国の関係改善につながるはずがない。

    茶番劇になりそうなニュースをもう一つ。アメリカのトランプ大統領は、香港の一国二制度を支援する香港人権・民主主義法案が議会上下院で採択され、大統領署名をするのか拒否権を発動するのかとTVメディアから問われ、「香港と立場を共有する必要はあるが、中国の習主席とも立場を共有する必要がある。習主席は友人であり、立派な人物だ」と述べ、明言を避けたと報じられている(22日付・ロイター通信Web版日本語)。

   大統領署名によって法案が成立すれば、中国側が態度を硬化させ通商交渉に影響が出ることは間違いない。逆に、通商交渉を有利に進めるために法案をチラつかせ、中国側が仕方なく折れてアメリカ側が交渉を勝ち取ったとしたらどうだろう。トランプ氏は微笑みながら拒否権を発動するだろう。

   ロイターの記事によると、トランプ氏は「中国は香港との境界沿いに多くの軍部隊を駐留させているが、香港に侵攻していないのは私が習主席に侵攻しないよう要請しているからにほかならない」とし、「現在、歴史上最大の通商合意に向け交渉が進められており、実現すれば素晴らしいことになる。 私がいなければ、香港で数千人の人々が殺され、警察国家が誕生することになる」と述べた。

   記事をストレートに解釈すれば、中国の香港への侵攻を習氏に要請して止めているので、法案は必要ない、つまり拒否権を発動する、と同じ意味だろう。仮にこうなれば、ホワイトハウスの大茶番劇となる。そして、「金のために民主主義を売ったアメリカ大統領」として歴史に悪名を刻むことになるのではないか。

⇒23日(土)午後・金沢の天気      はれ

★「安倍一強」を問うならば

★「安倍一強」を問うならば

      連日、総理大臣主催の「桜を見る会」をめぐり、ことしの招待者のうち千人程度が安倍総理からの推薦だったことについて国会で問題になっている。きょう21日は参院内閣委員会で、総理が地元関係者を招いたことは公職選挙法違反に当たるのではないかとの追及があり、菅官房長官は「当たらない」と答弁をしていた。ニュースを見ていて、国会になぜ緊迫感がないのだろうかと正直思う。国会がまるで「お花畑」のようだ。花見の会を国費でやること自体が間違っている。野党は「無意味な桜を見る会なんて金輪際止めろ」となぜ言わないのか、と不思議だ。

  一方で緊迫しているのが香港だ。アメリカ議会上院は、香港での人権尊重や民主主義を支援する「香港人権・民主主義法案」を全会一致で可決した(19日)。香港の一国二制度が機能しているかどうかアメリカ政府に毎年の検証を義務付け、人権を犯した中国政府関係者らに制裁を科す内容だ。下院では10月に可決されていて、成立にはトランプ大統領の署名が必要となる。おそらく、中国は猛反発してくるだろう。貿易交渉どころではない、次なる対立のステージに上るのではないかと緊張感が走る。

  日本の国会とアメリカの議会、この違いは何だ。野党が指摘するように、「安倍一強」のせいなのか。もし安倍一強を言うのであれば、このテーマを問うてほしい。安倍総理は中国の習近平国家主席を国賓として来春に招くという段取りで動いている。来月下旬に中国・成都で予定される日中韓サミットの折に北京で習氏と会談して国賓来日を確認するという。

  香港での民主主義の蹂躙、尖閣諸島周辺での中国公船の連日の挑発的な行為などを今の中国の政治姿勢に違和感を持っている日本国民は多い。内閣府による「外交に関する世論調査」(2018年10月)でも、中国に親しみを感じる20.8%、感じないが76.4%である。この状況下で国民は習氏に国賓来日を歓迎するだろうか。国賓として招く目的は何か。これで上記の問題が解決するのだろうか。これこそが安倍一強の姿ではなのだろうか。で、これをなぜ野党が国会で質さないのか。

⇒20日(木)夜・金沢の天気    くもり

☆続・ 「香港騒乱」の様相

☆続・ 「香港騒乱」の様相

        騒乱状態の香港。アメリカのポンペオ国務長官が、デモ隊と警官隊の激化する衝突について「深刻な懸念」を表明したとメディアが報じている(19日付・共同通信Webニュース)。それによると、ポンペオ氏は香港市民はイギリスからの香港返還(1997年)に際し保障された自由を求めているだけだと指摘し、「中国共産党は約束を守らなければならない」と述べ、香港政府による暴力的対応を支持する中国政府をけん制した。一連の香港発のニュースをチェックしていると、警察によるまるで武力制圧の様相だ。

   香港の騒乱を詳細に報じているイギリスBBCのWebニュース(18日付日本語版)では、警察官が理工大学のキャンパスに入った様子を記者がルポしている。17日午後5時半ごろ、警官隊がキャンパスを制圧しようと攻勢に出た。デモ参加者は、火炎瓶やレンガを投げるなどして抵抗した。双方の衝突が散発的に続き、キャンパス内では火炎瓶による火災が発生した。一部のデモ参加者はキャンパスを出ようとしたが、警官隊の催涙ガスで押し戻した。

   警官隊は17日午後10時を最終期限とし、デモ参加者に降伏を呼びかけ、応じなければ殺傷能力のある武器を使う可能性もあると警告した。すると、多くのデモ参加者は黒い服を脱いでマスクを外し、姿を消した。多くの若者が拘束され、キャンパスには500人以上の若者がとどまっていてる。

   キャンパスに残った若者・学生たちは危険を考慮せず、覚悟を固めているようだという。BBC記者に学生は「もし私が死んだら、私のことを覚えていてほしい」と言った。記者が「そういう事態になると思うか」と聞くと、不安そうに肩をすくめたという。死を覚悟している若者の姿が目に浮かぶ。

   その若者たちを助けようと市民が動いた。けさ19日のNHKニュースによると、警察に包囲され大学にとどまる学生たちを助けようと大勢の市民が大学の周辺に集まった。しかし、警察は強制排除に乗り出し、市民と衝突した。拘束される人が相次いだ。ポンペオ氏が「深刻な懸念」を表明した背景は、保障されたはずの自由がすでに市民から奪われているこの現状に危機感を抱いたのだろう。

⇒19日(火)朝・金沢の天気    くもり

★ 「香港騒乱」の様相

★ 「香港騒乱」の様相

   まさに騒乱の様相だ。香港警察は18日、抗議活動参加者らとのにらみ合いの末、大学に突入したとイギリスBBCのWeb版が伝えている=写真=。150年以上もイギリスの植民地だった香港は、一国二制度の下に中国に返還され、特別行政区となった。表現の自由などの権利も保障されている。デモの発端は、犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改定案をめぐってだった。

   逃亡犯条例が中国政府と間で成立すれば、中国に批判的な香港の人物がつくられた容疑で中国側に引き渡される。つまり、表現の自由などが脅かされるのではないかとの懸念が香港の学生や市民の間で高まった。10月に改正案は撤回されたものの、香港政府はデモの参加者にマスクの着用を禁止する緊急状況規則条例「覆面禁止法」を制定した。顔を出させることでデモの過激化を抑圧する効果を狙ったものだろう。中国社会では監視カメラによる顔認証システムの普及していて、個人の情報が警察などで蓄積されていることは知られている。これに反対して逆に学生たちが覆面化・仮面化して、抗議活動が過激化する。まさにパラドックス現象となった。

   衝撃的な映像が日本のテレビメディアでも流れた。警察官が交差点で、近づいてきた黒いマスクのデモ参加者に至近距離で発砲し、命中して倒れる様子だ(今月11日付)。この映像はもちろん世界に流れたであろう。冒頭で「騒乱の様相」と述べた。デモ参加者に対する警察側の発砲は、すでに警察では鎮めることが不可能な状態にあることを示すシンボリックな映像ではないかと読む。次なるステージは、軍による介入だろう。そう思案していたところに、別のニュースが流れてきた。香港に駐留する中国の人民解放軍の軍人らが、デモの学生らが路上に設置した障害物を撤去する活動に参加した(16日付・朝日新聞Web版)。軍の駐留部隊が動くのは初めてで、軍隊の存在を示し、デモ隊を牽制する狙いがあるのではないか、と報じられている。

        BBCの記事は生々しい。「Large fires broke out at entrances to the Polytechnic University (PolyU), where protesters hurled petrol bombs and shot arrows from behind barricades.Officers earlier warned they could use live ammunition if protesters did not stop attacking them using such weapons.」(ポリテクニック大学(PolyU)の入り口で大規模な火災が発生し、抗議参加者は警察にガソリン爆弾を投げつけ、バリケードの後ろから矢を放った。警官は以前、抗議者がそのような武器を使用して攻撃するのを止めなかった場合、実弾を使用できると警告していた)。先が読めない、騒乱の様相だ。

⇒18日(月)午前・金沢の天気    はれ

☆「桜を見る会」野党追及が内閣支持率を

☆「桜を見る会」野党追及が内閣支持率を

    この支持率の意味を考えてみた。きのう(15日)の時事通信Webニュースによると、11月の世論調査(8-11日、回収率62.5%)は内閣支持率が前月比で4.3ポイント増えて48.5%、不支持率は3.6ポイント減り29.4%となった。NHKの世論調査(8-10日、回答率58%)は内閣支持率が9月調査より1ポイント減り47%、不支持は2ポイント増え35%だった。経産大臣と法務大臣の閣僚の相次ぐ辞任や、大学入試への英語民間試験の導入見送り、総理主催の公的行事「桜を見る会」の私物化問題など政権側の不手際が相次いでいるにもかかわらず、この内閣支持率の高さは一体なぜなのか。

    その考えるヒントは意外と、きょう朝に視聴した日テレ系番組『ウェークアップ!ぷらす』にあるかもしれない。番組では、桜を見る会が来年は開催中止となることを特集していた。桜を見る会の前日に都内ホテルで開かれた安倍総理の後援会「前夜祭」の夕食会の会費が5千円だったことから、野党側は総理サイドが差額分を負担していたら公職選挙法に抵触することになり、「総理辞職」を念頭に徹底して追及する構え。この件では安倍総理は記者団に「事務所や後援会としての収入、支出は一切ない。金額はホテル側が設定した」と説明している(15日)。

    この一連の国会の動きに、キャスターの辛坊治郎氏が「連日の野党の追及を聞いていると、野党の人たちはバカなんじゃないかと多くの人は思います」と持論を述べていた。この辛坊氏のコメントは総理を擁護するという立場の発言ではなく、関西人の目線だ。「私、関西でメディアやってて不思議なのは、けっこう大騒ぎになってますが、在京のテレビ局にしろ新聞社にしろ全員幹部が毎年参加していて実態知らないはずがない」と辛口だった。これは視聴者と近い感覚かもしれない。視聴者の大多数は有権者でもある。

    有権者の感覚は「そんなこともあるだろう。本人がやりすぎたと反省すればそれで済む話ではないか。来年は中止、それでよい」ではないだろうか。国会で野党が連日追及し、それを大見出しで新聞やテレビメディアが報じていることに、有権者は意外とさめている。そこに、「世論調査です、協力ください」と電話がかかり、「安倍内閣を支持しますか」と問われると、現内閣支持と答え、その理由に「他に適当な人がいない」(時事通信の調査23.0%)の選択肢を取ってしまうのではないか。政党支持率は自民が前月比2.6ポイント増の30.1%でトップ、立憲民主は同2.7ポイント減の3.1%だ。野党頑張れの有権者のエールはこの数字からは読むことができない。

    今月23日に失効が迫っている日本と韓国のGSOMIA(軍事情報包括保護協定)について与野党のまともな論戦を見たことがない。野党は倒閣ありきの追及ではなく、国際問題や国内問題で政権と論戦を交わしてほしい。

⇒16日(土)午後・金沢の天気    くもり時々あめ

★話題2題~雪と新聞休刊日~

★話題2題~雪と新聞休刊日~

  今週、知人や職場の同僚で話題になっていることを2つ。気象庁が「新しい雪の情報」を発表するとリリースした(13日)。山形県、福島県(会津地方)、新潟県、富山県、石川県、福井県 の6県において、 「顕著な降雪が観測され、今後も継続する見込まれる場合には、『短時間の大雪に対して一層の警戒を呼びかける情報』を発表します」と。具体的な内容は、県内各地の積雪の深さ、降雪量の解析結果を色分けして図で示すもの。道路地図や鉄道路線図と重ね合わせて見ることができる。これまでは積雪量をセンチで表記されていた。

   昨年(2018年)2月、北陸は豪雪に見舞われた。近年は「集中的・記録的な降雪」といった言葉をテレビメディアで聞くようになった。豪雪による高速道などでの大規模な車両渋滞や、社会生活への影響が問題となっている。気象庁の速報体制の充実は、こうした雪害や記録的な大雪を踏まえてのことだろう。金沢大学は山手にあり、市内の平野部より積雪は5割増しだろうか。キャンパスの雪道で車同士の接触事故などよく見かける光景だ。積雪情報で多様な情報が得ることができれば、心構えもできる。雪のシーズン到来を前に、ある意味朗報ではある。(※写真・上は気象庁のニュースリリースより)

  話題をもう一つ。今月10日午後、秋晴れの下での天皇陛下の即位を祝うパレード(祝賀御列の儀)をテレビで視聴していた。皇居宮殿から赤坂御所まで4.6㌔の沿道を12万人が埋めた。小旗を振り、国民の祝うムードが盛り上がっていた。夕方からのニュースも祝賀パレード関連で一色だった。メディアによると、午後3時から1時間のNHKの中継番組の視聴率はビデオリサーチ調べで27.4%(関東地区)だった(11日付・共同通信ニュースWeb版)。

  12日朝、朝刊を手にすると一面で即位パレードの記事が出ていた=写真・下=。「終わった祝賀行事をなぜ2日後に今さら」と。時間感覚が一瞬歪んだせいか、不愉快になった。そうか、新聞休刊日で11日付の朝刊は配達されなかったのだ、と気が付いて納得した。11日の夕刊でも掲載されていたのだが、夕刊は購読していない。このタイムラグを感じたのは私だけではなかった。知人からも「2日後にニュースなんて、なんか違和感があるよね」とメールが届いた。

  即位パレードは当初10月22日だったが、台風19号の被災者に配慮され、11月10日になった。11日の新聞休刊日はすでに決まっていた。知人は続けて、「新聞休刊日は分かるが、一大イベントがあった翌日は臨機応変に朝刊を出せばよかったのではないか」と。同感だ。うがった見方だが、臨機応変に対応するほどのイベントではないとの新聞各社の判断だったのだろう。

⇒15日(金)朝・金沢の天気    くもり時々あめ

☆NHK同時配信の新たな問題点

☆NHK同時配信の新たな問題点

   前回のブログでNHKが民放に先駆けて進めている番組のインターネット同時配信について、高市総務大臣が閣議後の記者会見(11月8日)で、待ったをかけたことを書いた。総務省サイドとしては、コストが適正かどうかなど懸念を述べ、NHKの肥大化につながる恐れがあるとの考えを示した。

   その理由は、NHKの基準案では、同時配信などの基本業務は受信料収入の2.5%を上限とする今の基準を守るとした一方で、1)東京オリンピック、2)国際放送の配信、3)字幕と手話への対応、4)地方向け放送や民放連との連携の4業務は公益性が高いので別枠扱いにするとした。これに対し、総務省サイドは費用が最大で受信料収入の3.8%に膨らむではないかとクレームをつけたのだ。総務省の指摘の通りで、別枠扱いを認めれば予算はさらに膨張するだろう。まず、NHKのミッションである人々の命と財産を守る、災害報道に対応するため、同時配信をそのものを一刻も早くスタートさせることだ、と述べた。別枠はスタートしてから考えるべきだ。

テレビ   総務省の「待った」には背景がある。受信料である。NHKの受信料収入は年間7000億円を超え、繰越金残高はNHK本体だけでも1000億円もある、とされる。高市大臣が受信料が適正かどうかと問うたのは、ある意味、国民目線の疑問でもある。もちろん、NHKの反論もあるだろう。10月から消費税が8%から10%に引き上げられたが、NHKは放送受信料額を改定せず、「受信料は実質2%の値下げ」とした(NHKホームページ「受信料の窓口」)。さらに、NHKは来年10月までに2.5%の値下げを行う予定で、合わせて実質4.5%の値下げになる、と主張しているのだ。この程度の「値下げ」で国民は納得するかどうか、だ。 

   先日(8日)のニュースで、NHKの受信料名簿が集金委託先の会社を通じて外部に漏れ、それが特殊詐欺に使われていたと報じられた。NHKは記者会見で、名簿には家族構成など含んだ個人情報が掲載されていると説明した。このこと自体、契約者の不信感を増幅させた。なぜ、受信契約でそのような個人情報が必要なのか。契約の範囲を超えて、視聴者を管理しようとの意図があるのではないか。このような中で、インターネットの同時配信が可能になれば、NHKは契約者の好みの番組なども把握できるだろう。

⇒13日(水)午前・金沢の天気    はれ

★NHKの同時配信の意義はどこに

★NHKの同時配信の意義はどこに

   NHKが民放に先駆けて進めている番組のインターネット同時配信について、待ったがかかった。高市総務大臣が閣議後の記者会見(11月8日)で、NHKが同時配信の認可を総務省に申請していることに関して、コストが適正かどうかなど懸念を述べ、NHKの肥大化につながる恐れがあるとの考えを示した、と報じられている。

     NHKの同時配信はことし5月29日に改正放送法が参院本会議で可決成立したことを受けてのことだ。同時配信の時代が日本にも遅ればせながらやってくる、と期待している。遅ればせというのは、同時配信はイギリスの公共放送BBCは2008年から、そのほかアメリカやフランスなど欧米では当たり前のように行われているからだ。PCやスマホがあればリアルアイムで世界のニュースを視聴できる時代なのだ。

   それになぜ待ったがかかったのか。NHKは総務大臣の認可を経て2019年度中の開始を予定しているが、見直しを迫られる事態となった。問題は、NHKが提出した同時配信の実施基準案についてだ。基準案では、同時配信などの基本業務は受信料収入の2.5%を上限とする今の基準を守るとした。一方で、1)東京オリンピック、2)国際放送の配信、3)字幕と手話への対応、4)地方向け放送や民放連との連携の4業務は公益性が高いので別枠扱いにするとした。これに対して、総務省サイドは費用が最大で受信料収入の3.8%に膨らむではないかとクレームをつけたかっこうだ。

   自身の個人的な考えで言えば、総務省サイドの意見に齟齬(そご)はない。NHKは最優先の公益性を災害報道だと位置づけ、同時配信をまずスタートさせることを考えるべきだ。関東を直撃した台風19号(10月12日)では、NHKは情報の量と速さ、ネットワークといった点で、民放を寄せ付けなかった。自然災害は台風と豪雨・洪水だけではない。豪雪、干ばつ、地震、津波、火山噴火、土石流・地滑りなど、日本の災害は多様だ。狂暴化し、広域化する自然災害に向けての同時配信を早く進めてほしい。国際放送の配信や民放との連携など次なるステップでよい。

   国民の命と財産を守るための情報はNHKの本来のミッションのはずだ。災害はいつでもやって来る。繰り返すが、同時配信をそのものを早く進めてほしいそれだけだ。(※写真は、2011年3月11日の東日本大震災で津波で陸に打ち上げられた大型漁船=宮城県気仙沼市)

⇒11日(月)朝・金沢の天気    はれ

☆祝賀御列の儀を安堵のお気持ちで

☆祝賀御列の儀を安堵のお気持ちで

   天皇陛下の即位にともなうパレード、「祝賀御列の儀」がきょう午後3時ごろ、皇居から両陛下がオープンカーに乗り込み始まった。NHKと民放が中継していたので視聴した。この様子を誰よりも喜んで見ていたのは上皇陛下ではないかと察する。この日を思い描いておられたのは上皇陛下なのだから。

   2016年8月8日、テレビで放送された天皇のお言葉(ビデオメッセージ)にじっと聞き入っていた。「憲法の下、天皇は国政に関する権能を有しません。そうした中で、このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ、これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました」

   なるほど、天皇はこう考えておられたのだ、ということを知った思いがした。とくに、天皇が国民との関係や距離をどう考え、自らの象徴天皇の役割を担ってこられたのか、改めて感じ入った。

    今でも脳裏に残っているお言葉もある。「天皇の終焉に当たっては、重い殯(もがり)の行事が連日ほぼ二ヶ月にわたって続き・・・」。「殯(もがり)」は、人の死後に本格的に埋葬するまで、遺体を棺(ひつぎ)に納めて安置し、近親者が儀礼を尽くして幽魂を慰める習俗のことを指す。天皇家の殯は亡き天皇の全霊を次の代が引き継ぐ大切な儀式なのだ。しかし、当時天皇が述べられた「重い殯」の意味合いを察した。2ヵ月続く皇室の伝統的な葬送「殯」は、心に重いのだろう。あえて「重い殯」とお言葉にすることで、こうした皇室の伝統的な葬送の在り様も含めて見直したい、とのお気持ちを述べられたのではないかと今も思っている。

    生前に皇位が継承されれば、殯の儀式は重くなくてよい。国民が祝福する中で、パレードが無事執り行われ、国事行為としての「即位の礼」はすべて終わったことになる。あのビデオで発せられたお言葉から3年余り、上皇陛下は安堵のお気持ちではないだろうか。

⇒10日(日)夜・金沢の天気   くもり