#コラム

★ポスト・ブレグジットの行方

★ポスト・ブレグジットの行方

   EUからの離脱の是非を争点にしたイギリスの総選挙の開票が行われている。公共放送BBCのWeb版の開票速報をチェックすると、日本時間の午前で議会下院の650議席のうち離脱を掲げる与党の保守党が161議席を獲得、EUとの再交渉や国民投票の実施を公約にする労働党が111議席となっている。

   BBCは独自のexit-poll(出口調査)を実施していて、650議席のうち、保守党が選挙前の議席を大幅に拡大する357議席と予測し、単独で過半数(326議席)に達すると勝利を予想している=写真=。保守党が過半数を制すれば当然、EU離脱に向けた法案が承認され、来年1月の離脱に向けてまっしぐらという道筋がつく。

   イギリスの総選挙が日本にも意外な波及効果を与えているようだ。きょう13日午前の日経平均株価は一時、前日比で619円高い2万4044円まで上昇した。もちろん、これはアメリカと中国の貿易交渉が進展しているとの報道があり、買い注文が集まったのだろう。それに加えて、イギリスのEUからの離脱に道筋がついたことがプラス要因となって買いが後押ししたとも読める。

   話を開票速報に戻す。労働党は議席を減らしているが、SNP(スコットランド民族党)は増やす勢いだ。SNPが今回選挙で躍進すれば、SNPが選挙公約で訴えてきた「EU離脱への反対」と「スコットランドの独立」のボルテージがさらに高まるだろう。以前から、スコットランドにはイギリスがEUから離脱するなら、スコットランドは独立してでも、EUに残留すべきという「民意」が漂っていた。

   さらに、イギリスの選挙結果はEUにどのような影響を与えるのだろうか。もともとイギリスはEUと付かず離れずのスタンスをとってきた。通貨統合はせずポンドの存続を維持してきたのは典型的な事例だろう。ところが、2011年以降のユーロ危機で金融に対する規制強化が進み、「金融立国」であるイギリスのフラストレーションが高まる。拍車をかけたのが、EU加盟国には域内には移動の自由があり、東欧諸国などから仕事を求める移民がイギリスに多数流入したことだ。EU離脱の気運が一気に高まり、2016年6月の離脱をめぐる国民投票へとつながる。

   今回の選挙で離脱への道筋がはっきりしたことで、2020年に国際政治が大転換期を迎えるかもしれない。まさに、ポスト・ブレグジットが焦点になってきた。

⇒13日(金)午前・金沢の天気     はれ

☆金沢を訪れる台湾人がダントツ多い、その伝説・・・

☆金沢を訪れる台湾人がダントツ多い、その伝説・・・

      前回(10日付)のこのブログで、金沢の兼六園を今年訪れたインバウンド観光客数が11月末時点で44万6千人となり、去年1年間の42万8500人を超えて過去最多を更新したと地元メディアの記事(12月6日付・北國新聞)を紹介した。すると、このブログをチェックしてくれた知り合いからメールで「ところで、兼六園ではインバウンド客の人数をどのようにカウントしているのでしょうか? よもや入場券売り場の人の目視ではないですよね」と鋭い指摘をいただいた。確かに、記事にはどのような調査方法なのか触れられていなかったので、兼六園の管理事務所に電話で外国人の入場者のカウント方法について問い合わせた。

  スタッフが丁寧に答えてくれた。以下はその要旨。兼六園には7つの入り口(料金所)がある。料金を受け取ると入場券とパンフを渡している。パンフは9ヵ国語(日本、英語、中国、台湾、韓国、フランス、イタリア、スペイン、タイ)で、それぞれのパンフがある。入場者にパンフを渡す際、必ず国名と人数を尋ねて渡している。団体、個人問わず、そのようにしてパンフを渡しているので正確な国・地域別の人数が出せるのだという。

      ところで、訪日観光客数は日本政府観光局(JNTO)の調べによると、中国742万人、韓国697万人、台湾454万人、香港215万人、タイ106万人と続く(2018年確定値)。もう一度記事を引用すると、ことし1月‐11月で兼六園を訪れた国・地域別では台湾が15万2千人と一番多く、次いで中国4万人、香港3万5千人、アメリカ2万9千人、イタリア2万人、オーストラリア1万9千人と続く。つまり、台湾からの訪日観光客が圧倒的に多い。これは北陸新幹線開業以前からの傾向で、台湾ではある意味で金沢の知名度が抜群なのだ。

   八田與一(はった・よいち、1886-1942)という人物がいた。台湾の日本統治時代、台南市に烏山頭(うさんとう)ダムが建設され、不毛の大地とされた原野を穀倉地帯に変えたとして、台湾の人たちに日本の功績として高く評価されている。このダム建設のリーダーが、金沢生まれの土木技師、八田與一だった。ダム建設後、八田は軍の命令でフィリピンの綿花栽培の灌漑施設の調査ため船で向かう途中、アメリカの潜水艦の魚雷攻撃で船が沈没し亡くなった。1942年(昭和17年)5月8日だった。終戦直後、八田の妻は烏山頭ダムの放水口に身投げし後追い自殺したことは台湾でも金沢でもよく知られた逸話だ。

   八田與一伝説が生きる台湾から、多くの観光客が「八田のふるさと金沢」を訪ねてくれている。(※2017年5月、八田與一の座像修復式には金沢市の関係者も訪れた=台湾・台南市役所ホームページより)

⇒12日(木)夜・金沢の天気     はれ

★インバウンド客を誘う兼六園の冬景色

★インバウンド客を誘う兼六園の冬景色

  金沢の兼六園を今年訪れたインバウンド観光客数が11月末時点で44万6千人となり、去年1年間の42万8500人を超えて過去最多を更新したと地元メディアが伝えている(12月6日付・北國新聞)。記事によると、国・地域別では台湾が15万2千人と一番多く、次いで中国4万、香港3万5千、アメリカ2万9千、イタリア2万、オーストラリア1万9千と続く。日本人を含めた全体では260万7千なので、インバウンド観光客が占める割合は17%だ。

  この季節、兼六園は雪吊りが施されていて、名木「唐崎の松」はまるでパラソルでもつつけたかのよう光景だ=写真=。インバウンド観光客が盛んにインスタ映えを狙ってシャッターを切っている。中国語や英語が飛び交っているという感じだ。そして、茶室「時雨(しぐれ)亭」で抹茶を楽しむ外国人客も増えている。茶席の静寂、広がる庭園、洗練された作法、季節の和菓子など「完成された日本の文化」がそこにある。外国人客のお目当ての一つが、和装の女性からお辞儀をしてもらえること、だとか。これだけでも随分と感動もののようだ。日本人でも、この茶席に座ると大人の時間が流れるような感じがする。

  ところで、笑うに笑えない話を兼六園通の知人から聞いた。インバウンド観光客を引率しているガイド(日本人)が、「加賀百万石」のことを「Kaga Million Stones」と直訳しているというのだ。「金沢には、金沢城の石垣を見ても理解できるように、Kaga Million Stonesと称される、すばらしい石の文化があります。県名も訳するとStone riverです」と。その説明で、インバウンド観光客の一行が納得してうなずいていた、という。漢字表記は確かに「石」だが、百万石の場合の「石」は180リットルに相当する米の量換算を指すので、完全に誤って伝えられていると知人は嘆いていた。兼六園には外国語に堪能なボランティアガイドも多くいるので、この話はおそらくレアケースだろうと想像する。ただ、同じような話を留学生からも聞いたことがある。

  今の日本の大人には「加賀百万石」という言葉は何となく、豊かさとして理解できるが、それを量換算として説明できる人は果たしてどれだけいるだろうか。1952年(昭和26年)の計量法により尺貫法の使用が禁止され、石という容量の単位は公式には使われてはいないのだ。将来、日本の子供たちの中にも「Kaga Million Stones」に納得する時代がやってくるかもしれない。兼六園の冬景色を眺めながら、ふと空を仰いでしまった。

⇒10日(火)朝・金沢の天気    くもり

☆12月8日は「記念日」でよいのか

☆12月8日は「記念日」でよいのか

    きょう12月8日は、1941(昭和16)年2月8日未明(現地時間7日朝)、日本の海軍がハワイ・オアフ島真珠湾のアメリカ軍基地を奇襲し、太平洋戦争が開戦した日でもある。もう78年も前のことだが、マスメディアは「戦争の記念日」のニュースとして取り上げている。 

    NHKが発掘したニュースをこう報じていた。「終戦直前の昭和20年、本土決戦に備えて女性や少年を含めた一般国民を戦闘員として組織した『国民義勇戦闘隊』の具体的な動員計画などをまとめた資料が、福井県に残されていることが分かりました。国民義勇戦闘隊に関する資料はこれまでほとんど見つかっておらず、調査にあたった専門家は『国民を総動員する戦争が寸前まで迫っていたことを示す資料だ』と指摘しています。」(8日付・NHKWeb版)

    視聴者の記憶から戦争のイメージを消さないという趣旨は理解できるが、この国民義勇戦闘隊のニュースに関心を持つ視聴者は果たしてどれだけいるだろうか。このニュースを見た視聴者の反応は「過去の戦争のことをいつまで報じるのか」「だからどうかのか」「では、当時NHKは反対したのか」ではないだろうか。過去のニュースを報じるのは簡単だ。現在の価値観で、戦前の日本の有り様を酷評すればそれで済む。このニュースを今取り上げるとしたら、現代への訴追性があるか、だ。「国民義勇戦闘隊は、本土決戦となった場合には兵士とともに武器を持って戦闘に加わることを義務づけられています。」(8日付・NHKWeb版)との内容だが、現代の法律に照らし合わせて問題があれば、「この法律はまるで国民義勇戦闘隊の布石だ」と指摘してほしい。あるいは、国民義勇戦闘隊の内容をはらむ問題が国会で審議されているのであれば、「まるで国民義勇戦闘隊だ」と問題化すべきだ。

    その問題性を現代に訴追できないのであれば、78年前の過去のことにどれほどの「ニュース価値」があるのか。12月8日は「戦争の記念日」という発想をマスメディアはいつまで持ち続けるのだろうか。「警鐘を鳴らし続ける」という発想であれば、アメリカ、中国、北朝鮮、韓国との軍事的な問題を徹底的に検証する番組をつくり、現代の日本の果たすべき役割、立ち位置を検証してほしい。日本を「過去」に逆戻りさせないとの意思を番組で表現することを期待したい。

    話は変わる。連日のようにに尖閣諸島への中国公船の領海侵入がありながらも中国国家主席を国賓として招くという。もし、招いた日に中国公船による領海侵入があれば、尖閣諸島は中国の領土ですと日本が追認したとことになるのではないか。尖閣のほかにも、香港やウイグルでの問題で国際批判を浴びている国のトップを国賓として迎えることの是非を正面から取り上げている日本のマスメディアを知らない。「安倍一強」を問うのであればこれが本論ではないだろうか。

⇒8日(日)夜・金沢の天気   あめ

★田の神を「お・も・て・な・し」

★田の神を「お・も・て・な・し」

   能登半島で奥能登と呼ばれている輪島市、珠洲市、穴水町、能登町の地域に伝承されている農耕儀礼「あえのこと」は毎年12月5日、田の神をご馳走でもてなす家々での祭りを意味する。2009年9月、ユネスコ無形文化遺産に単独で登録された。ことしで4回目となる「あえのこと」スタディ・ツアーを4日と5日で実施した。参加したのは金沢大学の留学生3人(フィンランド、ブラジル、中国)と日本人学生3人の6人。もてなしのご馳走である「あえのこと料理」を考えるワークショップにはALT(外国語指導助手)として能登に来ているアメリカ人2人も参加した。

   初日にまず訪れたのは延喜式内社でもある天日陰比咩神社(中能登町)。同神社では、「あえのこと」と同じ日に稲作の収穫を神に感謝する新嘗祭(にいなめさい)が執り行われ、参列者には米を発酵させた濁り酒「どぶろく」の振る舞いがある。神社の説明によると、どぶろくを造る神社は全国で30社あり、そのうちの3社が同町にある。米造りと酒造りが連綿と続く地域である。ここでどぶろくを田の神へのお供え用にいただいた。

   現在の風習では、田の神の好物とされる「甘酒」を供えているが、明治ごろまでは各家で造っていたどぶろくを供していたとの説がある。明治政府は国家財源の一つとして酒造税を定め、日清や日露といった戦争のたびに増税を繰り返し、並行してどぶろくの自家醸造を禁止した。これがきっかけで家庭におけるどぶろく文化は廃れていった。もちろん現在でも酒税法により家庭での醸造・酒造りは禁止である。どぶろくの代替えが甘酒になった、のではないかと推測している。「それなら、田の神に本来の好物、どぶろくを捧げよう」と神社に自説を説明し、現物を提供いただいた。

   2日目のいよいよ「あえのこと」の本番。輪島市にある千枚田の近くの農家を訪れた。留学生を代表し、フィンランドからの男子留学生が、「天日陰比咩神社からの預かりものです。田の神さまにお供えください」と家の主(あるじ)にどぶろくの瓶を手渡した。主人は甘酒も用意していたが、別御膳で神酒用の銚子と徳利で供えてくれた。「大役」を果たした留学生はあえのことを見終えて、「フィンランドにこういう行事はない。家々が土地の神様に祈ることが興味深い」「出された料理にも一つひとつ意味があると聞いて驚いた。田の神さまがどぶろくを楽しんでくれた想像するとうれしい」とメディアのインタビュー取材に答えていた。

   田の神はそれぞれの農家の田んぼに宿る神であり、農家によって田の神さまにまつわる言い伝えが異なる。共通しているのが、目が不自由なことだ。働き過ぎで眼精疲労がたたって失明した、あるいは稲穂でうっかり目を突いてしまったなど諸説ある。目が不自由であるがゆえに、それぞれの農家の人たちはその障害に配慮して接する。座敷に案内する際に階段の上り下りの介添えをし、供えた料理を一つ一つ口頭で丁寧に説明する。もてなしを演じる家の主たちは、自らが目を不自由だと想定しどうすれば田の神に満足していただけるのかと心得ている。あえのことで演じられる所作を見ていると「ユニバーサルサービス(Universal Service)」という言葉を連想する。社会的に弱者とされる障害者や高齢者に対して、健常者のちょっとした気遣いと行動で、障害者と共生する公共空間が創られる。

   ブラジルからの女子留学生は「とても美しいと感じる光景の儀式でした。ホスピタリテー(もてなし)の日本文化を知る機会を与えていただき感謝しています」、そして「ブラジルの先住民族にもこうした儀式や伝統文化があったが、今では少なくなったのではないでしょうか」と現状にも触れた。中国からの女子留学生は「中国にもどぶろくと同じような製法のお酒がある。母親の好物で、母親の笑顔を思い出しました」と感想を語った。留学生たちは日本の「お・も・て・な・し」を体感したようだ。(※写真は、輪島市千枚田の川口家の「あえのこと」。留学生たちが後方でかたずをのんで見守っている)

⇒6日(金)夜・金沢の天気     あめ

☆「ごちゃまぜ」という社会の化学変化

☆「ごちゃまぜ」という社会の化学変化

  「Share(シェア)金沢」という施設が金沢大学の近くにある。高齢者向けデイサービス、サービス付き高齢者住宅、児童福祉施設、学生向け住宅の複合施設だ=写真=。90人ほどが暮らす、ちょっとしたコミュニティでもある。施設には天然温泉やカフェバー、レストラン、アルパカの牧場、タイ式マッサージ店などがあり、近くの子供たちや住民も出入りする。運営している社会福祉法人「佛子園」の理事長、雄谷良成(おおや・りょうせい)氏と面談するチャンスがあった。

   大学で作成する教材用の動画の出演依頼の面談だった。テーマは「ソーシャルイノベーション」。都会から地方に移住したいという人々を地域が受け入れ、一つのコミュニティー(共同体)をつくることで新たな考えや発想、ビジネスを起こすという社会実験の場をいかにして創るか。Share金沢はそのモデルの一つだ。CCRC(Continuing Care Retirement Community)は高齢者が健康なうちに地方に移住し、終身過ごすことが可能な生活共同体のような小さなタウンを指す。1970年代にアメリカで始まり、全米で2000ヵ所のCCRCがあるという。都会での孤独死を自らの最期にしたくないと意欲あるシニア世代が次なるステージを求めている。そうした人々を受け入れる仕組みを地方で創る、いわば日本版CCRCの社会実験の意義について講演をお願いした。 

    雄谷氏は「私が目指しているのは、“ごちゃまぜ”によるまちづくりです」 と口火を切った。続けて「障害のあるなしや高齢に関係なく、多様な人たちがごちゃまぜで交流する。誰もがコミュニティの中で役割を持ち、機能しすることで元気になり、コミュニティが活気づく。いわば人間の化学反応が起きるのです。いま日本の社会、とくに地域に求められているのはこうした共生型社会ではないでしょうか」と。

    雄谷氏の祖父は寺の住職で、戦災孤児や知的障害児を引き取り育てていた。1961年生まれの雄谷氏も障害児たちと生活し、「ごちゃまぜ」の環境で育った。金沢大学で障害者の心理を学び、青年海外協力隊に入り、ドミニカで障害者教育に携わった。いろいろな人たちがごちゃまぜに共生し、人と人が関わり合うことによって化学反応が起きる。事例がある。通所している認知症の女性が、重度心身障害者の男性にゼリーを食べさせようと試みた。男性は車椅子で首はほとんど動かせない。3週間ほど繰り返すうちに男性にゼリーを食べさせられるようになった。首が少し回るようになったのだ。女性も深夜徘徊が減った。この様子を観察していた雄谷氏は「人と人が関わり合うことによって互いが役割を見つけ、生きる力を取り戻す。大きな気づきでした」と。

    雄谷氏が提唱する、ごちゃまぜのコミュニティづくりの構想は、縦割りとなった社会制度を崩すものだ。政府が目指すべき将来像を示す「まち・ひと・しごと創生基本方針2019」にこの構想が盛り込まれた。個人の人生設計と併せて地域で共生する社会のなかで誰もが活躍する。少子高齢化・人口減少の課題先進国、日本にとって示唆に富んだ提案ではないだろうか。今回の面談の時間は30分ほどだったが、講演の動画収録にOKが出たので、今度ゆっくり聞かせてもらうことになった。

⇒4日(水)朝・金沢の天気    あめ

★「ONE TEAM」 多国籍のチカラ

★「ONE TEAM」 多国籍のチカラ

   今年話題となった言葉を選ぶ「2019ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞に、ラグビーワールドカップの決勝トーナメントに進出した日本代表のスローガン「ONE TEAM」が選ばれた。予想通りだった。多国籍を超えて、日本チームとして結束しているところが見事だった。国歌斉唱では外国人選手も「君が代」を歌い、むしろグローバルさを感じたものだ。

  この「ONE TEAM」の在り様は、日本が取るべき将来の進路ではないかと考える。急速に進む少子高齢化で働き手や担い手が不足する中、日本の多国籍化を進めていく。国際化と言うと共通の理念が求められるが、目標に向かって結束する場合は多国籍化でよいのではないか。多国籍化が求められるのは、スポーツだけでなく、研究開発やマーケット戦略、生産性や教育分野など幅広い。市民生活でもあえて日本人の社会に溶け込む必要はない。たとえば、金沢に「ニュージーランド村」や「南アフリカ村」があってもいい。日本の法律の下でお互いに暮らし安さを追求すればそれでよいのではないか。そんなことを想起させてくれたのが「ONE TEAM」の戦いぶりだった。

   そのほか個人的に選ぶ流行語大賞は、やはり「令和」だ。4月1日午前11時35分から総理官邸で開かれた会見で、菅官房長官が墨書を掲げて新元号を公表する様子をネットの動画中継を見ていた。「大化」(645年)から248番目の元号が「令和」と発表されたとき、時代の転換点に立つような、改まった気分になった。安倍総理もその後の記者会見で、「春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように一人ひとりが明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる、そうした日本でありたいとの願いを込めて決定した」と述べていた。 なんと平和なことか。昭和、平成、そして令和の時代を生きることは喜びではないかのか、ふと気づかされたものだ。平成の世と同じく、令和も戦争のない平和な時代であってほしいと願うばかりだ。

  「新紙幣」も個人的には流行語大賞だ。「令和」の発表の8日後、新紙幣を2024年度に発行すると麻生財務大臣が記者会見で発表した。1万円、5千円、千円の紙幣(日本銀行券)の全面的な刷新だ。平成の1万円札の主役を担った福沢諭吉から、令和は渋沢栄一に代わる。しかし、「独立自尊」の福沢の精神は未来も変わることはない。

⇒2日(月)夜・金沢の天気    くもり

☆北から脅しのメッセージ

☆北から脅しのメッセージ

       北朝鮮が28日午後5時前、日本海に向けて弾道ミサイルを2発発射した。これを受けて、国家安全保障会議(NSC)を開催した安倍総理は終了後、記者団に「北朝鮮の度重なる弾道ミサイルの発射は我が国のみならず国際社会に対する深刻な挑戦だ」と述べた(28日付・朝日新聞Web版)。このコメントに対する北朝鮮の反応がすさまじい。

   韓国の中央日報(30日付・Web版日本語)によると、 北朝鮮外務省の日本担当副局長が30日談話を発表し、「安倍は本当の弾道ミサイルが何かをもうすぐ非常に近いところで見ることになるかもしれない」と述べ、「その時に放射砲弾と弾道ミサイルがどのように違うかをよく比較して知っておくことを勧告する」と皮肉ったと伝えている。北朝鮮が打ち上げたのは超大型ロケット砲であり、弾道ミサイルではないと主張している。総理が「国際社会に対する深刻な挑戦」と述べ、弾道ミサイルの発射は国連の安保理決議に違反すると指摘したのに対し、北朝鮮側はこうした批判をかわしたいとの狙いもあるのだろう。それにしても、「間近に落としてやるから、その違いを勉強しておけ」という凄み方が堂に入っている。

   イギリスBBC(30日付・Web版)も「North Korea threatens Japan with ‘real ballistic missile’」(北朝鮮が「本当の弾道ミサイル」を落とすと日本を脅す)との見出しで伝えている=写真=。記事では、北朝鮮側は、安倍総理を「完全な馬鹿者で、政治的小物」と呼び、「写真つき報道を見ておきながら、多連装ロケット砲とミサイルの区別もつかない、史上最も愚かな男、世界唯一のまぬけだ」と罵倒した、と報じている。

   中央日報とBBCの記事から読み取れることは、北朝鮮は日本に向けた新たな発射を示唆 していることだ。単なる脅しではないかもしれない。

⇒1日(日)未明・金沢の天気      くもり      

★その署名が世界を変えるのか

★その署名が世界を変えるのか

   トランプ大統領に相当な決断があったことは想像に難くない。今月23日付のこのブログで、トランプ氏が香港の一国二制度を支援する香港人権・民主主義法案がアメリカ議会上下院で採択され、大統領署名をするのか拒否権を発動するのかどうか、「通商交渉を有利に進めるために法案をチラつかせ、中国側が仕方なく折れてアメリカ側が交渉を勝ち取ったとしたらどうだろう。トランプ氏は微笑みながら拒否権を発動するだろう。」と書いた。さらに「『金のために民主主義を売ったアメリカ大統領』として歴史に悪名を刻むことになるのではないか。」とも述べた。

   というのも、トランプ氏はそれまで、「中国は香港との境界沿いに多くの軍部隊を駐留させているが、香港に侵攻していないのは私が習主席に侵攻しないよう要請しているからにほかならない」「現在、歴史上最大の通商合意に向け交渉が進められており、実現すれば素晴らしいことになる。 私がいなければ、香港で数千人の人々が殺され、警察国家が誕生することになる」(22日付・ロイター通信Web版)と述べていた。記事をストレートに解釈すれば、トランプ氏が中国による香港への侵攻を習氏に要請して止めているので、法案は必要ない、つまり拒否権を発動すると同じ意味ではないかと読んでいた。 

   民主主義を守るというアメリカ議会の強い政治姿勢を示した法案だけに、トランプ氏にとっては拒否権を行使したら、国内外からの大きな非難に揺れる。その意味で、香港の区議会議員選挙の結果を見計らったうえでの決断(署名)だったのだろう。きょうのアメリカのCNN(Web版)=写真=によると、新法は政府に対し香港の特別な自由が保たれているか毎年検証するよう求めているほか、自由が維持されていないと判断された場合、香港への優遇装置の取り消す。また、香港市民の恣意的な拘束、拷問、自白強要などに関与した人物への渡航制限、民主化を阻害した人物に対する資産凍結などの措置も盛り込まれている。個人への制裁にも及ぶ強烈な内容だ。

   当然、中国政府は怒り心頭だろう。時事通信Web版によると、法成立についてさっそく非難声明を出し、香港や中国の内政に対する著しい干渉であり、「赤裸々な覇権行為」「中国は必ず断固反撃を加え、それで生じる一切の結果はアメリカが負う」と激しく反発している。世界の2大国の対立が経済面、政治面で先鋭化してきた。これがグローバル社会にどう波及するのか。日本の政治はこの事態にどう向き合うのか。まさか、あすも「桜を見る会」なのか。きょうの夕方、北朝鮮は飛翔体を発射したようだ。アメリカと中国、韓国と北朝鮮の混迷がさらに深まる。

⇒28日(木)夜・金沢の天気     くもり

☆ローマ教皇、極東の旅

☆ローマ教皇、極東の旅

   「民主化運動に前例のない地すべり的勝利」とイギリスBBC(26日付・日本語版)は伝えている。24日に投票が行われた香港の区議会議員選挙は、18の区議会の合わせて452の議席をめぐって争われ、政府に批判的な民主派が80%を超える議席を獲得して圧勝した。

   同Web版では、親中派の有力議員を破った21歳から37歳の4人の若い候補者たちを紹介している。ベテラン政治家を800票差で下した21歳の学生は、匿名の脅迫状が送り付けられる中で活動を続け、「きょうの勝利と記録的な投票率は、この壊滅的な状況における香港市民の声をはっきりと反映している」と勝利の喜びを語っていると紹介されている。この記事を読んだだけでも、体を張った選挙だったということが伝わってくる。

   一方で、民主派が圧勝し抗議活動が勢いを増すのを警戒する中国政府は、アメリカ議会が香港人権・民主主義法案を議会上下院で可決したことを受けて、北京に駐在するアメリカ大使を呼んで強く抗議し、トランプ大統領の署名で法案を成立させた場合、報復措置を取ると警告したと報じられている(26日付・NHKニュースWeb版)。中国外務省の次官はアメリカ大使に対し、「法案の成立を阻止し、内政干渉をやめるよう強く求める。さもなければ一切の悪い結果はアメリカが負うことになる」と抗議した(同)。

   アジアに熱風が吹く中、ローマ・カトリック教会の教皇として38年ぶりに日本を訪れたフランシスコ教皇。24日に長崎市の爆心地公園で、同日夜には広島の平和公園でそれぞれスピーチを行った。安倍総理との懇談(25日)では、「広島と長崎に投下された原爆によってもたらされた破壊が二度と繰り返されないよう阻止するために必要なあらゆる仲介を推し進めてください」と訴えていた。教皇は核を持つことで戦争を防ぐ「核抑止論」そのものを批判し続けている。総理は、アメリカの「核の傘」に守られた日本の安全保障政策に変わりはないとの見解だ。基本的なすれ違いが見えていた。

   今回の教皇来日でどのような成果があったのだろうか。ただ、目立ったのは、これまでメディアは「ローマ法王」と称していたのに、今回は「教皇」と呼び方を変更したことだ。20日の政府発表で、カトリック関係者の間では教皇の呼び方が普及しているので来日を機に名称を統一したようだ。

   きょう昼前、教皇は羽田空港からバチカンへ帰国の途に就いた。4日間の滞在での教皇のお気持ちはいかばかりだったか。教皇が各国に批准を呼びかけている核兵器禁止条約に日本は参加していない。煮え切らぬお気持ちだったに違いない。むしろ、香港に立ち寄ってみたかったのではないか。82歳、極東の旅はお疲れだったろう。

⇒26日(火)夜・金沢の天気     くもり