#コラム

☆問われるWHOのスタンス

☆問われるWHOのスタンス

  WHOは機能不全の状態に陥っているのではないか。おそらく今後、国際世論の批判の目はWHOに向かう。中国政府はきょう25日、コロナウイルスによる国内の肺炎の死者数は41人、患者数は1287人と発表した。春節の大移動でフランスやオーストラリアでも初めての感染者が確認されるなど世界的に拡大している。WHOはいったいどう対処するのか。

      WHOは疾病のコロナウイルスのパンデミックを防ぐため、感染状況が国際的に拡大、他の国に公衆衛生上の危険をもたらし、国際的な対策の調整が求められると判断すれば、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」として、事務局長が緊急事態を宣言することになる。が、23日のWHO会合では時期尚早との判断だった。

   では、なぜ時期尚早との判断なのか。中国にとっては非常に不名誉なことになるのと中国指導部は考え、WHOが緊急事態宣言を出さないよう根回しをしたのであろうことは想像に難くない。このWHOの判断については世界のメディアがその決定過程のプロセスについて注目するだろう。

        すでに一部メディアでは以下の論調もある。WHO憲章は人種、宗教、政治信条などの差別なしに「すべての人々が最高水準の健康に恵まれる」権利を定めるが、テドロス事務局長は中国から巨額投資を受けるエチオピアの元保健相なので、政治的理由で中国に配慮している(25日付・産経新聞Web版)、との見方だ。

         時期尚早との判断では、中国以外の国で確認された感染者は12人と比較的少ないというのが、「国際的な非常事態」の宣言を見送った理由の一つだった。WHOのテドロス事務局長は、「これから非常事態になるかもしれない」とも述べていたという(24日付・BBCニュースWeb版日本語)。感染はすでに世界に拡大している。「China coronavirus: Death toll rises as disease spreads」(中国のコロナウイルス:病気が広がれば、死者も拡大する)。きょう25日のBBCニュースWeb版の見出しだ。ならば、WHOは今の事態をどう受けて止めているのか。

⇒25日(土)午後・金沢の天気    くもり

★「春節のパンデミック」

★「春節のパンデミック」

         中国の衛生当局はきょう24日、武漢市で感染が拡大している新型コロナウイルスによる肺炎の患者数が830人、死者は25人に達したと発表した(24日付・日経新聞Web版など)。一方、WHOは23日の緊急会合で、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言は時期尚早との判断を下した。前回のこのブログで取り上げたが、中国の発表のタイミングが絶妙で、「WHO対策」は実に巧妙だ。

   WHOが緊急会合を開き、新型コロナウイルスの状況が国際的に拡大、他の国に公衆衛生上の危険をもたらし、国際的な対策の調整が求められると判断されれば、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」として、事務局長が緊急事態を宣言することになる。これは、中国にとっては非常に不名誉なことになると中国指導部は考え、緊急事態宣言はなんとしても避けたかったのではないか。

   そこで、WHOが22日にジュネーブの本部で緊急会合を開き、コロナウイルスへの対応を協議することを発表した日(20日)に、習近平国家主席が情報を直ちに発表するよう関係部門に直接指示を出した。22日のWHOの緊急会合では結論が出ず、23日に継続協議で時期尚早との判断が出たのを確認して、今回の新たな数字を公表したのではないか。

            コロナウイルスの問題性は次なるステージに入ってきた。きょうから始まった中国の春節連休の「大移動」で、日本でもニュースが飛び交っている。沖縄・那覇市のドラッグストアでは、PM2.5やウイルスを99%カットするなどの記載がある高機能マスクを200個を入荷したが、中国人観光客の購入でその日で完売した(24日付・沖縄タイムスWeb版)。

    旅行で東京を訪れていた武漢に住む40代の中国人男性が、来日する前の今月14日から発熱があり、22日になって東京都内の医療機関を受診したところ、肺炎の兆候がみられたため入院、24日未明に新型コロナウイルスに感染していることが確認された(24日付・NHKニュースWeb版)。春節のパンデミックが始まったか。(※写真は厚生労働省のホームページより)

⇒24日(金)午後・東京の天気   くもり   

☆WHOの緊急事態宣言の行方

☆WHOの緊急事態宣言の行方

        中国・武漢で新型のコロナウイルスによる肺炎は22日までに感染者540人、死者は17人に上ると今朝のニュースで報じられている。一連の関連ニュースで気になっていたのは、20日に習近平国家主席が情報を直ちに発表するよう関係部門に直接指示を出したことだった。習主席の指示は「感染拡大に関する情報を直ちに発表し、科学的な予防知識を広めよ」と求めたという(20日付・NHKニュースWeb版)。当時は感染者130人、死者は1人だった。この時点でなぜ国家主席が直接指示を出したのだろうか。

   その背景には中国が悪名を買った、例の2003年の新型肺炎SARS問題があるのではないかと察した。当時は徹底的に情報を隠したことで感染を広げ、患者8100人、770人余りが死亡したとされる。この教訓から、国家主席自ら情報開示を強化する姿勢を強調したのだろうか、と推測していた。

   ふと考えたのは、これは「WHO対策」ではなかったのか、と。WHO(世界保健機関)が22日にジュネーブの本部で緊急会合を開き、コロナウイルスへの対応を協議することを発表した日が、習主席が指示した日と同じ20日なのだ。

   ここからはあくまでも推測だ。WHOが緊急会合を開き、新型コロナウイルスの状況が国際的に拡大、他の国に公衆衛生上の危険をもたらし、国際的な対策の調整が求められると判断されれば、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」として、事務局長が緊急事態を宣言することになる。この緊急事態は、WHOが2003年の中国のSARS問題を教訓に2005年に国際保健規則を改正して設けた条項だ。

   直近では、2019年7月にエボラ出血熱がコンゴやウガンダで拡散したときに緊急事態宣言が出されている。では、もしこの宣言が武漢のコロナウイルスについて出されるとどうだろう。中国にとっては非常に不名誉なことになる、と中国指導部は考えるだろう。緊急事態宣言が出されると、WHOの事務局長は加盟国に対し勧告を出すことになる。すると、加盟国は「2003年問題と同じことをやっている。中国のガバナンスはいったいどうなっているのか」とささやき始めるだろう。

          中国とすれば、国家主席の直接指導で、コロナウイルスの感染拡大の阻止に全力を挙げているので、緊急事態宣言は必要ないとWHOにアピールしたかったのではないだろうか。22日のWHOの緊急会合では結論が出ず、23日に継続協議となった。中国側もWHOに対し必死の根回しをしているのではないか。緊急事態宣言の行方に注目したい。

⇒23日(木)午前・金沢の天気     あめ

★コロナウイルス、春節の大移動、パンデミック

★コロナウイルス、春節の大移動、パンデミック

   けさのCNNニュースを視聴すると、アメリカでも新型コロナウイルスの感染者を確認したと報じている。さっそく、CNNのWebニュース=写真=をチェックすると、「The coronavirus has already sickened hundreds and killed six people in Asia. 」と少々荒っぽい表現で伝えている。

  それによると、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は21日、国内で初めて新型コロナウイルスによる肺炎患者を確認した。患者はワシントン州在住の男性で、中国・武漢市を訪れ、今月15日に帰国していた。男性は先週肺炎と診断され隔離中で、CDCでは国内で男性と接触した人に新型コロナウイルスの感染がないか調査を開始した。

   アメリカで新型コロナウイルスのニュースに敏感に反応したのは株価だ。21日のニューヨークのダウ平均株価の終値は、先週末に比べて152㌦安い、2万9196㌦だった。冒頭に紹介した荒っぽい表現はある意味で、「戦闘態勢」に入ると反応した投資家も多かったはずで、一気に売り注文が広がったのだろう。アメリカだけではない。きのうの日経平均株価も20日より218円下がり、2万3864円だった。新型コロナウイルスが中国で広がっているため、経済への影響が懸念され、すでに上海市場や香港市場でも株価が下落している。この流れで日経平均株価も売りが広がったのだろう。

   今月24日から中国の旧正月、春節の大型連休が始まる。中国人観光客が日本を含め世界中を訪れることになるだろう。アメリカでは今月17日からロサンゼルスなど3つの国際空港でウイルスの検疫検査を実施しているが、今回のアメリカ国内の感染患者の確認を受けて、さらにシカゴとアトランタの2つの空港でも検査を行う。

   日本では異様な光景が広がるかもしれない。例年この春節の時節には70万人を超える中国人観光客が日本を訪れている。おそらく、人気スポットである関西では空港や電車駅、売店などで係員全員がマスク、そしてホテルではエレベーターのボタンや客室のドアノブをゴシゴシとアルコール消毒する光景を想像する。

   きょうWHOはスイスのジュネーブで新型コロナウイルスをテーマに緊急会合を開く。パンデミック(pandemic)、世界的な感染の広がりをどう防ぐのか。

⇒22日(水)朝・金沢の天気     はれ

☆パンデミックを防げ

☆パンデミックを防げ

      中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎について、当初は感染が限定的という報道だったが、それが直近の報道だと人から人への感染に広がっているようだ。深刻さを物語るように、中国で肺炎患者が増えていることを受けて、WHOの事務局長が22日にスイスのジュネーブで緊急の会合を開くことになったと報じている。まるで、パンデミック(pandemic)、世界的な感染の広がりを示唆する動きではないのか。

   武漢以外に北京、広東省でも患者が確認され、感染者はすでに200人を超えている、という。20日のニュースでさらに深刻になった。イギリスの大学、インペリアル・カレッジ・ロンドンの感染症の専門家チームが、1)武漢とその周辺の人口、2)海外で見つかった患者数、3)武漢の国際空港から海外に旅行する人の数、などから患者の数を推計した。その結果、今月12日の時点で武漢では患者数1700人以上に上る可能性があると発表しているのだ(20日付・NHKニュースWeb版)。

  中国では今月24日から旧正月の春節の大型連休に入ると、日本を含め世界中に中国人観光客が訪れることになる。WHOの事務局長の緊急会合は、このタイミングで世界各国に注意を呼びかける意味合いがあるのではないだろうか。

  今夜遅く、この事態に習近平国家主席は情報を直ちに発表するよう関係部門に直接指示を出した、と報じられている。習主席の指示は、「感染拡大に関する情報を直ちに発表し、科学的な予防知識を広めるよう」と求めたという(20日付・NHKニュースWeb版)。その背景には中国が悪名を買った、例の2003年の新型肺炎SARS問題がある。徹底的に情報を隠して感染が拡大したのだ。8100人が感染し、770人余りが死亡したとされる。この教訓から、情報提供を強化する姿勢を強調したのだろう。

  それよりむしろ、春節には海外渡航を全面的に禁止するくらいの強い指導力を発揮してほしい。(※写真は人から人の感染の可能性を伝えるイギリスBBCニュースWeb版=20日付)

⇒20日(月)夜・金沢の天気   くもり

★震災から25年、風化に挑む

★震災から25年、風化に挑む

   阪神・淡路大震災(1995年1月17日)は震度7だった。午前5時46分、金沢の自宅で睡眠中だったが、グラグラと揺れたので飛び起きた。テレビをつけると大変なことになっていた。当時民放テレビ局の報道デスクだったので、そのまま出勤した。テレビ局はテレビ朝日系列で、ABC朝日放送(大阪)に記者とカメラマンを応援に出すことを決め、応援チームはその日のうちに社有車で現地に向かった。見送りながら、取材チームの無事を祈りながらも、日本の安全神話が崩壊したと無念さを感じたものだ。金沢は震度3だった。

   あれから25年、ABCはウェブサイト「阪神淡路大震災25年 激震の記録1995 取材映像アーカイブ」を今月10日に公開した。この専用サイトでは、震災直後から8月23日までに取材した映像の中から38時間分を公開している。日時やキーワードで検索できるほか、被災地の地図に表示されたアイコンをクリックすると、場所ごとの映像が表示される。映像は当時のニュース映像ではなく、部分的ではあるもののノーカット編集がほとんどだ。その分、災害のリアリティさが伝わってくる。

   このサイトの映像をチェックして見て、ABCは「風化」と闘っている、と推察した。被災地から離れているテレビ視聴者は時間とともに災害の記憶が遠ざかる。何も忘れっぽい日本人だけではない。260年前、アダム・スミスは『道徳感情論』という講義で、災害に対する人々の思いは一時的な道徳的感情であり、人々の心の風化は確実にやってくる、と述べている。風化という視聴者のハードルをどう乗り越えるか。被災地との意識のギャップを埋めるに、ABCは「忘れてほしくない」とメッセージを送ったのだろう。

   もう一つのメッセ-ジを感じた。キー局に対してだ。「既視感」との闘いだ。被災地のローカル局と東京キー局との報道スタンスは異なる。ローカル局は被災者に寄り添う番組づくりを心がけているが、キー局は視聴率を重視している。ローカル局からキー局に全国放送の番組提案があっても、キー局は「どこかで見たことがある」と既視感を理由に提案を却下することがままあるのだ。

   当時カメラ撮影で使ったテープは四半世紀を経てそろそろ処分する時期に来ている。これを機に、ABCは震災の風化を防ぎ、今後の防災・減災に役立てたいと映像公開の膨大な作業にチャレンジしたのだろう。

⇒17日(金)夕・加賀市の天気   はれ

☆「雪中四友」のころ

☆「雪中四友」のころ

  「雪中四友(せっちゅうしゆう)」という言葉がある。厳冬のこの季節でも咲く4つの花、ロウバイ、ウメ、サザンカ、スイセンのことだ。我が家でもこの時節、床の間に飾る花はロウバイとスイセンの「ニ友」である=写真=。晴れ間を見計らって庭に出て、2種の花を切ってくる。黄色い花のロウバイは「蝋梅」と漢字表記され、ほのかな香りも楽しめる。

         もう一つの花、スイセンも可憐に咲き誇っている。学名の「Narcissus(ナルシサス)」はギリシャ神話のエピソードに由来するそうだ。美しいがゆえに、「自己愛」「神秘」といった花言葉がある。二友はそれぞれに花の個性を放っているものの、二友を引き立てる「雪中」の状況がいまだにないのは心もとない。

   金沢地方気象台は昨年12月6日に初雪を観測と発表しているが、正確には「みぞれ」を観測したのだ。みぞれは、雨と雪が混在して降る降水のこと。北陸に住む者の感性では、本来の雪とは表現し難い。それはさておき、1月半ばに入ったきょう現在でも、雪がなし状態が続いている。ご近所さんとの年初のあいさつは「雪が降らんで、いい正月やね」だったが、最近は「雪が降らんで、これはこれで気味悪いね」に変わってきた。

   積雪に備えて庭には雪吊りを施し、路面凍結でも走行できるように自家用車もスタッドレスタイヤに交換している。心の準備はでてきているのに、その雪がない。肩透かしをくらった格好だ。そんな話を友人たちとすると、「何を狼狽(ろうばい)しとる。大寒は今月20日やろ、心配せんでもこれからドカッと降るわな」と笑われた。

   雪に対する北陸独特の感性がある。雪害に対するリスク管理は個人の責任である。そのために、雪害と正面から向き合う。大雪が降れば、地域の人たちは道路の除雪するために協働し、屋根雪下ろしに互助もいとわない。

   逆に、雪をよく知るがゆえに雪をめでる。冬のこの時期に、雪見茶会が開かれる。抹茶をいただきながら、雪見障子ごしに庭をめでる。雪吊りの庭の雪景色はまさに造形と自然の融合デザインではある。少しは雪が降ってほしいものだ。

⇒15日(水)夜・金沢の天気    あめ

★ゴーン被告、風と共に逃げた謎を解く

★ゴーン被告、風と共に逃げた謎を解く

         新聞を読んでいて、割と楽しみにしているのは週刊誌の広告だ。先日も週刊新潮(1月16日号)の広告を見ていて、「風と共に『ゴーン』10の謎」という大見出しが目に飛び込んできた。映画「風と共に去りぬ」のタイトルと、カルロス・ゴーン被告のレバノンへの逃亡をひっかけて、かなり捻った見出しだった。さっそく、コンビニで購入した。これが、なかなか面白く深い7ページの構成になっている。

   面白いと思ったのはレバノンの国柄についての記述。あの日本赤軍によるイスラエル・テルアビブ空港での銃乱射事件(1972年5月)の実行犯の一人が岡本公三。イスラエルとパレスチナ解放人民戦線総司令部との捕虜交換で1985年からレバノンに戻っている。イスラエルと戦った英雄として、現地では「コーゾー」と呼ばれる。記事によると、NHK-BSで朝ドラや相撲を楽しんでいるようだ。日本政府はレバノンに岡本の返還交渉をこれまで迫ってきたが、イスラエルと戦った英雄であり交渉に応じていない。一方のゴーン被告は暴利を貪ったイメージがレバノン国内にはあり、「枕を高くして寝られるとは限らない」とコーナーを締めている。

   深いと感じたのは、今回の逃亡劇で弘中惇一郎、高野隆の両弁護士の責任について触れている点である。ゴーン被告には民間の警備会社が行動を監視していた。日産が雇った「探偵」と弘中弁護士が年末に記者団に明かし、12月27日に告訴した。この「監視排除」の直後にゴーン被告は逃げた。結果的に、両弁護士がやったことは高額な報酬をもらってゴーン被告の海外逃亡のお膳立てをしたことになる。両弁護士は辞任より先に、記者会見で経緯を明らかにすべきとの他の弁護士の意見を伝えている。「辞任の意向というが、それでこの問題から逃げられるのであれば、検察も警察も、そして弁護士も要るまい」と結んでいる。

  最後は映画の話だ。ゴーン被告は逃亡劇で使ったとされる22億円相当を手記と映画化で稼ぎ出すことをハリウッド関係者と相談しているようだ。プライベイートジェットという風と共に消え去ったゴーン被告をめぐる10の謎。新聞やテレビが報じていない裏側に迫っていて、なかなか読み応えがあった。

⇒14日(火)朝・金沢の天気     くもり

☆台湾総統選の余波

☆台湾総統選の余波

  台湾の総統選挙は直接投票で、民意が反映される選挙だ。報道によると、11日に投開票が実施された総統選で、現職で与党、民進党の蔡英文氏が817万票、高雄市長で最大野党、国民党の韓国瑜氏が552万票、大差で蔡氏が再選された。投票率は74.9%と高い。単純に比較はできないが、昨年11月24日、民主派が圧勝した香港区議会(地方議会)選挙の投票率は71.2%だったので、今回総統選に対する関心の高さがうかがえる。

   台湾の民意は、中国との統一を拒否する蔡英文氏に大きく傾いたことになる。その蔡氏がツイッターで日本に対してメッセージを寄せている(11日付、日本語)=写真=。「再び総統としての重責を託されたのは、国民が私にこれまで以上にリーダーシップを発揮し、未来を見据えた政策を実践することで、台湾をさらに邁進させたいからだとおもいます。 そのため、国民の声に謙虚に向き合い、不動の心で困難を乗り越え、そして、同様に台日の絆を深めていきたいです!」

   このツイッターを読んで、表現は適切ではないかもしれないが、「地雷原に踏み込んだのでは」と直感した。では、誰が地雷原に踏み込んだのか。

  蔡氏のツイッターはおそらく茂木外務大臣の談話に応えたものものだろう。「台湾の総統選挙において蔡英文氏が再選されました。民主的な選挙の円滑な実施と同氏の再選に祝意を表します。台湾は我が国にとって、基本的な価値観を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナーであり、大切な友人です。政府としては、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくとの立場を踏まえ、日台間の協力と交流の更なる深化を図っていく考えです」(11日付・外務省ホームページ)

   すると中国は茂木談話にクレームをつけてきた。中国外務省の耿爽副報道局長は「台湾の選挙は中国の一地方の問題だ。関係国は『一つの中国』原則に違反しており、強烈な不満と断固反対を表明する」としたうえで、「台湾問題は中国の核心的利益だ。台湾の独立勢力に誤った信号を送らないよう求める」と中国外務省ホームページでコメントした(12日付・朝日新聞Web版)。

   日本政府は今春に中国の習近平国家主席を国賓として迎える方針を崩していない。中国公船による尖閣への領海侵入や中国当局による日本人の拘束、香港やウイグル、チベットでの人権問題があっても、だ。だが、今回の台湾総統選の日本側の対応で、中国側がキャンセルを入れてくる可能性もある。そうなると今後の日中関係に再び亀裂が走るかもしれない。

   中国は台湾との「一国二制度」での統一に向けて圧力路線を継続するだろう。 昨年11月18日、中国初の国産空母が台湾海峡を通過して、台湾に対する威嚇行動ではないかとニュースになった。今回の総統選の結果から、再び空母が、それも艦隊を組んで海峡に現れるかもしれない。そうなるとアメリカ海軍の第7艦隊の動きはどうなるのか。台湾総統選の余波が気になる。

⇒13日(祝)朝・金沢の天気     あめ

★元も子もない

★元も子もない

   大学の日常の光景から事件が起きた。報道によると、きのう10日夕方、名古屋市の名城大学でリポート提出が間に合わないことを謝罪するため研究室を訪れた22歳の男子学生が、担当の40歳男性の准教授から叱責され、准教授をハサミで刺した。男子学生は殺人未遂の疑いで逮捕された。

  男子学生は、准教授から提出期限を守らなかったことを叱責され、「単位はあげない」と言われ、かっとなり刺したと供述しているという。リポートの提出が遅れ、教員に叱責される光景はキャンパスではよくあることだ。教員は、リポートの提出がなければ成績評価ができない。

   問題は凶器とされるハサミだ。このハサミは教員の机上にあったものをとっさに手にして刺したのか。あるいは、学生が隠し持っていたものなのか。殺人未遂ということならば、おそくら学生が隠し持っていたものなのだろう。となれば、学生にもともと教員を脅そうとした計画的な犯行ではなかったか。幸い命に別状はないようだが、キャンパスでの傷害事件は衝撃的だった。

   大学に関連した話をもう一つ。今月3日付のこのブログ(テーマ「☆2020 先読み~広告が映す未来戦略」)で、全面見開き広告(12月31日付)の『立命館から、アメリカ大統領を。』のキャッチコピーについて取り上げた。するとブログに「私は違和感を感じる」とのコメント(匿名)をいただいた。以下、全文を紹介すると。

   ― 私は、立命館大学の「アメリカ大統領」の広告について、センス無いなと思います。アメリカの大統領はこれまで世界中で何度も武力行使を指示してきました。アメリカは世界中の多くの対立構造に関与しています。自国の利益のために。ある国で星条旗が燃やされているのもニュースで見かけます。そういった国からの留学生はこの広告を見てどう思うでしょうか? このような広告を出すのはグローバル社会を客観的な視点で見れていないことの表れだと思います。 ―

   確かに、立命館大学はあえてなぜ、いま、「アメリカ大統領を」をキャッチとして打ち出したのか。トランプ大統領が世界中の人たちの共感を得ているのであれば、このキャッチは響いたかもしれない。しかも、立命館の意図は裏目に出た。アメリカは今月2日夜(現地時間)にイラン革命防衛隊の司令官を殺害したと公表した。このニュースで、世界中の人たちは「トランプ大統領は新年早々から対立構造を焚きつけている」と違和感を感じたに違ない。挑戦的な広告であったかもしれないが、こうなると元も子もない。

⇒11日(土)夜・金沢の天気    あめ