#コラム

☆アメリカ 負の連鎖のただ中で

☆アメリカ 負の連鎖のただ中で

         アメリカ・ミネソタ州で黒人男性が白人警官に拘束され死亡してから10日たったが、抗議デモは各地に飛び火して治まる気配がないようだ。むしろ煽ったのは、「法と秩序」を重視するトランプ大統領で、過激化する抗議デモを抑えるために軍の動員を指示したことがさらなる反発を招いた。

   5日付のCNNニュースWeb版は「Trump shares letter that calls peaceful protesters ‘terrorists’」(トランプ氏、平和的な抗議者を 「テロリスト」 と呼ぶ書簡を公開)の見出しで、月曜日(今月1日)ホワイトハウスの門の外にいた平和的な抗議者たちに催涙弾など浴びせて解散させて、トランプ氏が彼らを「テロリスト」と書簡で綴っていた、と記事にしている=写真=。

   今月2日の「ロイター/イプソス世論調査」によると、抗議デモが全米に広がっていることについて、抗議活動参加者に「共感する」と答えた人の割合が64%に達し、否定的な27%、「分からない」の9%を大きく上回った。トランプ大統領の対応を支持しないという割合は55%を超え、このうち「強く反対」が40%となり、支持は33%だった。共和党員に限っても、トランプ氏の対応に肯定的だったのは67%だった。ただ、大統領としての職務全般を評価する声を82%だった(6月3日付・ロイター通信Web版日本語)

           連日報道される抗議デモやこうした世論調査を見ると、多くの日本人は「トランプは終わった」と読むだろう。むしろ、大統領選挙が本格的に始まったと読む方が正解かもしれない。トランプ氏はおそらく民主党のバイデン氏が票固めをするために、抗議デモを利用していると考えているだろう。有権者の気を引くためのトランプ氏の次なる一手は、香港に国家安全法を導入し一国二制度を形骸化された中国に対する制裁だろう。ドルと人民元の交換停止といった強烈な一撃もあるかもしれない。そうなると中国だけでなく、世界経済がさらに大揺れになる。

   一方で、抗議デモは必ずしも評価されているとは限らない。それは新型コロナウイルスの感染拡大というもう一つの側面がある。事件が起きたミネソタ州や、ニューヨーク州の知事は、デモ参加者に対して、ウイルス検査を受けるよう呼びかけている。とくに、ニューヨーク州は抗議デモの参加者数は最大規模で、1人から多くの人に感染を広げる「スーパースプレッダー」になる可能性がある。不都合な真実ではある。

   コロナ禍の渦中にある国民的なストレス、黒人貧困層のうっ積、そして失業の不安と怒りなどがこの抗議デモに集約されていると考えると根深さを感じる。まさに、アメリカは負の連鎖のただ中にあることだけは読める。

⇒5日(金)午後・金沢の天気    はれ時々くもり

★そのシーンは演出なのか、局側は会見を

★そのシーンは演出なのか、局側は会見を

   共同生活をテーマにした、いわゆるリアリティ番組『テラスハウス』に出演していた女子プロレスラーが先月23日に自死したとされる事件で、SNS上で誹謗中傷を受けたことが原因との議論が今も続いている。番組では、女子プロレスラーが大切にしていたプロレスのコスチュームを同居していた男性が誤って乾燥機にかけてしまったことが原因で、プロレスラーが男性を強く叱責した場面があり、これに対して、SNSから「死ね」「消えろ」といった誹謗中傷の批判が相次いだとされる。番組はシナリオ台本のないことがウリなのだが、テレビ局側の責任は免れるのだろうか。

  問題は、シナリオ台本はないとは言え、そのシーンが「台本なき演出」ではなかったか。番組には必ずディレクターが立ち会い、視聴者の反応を意識した番組の構成が練られる。その優先順位があるから番組を時間通りに納めることができるのだ。今回、女子プロレスラーの叱責のシーンが番組のクライマックスのシーンとして位置づけられ番組が構成された可能性が高い。現場のディレクターはむしろ、SNSでの投稿を煽ることをあらかじめ意識していたかもしれない。

   そう考えると、局側の責任がむしろ問われるのではないだろうか。ところが、番組側はいっさいのこの点について釈明していない。局側あたかも番組の放送中止をもって贖罪(罪滅ぼし)としているようにも思える。むしろ、制作現場のプロデューサーやディレクターが記者会見して、その点を説明すべきではないだろうか。そのシーンをあえて演出したのかどうか。したのであれば、出演者にどのよう指示を出していたのか。

   番組を制作したフジテレビの社長の月末の定例記者は新型コロナウイルスの影響で見送りとなっている。記者からの書面での質問にこの問題を以下回答している。

   「今回の木村花さんの痛ましい出来事に対して、改めて心からのお悔やみを申し上げます。同時に番組制作の私共がもっと細かく、継続的に、彼女の気持ちに寄り添うことができなかったのだろうかと慙愧の念に堪えません。『テラスハウス』はリアリティーショーであり、主に若者の恋愛を軸に、それにまつわる葛藤や喜びや挫折など様々な感情を扱うものですが、刻々変化する出演者の心の在り方という大変デリケートな問題を番組としてどう扱っていくか、時としてどう救済していくかということについて向き合う私どもの認識が十分ではなかったと考えております。以上のことを考慮したうえで、今回、既報の通り、同番組の制作、地上波での放送、およびFODでの配信を中止するとともに、今後、十分な検証を行ってまいります。」(5月29日付・フジテレビジョン公式ホームページ)

   「十分な検証」と述べているが、そのシーンが演出であったのかどうかぜひ知りたい。はやり制作現場のプロデューサーやディレクターが記者会見すべきだと考える。もちろん、SNSで批判を投稿した人たちをかばうつもりは一切ない。亡くなられた本人の尊厳を守る意味でも、ぜひ知りたいところだ。また、記者会はなぜ会見の開催をフジテレビ側に要求しないのだろうか。

(※写真はイギリスのBBCニュースが報じた女子プロレスラーの死=5月23日付・Web版=)

⇒4日(木)夜・金沢の天気     はれ

☆ウイズコロナの日常、マスク忘れの日々

☆ウイズコロナの日常、マスク忘れの日々

   緊急事態宣言が全面解除になったとは言え、きのう20日、東京都は新型コロナウイルスの感染状況に悪化の兆候が見られるとして、警戒を呼びかける「東京アラート」を出した。北九州市ではきょうも5人の感染が確認され、12日連続での感染拡大と報じられている。

   きょう午後、2ヵ月に一度通っている金沢市内の総合病院に行くと、全面解除とは言え、ある意味で緊張感が漂っていた。玄関入口でセンサーでの体温検査があり、内科の受付に行くと、「血圧はご自身で測ってください」と言われた。これまで担当の医師が血圧測定のバンドを腕に巻いてくれたのだが。窓口のスタッフに尋ねると、「医師と患者さんがお互い触れ合わないために血圧測定をお願いしています」と。廊下の血圧測定機で測り、そのメモ紙を受付に出した。

   診察室に入ると、マスク姿の医師から「お変わりありませんか」と尋ねられ、「とくにありません」と答える。その後、次回の診察日を調整して終わり。時間的には90秒ほどだった。いつもなら、医師が血圧を測りながら、「きょうは(血圧が)高いですね」とか言いながら、若干ながら会話がある。今回は実に淡々とした診察だった。

   支払いのため待合所に行く。新聞を読もうとしたが、いつものラックに新聞がない=写真=。ことわり書きが貼ってあった。「新型コロナウイルス感染対策のため、当面の間、新聞は撤去させていただきます。病院長」。何人かが新聞を広げると、それだけで感染リスクが発生する。そこまでしなくてもと一瞬思ったが、これが「ウイズコロナ」の日常なのだろう。会計の窓口と薬の受け渡しカウンターもすべてビニールシートで仕切られていた。キャッシュカードで支払いを済ませ外に出る。

    昼ご飯がまだだったので、近くのラーメンのチェーン店に入る。5人がけのカウンターに案内されたが、それぞれ透明プラチックで仕切られていた。何だか窮屈そうだったので、テーブル席にさせてもらった。ここも新聞、雑誌が撤去されていた。スマホを左手で見ながら、右手で箸をとってラーメンをすする。

    支払いを済ませて外に出る。するとラーメン屋の店員が追いかけてきて、「お客さん、マスク忘れてますよ」と。「また忘れた」とあわてて、テーブル席のイスに置いたマスクを取りに戻る。マスク忘れが常態化しつつある、ウイズコロナの日常ではある。

⇒3日(水)夜・金沢の天気    はれ

★コロナ後の社会・経済の構造変化とは

★コロナ後の社会・経済の構造変化とは

   証券会社の知り合いから一冊のリポートが送られてきた。手書きの添え状にこう書かれていた。「コロナ禍、人のマインドが180度変わり、日本にとって良い変化が起きているように感じております」と。リポートのタイトルは「日本:コロナ後の世界~マクロ経済・社会構造に予想される変化」。このテーマに関心があったのでさっそく読んでみる。果たして、「良い変化」かどうか。

   リポ-トは証券会社のチーフエコノミストによる分析だ。リポートではコロナ禍による日本と世界の価値観の転換を4つの視点で述べている。1)人の動きに関わる様々な変化、2)広義の社会保険機能の強化、3)国境・県境など「境界」の存在価値の上昇、4)効率第一主義の見直し、についてだ。

   1番目の人の動きに関わる変化は顕著だ。「ソーシャルディスタンス」というという言葉が当たり前のように使われるようになった。この視点でリポートでは、これまで国や自治体が推進してきた「コンパクトシティ」という、人口を中心市街地に集積するという政策は見直しが必要になってくるかもしれない、と述べている。また、人が動くことによって付加価値が生み出されてきた観光や文化・芸術などの施設では、その場に行くなくても、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)といったデジタル技術の進化でより実感が増すかもしれない。観光やエンターテイメントの分野も変わるかもしれない。

   2番目の広義の社会保険は多様な解釈を提案している。これまで福祉国家としての日本では、医療や介護の「高齢者中心」の社会保障だったが、これからは生活保護や雇用保険といったセーフティネットの拡充にも力点が注がれる。これによって、日本は北欧型の高福祉・高負担モデルに接近していく可能性があると指摘している。国民の合意が大前提だが、さらなる消費増税に向かうことにも。また、企業の経営理念は利益優先の株主重視から、消費者や社員、社会の安全を重視するステークホルダー重視へと切り替えが始まりそうだ。

   3番目の国境・県境など「境界」の存在価値では、マイナス材料としては、出入国や国境検疫の高いハードルが続き、旅行業や宿泊などのサービス産業にも影響が出てくる。一方で、境界をつくることで域内の住民の安全を守るという発想は、自治体の連携による広域行政、あるいは都道府県を超えた道州制といった自治体再編の動きを加速させるもしれないと指摘している。

   4番目の効率第一主義の見直しでは、在庫と供給網の在り方を問うている。ジャスト・イン・タイム型の在庫を極端に圧縮する生産体制や、コンビニに見られる小量高頻度配送は自然災害にその弱さを露呈している。さらに、企業価値は投資と株主還元というこれまでの「アメリカ型」の姿勢から、内部留保の蓄積と並行して一定の手元流動性を手元に置く「日本型」の企業財務が再評価されるかもしれない。以上は、野村證券「ANCHOR REPORT」(5月12日号)=写真=からの引用である。

   これに自己流の予想も加えてみたい。5月24日付のブログでも紹介したが、コロナ禍で日常の変化がある。それは「人が触ったものには触らない」という衛生観念が共有されている。ドアノブやエレベーターのタッチボタンのほか、紙幣や硬貨も非衛生的だと指摘は以前からあった。この意識変化によってキャッシュレス化がさらに進むとみている。さらに、国がデジタル法定通貨の実現に向けて動く可能性が見えてきた。2024年に予定している新札発行を、デジタル法定通貨へと舵を切るのチャンスではないだろうか。「デジタル円」の可能性がコロナの後押しで加速する。そんなふうに憶測している。

⇒2日(火)夜・金沢の天気      はれ

☆アベノマスクが届く

☆アベノマスクが届く

   きのうのブログで、「起死回生の一発がない限り、アベノマスクの風評とともに内閣支持率は今後も下がり続けるだろう。読売調査で20%台に落ちるのはあと半年、12月まで持つか持たないか。『アベノマスク解散』もありうるのではないか」と書いた。すると、知人からきょうメールがあり、「それはない。安倍総理は来年9月までやる。なぜなら、来年の東京オリピックを誰が引き継いでやるのか、そんな政治家はいないよ」と。なるほど、混沌とした中で誰も来年のオリンピックの面倒までみる政治家はいない。なんとなく理解できる。ということは安倍総理は来年9月まで続投か。

   きょう午後3時ごろ、郵便受けの入り口部分がカチャンと音がした。郵便物かと思い玄関に取りに出た。すると、ビニール袋に入った布マスク2枚、「アベノマスク」が届いていた=写真=。待ち焦がれていただけに、しげしげと手に取って眺めた。表側に「みなさまへ」とメッセージが書かれている。

「みなさまには、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた取組にご協力をいただいていることに、感謝申し上げます。感染拡大を防ぐため、これまでどおり、『3つの密(密閉、密集、密接)』を避けていただくとともに、『新しい生活様式』を実践いただくようお願いします。その際、自分は感染者かもしれないという意識をもっていただき、症状がない人でもマスクの着用をお願いします。この度、一住所あたり2枚の布マスクを配布いたします。十分な量でないことは承知しておりますが、使い捨てではなく、洗剤を使って洗うことで、再利用可能ですので、ご活用ください。」

   差出人は厚生労働省医政局経済化(マスク等物資対策班)、となっている。右下にはQRコードがついていて、スマホを読み取りアプリを当てると、厚労省公式ホームページの「布マスクのに関するQ&A」のページに飛ぶ。さらに、ビニール封筒の裏を見ると、「新しい生活様式」の実践例が書かれていて、「身体的距離の確保」「マスクの着用」「手洗い」といった、基本的な感染対策がイラスト入りで記されている。当初はマスク2枚が送られてくるだけかと思っていたが、全体になんとも丁寧な仕様になっている。

   さっそく使おうかと考えたが、恐れ多く、もったいない気がしたので記念にとっておくことにした。というか、金沢の気温は25度を超えていて、布マスクをする気にはなれなかった。夕方のローカルニュースでは、石川県ではきょう3日間連続で感染者がゼロだったという。アベノマスクの出番が再び来ないことを祈りつつ、そっと机の引き出しに仕舞う。

⇒1日(月)夜・金沢の天気      はれ

★アベノマスクと内閣支持率

★アベノマスクと内閣支持率

   テレビ・新聞のメディア各社が調査発表する内閣支持率、その読みどころを探ってみる。きょう31日付の共同通信社Web版によると、全国緊急電話世論調査(今月29-31日)で安倍内閣の支持率が39.4%となり、前回調査(5月8-10日)から2.3ポイント減となった。不支持率は45.5%。支持率40%割れは2018年5月の38.9%以来と報じている。

   NHKが今月19日に報じた電話による世論調査(15-17日)では安倍内閣の支持率は前回調査より2ポイント下がり37%だった。不支持率は7ポイント上がって45%だった。「支持しない」が「支持する」を上回ったのは、2018年6月の調査以来となる。もう一つ、読売新聞と日本テレビ系列による電話調査(今月8-10日)では安倍内閣の支持率は42%、不支持率は48%で、それぞれ前月に比べほぼ横ばいだった。

   3つの世論調査の傾向を読むと、トレンドはすでに支持率40%割れだ。支持率がここまで下がったのは「2018年5月」「2018年6月」以来と。森友学園への国有地売却や財務省の文書の改ざんをめぐる問題が沸騰していた時期だ。

   当の安倍総理はこの数字をどう読んでいるのだろうか。メディア業界でよくささやかれるのは、内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」と。第一次安倍改造内閣の退陣(2007年9月)の直前の読売新聞の内閣支持率は29.0%(2007年9月調査)だった。その後の福田内閣は28.3%(2008年9月退陣)、麻生内閣は18.6%(2009年9月退陣)と、自民党内閣は支持率が20%台以下に落ち込んだときが身の引きどきだった。民主党政権が安倍内閣にバトンタッチした2012年12月の野田内閣の支持率は19.0%だった(数字はいずれも読売新聞の世論調査)。

   今後、コロナ禍が安倍内閣にもっとも影響を及ぼすのは「アベノマスク」でないかと憶測している。4月7日に配布を閣議決定し、あすから6月だというのに、我が家にも国家支給のマスク2枚がまだ届いていない。政府目標は確か月内配布だったはずだ。厚労省公式ホームページによると、27日現在の配達率は25%だ。マスク支給予算は466億円。緊急事態宣言が全面解除(25日)となって以降、ドラッグストアなどではマスクの安売りが始まっている。多くの有権者にとって、いまだに国家支給のマスクが届かいない状況は政権の体たらくと映って見えてしまう。「安倍さん、いったいマスクはどうなっているの」と。

   そして、夏の暑さが増せば、布マスクには見向きもしなくなる。起死回生の一発がない限り、アベノマスクの風評とともに内閣支持率は今後も下がり続けるだろう。読売調査で20%台に落ちるのはあと半年、12月まで持つか持たないか。「アベノマスク解散」もありうるのではないか。

⇒31日(日)夜・金沢の天気    くもり

☆大統領選を質すツイッター社の社会実験なのか

☆大統領選を質すツイッター社の社会実験なのか

   まさに前代未聞の展開になっている。今月27日付のブログで、BBCニュースWeb版(27日付)の記事「Twitter tags Trump tweet with fact-checking warning」(ツイッターがトランプ氏のツイートにファクトチェックの警告をタグ付け)を取り上げた。トランプ大統領の投稿のうち、26日付で11月の大統領選挙でカリフォルニア州知事が進める郵便投票が不正につながると主張した件で、ツイッター社は誤った情報や事実の裏付けのない主張と判断し、「Get the facts about mail-in ballots」とタグ付けした。大統領のツイートと言えども、事実関係が怪しいツイ-トはファクトチェックの警告をする、との同社の新たな方針だろう。

   これに対しトランプ氏は27日、SNSを規制もしくは閉鎖するとけん制した。ツイートで「共和党はソーシャルメディアプラットフォームが保守派の見解を全面的に封じ込めていると感じている。こうした状況が起こらぬよう、われわれはこれら企業を厳しく規制もしくは閉鎖する」「今すぐ行いを改めるべきだ」と述べた(27日付・ロイター通信Web版日本語)。 

   ツイッター社もひるんではいない。29日にトランプ氏のツイートを初めて非表示にした。ミネソタ州ミネアポリスで今月25日、アフリカ系アメリカ人の男性が警察官に首を押さえつけられて死亡する事件が起きた。騒動が広がり、トランプ氏は「略奪が始まれば(軍による)射撃も始まる」という部分が個人または集団に向けた暴力をほのめかす脅迫に当たるとツイッター社は判断した。ただ、削除ではなく、「表示」をクリックすれば読める。すかざす、トランプ氏はツイートで同社を牽制した=写真・上=。「“Regulate Twitter if they are going to start regulating free speech.”」(言論の自由を規制しようとしているなら、ツイッターを規制せよ)

   表現が適切ではないかもしれないが、大統領選に向けた論戦がそっちのけになり、トランプ氏のツイートをめぐる攻防に、有権者やSNSユーザーの関心が集まり始めている。どちらが正しいかという評価ではなく、どちらが勝つかというリング観戦の様相になってきた。

   トランプ氏は28日、SNSを規制する大統領令に署名した。連邦通信品位法(CDA)の第230 条ではプラットフォーマーがコンテンツ発行者として保護される一方で、コンテンツの「管理権限」を与えている。これが撤廃されると、ファクトチェックの警告などは法的な根拠を失い、訴訟が多発するのではないだろうか。一方のトランプ氏とすると、この戦いが大統領選のライバルである民主党のバイデン氏に票が流れ込むという事態になれば、ほとぼりが冷めるまではツイートは休止ということになるかもしれない。

   ツイッター社のファクトチェック方針は、ある意味で「きれいごと」ではある。というのも、大統領選が本格的に始まれば、対立候補を誹謗中傷するネガティブ・キャンペーンがヒートアップする。2016年の大統領選では、クリントン陣営は「トランプはKKK(白人至上主義団体クー・クラックス・クラン)と組んでいる」とキャンペーンを張り、トランプ陣営は「クリントンは錬金術師だ」と映画までつくり相手陣営を攻撃した=写真・下=。アメリカの選挙風土は​相手の落ち度を責める、まさにデスマッチではある。このデスマッチにはテレビメディアも参戦する。FOXテレビは共和党、CNNは民主党がその代表選手だろう。

   誹謗中傷合戦の選挙状況にファクトチェックは通用するのだろうか。もし、こうしたアメリカの大統領選の状況をなんとか改革したい、質したい、論戦で有権者に訴える本来の大統領選であって欲しいと、ツイッター社が壮大な社会実験に挑んだのであれば、それはそれで一目を置きたい。

⇒30日(土)夜・金沢の天気    くもり

★取材手法の転換期なのか

★取材手法の転換期なのか

   このブログでも書いてきた、東京高検の黒川・前検事長と産経新聞記者と朝日新聞社員(元記者)の賭けマージャン問題(今月21日付、22日付)。朝日新聞社はきょう、経営企画室に勤務していた管理職の社員50歳に対し停職1ヵ月の処分を記事として発表した。「定年延長や検察庁法改正案が国会などで問題となっており、渦中の人物と賭けマージャンをする行為は、報道の独立性や公正性に疑念を抱かせるものだった」(29日付・朝日新聞Web版)と処分理由を述べている。

   記事では、同社執行役員編集担当兼ゼネラルマネジャーの話として、「読者の皆様から『権力との癒着ではないか』といった厳しいご批判を多くいただいています」「社員は黒川氏とは社会部の司法担当記者時代に取材先として知り合っており、記者活動の延長線上に起きたことでした。報道倫理が問われる重い問題と受け止めており、取材先との距離の取り方などについて整理し、改めてご報告いたします」と。この問題についての検証記事などを予定しているようだ。

   一方の産経新聞社は「主張」で「新聞倫理綱領は、すべての新聞人に『自らを厳しく律し、品格を重んじなくてはならない』と求めている。本紙記者2人が、取材対象者を交えて、賭けマージャンをしていたことが社内調査で判明し、謝罪した。取材過程に不適切な行為があれば、社内規定にのっとり、厳正に処分する。取材のためと称する、不正や不当な手段は決して許されない。」(22日付・産経新聞Web版)と自覚を欠いた行動だったとの論調だが、記者の処分などの発表はホームページを見る限り見当たらない。

   新聞やテレビの記者は「夜討ち朝駆け」でネタを取る。ネタを取るのにもスピード感が必要で、相手方(ライバル紙)に先んじればスクープとなり、同着ならばデスクにしかられることはない。先を越されれば、「抜かれた」と叱責をくらう。新人記者は警察取材(サツ回り)を通じて、そうトレーニングされて育つ。また、「虎穴(こけつ)に入らずんば、虎子(こじ)を得ず」と教え込まれる。権力の内部を知るには、権力の内部の人間と意思疎通できる関係性をつくらならなければならない、と。権力を監視する立場の記者があえて権力の懐(ふところ)に飛び込む。日本の報道独特のプロフェッショナル感覚ではある。

   今回の一件で、こうした記者による警察・司法の関係者との接触が自主規制され、取材手法そのものが変化していく可能性もある。日本の報道、あるいはジャーナリズムの有り様そのものが変革期を迎えたのかもしれない。

⇒29日(金)夜・金沢の天気     はれ

☆「非日常」から見えてきた「日常」の不都合

☆「非日常」から見えてきた「日常」の不都合

   けさ地元紙を開くと、新型コロナウイルスの感染防止のため全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)は中止となったが、石川県独自に代替の大会を開催するとの記事が目を引いた。7月中旬から8月上旬の土日と祝日に試合を行う。併せて、これも中止となった全国高校総体(インターハイ)も、剣道や柔道、相撲など選手が密着する5つの競技を除き県大会の実施を検討している(28日付・北陸中日新聞)。

   確かに、選手には3年生が多いだろうから、このままでは「不完全燃焼」で卒業することになる。何とか競技の場に出してやりたいとの県大会の運営に携わる教諭サイドの配慮だと察する。

   今月6日付のブログで紹介した国立工芸館のオープンが9月半ばの開業にめどがたったと、同じ紙面で紹介されている。本来は東京オリピック開会前の7月開業を予定していたが、コロナ禍の影響で人が集まる公共施設が休館を余儀なくされたことから、オープンも見送られていた。工芸館は東京国立近代美術館の分館だったが、地方創生の一環として金沢に移転、分館から独立した国立美術館となる。

   人間国宝や日本芸術院会員の作品を中心に陶磁や漆工、染織、金工、木工、竹工、ガラス、人形など1900点の収蔵品も金沢に移される。金沢には伝統的な工芸品に目の肥えた「うるさい」人たちが多い。オープンが待ち焦がれる。

   こうしたニュースに接すると、緊急事態宣言が全面解除されて、生活や行動、そして発想が「非日常」から「日常」に戻りつつあると感慨深い。一方で、非日常を経験して、はっきりと見えてきたこともいくつかある。たとえば、働き方の在り様だ。タイムカードを押す出勤、対面での会議、会議出席のための出張、印鑑での決裁などは、自宅の通信環境さえ確保されていればリモートワーク(在宅勤務)やオンライン会議、パソコン決裁で事足りることが分かってきた。営業マンも自宅から訪問先に向かう、あるいは、リモートセールスの手法があってもいい。ただ、製造現場に携わる人たちの在宅勤務が難しいことは理解できる。

   もちろん、全ての会議をオンラインで済ませるのではなく、数回に1度の割合で意思疎通の観点で対面があってもよい。在宅勤務にしても、週1回くらいは職場に顔出ししてもよいかもしれない。働き方改革が叫ばれながらその改革ぶりが日常の風景として見えてこなかった。表現は適切ではないかもしれないが、コロナ禍がきっかけで動き始めた。

   ここからは想像だ。日本人の働き方の尺度や人事評価も大きく変化していくのではないだろうか。これまでの勤務態度や能率、成果主義から、たとえば、ビジネスに立ちはだかる課題の検証力や、事業展開の巻き込み・推進力、ビジネスマッチィングを企画する発想力などコンピューターでは処理できない、クリエイティブな仕事ぶりが評価される時代になるのかもしれない。むしろ、変化していかなければ日本のビジネスに未来は拓けないかもしれない。

⇒28日(木)朝・金沢の天気     はれ

★不適切な投稿に警告をタグ付け

★不適切な投稿に警告をタグ付け

          今月7日付のブログで紹介したが、11月のアメリカ大統領選挙に向けて、トランブ節がさく裂している。トランプ氏の26日付ツイッター。「There is NO WAY (ZERO!) that Mail-In Ballots will be anything less than substantially fraudulent. Mail boxes will be robbed, ballots will be forged & even illegally printed out & fraudulently signed. ・・・」(郵送による投票が実質的に詐欺的なものではない、なんてことには全くならない。郵便箱は奪われ、投票用紙は偽造され、さらには違法に印刷され、不正に署名される。・・・)

   何のことかと調べると、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(民主党)が新型コロナウイルス対策の一環として郵送投票を採用すると発表した。すると、トランプ氏は大統領は偽造や不正署名など詐欺の可能性があると問題視したのだ。

   BBCニュースWeb版(27日付)で関連記事=写真=が。「Twitter tags Trump tweet with fact-checking warning」(ツイッターがトランプ氏のツイートにファクトチェックの警告をタグ付け)。これも何のことか調べる。ツイッター社はトランプ氏の投稿のうち、郵便投票が不正投票につながると主張した件について、誤った情報や事実の裏付けのない主張と判断し、「Get the facts about mail-in ballots」とタグ付けした(写真下の青文字)。要するに、大統領のツイートと言えども、事実関係が怪しいツイ-トはファクトチェックの警告をします、との意味だ。

   もう一度トランプ氏のツイッタ-に戻って青ラベルを探したが見えない。何度更新しても出てこない。ホームページが日本語で設定あるとラベルが表示されないようだ。

   この青ラベルはもともとは新型コロナウイルスに関するデマ情報への警告としてスタートした。それにしても、さすがツイッターだ。たとえアメリカ大統領であれ、怪しい投稿にはファクトチェックを入れる。その方法を前回のブログで述べた、女子プロレスラーへの誹謗中傷の書き込みなどに適応できないのだろうか。「警告!不適切な表現」と赤ラベルをタグ付けすればいい。すると、誹謗中傷を受け方側は気分的に少しは救われるのではないか。

⇒27日(水)午後・金沢の天気   はれ時々くもり