#コラム

☆「ワード・ポリティクス」の女帝、2期目の難題

☆「ワード・ポリティクス」の女帝、2期目の難題

   選挙の争点は何だったのか。自身は都民ではないが、今回の東京都知事選をメディアを通して観察していて不思議を感じる。何しろ現職、小池百合子氏の得票率は59.7%である。小池氏の場合は2期目なので1期目で掲げた「セーフ・シティ」「ダイバー・シティ」「スマート・シティ」で掲げた27個の公約をどれだけ実行できたか、その評価が選挙の争点だろう。 

   「スマート・シティ」の公約にある「東京をアジアナンバーワン1の国際金融市場として復活。国際金融特区や税優遇を活用し、世界から企業や高度人材を呼び込む。英語による諸手続きが可能な環境を整備」は評価が高い。とくに、中国の国家安全法で揺れる香港の金融機関の移転先として国際的にも注目されている。先見の明があるのかもしれない。一方で、同じ「スマート・シティ」の公約にある「老朽廃棄物処理場の集約」は都議会で議論されたことがあるのだろうか。少なくともネットの検索ではその様子が出てこない。2016年7月の前回は得票率は44.4%だった。今回は15ポイントも増やしているので、総じて前回の公約は信任されたということだろう。

   得票率を15ポイント上げた、もう一つの要因が新型コロナウイルスの感染拡大にともなう数々の記者会見ではなかっただろうか。「クラスター」「オーバーシュート」「ロックダウン」、そして「東京アラート」などのカタカタ用語が会見で次々飛び出した。あえて報道陣の前でお披露目して、メディアが読者・視聴者向けに分かりやすく解説する。それが、都民だけでなく全国の注目を集めた。こうした言葉によって政治を動かすことを「ワード・ポリティクス」、テレビを意識した言葉の政治を「テレ・ポリティクス」と称したりするが、まさにメディアを巧みに利用する政治手腕ではある。

   1期目の当選では「ジャンヌ・ダルク」と自称したが、2期目で「女帝」を座を揺るぎないものにした。問題はこれからだろう。コロナ禍の休業補償に都の貯金とも言える財政調整基金9345億円のほとんどを使い、残りは807億円と言われる。都民の命と健康を守る新型コロナウイルスの感染症対策、築地市場の跡地問題、そして、オリンピック・パラリンピックの縮小開催か、パンデミックの影響でひょっとして返上か中止か、世界の耳目が集まる。これらの難題をどう乗り切るのか。(※写真は「小池百合子公式ホームページ」より)

⇒6日(月)午前・金沢の天気     あめ

★コロナ禍と東京都知事選

★コロナ禍と東京都知事選

   きょうは東京都知事選挙の投開票日だ。立候補者は過去最多の22人。きょう午後3時現在の投票率は23.9%、前回2016年の選挙より3.7ポイント低いとメディア各社が報じている。今回関心があるのは、誰が当選するかというより、開票をどのようにするか、だ。というのも、開票作業は「3密」そのものだ。しかも、このところ連日100人超えの感染者が出ている東京都だ。開票作業も慎重に行われる分、かなり遅れるのではないだろうか。

   開票作業が遅れる原因は3つある。一つは3密を避けるため、作業を行う都の職員は立ち位置の間隔を空ける。1人4平方㍍を確保するとして、職員はこれまで3分の2ほどではないだろうか。もう一つが、ゴム手袋を着用しての作業となるだろう。手袋は紙を扱う作業には向いていない。投票用紙そのものも特殊な素材ですべすべしているので、かなり手間取るのではないだろうか。

   3つ目が「疑問票」の処理だ。投票用紙に書かれた名前が読めなかったり、間違っていたり、関係のないことが記載されていることがある。この疑問票についてはチェックに時間がかかる。とくに、候補者陣営からのいわゆる「開票立会人」が意見を述べることができる仕組みとなっているので、今回のように22人の立候補者がいると立会人の数も多くさまざまな意見を言うことも想定されるので、票の確定まで相当な時間がかかるのではないだろうか。

   話は「当選確実」の報道に移る。おそらく午後8時00分にテレビ各社は一斉に「当確」の選挙速報をテロップで出すだろう。新聞のテレビ欄では、NHK総合は午後7時59分から「都知事選開票速報」として1時間の特番を組んでいる。「出口調査の結果は?夜8時ちょうどに速報」とわざわざ手の内を明かしている。

   それにしても、この表現では適切でないかもしれないが、現職の小池知事=写真は東京都公式ホームページ、3月25日の会見=は波乗りが上手だ。コロナ禍が収束するかに思えたが、東京を中心に第2波が来ている。現状で新人候補に投票する有権者は多くはないだろう。争点は一つ。この事態をはやく収束させてほしい、が都民の願いだろう。仮に投票率が過去最低であったとしても責められることもない。

   小池氏は前回公約として「セーフシティ」「ダイバーシティ」「スマートシティ」を掲げ、元総務大臣の増田寛也氏=自民、公明など推薦=、鳥越俊太郎氏=民進、共産、社民など推薦=と戦って破った。孤軍奮闘のまさに、自ら称した「ジャンヌ・ダルク」のようだった。

⇒5日(日)午後6時00分・金沢の天気     くもり

☆ギャングのマスクから戦う愛国のマスクへ

☆ギャングのマスクから戦う愛国のマスクへ

   新型コロナウイルスの感染拡大でWHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言(1月30日)を発してから157日になる。ジョンズ・ホプキンス大学のコロナ・ダッシュボード(一覧表)の最新版では感染者総数は1118万人、死者数は52万人に上る。中でもアメリカは現在でも増え続け、感染者数283万人、死者数12万人だ。テレビのニュースで報じられるアメリカの様子を視聴していると、WHOの緊急事態宣言が出されたころに比べ、マスク姿が断然多くなっていることに気づく。ウィズコロナの意識改革が浸透しているのだろうか。

   自身はもともとマスクは嫌いなタイプだった。コロナ以前は、マスクをしていると自らが病気をしていると他人に知らせるようなもので、弱々しさを感じさせると思っていた。また、マスクは顔を隠すためのものという印象もあった。 2019年12月30日にレバノンに逃亡したことで物議をかもしたカルロス・ゴーンが昨年3月6日、一回目の保釈で東京拘置所から出てきた姿は、青い帽子に作業服姿、顔の半分以上はマスクで隠していた。保釈金10億円を納付したのだから堂々と出てきて、記者会見をすればよかったのではないか、と。マスクは変装の道具というイメージだった。

   これは憶測だが、アメリカでもおそらくマスクと言えば、強盗ギャングの顔隠し、あるいはアメリカでヒットしたテレビドラマ『ER緊急救命室』の手術室でのマスク姿の医師たちの緊迫したシーンのイメージがあったに違いない。つまり、日常生活とはかけ離れた存在で、抵抗感もあったのではないだろう。

   それが一転、アメリカは1日で感染者が5万人を超える日もあり、外出時のマスク着用を義務化する州や都市が増えている。6月18日に義務化したカリフォルニア州知事は「経済を再開し、人々を仕事に復帰させるためのカリフォルニア州の戦略は、人々が安全に行動し、公衆衛生上の勧告を順守することによって初めて成功する。つまりフェイスカバーを着用し、手を洗い、物理的な距離を置くことが求められる」と述べている(6月18日付・ロイター通信Web版日本語)。コロナ禍と人類の社会活動と経済を共存させるためにマスクは欠かせない、好き嫌いではない義務だと、まるで「人類とコロナの共存のためのマスク宣言」のようだ。(※写真は、5月29日付・BBCニュースWeb版より)

   また、ニューヨーク州知事は「マスクの着用は戦いに参加していることを意味する。着用ほど愛国的なことはない」とツイートした(7月4日付・NHKニュースWeb版)。トランプ大統領も、自らも他の人と近い距離にいる時はマスクを当然着用すると述べた。ただ、マスク着用を全国的に義務化する必要はないとの考えを示している(7月2日付・ロイター通信Web版日本語)同)。もし、マスクが全米で義務化されれば、アメリカのマスクの歴史が塗り替わる。ギャングのマスクから、戦いのための愛国マスクへと。

⇒4日(土)夜・金沢の天気    あめ

★日銀「デジタル円」の可能性へ実証実験も

★日銀「デジタル円」の可能性へ実証実験も

   政府と日銀はアフター・コロナの政策として、2024年に予定している新札発行をデジタル法定通貨へと舵を切るのではないかと憶測する、と5月24日付のブログで書いた。以前から紙幣や硬貨は非衛生的だとの指摘があり、新型コロナウイルスの感染拡大で一気にキャッシュレス化が進んだ。もちろん紙幣や硬貨を粗末にするという意味ではない。キャッシュレス化になじんできた国民もデジタル法定通貨を歓迎するのではないだろうか。

   日本銀行の公式ホームページをチェックするとその段取りが着々と進んでいることが分かる。デジタル法定通貨(Central Bank Digital Currency、以下CBDC)を発行する場合の技術的な課題についてまとめたリポート(報告書)が2日付で掲載されている=写真=。題して『中銀デジタル通貨が現金同等の機能を持つための技術的課題』。

   報告書で特に重視しているのは、誰でも使えるユニバーサル・アクセス(Universal access)の確保だ。現状のデジタル決済はスマホを使うことが浸透しているが、国内のスマホ普及率は2018年時点で65%にとどまっている(総務省「令和元年版 情報通信⽩書」)。スマホを持たない子どもたちやシニア世代は利用できないため、CBDCを受け渡しできるよう専用端末の開発も必要だとしている。

   リポートがもう一つ強調しているのが強靭性(Resilience)だ。日本は地震や津波、台風、大雨といった自然災害が多く、通信や電源が確保できなくなる状態ではスマホも使えなくなるので、オフラインの環境でもCBDCを受け渡しできる機能の確保が必要だとしている。たとえば、送金先や金額などの情報を暗号技術を使ってスマホのアプリなどで記号や番号にして、受け取る人に口頭で伝える仕組みなどを示している。

        ⽇銀としては、「現時点で発行する計画はない」としているが、今後、実証実験を行う予定でリポートの最後をこう締めくくっている。「技術⾯からみた実現可能性(フィージビリティ)を確認していくとともに、海外中銀や内外の関係諸機関と連携をとりながら、CBDC に関して検討を進めていく⽅針である」

   CBDCをめぐっては、中国が「デジタル人民元」の準備を進めている。アメリカのFRB(連邦準備理事会)も独自研究を進める。また、フェイスブックが独自にデジタル通貨「リブラ」の構想を打ち上げている。

⇒3日(金)午後・金沢の天気   くもり時々あめ

☆ソ連崩壊から29年、米中対立の新展開

☆ソ連崩壊から29年、米中対立の新展開

   1991年にソビエト連邦の崩壊のドラマをメディアを通して見ることができた。8月に当時のゴルバチョフ大統領側近がクーデタを起し、民衆の反撃で失敗。これでソ連共産党の活動が全面禁止となり、共産党は事実上解体となる。12月にゴルバチョフ大統領が辞し、ソ連を構成していた各共和国が主権国家として独立した。中学の歴史教科書にも出ていた、1917年のロシア革命で成立したソ連の崩壊だった。

   では、アメリカはどう見ていたのだろうか。「自由、民主、資本主義」の権化であるアメリカの為政者も国民もマルクス・レーニン主義は必ず崩壊する、中国共産党も時間の問題だと思っていたのではないだろうか。当時の鄧小平が改革開放を進めれば、社会主義市場経済はそのうち資本主義へと変化するだろう、と。

   しかし、中国経済は「世界の工場」と呼ばれるまでに成長し、2001年にはWTOに加盟、2010年にはGDPで日本を追い抜いて世界第2位となる。さらに、製造大国としてだけではなく、巨大な消費市場としての役割を担うまでになる。その一方で、現在でも、共産党や政府の機関に勤める党員に対し、家族を含むプライベートの時間に習近平総書記の地位をおとしめる悪口や、批判的なウェブサイトの閲覧を禁じている(6月26日付・共同通信Web版)。香港では国家安全維持法に抗議する民衆デモで370人が逮捕され、うち10人に「香港独立」の旗を所持していたとして国安法違反が初めて適用された(7月2日付・同)。

   この状況をアメリカはどう読んでいるのか。トランプ大統領の対中国戦略はディール(取引)だ。貿易相手国に脅しをちらつかせ、交渉で譲歩を迫る。ところが、「自由、民主」といった旗印がこれまで見えなかった。国内では、黒人男性が首を押さえられて死亡した事件で全米で抗議デモが相次いでいる。

   けさのニュースで、アメリカ下院は1日、香港の自治抑圧に関与した高官や組織、金融機関に対し、アメリカ政府が制裁を科すことを定めた香港自治法案を全会一致で可決した。ポンペオ国務長官は記者会見で、同盟・友好国を念頭に対中包囲網の形成を急ぐ方針を示した。1997年の香港返還後も中国本土より優遇してきた措置の廃止を進める考えを改めて強調した(7月2日付・共同通信)。

   11月のアメリカ大統領選挙をにらんでの対中制裁法案であることは間違いない。アメリカと中国の全面対決が明確になってきた。中国はその包囲網の切り崩しに全力でかかるだろう。ソ連崩壊から29年、マルクス・レーニン主義と自由・民主・資本主義との対立が再現するのか、目が離せない。そして、日本は。

⇒2日(木)午前・金沢の天気    くもり時々あめ

★「マイバッグ」と「マスク」の両立問題

★「マイバッグ」と「マスク」の両立問題

   きょうからレジ袋の有料化が始まった。午前中、コンビニに入ろうとしてマイバックを忘れたことに気がついた。有料化のこの日に備え、コンビニ用の小さめのバックを用意していた。レジ袋を買い求めるか迷った。というのも、コンビニ弁当などを入れたレジ袋を持って職場に入れば、おそらく目線が注がれるだろう。「エコに関心がない人」と。マスクを着けずに職場に入ると感じる目線と同じではないだろうか。入ろうとしたコンビニの入り口に「プラスチック削減に向けて、マイバックのご利用をお願いします」と横断幕=写真=が掲げてあり、これにも気が引けて結局、何も買わず車に戻った。

   きのう(6月30日)ブログでレジ袋の有料化について書いた。メディア各社がどのように取り上げているかチェックしていて、気づいたことが一つある。新聞メディアは「マイバック」と表現し、テレビメディアは「エコバック」と称している局が多い。持参しましょうとの意味を込めているのが「マイバック」で、エコロジーに役立ちますよと意義を強調しているのが「エコバッグ」、ということだろうか。で、このブログではどうするか迷ったが、日常言葉で使っている「マイバッグ」とすることにした。

   そのマイバッグと新型コロナウイルスの関係性がよくない。随分前から近くのスーパーではマイバッグを持参して買い物をしてきた。レジで精算するときにマイバッグを出すと、店員が商品をダイレクトにバッグに入れてくれた。この便利さもあり、マイバッグを持参していた。

   様相が変わったのは、4月16日に感染防止対策として緊急事態宣言が全国拡大し、「特定警戒県」に石川が指定されたころだ。この頃から、マイバッグに買ったものを店員が入れてくれなくなった。「ご自身で入れてください」と。マイバッグは使い回すのでウイルス感染リスクが高く、店員は触れない、というわけだ。

   けさのNHKニュースで、アメリカやヨーロッパでレジ袋を無料で提供する動きが広がっていると伝えていた。アメリカ・カリフォルニア州は2016年、全米で最も早く小売店などでのプラスチック製レジ袋の無料提供を禁止し、再利用可能な袋や紙袋を10セント(日本円で10円余り)で販売する有料化の法律を導入した。ところが、客が持ち込むマイバッグで店員が感染するおそれが高まるなどとして、ことし4月、レジ袋などを無料とした。また、サンフランシスコでは客が再利用できるバッグやマグカップなどを店に持ち込むことそのものを禁じる行政命令を出した(7月1日付・NHKニュースWeb版)。

   レジ袋、つまりプラスチックの利用を減らすべきだという考えが日本でも根づき、法律上でも施行が始まったタイミングだけに、「マイバッグ先進国」欧米での逆行するトレンドには違和感がある。店員がマイバッグに触れなければよいだけのことで、コロナ感染をそこまで優先させるのは、神経質になりすぎではないか、と。ただ、マスク(ウィズコロナ)とマイバック(エコロジー)をどう両立させるか知恵出しする絶好の事例ではある。

⇒1日(水)正午・金沢の天気    くもり

☆脱レジ袋の「新しい生活様式」

☆脱レジ袋の「新しい生活様式」

   あすから1日からレジ袋の有料化が義務づけられる。大手コンビニでは1枚3円の有料レジ袋とするようだ=写真・上=。マイクロプラスチックによる海洋汚染の問題に対処するためだが、率直に思うことは、レジ袋の有料化より、買い物を行う際にマイバッグ(布製、紙製など)の使用を国民に義務づけしてはどうか。有料化しないとレジ袋の削減が出来ないということは、逆に言えば、多くの人々がこの環境問題の深刻な状態を把握していない、ということになる。その現場を見てほしい。

   能登半島の尖端、珠洲市には塩田村がある。「揚げ浜式塩田」と呼ばれ、400年の伝統を受け継いでいる。浜で海水を汲んで塩田まで人力で運ぶ。今では動力ポンプで海水を揚げている製塩業者もいるが、かたくなに伝統の製法を守る浜士(はまじ=塩づくりに携わる人)もいる。ひとにぎりの塩をつくるために、浜士は雨が降らないかと空を眺め、海水を汲み、知恵を絞り汗して、釜で火を燃やし続ける。機械化のモノづくりに慣れた現代人が忘れた、愚直な労働の姿でもある=写真・中=。ここに、マイクロプラスチック問題が押し寄せている。

   製塩業者は海水にマイクロプラスチックが含まれていないか定期的に検査し、さらに、汲み上げた海水を5ミクロンと1ミクロンのフィルターのろ過装置に通し、マイクロプラスチックをはじめとするあらゆる固形物を除去した海水で伝統的な製塩作業を行っている。もし、これを行わなず、プラスチックの微細なかけらが商品から見つかったら大問題になる。マイクロプラスチック問題の川下で行われている涙ぐましいほどの努力だ。

   話は戻る。レジ袋だけがマイクロプラスチック問題を発生させているのではない。自分自身を含めた雪国の住民の問題でもある。道路などの除雪の際に使うスコップはさじ部がプラスチックなど樹脂製が多い。少し前までは鉄製やアルミ製だったが、今はスコップの軽量化とともにプラスチックが主流なのだ。除雪する路面はコンクリートやアスファルトなので、そこをスコップですかすとプラスチック樹脂が摩耗する=写真・下=。微細な破片は側溝を通じて川に流れ、海に出て漂うことになる。一部には製品化されたものもあるが、スコップのさじ部分の尖端を金属にすることで解決される。これを法令で措置すべきではないだろうか。

   粉々に砕けたプラスチックが海を漂い、海中の有害物質を濃縮させる。とくに、油に溶けやすいPCB(ポリ塩化ビフェニール)などの有害物質を表面に吸着させる働きを持っているとされる。そのマイクロプラスチックを小魚が体内に取り込み、さらに小魚を食べる魚に有害物質が蓄積される。食物連鎖で最後に人が魚を獲って食べる。

   レジ袋にしても、プラスチックのスコップにしても日常での環境問題である。人類の知恵、合意として、マイバッグなどは義務化すべきではないだろうか。新型コロナウイルスで培った「新しい生活様式」の発想を環境問題へと展開するチャンスかもしれない。

⇒30日(火)午前・金沢の天気    あめ

★「ブラックスワン」の悪夢は尽きぬ

★「ブラックスワン」の悪夢は尽きぬ

   「ブラックスワン(black swan)」という言葉が金融業界の用語にある。確率論や従来の知識や経験からは予測できない極端な事象が発生し、それが人々に多大な影響を与えることを指す(SMBC日興証券公式ホ-ムページ)。この言葉を最近知って、日常生活や日本にとってブラックスワンとは何かと考えるようになった。

   日本海側に住んでいるとどうしても考えてしまうのが、北朝鮮をめぐる情勢だ。南北首脳会談の「板門店宣言」で建設された北南連絡事務所が今月16日に爆破され、世界に衝撃が走った。アメリカと北朝鮮の首脳会談もこれまで3回開かれたが、成果は得られなかった。こうなると、トランプ大統領が2017年の9月の国連総会の演説で金正恩党委員長を「ロケットマン」と呼んだあのころに戻るのではないか、との危惧する。

   そうなると北朝鮮への斬首作戦が現実味を帯びる。斬首作戦は金委員長へのピンポイント攻撃のこと。アメリカによる斬首作戦で知られるのがオバマ政権下で実行された、オサマ・ビン・ラディンに対して行った2011年5月2日のバキスタンでの攻撃だ。もし斬首作戦が現実になれば、大量の北朝鮮の難民が船に乗ってやってくるだろう。ガソリンが切れたり、エンジンが止まった船の一部はリマン海流に乗って能登半島などに漂着する。無事漂着したとして大量の難民をどう受け入れるのか、武装難民だっているだろう。まさにブラックスワンだ。

   ブラックスワンを招くのは異常気象かもしれない。6月に入ってから、日本各地で集中豪雨による洪水が発生している。中国でも長江上流で大規模な水害が発生し、中流域の湖北省宜昌市にある世界最大の水力発電ダム「三峡ダム」が決壊する恐れが出ている、と指摘する専門家もいる(6月29日付・ニューズウイーク日本語版)。想像を絶する被害だろう。

   現実となったブラックスワンは新型コロナウイルスの災禍だろう。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のコロナ・ダッシュボード(一覧表)の29日の最新版によると、感染者は1017万人、死者は50万人を超えた。ことし1月に全世界でいちはやく感染者情報を公開した同大学だが、これほどのパンデミックになると予想していただろうか。日本でも先月25日に緊急事態宣言が全面解除されたにもかかわらず、きょう東京都では58人の感染が確認され、これで4日連続で50人超えだ。コロナ二波が始まっているのではないか。

   新型コロナウイルスによる感染も怖いが、最近、日本列島の各地で頻発している地震も、大地震の予兆ではないかと不安心理に陥る。今月25日にも千葉県北東部で震度5弱であったほか、九州や中部、関東、東北、北海道で震度3から4の揺れが続いている(気象庁公式ホームページ「地震速報」)。身の回りでも3月13日に能登半島の輪島で震度5強、金沢で震度3の揺れがあった。神経が少々過敏になっているのかもしれない。

⇒29日(月)夜・金沢の天気     くもり

☆ドラッグストア「わが世の春」の争い

☆ドラッグストア「わが世の春」の争い

   その発言が何かとニュースになる石川県の谷本知事が5月28日にドラッグストアチェーンの社長と面会した際、「ドラッグストアはわが世の春でしょう」と発言したことが、新型コロナウイルスの感染拡大がまだ治まらないこの時期に不適切と全国ニュースにもなった。知事はその後の記者会見で「適当でなかった。反省している」と述べた。ただ、知事の発言は事実無根ではない。

   多くの企業の業績が総崩れといわれる中で、ドラッグストア業界の業績は順調だ。石川県に本社がある東証一部のドラックストアチェーンのA社の株価は新型コロナウイルスに対する政府の緊急事態宣言(4月7日)から2000円余りも上昇している。最近よく目にするようになったのが新規開店のラッシュだ、県内に73店舗を構えるA社のほかに37店舗のG社(本社・福井県)、19店舗のU社(同・東京都)と乱立気味だ。

   さらに愛知県に本社を置くS社が今年に入って金沢に3店舗を開設した。2024年2月までに北陸で一気に100店舗を計画している(S社公式ホームページ)。S社は店舗数だけでなく、店舗の多様化を強調している。「クリニック併設型店舗の出店や、地域の在宅医療における訪問調剤サービスなど、北陸エリアの地域医療振興にも貢献してまいります」(同)と。

   ドラッグストアチェーンのこうした強気の経営戦略は超高齢化社会を迎えるマーケットの主導権を握る発想かもしれない。S社の戦略通り、高齢化社会のニーズをビジネスに結びつける対応力と多様性がこの業界にはある。ドラッグストアとスーパ-、ドラッグストアと介護・診療施設の併設、あるいはドラッグストアと家族葬を中心とした葬儀場もあるかもしれない。

   実際に石川県庁近くの金沢1号店を見学に行ってきた=写真=。立地では石川県立中央病院と近い。店舗の中に、調剤部門と介護の相談を受け付ける介護ステーションを併設している。建物内で内科クリニックも計画しているようだ(同)。何より挑戦的だと感じたのは、A社の店舗と150㍍くらいの距離にあることだった。地域を絞って集中的に出店する戦略で、域内の市場占有率を一気に高めるドミナント展開をS社は狙っているのだろう。

   A社とS社の店舗は県庁のすぐ近くにある。このシェア争奪の現場を間近に見て、おそらく知事も実感していたのかもしれない。「ドラッグストア業界はわが世の春、だから争いもし烈になる」と。        

⇒28日(日)午後・金沢の天気   くもり時々はれ

★テレビ視聴の「オーダーメイド化」時代

★テレビ視聴の「オーダーメイド化」時代

   気になったニュース。NHKの放送だけ映らないように加工したテレビを購入した東京都内の女性が、NHKと受信契約を結ぶ義務がないことの確認を求めた訴訟の判決で、東京地裁は26日、請求を認めた(27日付・共同通信Web版)。NHKの受信契約をめぐる訴訟は各地で起きているが、ほとんどがNHK側に軍配が上がっている。久しぶりに視聴者側の勝ちではないだろうか。

   最近の判決で印象的なのは、「ワンセグ訴訟」だ。自宅にテレビを置かず、ワンセグ機能付きスマホやカーナビの場合でも、NHKと受信契約を結ぶ義務があるかどうかの訴訟が相次いでいた。2019年3月、最高裁は契約義務があるとして原告側の上告を退ける決定をした。NHK側の勝訴とした東京高裁の判決が確定した。

   そもそもこれまでなぜ訴訟が相次いだのか。放送法そのものが不備が原因だ。放送法では「(日本放送)協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」(放送法64条1項)とある。スマホは持つものであって、設置ではない。常識で考えれば、誰しもがそう思う。今でもスマホでもPCでもタブレットでも視聴できる時代だ。ところが、放送法は制定された1950年のテレビの法律なのだ。東京高裁の判決では「受信設備の設置には携行することも含まれる」と判断したが、これは言葉の勝手解釈だろう。法律の文言を変えればよいだけの話である。

   今回26日の判決はある意味で画期的だ。NHKだけを受信不能とするフィルターをテレビとアンテナの間に取り付ける。つまり、NHKの周波数帯をカットする仕組みだ。裁判で、NHK側は電波を増幅するブースターを取り付けたり、工具を使って復元すれば、放送を受信できると主張した。これに対し、裁判長は女性の設置したテレビを「NHKを受信できる設備とは言えない」「ブースターがなければ映らないのであれば契約義務はない」と退けた。

   「ウィキペディア」によると、NHKの周波数帯を減衰するフィルターを開発したのは筑波大学の映像メディア工学の研究者だ。訴訟を起こした女性はこの研究者からフィルターを組み込みんだテレビを直接購入した。NHKや民放にかかわらず、視聴したくない放送を見ないようにするという発想から、見たくないテレビを見れないようにテレビそものにフィルターをかけるという視聴者ニーズが起きるのではないだろうか。まさにテレビのオーダーメイド化だ。今回の判決をきっかけに新しい商品として開発が進む、と予感する。

⇒27日(土)夜・金沢の天気   くもり