#コラム

☆ブログで描いた「安倍総理」の14年~上

☆ブログで描いた「安倍総理」の14年~上

   安倍総理の辞任表明(28日)は各方面、国内外に衝撃が広がった。翌日朝刊の一面は白抜きベタの見出しでその衝撃の大きさを物語っている。安倍氏の今の心の境地はどうだろうか。このブログでも意外と安倍氏を取り上げている。写真付きで初めて登場したのは2006年7月6日付だった。以下、安倍氏の14年をブログを採録して振り返ってみる。

  総理誕生の背景、レームダック化、そして第二次内閣へ

【2006年7月6日付「★続・天を仰いで唾する」】 今回の北朝鮮のミサイル発射でマスメディアでの露出が格段に多くなったのが安倍晋三官房長官だ。安倍氏は5日午前4時30分ごろ、首相官邸に一番乗りだった。内閣のスポークスマンとしてこの日は4回の記者会見に臨み、北を強く批判する声明を発表した。その毅然とした物言いの映像や、口をヘの字に閉ざした写真がマスメディアに頻繁に登場することになる。マスメディアが番組や紙面で緊張感を演出するには「安倍」は欠かせない素材となっているのである。

  言いたいことは一つ。自民党は5日の党総裁選管理委で、小泉総理の任期満了に伴う総裁選を「9月8日告示、20日投票」と決めた。告示まであと2カ月。ミサイル発射の衝撃は今後、国連安保理での北朝鮮非難決議の採択や経済制裁などをめぐり2カ月は持つだろう。ということは、総裁選レースは安倍氏がこのまま走り込んでゴールとなる。10月上旬には首班指名選挙、続く組閣と政治日程は組み立てられていく。

【2006年9月26日付「★新米2題」】 新しい総理の安倍晋三氏が就任後初めて記者会見する様子が26日夜、テレビでライブ中継されていた。財政再建の模範を示すため自らの給与の3割、閣僚の給与の1割をカットすることを明らかにした。国家公務員の給与をばっさり落としていくと宣言したとも取れる内容だった。

  3割給与カットは並大抵の決意ではない。発表した組閣内容と会見内容を自分なりに読み解くと、内政的には、公務員改革、財政の見直し、社会保険庁の民営化、地方のリストラと裏腹の道州制への移行などがキーワードになろう。つまり、小泉政権を継承し、外交と防衛のみを担当する「小さな政府」を目指すと言葉に濃く滲ませた。52歳、新米の総理の手腕は未知数だ。

【2007年7月29日付「☆静かなる大衆の反逆」】 さて、安倍政権のレームダック化は避けられない。参院での与野党逆転に成功した民主が参院議長と主要な常任委員長を取りるだろう。さらに、野党が首相問責決議案を提出すれば可決されるのは確実だ。法的拘束力はないとはいえ政治的には重い決議で、首相は総辞職か衆院解散の二者択一を余儀なくされる展開も読めてくる。安倍政権は年内まで持つか、どうか。

【2012年12月26日付「★2012ミサ・ソレニムス~3」】 さて、その総選挙を振り返る。自民が圧勝したのは、民主が経済対策を重視してこなかったからだ、との論調が目立っている。選挙後に株価が1万円台を回復し、円レートも84円台になったとか、日銀が国債など資産買い入れ基金の10兆円増額を決め、前年比上昇率2%のインフレ目標も次回の決定会合で検討するなど、自民の安倍総裁が求めに「満額回答」で答えたなどのメディアの報道が目立つようになった。

 12党1500人余りの候補者による総選挙は戦国時代か、関ヶ原の戦いのように、いくつもの合戦が同時に繰り広げられた観がある。では、本当の争点は何だったのだろうか、経済対策か原発か、外交か。朝日新聞が選挙前の12月14日付で掲載した世論調査で、投票先を決めるとき最も重視するのは何かを3択で尋ねている。それの回答では、「景気対策」61%が、「原発の問題」16%、「外交・安全保障」15%を大きく引き離していた。今夜、第二次安倍内閣が誕生する。

⇒30日(日)朝・金沢の天気    はれ          

★辞任表明、安倍総理のレガシーは何だ

★辞任表明、安倍総理のレガシーは何だ

   安倍総理の記者会見をきのう28日午後5時からのNHKテレビで視聴していた=写真=。8月上旬に持病の潰瘍性大腸炎の再発が確認され、安倍氏は「体力が万全でない中で政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはならない。総理の職を辞することにした」と述べ、辞任を表明した。拉致問題も憲法改正も北方領土もどれも道筋をつけられないままでの辞任表明。まさに断腸の思いだったに違いない。 

           会見ではいつも使っているプロンプターを今回使っていなかった。ということはコメントは会見直前まで練られていた。あるいは、予定していたコメントを直前になって大幅に書き換えた、のどちらかだろう。側近が辞任表明を知らなかったとのコメントを会見後に寄せているので、おそらく後者だろう。

   印象に残ったはコメントは拉致問題についてだった。安倍氏は2002年9月に当時の小泉総理が電撃的に北朝鮮を訪朝した際、官房副長官として同行している。「私がずっと取り組んできて、さまざまな可能性とアプローチで全力を尽くしてきた」「拉致問題はかつては日本しか主張していなかったが、国際的に認識され、トランプ大統領が金正恩委員長との会談でこの問題について言及した。習近平国家主席や、文在寅大統領も言及したが、今までになかったことだ」と述べた。

   しかし、この18年間の外交の成果は出ていない。「結果が出ていない中で、拉致被害者のご家族が一人、一人と亡くなられ、私にとっては痛恨の極みだ。何かほかに方法があるのではないかと常に思いながら、考えうるあらゆる手段を取ってきたことは申し上げたい」と無念の表情を浮かべた。

   会見では、記者が地方創生の取り組みへの自己評価について尋ねた。これに対し、安倍氏は「東京への人口集中のスピードを相当鈍らせることができた。地方にチャンスがあると思う若い人たちが出てきた」と。ただ、それは新型コロナウイルス感染拡大の影響でもあると認めた。「テレワークが進むと同時に、地方の魅力が見直されている。今回の感染症が、日本列島の姿や国土のあり方を根本的に変えていく可能性もあるだろう。ポストコロナの社会像を見据えて、こうした変化を生かしていきたい」と述べていた。

   また、記者からは「総理のレガシーは何だと思いますか」と問われた。この場合のレガシー(legacy)は後世に伝える業績と解釈する。安倍氏は「7年8ヵ月前に政権が発足した際に『東北の復興なくして日本の再生なし』と取り組んできた」「20年続いたデフレに3本の矢で挑み、400万人を超える雇用をつくり出すことができた」「助け合う日米同盟は強固なものとなり、アメリカ大統領の広島訪問が実現できた」と強調した。

   ただ、政治家の業績はそう簡単に評価されるものではない。政治はその後も変化し続けるからだ。安倍氏のレガシ-が後世の教科書に掲載されるとすれば、おそらく通算在職日数が、戦前の桂太郎(2886日)を上回り、憲政史上の「最長の総理」という評価ではないだろうか。政策としては、消費税を2回(2014年に8%、19年に10%)上げた「増税の総理」かもしれない。

⇒29日(土)朝・金沢の天気    はれ   

☆「勝手にイノベーション」

☆「勝手にイノベーション」

   「Beyond Corona LIVE」というネットでの生中継番組がきょう金沢大学発で正午から始まった。午後8時までのぶっ続け8時間のライブだ。「コロナ時代の『今』を『生きる』人に向けたライブ放送」がテーマだ。総合プロデューサーは松島大輔教授。学生たちがスタジオ設営から司会などに参画していて、現場をのぞくと、テレビ局のスタジオの雰囲気だ=写真=。午後1時20分現在で121人が視聴参加している。

   このネット動画を見ていると、「DX」という言葉が浮かぶ。「Digital Transformation」。デジタル技術を使いこなして、学生たちが可能性にチャレンジしている。松島教授のかつての職場でもあったタイ政府の産業担当と会話を交わしながら、学生たちが石川県の企業紹介などを試みている。国境を超えた情報交換でタイにとって企業誘致につながったり、企業にとってタイでの拠点構築につながっていくとしたら、まさに「デジタル変革」ではないだろうか。大人のセースルではない、学生たちがインターンシップで学んだ企業を紹介することで、学生たちが夢見るビジネスの可能性が見えてくるのだ。

   松島教授がライブ中継企画を学生たちに提案し、学部を超えた多数の学生たちが乗ってきた。実は教授にはゼミ生はいない。というのも、来年度から募集を開始する「先導科学類」という新しい学科の教授なのだ。「先導科学」という聞き慣れない言葉だが、理系と文系を融合させ、問題設定と解決能力を養う、そして社会を変革する人材を育てることをコンセプトした学科だ。教授にひと言で表現するとどうなりますか、と問うと。松島氏は「勝手にイノベーションですね」と。思わず笑った。

   確かに、これからの時代はさらに複雑化し多様化する未来の課題に向き合わなければならない。コロナ禍でさらに複雑化するだろう。そんな時代に、まったく新しい手法でイノベーションを起こす人材が必要だろう。これまでの大学の教育目的は学問へのキャッチアップだった。そんな型にはまった教育はもう通用しない。時代のニーズは、まったく新しい手法で社会課題と向き合う、「勝手にイノベーション」だろう。

⇒28日(金)午後・金沢の天気    はれ時々くもり

★黒人差別報道と事件のファクトチェック

★黒人差別報道と事件のファクトチェック

   テニスの大坂なおみ選手が、アメリカのウィスコンシン州で黒人の男性が警察官に背後から撃たれた事件(8月23日)に抗議して、27日に出場予定だった全米オープンの前哨戦であるツアー大会の準決勝のボイコットを表明したと報じられている(8月27日付・NHKニュースWeb版)。大坂選手は自身のツイッターで「私はアスリートになる前は黒人女性です」「黒人に起こった権利剥奪、全身性人種差別、その他の数えきれないほどの怪物は、私の胃を病気にさせます」とコメントしている。また、NBA=アメリカプロバスケットボールの八村塁選手も、一連の抗議デモの発端となったミネソタ州で黒人男性が白人の警察官に首を押さえつけられて死亡した事件(ことし5月25日)で抗議デモに参加している。黒人差別の抗議活動はスポーツ界に広がっている。

   抗議活動は日本のメディアでもよく紹介されるが、記事を読んでいて、警察官が黒人をどのような罪があって取り押さえ、それが死亡につながったのかという事実関係が伝わってこないのだ。ウィスコンシン州の事件では、黒人男性に「性的暴行と家庭内暴力の容疑で逮捕状が出ていた」(8月25日付・BBCニュースWeb版日本語)と書かれている。なぜ警察官が取り囲んで発砲したのか詳しい記述がない。ネットでの関連の動画を見る限りでは、警察官を振り切った男性が車ドアを開けて乗り込もうと身をかがめた男性を背後から撃っている。身をかがめた男性が車の座席に置いていたピストルを取ろうとしたので警察官が撃ったのではないだろうかと自身は憶測した。

   ミネソタ州で白人警官に逮捕される際に暴行を受けて死亡した事件も当初、警察官が男性を捕捉した理由が分からなった。6月10日に黒人男性の弟がアメリカ下院司法委員会の公聴会に出席し、20㌦の偽札を利用してたばこを買おうとして通報され、警察に取り押さえられたと証言(6月11日付・ ロイター通信Web版日本語)したことで、その理由が分かった。弟は「兄は誰も傷つけなかった。20㌦のために命を落とす必要はなかった。黒人の命は20㌦の価値しかないのだろうか。今は2020年だ。こうしたことはもう終わりにしてほしい」と訴えた(同)。が、その偽札は単独犯なのか、あるいは背後にマフィアなどの組織があるのか、踏み込んだ記事掲載を見たことがない。

   警察官が犯罪を取り締まる行為の一環として取り押さえるというのであれば問題ではない。ただ、黒人を取り締まる行為そのものが不当な差別的な行為だと読める論調が多い。メディアは黒人の抗議デモが起きたという事実を先行してニュースとしているからだ。これでは視聴者や読者は冷静な判断ができない。メディアが対立の構図をつくっているようなものだ。

⇒27日(木)夜・金沢の天気      くもり  

☆同時多発テロとポリティカル・コレクトネス

☆同時多発テロとポリティカル・コレクトネス

          「9・11」から間もなく19年になる。2001年9月11日、現地時間で午前8時46分、日本時間で午後9時46分だった。当時帰宅して、報道番組「ニュースステーション」が始まったばかりの同9時55分ごろにリモコンを入れると、ニューヨ-ク・マンハッタンの高層ビル「ワールドトレードセンター」に民間航空機が追突する事故があったと生中継で放送されていた。食事を取りながら視聴していると、2機目が同じワールドトレードセンターの別棟に突っ込んできた。リアルタイムの映像で衝撃的だった。

   「9・11」をきっかけにアメリカ国民、とくに白人層の深層心理に変化が起き始めたのではないかと考えることある。そのシンボリックな現象の一つが2016年の大統領選挙でのトランプ氏の当選ではなかったか。トランプ氏は「メキシコとの国境に壁を建設」や「不法移民の流入に反対」、「イスラム教徒に対する入国の一時禁止」などを公約に掲げていた。同時多発テロはイスラム過激派「アルカイダ」による犯行だったので、有権者の支持を得るための公約だろうと当時思ったが、そのような単純なことではないようだ。

   1862年9月、大統領のエイブラハム・リンカーンが奴隷解放宣言を発して以来、自由と平等、民主主義という共通価値を創り上げる先頭に立ってきた。戦後、ソ連や北ベトナムなど共産圏との対立軸を構築できたのは資本主義という価値ではなく、自由と平等、民主主義という共通価値だった。冷戦終結後も、共通価値はマイノリティや社会的弱者の立場に立ち、人種や宗教、性別などに対する寛容さへと深化した。アメリカ社会では、こうした共通価値を創ることを政治・社会における規範(ポリティカル・コレクトネス=Political Correctness)と呼んで自負してきた。

   ところが、同時多発テロをきっかけに、誰もが自由と平等だが、それが誰かの犠牲に上に成り立っているとすれば、それは偽善ではないか、とアメリカ国民、とくにポリティカル・コレクトネスを担ってきた白人層が考え始めた。ポリティカル・コレクトネスは社会規範だが、同時に本音が言えない閉塞感から、窮屈さや疲れを感じさせる。犠牲になっているのはわれわれだ、と。2003年にアメリカを中心とする有志連合が始めたイラク戦争は大量破壊兵器の廃絶を名目とした軍事介入とされた。そこには自由と平等、民主主義という共通価値はすでになかった。そして、トランプ氏はあえてポリティカル・コレクトネスの概念からかけ離れた公約を打ち立て、白人層から支持を得て当選した背景も同様ではなかった、か。

   では、ポリティカル・コレクトネスの犠牲の矛先は、次はどこに向かっていくのか。11月の大統領選なのか。あるいは、対立を深めている中国なのか。

⇒26日(水)午後・金沢の天気     はれ

★アメリカ大統領選挙とSNSの確執

★アメリカ大統領選挙とSNSの確執

   SNSのすごさを感じたのは、ある意味でトランプ大統領だった。ツイッターによる攻撃、いわゆる「ツイ撃」で名をはせた。2017年1月の大統領就任前からゼネラル・モーターズ社やロッキード社、ボーイング社などに対し、雇用創出のために自国で製造を行えと攻撃的な「つぶやき」を連発した。ホワイトハウスでの記者会見ではなく、次期大統領がツイッターの140文字で企業に一方的な要望を伝えるという前代未聞のやり方だった。

   大統領就任から今でも昼夜を問わず発信し続けている。世界を驚かせたのは、2019年6月30日の米朝首脳会談だった。トランプ氏のツイッターがきっかけだった。G20サミットで大阪に滞在していたトランプ氏が6月29日付のツイッター=写真・上=で、「もし金正恩委員長がこれを見ているなら、非武装地帯(DMZ)で握手してあいさつする用意がある!」。翌日それが板門店で実現した。両氏がツイッターのユーザーだったから実現した外交と賞賛され、「世界最大のオフ会だ」などと国際的なニュースとして流れた。両者は会談ではなく面会との位置づけだ。

   このところ、SNSとトランプ氏の関係性が良くない。ことし8月6日にツイッター社はトランプ陣営のアカウント「@teamtrump」による投稿を一時的に禁止した。新型コロナウイルスに関連して、トランプ氏が「子どもはこの感染症に対してほぼ免疫がある」と発言したトランプ氏のFOXニュースのインタビュー映像が投稿され、同社は害を及ぼす恐れのあるウイルス関連の偽情報に相当するとして削除した。フェイスブックも同様な措置をした(8月7日付・BloombergニュースWeb版日本語)。

   それに以前の7月28日にもトランプ氏がリツイートした「新型コロナウイルスには治療法がある」と主張する映像投稿について、ツイッター社は内容に誤りがあるとして削除している(7月29日付・NHKニュースWeb版)。映像では、トランプ氏が自ら服用を公表したマラリアの治療薬について、服用を勧める内容があり、ツイッター社は「投稿に関する規約に反する」として削除した(同)。

   この背景には、トランプ氏とSNSとの確執がある。トランプ氏はSNS企業などを保護する法律を撤廃するか効力を弱める法律を導入すると表明し、ことし5月28日に大統領令に署名している(5月28日付・ロイター通信Web版日本語)。同26日にツイッター社がトランプ氏の郵便投票に関するツイートが誤解を招くとして、読者にファクトチェック(真偽確認)を促す警告マークを表示したことに対し、トランプ氏は言論の自由への弾圧として反発していた。

   アメリカのSNS企業は通信品位法(CDA:the Communications Decency Act )230条に基づき、利用者の投稿内容について免責されるという法的保護を受けている。つまり、SNS企業は、基本的には違法な投稿を掲載したことの責任を問われない、その一方で、ヘイトスピーチなどのコンテンツは独自にファクトチェックの規定を設けて規制している。大統領署名は行われたものの、今のところ具体的な規制はない。単なる脅しの署名だったのか。 

   ツイッター社がトランプ氏のツイートをチェックして事実確認を求める立場に置かれている。ところが、トランプ氏にすれば、政治はディール(取引)の世界で、SNSはその一つの道具に過ぎない。11月の大統領選が本格的に始まれば、対立候補を誹謗中傷するネガティブ・キャンペーンがヒートアップする。2016年の大統領選では、クリントン陣営は「トランプはKKK(白人至上主義団体クー・クラックス・クラン)と組んでいる」とキャンペーンを張り、トランプ陣営は「クリントンは錬金術師だ」と映画までつくり相手陣営を激しく攻撃した=写真・下=。アメリカの選挙風土は​相手の落ち度を徹底的に責める、まさにデスマッチではある。

   このデスマッチ化する大統領選挙で、ツイッター社などのSNS企業のファクトチェック方針はどこまで通用するのか。熾烈な選挙風土の中では単なる「きれいごと」と有権者から無視されるのか。あるいはSNSがこうした選挙風土を変革するのか。SNS時代におけるアメリカ大統領選挙の見どころのポイントではある。

⇒25日(火)夜・金沢の天気      はれ

☆コロナ禍がもたらす「天気晴朗なれど波高し」

☆コロナ禍がもたらす「天気晴朗なれど波高し」

   この人は「パンデミック教」の教祖になったのかもしれない。WHOの公式ホームページをチェックして、今月21日の記者会見の冒頭で話したテドロス事務局長=写真=のコメントを読むと、そんな雰囲気だ。

       「Throughout history, outbreaks and pandemics have changed economies and societies. This one will be no different. 」(歴史を通じて、集団発生とパンデミックは経済と社会を変えてきました。今回も同じです)、「The pandemic has given us a glimpse of our world as it could be: cleaner skies and rivers.」(パンデミックによって、私たちの世界が一目でわかるようになりました。きれいな空と川です)

   バンデミックが、気候変動に対応する世界的な取り組みに寄与していると語っている。その事例として、イギリスでは、最も汚染度の高いエネルギーである石炭の使用が250年で最低レベルにまで落ち込んだこと。スペインは世界で最も急速な脱炭素国の一つになりつつあり、国の15の石炭火力発電所のうち7が最近閉鎖されたこと。そして、パリは、徒歩や自転車であらゆるサービスに簡単にアクセスできる「15分の都市」になることを約束しており、大気汚染や気候変動を減らしている、と事例を紹介している。

   「COVID-19 is a once-in-a-century health crisis. But it also gives us a once-in-a-century opportunity to shape the world our children will inherit – the word we want.」(新型コロナウイルスは、1世紀に1回の健康危機です。 しかし、それはまた、私たちの子たちが継承する世界、つまり私たちが望む言葉をカタチに変える、1世紀に1回の機会を私たちに与えてくれました)。地球温暖化阻止に向けて、パンデミックは人類に素晴らしいチャンスを与えてくれた、と。   

  地球温暖化につながる大気中の二酸化炭素濃度の増加ペースが急減したのは、コロナ禍により経済活動が停滞したことで起きている話である。それを「パンデミック効果」として世界に向けて発信することが果たして妥当なのだろうか。テドロス氏の言葉は宗教的に読める。「Hardship is always an opportunity to learn, to grow and to change.」(苦難は常に学び、成長し、変化する機会である)。この言葉を否定するするつもりはないし、二酸化炭素の削減は世界の課題目標であることは間違いない。

   ただし、コロナ禍が世界にもたらす景気後退の影響はもっとシビアだ。イギリスではことし第2四半期(4-6月)の国内総生産(GDP)が前期比20.4%縮小。第1四半期の経済成長率はマイナス2%だったため、正式にリセッション(景気後退)に入った。就労人口は4月から6月にかけて22万人減少。この減少幅は四半期ベースで、世界金融危機の渦中にあった2009年5月-7月以来の規模になる(8月12日付・BBCニュースWeb版日本語)。GDPの落ち込みはイギリスだけでなく、アメリカでも年率換算でマイナス32.9%となるなど、世界で歴史的な下落となっている。まさに、「コロナ恐慌」の前兆だ。

   今後、世界では貧困の拡大、移住労働者の制限や排除、国家の財政破綻などさまざまは局面があるだろう。工場からの排出ガスが減り、「きれいな空と川」が見えたとしても、それは「天気晴朗なれど波高し」の現実ではないだろうか。

⇒24日(月)夜・金沢の天気    はれ

★2020秋の胸騒ぎ~下

★2020秋の胸騒ぎ~下

          石川県に住む者として 残念なニュースが流れている。県内の私立大学の20歳の男子学生がきょう放送予定の日本テレビ系番組『24時間テレビ』について、放送当日に「武道館でサリンをまく」とツイッターに投稿したとして、警視庁に威力業務妨害の疑いで逮捕された(8月21日付・共同通信Web版)。同番組の開催場所はこれまで武道館だったが、ことしは改修工事のため国技館に変更されているので本人が場所を勘違いした可能性もある。警察は悪質な嫌がらせとみて動機を調べている(同)。

    トランプ大統領の北朝鮮への次なる一手は

           本人にとって悪ふざけのつもりでSNSで投稿したとしても、それがいったんアップロードされれば公の場の犯罪となる。警察庁の報告書「令和元年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、スマホやPCを使った犯罪は8267件で、上記のような脅迫は349件に上る。ちなみに、8月20日付「2020秋の胸騒ぎ~上」で述べた詐欺は977件だ。これは推測だが、今回の逮捕はおそらくテレビ局編集セクションにあるサイバーリサーチのチームが発見して警察に届けたのではないだろうか。メディア各社はサイバー空間でのトレンドやトラブルなどをニュースのネタ拾いのため細かくチェックしている。

   話は逸れたが、日本海側に住んでいるとどうしても考えてしまうのが、北朝鮮をめぐる情勢だ。南北首脳会談の「板門店宣言」で建設された北南連絡事務所が6月16日に爆破され、世界に衝撃が走った。アメリカと北朝鮮の首脳会談もこれまで3回開かれたが、成果は得られなかった。こうなると、トランプ大統領が2017年の9月の国連総会の演説で金正恩党委員長を「ロケットマン」と呼んだあのころに戻るのではないか、と危惧する。そうなると北朝鮮への斬首作戦が現実味を帯びる。斬首作戦は金委員長へのピンポイント攻撃のことだ。

   北の動向をつぶさに報じている「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」の公式ホームページに、7月7日付で「トランプ大統領のお悔やみ書簡の意味」と題した動画がアップされている。書簡はトランプ大統領が拉致被害者の横田めぐみさんの母・早紀江さんに宛てた、死去した夫・滋氏への弔意を込めたもの=写真=。書面は英文だが、協議会の訳を引用すると、「早紀江さんと滋さんの弛まない活動によって、北朝鮮による拉致問題は日本と米国にとって優先課題であり続けています」「(アメリカは)めぐみさんを必ずご自宅に連れて帰るというこの重要な任務を続けます」と大統領としての決意表明を感じさせる。

   金氏を見限ったトランプ氏の次なる一手が「めぐみさんを必ずご自宅に連れて帰る」ということ、すなわち拉致被害者の救済のために斬首作戦に打って出るということを意味していないだろうか。トランプ氏が指示するとすれは、大統領選挙が行われる晩秋の11月3日までだ。アメリカによる斬首作戦で知られるのは、オバマ政権下で実行されたオサマ・ビン・ラディンに対して行ったバキスタンでの攻撃(2011年5月2日)がある。

   もし斬首作戦が現実になれば、国内は騒乱状態になり大量の難民が船に乗ってやってくる。ガソリンが切れたり、エンジンが止まった船の一部はリマン海流に乗って能登半島などに漂着する。無事漂着したとして大量の難民をどう受け入れるのか、武装難民だっているだろう。その影響は計り知れない。日本海側に住むが故の胸騒ぎではある。

⇒22日(土)午前・金沢の天気     はれ時々くもり

☆2020秋の胸騒ぎ~中

☆2020秋の胸騒ぎ~中

   このブログでは日本海のEEZ(排他的経済水域)内の大和堆での北朝鮮の違法操業について述べてきた。そのつど、海上保安庁の公式ホームページをチェックしているが、尖閣諸島における中国公船の動向に関しても詳細な報告がされていて目を引く。

    食料危機が加速させる中国漁船の領海漁り

   中国が尖閣諸島の領有権を主張したのは1971年と言われる。1968年に尖閣諸島での海底調査で、石油や天然ガスなどの地下資の可能性が確認されて以降のことである。領土問題ではなく、「資源問題」の側面もある。2012年9月に日本が尖閣諸島を国有化してから年々中国公船の絡みが激しくなっている。

   尖閣諸島をめぐるもう一つの資源が漁業資源である。カツオやマグロなどが獲れ、島ではカツオ節の生産も行われていた。中国が領有権を主張してから、中国漁船も押し寄せてくるようになった。2010年9月7日に海上保安庁の巡視船2隻が、退去命令を無視して違法操業を続けていた中国漁船に体当たりされるという衝突事件があった。この問題はさらに中国から日本へのレアメタルの輸出制限へと通商問題へと展開した。2016年8月には、200隻余りの中国漁船が接続水域で操業して、漁船と中国海警局の船が領海に繰り返し侵入するなど、周辺での中国漁船の漁は続いている。ことし5月には、尖閣諸島周辺の領海で操業していた日本漁船を中国海警局の船が追い回すという事件があった。

   この秋に大量の中国漁船が再び尖閣周辺に来るかもしれないという胸騒ぎがしている。それは、中国で顕在化しつつある食料危機だ。習近平国家主席が「飲食の浪費を断固阻止する」との指示を出し、新型コロナウイルス感染の世界的まん延は「警鐘」だと指摘し食料問題に危機意識を持つよう訴えた(8月20日付・共同通信Web版)。中国における食料問題は6月以降、中国各地で断続的に豪雨災害が続いていて、水田などの耕作地が冠水被害が広がっている。習氏は今月18-19日に安徽省の被災地を視察している(同)。習氏が「飲食の浪費を断固阻止する」の指示を出すほど、危機感がひっ迫しているとも受け取れる。

   陸で打撃を受けて想定されるのは、タンパク源を確保するための水産資源の確保ではないだろうか。すでに、中国は北朝鮮海域での制裁決議違反が問題視されているにも関わらず、北朝鮮の漁業海域での漁業権を購入し、中国の遠洋漁船全体の3分の1にも相当すると見られる大量の船団を送り込んで漁業資源を漁っている(7月27日付・ブログ「北の漂着船、グローバル問題に」)。北朝鮮の漁業海域が枯渇すれば、次に中国漁船が船団を組んで漁りにくるのは、おそらく尖閣諸島周辺や日本海のEEZだろう。

   すでに、中国政府は「日本の海上保安庁は(尖閣周辺で)1隻の日本漁船すら航行するのを止められなかった」と批判。「数百隻もの中国漁船の(尖閣周辺での)航行を制止するよう(日本が)要求する資格はない」と領海侵入を予告している(8月2日付・産経新聞Web版)。もちろん、日本の領海やEEZだけでなく、中国が実効支配し、ベトナムやフィリピンが領有権を主張している南シナ海でも「漁業紛争」に及ぶかもしれない。

(※写真は、2010年9月7日に尖閣諸島海域で中国漁船が海上保安庁の巡視船が衝突する様子。海上保安官がユーチューブに映像を公開した)

⇒21日(金)午前・金沢の天気     はれ

★2020秋の胸騒ぎ~上

★2020秋の胸騒ぎ~上

  2020年の年初では、区切りの良い年だと期待していたが、新型コロナウイルス感染拡大など世界史に残るとんでもない年になっている。猛暑が続くとは言え、季節はそろそろ夏から秋に移ろう。ただ、果たして秋晴れのさわやかな日常に戻るのかどうか。考えすぎかもしれないが、2020年秋はいろいろと胸騒ぎがする。

   「5G」対面動画、集団詐欺の新たなステージに

   きょうの午前中、知人の名前でパソコンにメールが届いた。「〇〇▽▽.Nike」という名前で、〇〇▽▽が知人のフルネームだ。知人はメールアドレスが抜き取られたに違いないかと直感し、メールを削除した。それにしても、企業名と知人名をセットにした巧妙な手口だ。以前も、自身のスマホのSMSに「お荷物のお届けにあがりましたが不在のため持ち帰りました。ご確認ください」と、宅配業者の不在通知のようなショートメールが届いた=写真=。その文字の下にURLがあった。どんな荷物が届いたのかと、そこにアクセスすると何も映らなかった。その瞬間、「やられた」と気づいた。即キャンセルをかけた。SMSを使った詐欺メール、「スミッシング詐欺」だ。

   その後、スマホには覚えのない電話番号からの着信が数度あった。こちらから電話をかけることはしなかったが、この詐欺メールは実に巧妙だ。というのも、荷物が着払いの場合は宅配業者から事前に荷物を届ける旨の電話がある。普通、荷物には届け出先の携帯番号が記されているので不在の場合、SMSメールがあっても不自然には感じない。その常識範囲の盲点を突いた詐欺メールだ。

   こうした詐欺がこの秋からさらにステ-ジアップして活発化するのではと憶測する。高速大容量と多数同時接続の通信システム「5G」がこの秋から本格的に普及し始め、キャリア各社も5G対応機種を発売している。その背景には、テレワークが一般化すると同時に、スマホでのZoom会議の需要が出てきたからだ。気心が知れた者同士の会話や、組織のリモート会議に使う分にはよいが、新たな詐欺だってありうる。

   たとえば有名証券会社の名を語った投資話がスマホのメールを通じて入り、Zoomで参加すると「犯人」は複数で劇団のようにそれぞれが投資家、ファイナンシャルプランナー役、弁護士役などの役柄を分担し、あの手この手で騙されるといったことにもなりかねない。あるいは人生相談、婚活、就活などスマホ面談という詐欺が横行するかもしれない。対面動画によるリアリティ性に人は騙されやすいのだ。

   ここで思う。スマホでの詐欺に対策の手を打つべきはキャリア、つまり携帯電話会社ではないか。事例としてはそぐわないかもしれないが、SNSではすでにフェイクや不適切な発言内容について規制をかけている。キャリアとして対策を打ってほしい。個人の責任論ではもう済まない時代にきているのではないだろうか。

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