#コラム

☆番記者が手強さを感じる次の総理は

☆番記者が手強さを感じる次の総理は

   安倍総理の後継を決める自民党総裁選挙がきのう8日に告示され、石破茂、菅義偉、岸田文雄の3氏が立候補を届け出た。きょうの新聞各紙に党本部での演説会の内容と、その後の共同記者会見の発言要旨が掲載されている=写真=。記者会見の内容を吟味してみる。

   面白いは安倍政権へのそれぞれの評価だ。以下、発言順でコメントは一部を抜粋。菅氏「安倍政権の経済政策は私が引き継ぐ。客観的に見ておかしいことは見直す。文書改ざんは二度と起こしてはならない。謙虚に耳を傾ける」。岸田氏「経済政策や官邸主導、トップダウンで物事を決める姿勢は評価できる。一方で強力な権限は謙虚に使っていく姿勢が大事。説明責任をしっかり果たしていく姿勢は何より大事だ」。石破氏「地方や女性の潜在的な可能性を最大限に引き出すことはまだ不十分だ。森友、加計学園、桜を見る会はどの世論調査でも納得した人が非常に少ない。特定の人が利益を受けることを、政府がやっていいはずがない。要するに、えこひいきがあってはならない」

   菅氏と岸田氏は、いわゆる「モリカケ」問題ではそれぞれ通りいっぺんの回答だが、石破氏は突っ込んだ発言をした。「世論調査でも納得した人が非常に少ない」と。そもそも、石破氏は今回の総裁選そのものに批判的だ。「詐欺のような総裁選はやめるべき」と『週刊朝日』(9月11日号)で述べていた。記事を引用する。「現在、自民党は党員数の拡大を目指して総力を結集していますが、党員を勧誘するときのセールストークは『党員になれば、あなたにも自民党総裁を選ぶ選挙権があります』というもの。自民党総裁を選ぶことは多くの場合、総理大臣を選ぶことに等しい。その投票権があります、というのが一つのウリなんですね。いざとなったら、党員投票はやりませんというのでは、詐欺じゃないかと怒る党員もおられるのではないでしょうか」

   確かに、政治的な空白が起きるので、国会議員票と各県連の票のみで総裁を決めること自体が、「詐欺」に相当するというのは理にかなってはいる。うがった見方だが、石破氏はこのことを言いたいがために立候補したのではないだろうか。記者会見での「えこひいきがあってはならない」と主張しているのも、詐欺発言と文脈が連なるのではないか。

   もう一つ、国会と総理会見についてのそれぞれの発言だ。6月の通常国会の閉会後、2ヵ月半に安倍総理は記者会見を行わなかった。その是非について記者たちは問うた。

   最初に発言したのは石破氏だった。「メディアは国民を代表して聞いている。可能な限り、答えなければいけない。政治の義務だ」。菅氏「首相の国会出席は世界と比べて圧倒的に時間が多い。出席は大事なところに限定すべきだ。そうしないと行政の責任をなかなか果たせない。首相の会見については、官房長官が朝夕2回会見しており、内閣の方針は官房長会が責任をもって説明する」。岸田氏「記者会見は手が挙がらなくなるまで質問に答えるのが大事だ。首相の日程で限界があるのも事実だ。日本の首相の国会への拘束時間は先進国の中で桁外れだ」

   総理への記者会見は、権力者とジャーナリストの真剣勝負の場でもある。問題は、総理に聞くべきことを聞くことではないだろうか。時間の長さや回数の問題ではない。内閣全般のことであるならば、菅氏が述べた通り、「官房長官が朝夕2回会見しており、内閣の方針は官房長会が責任をもって説明する」でよいのではないか。

   ところが、メディアの記者たちはそれだけでは納得しない。総理が何を語ったことだけでなく、言葉や心のブレ、顔の表情、本音など心理的な変化も記者たちは読みたがっている。なので、あえて刺激的な言葉で質問したりする記者もいる。あるいは、国会議事堂や官邸で歩いている総理に「ぶら下がり」で質問をしたりする。上記の3氏の発言を読む限り、記者たちが本音をなかなか探れない人物とは誰か。発言を読んでも分かるように、実務肌の菅氏ではないだろうか。顔の表情を変えず、ブレない発言は石破氏や岸田氏に比べ、突っ込みどころがない。総理番の記者たちはすでに手強さを感じているかもしれない。

⇒9日(水)夜・金沢の天気    あめ

★輸出すれど食さず、欧米人の「マツタケ観」

★輸出すれど食さず、欧米人の「マツタケ観」

           金沢の気温はきょう36度もあった。南風のフェーン現象だろうと想像がつく。体温並み、うだる暑さの猛暑日だ。ただ、庭先に出てみると、コオロギの鳴き声が聞こえて秋の気配を感じる。ヤフーニュースで目を引いた記事(9月8日付)があった。アメリカのオレゴン州のマツタケが危機というのだ。

   記事によると、アメリカ西海岸の山林で毎年のように起きる山火事が今年は異常に広がっていて、マツタケの採取ができず、日本への出荷に待ったがかかっている。オレゴン州ではマツタケは高価で売れることから、「白いゴールドラッシュ」と呼ばれているそうだ。   

   フィンランドやスウェーデンからもマツタケが日本に輸出されている。森林にマツタケがもともとはえていたが、食する習慣がなく放置されていた。日本のマツタケとほぼ同じDNAを持ち、価格も安く、日本では人気がある。ここで不思議に思うのは、欧米では、すしなど日本食ブームでそれに合う日本酒の売れ行きも好調と聞く。にもかかわずらず、輸出はすれど、欧米人はマツタケを食さない。それはなぜか。

   これは知り合いの料理人からかつて聞いた話だ。いわく、「欧米の人がマツタケを食さない理由は、マツタケの香りが靴の中のこもった臭気を連想させるからだそうですよ」と。確かに、そう言われればそのようなにおいかも知れない。欧米では靴の歴史が長いので、「においマツタケ、味はシメジ」などと説明しても理解はしてもらえないだろう。日本では靴が入ってきた文明開化の明治以前からマツタケを珍重していたので、「においマツタケ」は昔から脳にすり込まれていた。

   でも、ひょっとして日本の若い世代が「あんな靴の中の臭いがする高価なマツタケなんて食べたくない」と言い出す日がくるかもしれない。あるいは、「オレたちの感覚が間違っていた。これこそ世界最高の食文化だ」とすき焼きにマツタケを入れて食する欧米人が増える日がくるかもしれない。

⇒8日(火)夜・金沢の天気     はれ

☆世論調査に表れた「判官びいき」の国民性

☆世論調査に表れた「判官びいき」の国民性

   きょう7日付の読売新聞に全国世論調査の結果が掲載されていた。それによると、安倍内閣の支持率は52%となり、前回調査(9月7、8日調査)より、15ポイントも上昇している。不支持率は38%と10ポイント下がっている。さらに、第2次安倍内閣の7年8ヵ月の実績を尋ねた項目では、「大いに評価」19%と「多少評価」55%を合わせると74%になる。自身の記憶でも、辞任表明後に支持率がこれほど上昇するのは異例ではないだろうか。それはなぜなのか。

   この傾向は読売新聞の調査だけではない。朝日新聞の調査(9月2、4日)でも、安倍内閣以降の7年8ヵ月間の実績評価は「大いに評価」17%と「ある程度評価」54%を合わせると71%となる。共同通信が実施した緊急世論調査(8月29、30日)でも、内閣支持率が56.9%と前回調査(8月22、23日)より20.9ポイントも増え、7年8ヵ月間についても、「ある程度」を含めて「評価する」が71.3%に上っている。マスメディア各社の調査では安倍内閣の実績評価は70%を超えているのだ。

   確かに、先月28日午後5時からのNHKテレビの生中継を視聴していて、自身もある意味でショックを受けた。8月上旬に持病の潰瘍性大腸炎の再発が確認され、安倍氏は「体力が万全でない中で政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはならない。総理の職を辞することにした」と述べた=写真=。拉致問題も憲法改正も北方領土もどれも道筋をつけられないままでの辞任表明。まさに断腸の思いだったに違いない。

   安倍氏の最大の功績は長期政権を築いたということに尽きるかもしれないと思っている。小泉内閣以降の2005年から短命政権が続き「7年間で7人の首相が誕生する」政治状況だった。当時は「回転ドア内閣」とも呼ばれ、総理の名前を覚える間もないほど交代劇が続き、日本のガバナンスや国際評価の足を政治が引っ張っていた。その意味で、7年8ヵ月続いた安倍内閣は政治の安定をもたらした。さらに、トランプ大統領と良好な関係を築きながら、アベノミクスで積極的な経済政策を推進し、女性の社会進出を拡大させた功績も大きい。

    「こころざし半ばで去ることになった人への判官びいきかもしれません」。安倍氏の辞任表明について書かれた知人からのメールの一文だ。おそらく、国民は声に出すほどのことではないが、7年8ヵ月の「最長の総理」をそれとなく心情的に評価しているということではないだろうか。「多少評価」55%(読売)、「ある程度評価」54%(朝日)といった、微妙な数字がその「判官びいき」ではないだろうか。ある意味で日本の国民性がシンボリックに表れた数字なのかもしれない。

⇒7日(月)夜・金沢の天気    くもり

★強烈な雨風、台風10号の緊張感

★強烈な雨風、台風10号の緊張感

   台風10号は925ヘクトパスカル、強烈な風と雨をともなって北上している。気象庁は6日午前11時50分、鹿児島県屋久島町に土砂災害や浸水害の危機が高まっているとして、記録的短時間大雨情報を発表した。レーダー解析によると、1時間に120㍉以上の猛烈な雨を観測している。 こうした事態を受け、政府は台風10号に備え、首相官邸の危機管理センターに設置している情報連絡室を官邸対策室に格上げした(共同通信Web版)。 

   鹿児島のローカル紙「南日本新聞」のホームページをチェックすると、台風10号の接近に伴い、鹿児島市正午、市内全域の危険な場所に住む13万5166世帯24万6251人を対象に避難指示を出した。長崎県五島市も午前10時、市内全域の1万9829世帯3万6392人に避難指示を出している。また、NHKニュースWeb版によると、直ちに危険な場所から全員避難が必要な警戒レベル4にあたる「避難指示」が午後0時30分現在で、長崎、熊本、鹿児島、沖縄の4つの県で合わせ16万8261世帯、30万8606人に出されている。

   国内の空の便は欠航が相次いでいて、沖縄県や九州南部の空港を発着する便を中心に、合わせて548便が欠航したり欠航が決まっている(NHKニュースWeb版)。九州新幹線は、熊本駅と鹿児島中央駅の間で、正午すぎから上下線で運転を取りやめている。また博多駅と熊本駅の間は、午後3時ごろから運転を取りやめる。いずれも7日は、始発から終日、運転を取りやめる。また、山陽新幹線は7日、博多駅と広島駅の間で始発から終日運転を取りやめる(同)。

    メディア各社のホームページをチェックしただけでも、台風10号に対するかなりの緊張感が伝わって来る。(※台風の進路予想図は気象庁公式ホームページから)

⇒6日(日)午後1時30分現在、金沢の天気  はれ

☆季節は移ろう、冷麺は消え台風シーズンに

☆季節は移ろう、冷麺は消え台風シーズンに

   北陸は高気圧に覆われたせいで、きょう5日も30度を超える暑さ、金沢では33度だった。昼ご飯に冷麺を食べようと、近くのラーメンチェーン店に入った。注文すると、店員が「冷麺はもう終わりました」と。思わず、「こんなに暑いのに冷麺を終わりにするなんて」と言うと、「ざるラーメンはありますが、いかがですか」と。そう言われると、こちらも少々ムキになって、「野菜ラーメンのしょうゆ味をください」と熱いものを注文した。

   チェーン店なので材料の調達は一元化されていて、9月のメニュー替えで夏物の冷麺を外したのだろう=写真・上=。これだけきつい残暑が続いているのだから、運営する会社側も臨機応変に対応してはどうかと。たまたま隣の席に腰かけたシニアの男性も「冷麺を」と店員に同じようなことを言っていた。笑い話のようだが、冷麺が消えて季節の移ろいというものを感じた。

            秋の訪れとともに台風がやって来た。北陸は今のところ台風10号の影響はないが、中心気圧が920ヘクトパスカルに達し、中心付近の最大風速は50㍍、最大瞬間風速は70㍍と強烈だ。気象庁は「記録的な暴風、高波になる恐れがある」と警告している(9月5日付・NHKニュースWeb版)。地震はマグニチュード、台風はヘクトパスカルでその大きさが判断できる。子どものころからよく耳にした、1959年の伊勢湾台風は「929ヘクトパスカル」だった。その伊勢湾台風より、さらに強烈なのが今回の台風10号だ。

   台風と言えば、去年10月13日、死者・行方不明者100人を出し、北陸新幹線120両を水没させた、あの台風19号が日本に近いづいてきたときが945ヘクトパスカルだった。北陸に住む自身にとっては、千曲川の堤防決壊で長野市にある新幹線車両センターの北陸新幹線の車両が水に浸かった画像はショックだった=写真・下=。

   そして、新型コロナウイルスの感染拡大は止まない。石川県の発表(5日)で新たに16人の感染が確認された。そのうちの13人が、兼六園と道路を挟んだ隣にあり、土塀に囲まれた総合病院「金沢医療センター」での感染者だった。同病院の関連感染者は44人となった。ある意味で金沢のシンボリックな医療機関だけに、クラスターの拡大はショッキングではある。

⇒5日(土)夜・金沢の天気      はれ

★災害にめげない人間力

★災害にめげない人間力

  きょうも揺れを感じた。午前9時10分、ゆったりした揺れで、金沢は震度1だった。隣県の福井県坂井市では震度5弱、震源の深さは10㌔でマグニチュードは5.0だった。この地震でこれまでに坂井市と福井市で合わせて11人が転倒するなどしてケガをしている(9月4日付・NHKニュースWeb版)。

   北陸ではつい2日前、2日午前2時50分に石川県と富山県の県境の富山側で震源地とするマグニチュード4.6の揺れがあった。震度3の揺れは金沢市ほか、石川県の白山市や加賀市、そして福井県の坂井市などだった。坂井市では2日の震度3、そしてきょうの震度5弱と続けてとなる。気象庁は午前10時20分から記者会見を開き、「揺れの強かった地域では落石や崖崩れなどが起こりやすくなっている可能性があるので、今後の地震活動に注意が必要だ。今後1週間ほどは最大震度5弱程度の地震に注意し、特に今後2、3日程度は規模の大きな地震が発生することがあり注意してほしい」と呼びかけた(同)。(※写真・上は、日本気象協会 tenki.jp公式ホームページより)

   坂井市を震源とする大きな地震が戦後間もなくの1948年6月28日にも起きている。福井地震だ。マグニチュード7.1で、当時の震度階級としては最大の震度6、隣接の福井市がこの烈震に見舞われた。震度7(激震)が新設されたのは翌年の1949年だった。福井市は終戦直前の1954年(昭和20年)7月19日にアメリカ軍による深夜の空襲で受けていた。戦後復興が始まり、これからというときの震災だった。さらに震災の1ヵ月後に水害にも襲われた。

   福井市は震災から16年後の1964年6月28日に「不死鳥のねがい」という市民憲章を制定した。戦災、震災、水害という災禍の経験をバネにして不死鳥の如く蘇ろうと市民の意識を高める憲章だった。フェニックスをデザインした憲章のロゴは市民の誇りでもある=写真・下=。そして、思うことは「福井県の幸福度が高いこと」だ。一般財団法人日本総合研究所の「全47都道府県幸福度ランキング」で2020年度含め4回1位の座を占めている。隣県の目線では、福井の県民性は勤勉で働き者と映る。また、出身都道府県別の社長数を各都道府県の人口で割って100を掛けた「社長輩出率」が、福井県は1.37%と38年連続で全国トップだった(3月3日付・日経新聞Web版)。

   福井の人たちと話していると、「そやの~お~」と相手を丸め込む言葉のチカラを感じる。おそらく歴史で培ったであろう、災害にめげない人間力ではないだろうか。

⇒4日(金)夜・金沢の天気     くもり

☆「回転ドア内閣」には戻らない

☆「回転ドア内閣」には戻らない

  きょうも台風9号によるフェーン現象の影響で午後4時の金沢は37度だった(自家用車の外気温計)。ニュースでは輪島市で38度と伝えている。猛烈な暑さだ。金沢で9月に入って2日連続で35度以上になったのは、大正4年(1915)以来、実に105年ぶりとか(9月3日付・NHKニュースWEB版)。

   この暑さと並行で進む「ポスト安倍」の政治。「What’s at Stake for Shinzo Abe’s Successor」(安倍総理の後継者に何が必要なのか)と題するニューヨーク・タイムズWeb版の記事(2日)=写真=が目を引いた。記事は、安倍総理の後継を巡る論説で、「The worst post-Abe scenario would be a revival of political instability, which would inevitably strengthen the bureaucratic state and the stagnation that entails.」(意訳:ポスト安倍の最悪のシナリオは不安定な政治の再来であり、それは必然的に官僚機構の強化とそれに伴う停滞だ)と述べている。そうか、海外メディアにとって、またあの時代が再来が予感されるのか、と読んだ。

   あの時代とは、論説にも述べられているが、小泉内閣以降の2005年から短命政権が続き「7年間で7人の首相が誕生する」政治状況だことだ。当時は「回転ドア内閣」とも呼ばれ、総理の名前を覚える間もないほど交代劇が続き、日本のガバナンスや国際評価の足を政治が引っ張っていた。その意味で、7年8ヵ月続いた安倍内閣は政治の安定をもたらしたことが最大の功績だと論説は分析している。さらに、トランプ大統領と良好な関係を維持しながら、アベノミクスで積極的な経済政策を推進し、女性の社会進出や移民を拡大させた功績も大きいと評価している。

   ニューヨーク・タイムズの論説は今後の課題も見抜いている。安倍氏の後継者は、高齢化と人口減少、経済規模に比べて先進国で最大の債務負担、そしてパンデミックによるロックダウンのために縮小した経済という、大きな課題に直面することになるだろう。女性は雇用や賃金の平等からはまだ程遠く、海外労働者の移入も依然として難しい。

   最後段落はこう締めくくっている。「Above all, Mr. Abe has left a legacy of change to build on. 」(何よりも安倍総理は変革の遺産を残した)。政治が回転ドアに戻るのではなく、やらねばならいことを遺産として残し、次の総理も継承してくだろう、と。次の総理・総裁をまるで派閥の主導権争うのように連日報じている日本のメディアとはまったく異なる視点だ。

⇒3日(木)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

★深夜の寝込みを襲った「震度3」

★深夜の寝込みを襲った「震度3」

   おそらく金沢に住む多くの人は今朝、寝不足ではないだろうか。午前2時50分ごろ、寝ていると下から突き上げるような揺れを感じて飛び起きた。テレビにスイッチを入れると地震速報が流れた。「金沢で震度3」だった。震源地は石川県と富山県の県境の富山側で震源地は深さ10㌔、マグニチュードは4.6と。その震度3の揺れは石川県の白山市や加賀市、そして福井県の坂井市にまで及んでいた。その後、本震が来るのではないかとしばらく身構えていたが、再び眠りに就いた。そのため、寝不足状態でブログを書いている。

    金沢での震度3の揺れは今年に入って2度目だ。3月13日、これも真夜中の午前2時18分だった。能登半島の輪島市で震度5強、穴水町で震度5弱、金沢市は震度3だった。マグニチュード5.5で、震源地はあの震度6強を記録した2007年3月25日の能登半島地震のときと同じ場所、輪島市門前町沖だ。今年入って2度も深夜の寝込みを襲った地震、不気味だ。  

   不気味と言えば、新型コロナウイルスの感染拡大が金沢市などで続いている。きのう1日、新たに男女27人の感染が確認された(県発表)。一日の人数としてはこれまでで最も多い。そして、また、医療機関がクラスターとなった。兼六園と道路を挟んだ隣にあり、土塀に囲まれた有名な総合病院「金沢医療センター」。ここで、入院患者と看護師ら16人の感染が確認され、前日の4人と合わせて20人となった。

   この病院では、はやくから感染対策を徹底していて、出入り口は正面玄関のみとし、その正面玄関でサーモグラフィーによる発熱者のチェックを行っている。マスク着用も徹底され、忘れてきた人向けに自動販売機も設置している。その病院が感染クラスターになるとは、病院側のショックも大きいのではないか。

   寝不足の上に、きょうも最高気温が35度以上になる猛暑日になると予報が出ている。猛暑はこのところずっと続いている。台風9号が東シナ海を北に進んで起きるフェーン現象のようだ。マスクをして外出すると熱中症が気になる。地震、コロナ禍、猛暑と熱中症、なんとうっとうしい夏だ。 (※写真は日本気象協会 tenki.jp公式ホームページより)

⇒2日(水)朝・金沢の天気     はれ

☆「ポスト安倍」 世論調査は「石破」だが

☆「ポスト安倍」 世論調査は「石破」だが

          「こころざし半ばで去ることになった人への判官びいきかもしれません」。安倍総理の辞任表明について書かれた知人からのメールの一文だ。その前段に、「森加計桜があったり、アベノミクスで日本の経済は強くならなかったりはあっても、安倍さんてすごい人だったのかも・・・」と評している。おそらく国民は声には出さなくても、7年8ヵ月の「最長の総理」の実績はそれなりに心に留めているのではないだろうか。

   それを数字が物語っている。共同通信が実施した緊急世論調査(29、30日)で、内閣支持率が56.9%と前回調査(8月22、23日)より20.9ポイントも増えている(8月30日付・共同通信Web版)。1週間後に内閣支持率が20ポイント以上も伸びることは通常ではあり得ない。さらに、第2次安倍内閣以降の7年8ヵ月間について、ある程度を含め「評価する」が71.3%に上っている。「こころざし半ばで去ることになった人への判官びいき」なのだろうか。

   緊急世論調査では、次期首相に「誰がふさわしいか」と聞いている。ダントツで1位は石破茂氏(自民党元幹事長)で34.5%、2位は菅義偉氏(官房長官)14.3%、3位は河野太郎氏(防衛大臣)13.6%、以下、小泉進次郎氏(環境大臣)10.1%、岸田文雄氏(党政調会長)7.5%と続いている。石破氏のどこが総理としてふさわしいと世論は感じているのだろうか。

   一度だけ、石破氏にインタビューしたことがある。学生に地方創生を理解してもら教材ビデオを制作していた。タイミングよく、2016年2月7日、当時地方創生大臣だった石破氏が講演に金沢市を訪れた折に、インタビューに応じていただいた=写真=。

Q:地方創生にはどのような人材が必要なのですか
石破氏:昔から地域を変えるのは「よそ者、若者、ばか者」と言われ、外から新鮮な目で見ることが一つの要素なんです。若い感性とは、たとえばPCが使える、外国語が使えること。ばか者はこれまでの既成概念にとらわれない新しい考え方を持つこと。学生はそのすべてを持っている人が多いし、チャレンジ精神旺盛な方を求めたい。

Q:地域で活躍する若者に対して期待することは何ですか
石破氏:地方は東京と違い、行政との距離が近い。地域の特性を最大限に活かして金沢の大学が未来を作っていくのか。この国の未来は「学生」に創ってもらわないといけない、今はそんな時代です。明治維新など、歴史の変わり目に常に若者がいるというのはそういうことなんです。

Q:地域の大学に期待することは何ですか
石破氏:「象牙の塔」にならないこと。大学が持つ本来の真実を探求する心は忘れないでほしい。今は「地方が日本を変える時代」、その責任感や使命感、学生にはそんな感性を持って欲しい。

   10分足らずの単独インタビューだったが、石破氏は淡々と答えた。無駄のない、理路整然とし、そして奥が深い内容だった。冒頭での「よそ者、若者、ばか者」は意外な言葉だったが、印象的として残り、納得もした。世論調査で石破氏の評価が高いのは、その発する言葉ではないだろうか、「言葉は人柄を語る」である。

   しかし、「内閣総理大臣」となると別の側面も問われる。防衛問題でならす政治家だが、海外の安全保障のキーマンと意見交換や握手するといった防衛外交をする姿をメディアで見たことがない。たまたま見逃しているだけないかもしれないが、「外交の石破」の姿が見えないのだ。

   自民党執行部は総裁選挙を今月8日に告示したうえで、党員投票は省略し、14日に両院議員総会を開いて投開票を行う方向で調整している(9月1日付・NHKニュースWeb版)。 菅氏が有力とも報じられているが、世論調査1位の石破氏はどうか。

⇒1日(火)朝・金沢の天気      はれ          

★ブログで描いた「安倍総理」の14年~下

★ブログで描いた「安倍総理」の14年~下

   安倍総理の14年を振り返ってみると、日本とアメリカのある意味で新しい関係をつくったことは安倍氏のレガシーだろう。オバマ大統領が広島市の原爆死没者慰霊碑を訪れ献花し、安倍総理がハワイの真珠湾で慰霊したことはそのシンボリックな出来事だった。以下、ブログで描いた「安倍総理」の14年の続き。

 広島の平和記念公園とハワイの真珠湾で新たな日米関係築く

【2016年5月26日付「★ギリギリの共同会見」】 伊勢志摩サミット(G7首脳会議)を前に、アメリカのオバマ大統領と安倍総理による首脳会談が始まったのが昨夜9時40分。そして両氏が共同記者会見に臨んだのは10時43分だった。会見が終了したのは11時32分だった。日をまたぐ直前まで記者会見を実施したのは、沖縄のアメリカ軍属の男による女性の遺体遺棄事件について、首脳として何とかサミットが始まる前にけじめをつけておきたかったのだろう。ある意味でギリギリ間に合ったと、政府関係者は胸をなでおろしているかもしれない。以下、共同記者会見の様子を=写真・「NHKニュース」=をテレビで見ていてのメモだ。

  オバマ大統領は、広島訪問は第二次大戦で亡くなったすべての人を追悼し、核兵器のない世界という共通のビジョンを再確認し、アメリカと日本の同盟を強化する機会となるだろうと、述べた。また、安倍総理は、オバマ氏による広島訪問の決断を心から歓迎していると述べた。核兵器使用国(アメリカ)のリーダーが戦争被爆国で犠牲となった市民に哀悼の誠をささげるのは、核兵器のない世界へ大きな力となると述べた。記者の質問で、シカゴ・トリビューンの記者からハワイのパールハーバー訪問の可能性を問われ、安倍氏は「現在私がハワイを訪問する計画はない」と言い切った。

【2016年5月28日付「★大統領か役者か」】 17時37分、オバマ氏が広島市の平和記念公園の原爆死没者慰霊碑を訪れ、献花に臨んだ。安倍総理と並んで献花するのかと思っていたが、そうではなく、まずオバマ氏が献花し、その後に安倍氏が続いた。オマバ氏は頭を献花の後に頭を下げずに黙祷を、安倍氏は献花の後に頭を下げて黙祷をささげた。頭を下げての黙祷は日本では当たり前なのだが、アメリカではこれが原爆死没者に対する「謝罪」と映るのだろう。もし、安倍氏とオバマ氏が2人同時に献花し黙祷をささげたら、片や頭を下げる姿、片や下げない姿がくっきりと対比される。すると、映像的な印象度として、オバマ氏の姿は日本では良くないものになる。献花にあたっては、日本とアメリカで随分と打ち合わせ、計算されし尽くされたのだと中継映像を視聴しながら感心した

【2016年12月6日付「★パールハーバーとソウル」】 昨夜(5日)午後6時50分ごろだったと思う、ニュース速報に感動した。安倍総理が今月26、27日にハワイのパールハーバー(真珠湾)をオバマ大統領と訪れ慰霊するというニュースだった。このニュースに接した多くの日本人は、5月に被爆地・広島を訪れたオバマ氏への返礼の訪問と感じたのではないだろうか。

  日本の現職総理がパールハーバーを訪れるのは初めてで、オバマ氏とともに犠牲者を慰霊し、これが最後となる首脳会談も行うという。総理は「二度と戦争の惨禍を繰り返してはならないという未来に向けた決意を示したい」と首相官邸で記者団に語っていた。謝罪ではなく、あくまでも未来志向なのだ。

【2019年5月26日付「☆シンゾーとドナルドのレアアース談義」】 この写真を見て感じたことは、お笑いコンビのようだ、と。写真は総理官邸のツイッター(26日)で公開している。安倍総理と(右)とトランプ大統領(左)が千葉県のゴフル場で自撮りした写真だ。とくに、安倍氏の顔がなんとなく、あの芸能人っぽく見える。アメリカのCNNニュース(日本版)は「外務省によれば、昼食は米国産の牛肉のダブルチーズバーガーだった。トランプ大統領は相撲観戦も行った。優勝した力士には、トロフィーの上部に翼を広げたワシをあしらった『トランプ杯』も贈呈した」と。米国産の牛肉のダブルチーズバーガーとあえて取材して伝えているところがアメリカのメディアらしい。

  1ヵ月後の「G20大阪サミット」(6月28、29日)では、習氏も日本を訪れる。トランプ氏とすれば、今後中国との貿易交渉で浮上するであろう「レアアース問題」に先手を打ちたいと考えるのは当然だろう。ひょっとして、米中の「レアアース問題」が日本の新たなビジネスチャンスとして浮上してくるかもしれない。冒頭のにっこり笑った2人の笑顔に次なる可能性が。

【2020年4月7日付「★緊急事態宣言で問われる非日常性のこと」】 安倍総理はきのう緊急事態宣言に先立って緊急経済対策会議を開き、午後5時50分から記者団に説明した。事業規模については「コロナウイルス感染の経済に与える甚大な影響を踏まえ、過去にない、強大な規模となるGDPの2割にあたる事業規模108兆円の経済対策を実施する」と述べた(6日付・NHKニュースWeb版)。緊急事態宣言は全国ではなく、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に出される。期間もゴールデンウイーク最終日の5月6日までをめどするようだ。海外のようなロックダウン(都市封鎖)は行わない。

【2020年8月29日付「★辞任表明、安倍総理のレガシーは何だ」】  会見ではいつも使っているプロンプターを今回使っていなかった。ということはコメントは会見直前まで練られていた。あるいは、予定していたコメントを直前になって大幅に書き換えた、のどちらかだろう。側近が辞任表明を知らなかったとのコメントを会見後に寄せているので、おそらく後者だろう。
 
⇒31日(月)朝・金沢の天気     くもり