#コラム

☆チャイナ目線 3つの小話

☆チャイナ目線 3つの小話

   香港政府とバックの中国政府は2日と3日の連日、民主活動家の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏や周庭(アグネス・チョウ)周庭氏ら3人への実刑判決、中国に批判的な報道の黎智英(ジミー・ライ)氏の収監と、民主派への締め付けを強めている。ふと思うことは、中国政府は日本の今をどのように眺めているのだろうか。小話ではある。

   安倍前総理の後援会が「桜を見る会」の前日に開いた夕食会の費用負担の問題。新聞各社の記事によると、夕食会は年に1回、都内のホテルに山口県の支援者らを招き、1人5千円の会費制で開かれた。2015-19年の5回では合計2300万円の経費がかかったにもかかわらず、会費分は計1400万円で、差額の900万円は安倍氏側が補塡した。ホテルは安倍氏が代表の資金管理団体あてに補塡分の領収書を発行していた。東京地検特捜部は公設第1秘書と事務担当者の2人を政治資金規正法違反(不記載)の罪で略式起訴する方向。罰金刑となり正式裁判は開かれない。

   このニュースを知った中国の要人は、「ところで、この件でいったい誰が損をして誰が得をしたのか。支援者が豪快に飲み食したツケを払った安倍氏がむしろ被害者ではないのか。それを罪に問うことは我々には理解できない。不思議な国だ」と言っているかもしれない。

   東京五輪・パラリンピックの1年延期に伴う追加経費と新型コロナウイルス対策費について、東京都が1200億円、国が700億円、大会組織委員会が700億円超を負担する方向で調整している。延期の追加経費は1700億円、新型コロナ対策費は900億円で調整している。組織委員会の森喜朗会長、都の小池百合子知事、橋本聖子五輪大臣が3者会談で決める。

   このニュースを知った中国の要人は、「森先生は大人(たいじん)で太っ腹だから、ついでに2022年2月からの北京冬季五輪の分も払ってくれないかと頼んでみよう。忘れもしない、2001年の李登輝の訪日問題では、あれほど我々が止めとけといったのにビザ発給したのは当時総理の森先生だ。あれは我々にとって『貸し』も同然だから、文句も言わないだろう」と言っているかもしれない。 

   ジョンズ・ホプキンス大学のコロナダッシュボードによると、新型コロナウイルスで亡くなった人の数は、世界全体の累計で150万人となった。コロナ禍の対応をめぐり、菅総理は国連の特別総会でビデオ演説し、「危機を乗り越えるべく『団結した世界』を実現しなければならない」と訴えたうえで、WHOの検証や改革に協力していく考えを示した(12月4日付・NHKニュースWeb版)。

   このニュースを知った中国の要人は、「我が国の社会学者が講演で、コロナ禍で中国の死者4千人は20万人のアメリカに比べれば1人も死んでいないに等しい、中国の人口14億人のうち4千人が死んでも、誰も病気になっていないのと同じだと語ったそうだが、偉大な指導者・毛沢東同志はかつて革命のためなら『1億死んでも構わない』とおっしゃった。数字はあくまでも演技、だからいちいち細かなコロナの数字なんて我が国では出さない。オリンピックもあることだし、菅総理もWHOにドンと100億㌦出すと言うべきではないか」と言っているかもしれない。 

⇒4日(金)午後・金沢の天気     はれ

★香港の民主活動「根絶やし」作戦か

★香港の民主活動「根絶やし」作戦か

    ついに「根絶やし」作戦に転じた。イギリスBBCWeb版(12月3日付)は「Hong Kong pro-democracy tycoon Jimmy Lai detained for fraud」(香港の民主化の大物、ジミー・ライが詐欺で拘束された)と大きく伝えている=写真=。日本のメディアも、香港の裁判所はきょう3日、中国批判で知られる「蘋果日報(アップル・デイリー)」創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏に対する詐欺罪での初公判を開き、保釈申請を却下して収監を命じた。黎氏は即日収監された(12月3日付・読売新聞WEB版)。

   黎氏の勾留は、来年4月16日の第2回公判まで続くとみられる。黎氏はこし8月に香港国家安全維持法(国安法)違反と詐欺などの疑いで香港警察に逮捕された後、保釈されていた。今回は、逃亡や再犯の恐れを理由に保釈申請が認められず、収監された(同)。

   では、今回の詐欺罪はどのような内容なのか。蘋果日報を発行する「壱伝媒」の本社がある不動産の貸借契約に反し、黎氏が別会社に一部を提供して不正に利益を得たとして詐欺罪に問われている(同)。つまり、「また貸し」が詐欺として罪に問われたというのだ。香港の転貸に関する法律を理解してはいないが、日本ならば、無断転貸の場合、ビルのオーナーは賃貸借契約を解除することになるだろう(民法612条「賃借権の譲渡及び転貸の制限」)。民事をあえて刑事事件として問い、収監におよぶところに政治的なむき出しが見て取れる。

   新聞メディアを経営する黎氏は一貫して民主活動を支持している。香港政府とバックの中国政府は、黎氏の収監により、中国に批判的な報道の萎縮を狙ったのだろう。きのう2日には、民主活動家の周庭氏や黄之鋒氏らが無許可集会を扇動したなどとして実刑判決を受けたばかりで、香港当局による民主派への締め付けは強まる一方だ。

   BBCの解説(3日付)によると、ことし6月に施行された国安法では、裁判は陪審員なしで秘密裏に行われ、裁判は本土当局に引き継がれる。本土の治安要員は、免責されたまま香港で合法的に活動することができる。この法律が導入された後、多くの民主化運動グループが安全性を恐れて解散した。中国政府は、この法律は民主化運動で揺らいだ領土の安定を取り戻し、中国本土との整合性を高めるのに役立つと主張している。
 
⇒3日(木)夜・金沢の天気    あめ

☆香港に響く「むせび泣き」

☆香港に響く「むせび泣き」

   香港の民主化運動を訴えてきた黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏や周庭(アグネス・チョウ)氏ら3人に香港の裁判所はきょう2日、禁錮刑を言い渡した。イギリスBBCも「Hong Kong: Joshua Wong and fellow pro-democracy activists jailed」(黄之鋒氏ら民主活動家を投獄)=写真=と大きく伝えている。香港、そして背後の中国に対して国際社会の目線はいっそう厳しくなるだろう。

   香港の民主派団体「香港衆志」の幹部だった黄氏や周氏ら3人は2019年6月、警察本部を取り囲んだ大規模な抗議デモに関連し、無許可の集会への参加をあおった罪などに問われ、先月11月23日、裁判所は有罪を認定し、拘置施設に収監されていた。きょう量刑が言い渡され、「公共の秩序と安全を壊し、市民の生命と安全を脅かした」として、黄氏に禁錮13か月半、周氏に禁錮10か月が確定した(12月2日付・NHKニュースWeb版)。

   BBCの記事の中で気になる下りがある。「The pro-democracy movement has been stifled since Beijing introduced a controversial security law with harsh punishments.But as their offences took place before the law’s enactment, the activists have avoided a potential life sentence.」。以下意訳だが、中国政府が、議論の的となっている香港国家安全維持法を(ことし6月に)導入し、厳しい罰則を科して以来、民主化運動は停滞している。この法律が施行される前に彼らの犯罪があったため、(今回3人の)活動家たちは終身刑を免れている。

   また同じくBBCが紹介している人権団体「アムネスティ・インターナショナル」の批判コメントも共通している。「Rights group Amnesty International condemned the ruling, saying it was a way for authorities to “send a warning to anyone who dares to openly criticise the government that they could be next”.」。以下意訳。人権団体アムネスティ・インターナショナルはこの判決を非難し、これは当局が「政府を公然と批判する勇気ある人に、次は自分たちであるという警告を送る」方法であると述べた。

   BBCやアムネスティ・インターナショナル伝えているように、この判決は民主活動家への「警告」だろう。香港国家安全維持法(国安法)施行前の法律での裁きなので、量刑はこれで済んでいるが、今後の抗議活動は国安法での裁きになるので終身刑も覚悟せよ、とのメッセージなのだ。

   周氏の場合、ことし8月に国安法に違反した疑いでも逮捕されていて、今後起訴される可能性もある。周氏が収監されるのは今回が初めとなり、周氏は裁判のあと肩を震わせてむせび泣いていた(NHKニュ-スWeb版)。ニュースを通じて、このような民主活動家への弾圧が現代でも繰り広げられていることに、憤りを覚える。

⇒2日(水)夜・金沢の天気    くもり

★同時配信というローカル局のチャンス

★同時配信というローカル局のチャンス

           DX(デジタル・トランスフォーメーション)が叫ばれているが、一番出遅れているのか民放ではないかと考えることがある。なぜなら、放送と通信(ネット)の同時配信がいまだに進んでいないからだ。そのネックの一つとなっていた著作権問題では道筋が見えてきたようだ。放送番組のインターネット同時配信の著作権問題について、文化庁著作権分科会のワーキングチームはきのう(11月30日)、ネット配信の著作権の処理については放送と同等に扱うべきとする報告書案をまとめた。          

   現状、著作権は放送と通信(ネット)では「平等」ではないという現実がある。たとえば、テレビ局が番組に曲を使う場合、実演家(演奏者・歌手・俳優)やレコード会社に事後報告でよいが、ネットでの使用の場合は事前許諾が必要となる。ただし、作詞家や作曲家には双方とも事前許諾が必要だ。このため、NHKは民放に先行してことし4月から1日18時間の同時配信の運用を始めているが、番組をネットに同時送信するため、わざわざ事前許諾を求めている。その権利処理が行えない場合には曲をカットしたり、差し替えをする、業界用語で「ふたかぶせ」の対応を迫られている。

   事前の著作権許諾の作業だけでもスタッフの配置が必要なためにコストもかさむことは想像に難くない。さらに、出演料なども地上波のみから、ネット配信もということになれば、値上げが必然となるだろう。NHKの2020年度インターネット活用業務実施計画(1月15日付)によると、今年度から同時配信を進めるために設備費や放送権料などにかかわる費用として54億円を計上している。

   仮に著作権問題がある程度軽減されたとして、民放の同時配信が進むかと問えば、さらに、別の大きな問題もある。一つはCMだ。テレビ離れが進んでいるといわれる若者たちがスマホやタブレットでテレビを視聴できる環境をつくったとして、局側がスポンサーにCM料を地上波に上乗せして払ってくれと言えるだろうか。地上波でのCM料は視聴率という目安があるが、同時配信でのネット上のCM料の目安はいまだ確立されてはいない。スマホやタブレット上の競争相手はテレビ局ではない、動画コンテンツは無限にある。

   もう一つは県域問題だ。ローカル局には放送法で「県域」というものがあり、放送免許は基本的に県単位で1波、あるいは数県で1波が割り与えられている。1波とは、東京キー局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、フジテレビ、テレビ東京)の系列ローカル局のこと。逆に言うと、スマホやタブレットで東京キー局の番組を視聴できれば、同じ系列局のローカル局の番組は視聴されなくなるかもしれない。

   このように書くと、民放、とくにロ-カル局には夢も希望もないような表現になる。が、個人的には同時配信に踏み切ることでローカル局にはチャンスが生まれると言いたい。ここからは持論だ。ローカル局が自社制作番組をネット配信をすることで、首都圏や遠方の他県に住む出身者など新たな視聴者層を開拓できるのではないだろうか。「ふるさと」をアピールできる。出身者でなくても、金沢・能登・加賀ファンをつかむことができる。

   できれば、金沢からリアルな情報を発信する動画配信サービスのサイトを石川県内の民放4局が共同出資でつくってほしい。それも、日本語と英語で構築できないだろうか。能登、金沢、加賀の県内各地のケーブルテレビ局も巻き込んで、「KANAZAWAチャンネル」をつくり、観光・ツーリズムを発信する。これまでの規制にとらわれない、新たなパラダイムがテレビ局に求められているのではないだろうか。今回の著作権の緩和はそのスタートだと解釈している。

⇒1日(火)夜・金沢の天気    はれ時々くもり

☆勇気ある発言

☆勇気ある発言

           これは実に勇気のある発言だと感じ入った。ロイター通信Web版日本語(11月27日付)によると、WHOで緊急事態対応を統括するマイケル・ライアン氏が、新型コロナウイルスの起源が中国「外」とする主張について、かなりの憶測だという見方を示した。 中国は国営メディアを使って「コロナの起源が中国」との見方を否定する情報の拡散を続けている。

   さっそくWHO公式ホームページをチェックすると、27日の記者会見の動画が掲載されている。30分過ぎごろからのオンラインによる記者の質問で、「中国は、ウイルスは去年暮れに武漢の海鮮市場で確認されたが、それ以前に海外に存在していたと主張しているが、WHOの見解を述べてほしい」(意訳)と。これに対し、ライアン氏は「コロナウイルスが中国で発生しなかったとの主張はかなりの憶測で、公衆衛生の観点から、ヒトの感染が確認された場所から調査を始めるべきことは明白だ」(意訳)と述べ、WHOとしてウイルスの起源を調べるため、専門家らを武漢の食品市場に派遣する方針だと述べた。

   パンデミック以降、WHOの記者会見をたまにチェックしているが、ライアン氏は3月18日の会見では、アメリカのトランプ大統領が新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼んでいることについて、「ウイルスを特定の国に関連させないよう言葉遣いに注意することが重要だ」と批判した。当時は中国寄りの発言との印象だったが、今になって考えれば、実に的を得た回答ではある。科学的な論拠を経ずに、政治が外交プロパガンダとしてウイルスを使うことに違和感を隠さない、そのような人柄を感じる。

   ただ、余計な心配かもしれないが、かなり「外圧」が今後、ライアン氏にかかるのではないだろうか。中国からだ。そもそも、WHOと中国の関係性が疑われたのは今年1月23日だった。中国の春節の大移動で日本を含めフランスやオーストラリアなど各国で感染者が出ていたにもかかわらず、この日のWHO会合で「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言を時期尚早と見送った。同月30日になってようやく緊急事態宣言を出したが、テドロス事務局長は「宣言する主な理由は、中国での発生ではなく、他の国々で発生していることだ」と述べていた(1月31日付・BBCニュースWeb版日本語)。

   さらにWHOが中国寄りの姿勢を露わにしたのは今回の年次総会だった。WHOに加盟していない台湾がオブザーバーとしての参加を目指し、中南米の国も参加を求める提案をしていたが、総会の議長は非公開での協議で提案の議論は行わなかった。このため、台湾のオブザーバー参加は認められなかった。台湾の参加はアメリカや日本などが支持した一方で、中国は強硬に反対していた(11月10日付・NHKニュースWeb版)。テドロス氏を通じた、中国からのライアン氏への圧力は心配ないのか。

⇒30日(月)午後・金沢の天気   はれ時々くもり 

★NHKの「在るべき方向」とは

★NHKの「在るべき方向」とは

   このブログでも何度かNHKの受信料をテーマに取り上げてきた。先月10月16日、受信料制度の在り方などを検討する総務省「放送を巡る諸課題に関する検討会」で、NHK側が家庭や事業所でテレビを設置した場合はNHKへの届け出を義務化するよう放送法の改正を要望したというニュース(10月17日付・共同通信Web版)があった。受信契約を結んでいない世帯の居住者の氏名や、転居があった場合は転居先などの個人情報を、公的機関などに照会できるようにする仕組みの導入も求めた。受信契約の対象者を把握することで不払いを減らし、営業経費の削減にもつながるというのだ。

   今月20日、総務省は11月20日、NHKが求めていたテレビ設置届け出の義務化は「不適当」として見送る方針を示した(11月20日付・日経新聞Web版)。NHKは特殊法人として受信料に支えられ、法人税は免除されている。この環境で、さらにテレビ設置届け出の義務化では視聴者・国民の反発を招くと判断したようだ。このいきさつについて詳しく知りたいと思いネットで検索したところ、関西テレビ公式ホームページ「東京駐在 キーパーソンに訊く!」で、高市早苗・前総務大臣へのインタビュー記事が参考になった。以下記事を引用する。

   NHKの2019年度決算の営業経費(徴収経費)は759億円だった。同年度の受信料収入は7115億円なので、営業経費が10.6%を占めたことになる。徴収コストが高い。それは強制徴収の制度も罰則もないので、「NHKの苦労」はある意味で同情する。ちなみに、フランス、ドイツ、韓国では受信料は強制徴収で、支払わない場合は罰金や追徴金が課される。イギリスは強制徴収制度はないが、罰則規定はある。

    NHKの営業経費の中で「訪問要員による係わる経費」が305億円。訪問要員は、未契約者や入居者の入れ替わりを把握するための「点検」、「面接」、「(テレビの)設置把握」、「説明・説得」という手順を踏んで、「契約取次」にいたる。が、未契約者からは「急に訪ねてきたNHKの訪問員が、テレビの有無を確認すると言って無理やり部屋に上がりこんで・・・」といった苦情が寄せられることになる。こうしたクレームやトラブルを解消するために、NHKは公共料金や税金との共同徴収を可能にする「放送法」の改正を望んでいる。

   しかし、地上波のみの地上契約で年額1万4700円、地上波を含む衛星契約で年額2万6040円の受信料。衛星アンテナが設置された集合住宅に入居すると、衛星放送をまったくに視聴しないのに年額2万6040円の受信料負担は納得できないと感じている視聴者も多い。ましてや、(上記の)放送法の改正をするのであれば、受信料を相当安い水準にしなければ視聴者の支持と信頼感は得られない。また、コスト的に、地上波2波、ラジオ3波、衛星4波は「放送波の肥大化」との批判もある。受信料の引き下げは放送波のコストカットと連動して行うべきだ。さらに、2019年度の「繰越余剰金」、つまり内部留保は1280億円もある。繰越余剰金を受信料に還元する会計上の仕組みが必要であるが、これは実現性が高い。

   インターネットと地上波の同時配信で問題もある。テレビは持っていないが、ネットでNHKを視聴したいというニーズに対応できていない。放送法の受信料制度は「テレビ受信機の設置」が基準になっている。放送法の抜本的な見直しも必要となるだろう。

   最後に高市氏が述べていること。「そもそも企業スポンサーが不要なのですから、民放と競って視聴率狙いの番組制作をする必要はない」「『伝えるべき方向』に向けて進んでいただきたい」と。同感である。

⇒29日(日)夜・金沢の天気     はれ

☆この株高、「ワクチンバブル」なのか

☆この株高、「ワクチンバブル」なのか

   東京株式の日経平均はきのう27日も107円上げ2万6644円で終えた。メディア各社は、1991年4月以来およそ29年半ぶりの高値を連日で更新したと報じている。株高は日本だけではない。ニューヨークのダウも今月24日に初めて3万㌦の大台に乗せている。

   振り返ってみると、新型コロナウイルスのパンデミックによる世界的な景気後退の懸念や、ロシアとサウジアラビアの対立による原油価格の暴落なども絡まり、全体が「弱気相場」に入っていた。とくに3月に入り、ニューヨークの株価指数「S&P500」の下落率が7%を超えると自動的に売買を停止する「サーキットブレーカー=Circuit Breaker」が何度か作動し、3月23日にはダウが1万8591㌦にまで落ちていた。東京株式も3月19日に1万6500円まで下がり、ことしの最安値だった。

   今でもコロナ禍は世界、とくにアメリカでの猛威は止まない。ジョンズ・ホプキンス大学のコロナダッシュボード(日本時間28日午前9時現在)によると、アメリカの感染者総数は1307万人、死亡者は26万人と断トツに多い。そして日本でもきのう27日は全国で2531人の新規感染者が発表され、2日連続で2500人超だ。にもかかわらず、年末が近づくにつれて株価が上がり、日経平均もダウも株価は絶好調だ。この現象はいったい何んなのか、そのファクターは何か。

   マーケット関係の記事を読むと、アメリカではコロナ対策で政府や連邦準備理事会(FRB)がつぎ込んだマネーが膨張して株式市場に流れ込んでいるのではないかという論が散見される。ただ、3月の安値からの上昇率は6割以上に達する。マネーの流入にしては、最近の株価の加速性を見ると時期的にアンバランスのように思える。アメリカ大統領選があった11月3日以降が上昇のテンポが速いので、バイデン効果かとも推測する。

   むしろ、ワクチン開発がアメリカの期待度を高めているのかもしれない。アメリカの株価が持ち直してきたのは、ワクチン開発を国家プロジェクトで進める「ワープ・スピード計画」が8月以降で臨床試験が本格化したタイミングだった。それが11月に入り早期実現のメドが立ってきた。「トランプ大統領は、新型コロナウイルスのワクチンの供給が来週とその翌週に開始する見通しだと述べた」「感謝祭の祝日に合わせて行われた海外駐留米軍兵士とのテレビ会議で語った。当初はコロナ対応の最前線に立つ人たちや医療従事者、高齢者に供給されると述べた」(11月27日付・ロイター通信Web版日本語)。

   ワクチンに関しては、アメリカの製薬会社は90%以上の有効性が確認されたとして、すでに緊急使用許可を政府に申請している。アメリカで12月からワクチン投与が始まれば、コロナ禍が社会や経済に及ぼしている影響が大幅に緩和されるとの期待が高まるだろう。ただ、ワクチン頼みだと、その効果の持続性や副作用などのマイナス面が出ると反動も大きく、経済パニックが再来し、ワクチンバブルも一瞬にして弾ける。アメリカのワクチン効果が国際社会に及ぼす影響を観察していきたい。

⇒28日(土)午前・金沢の天気     あめ

★「尖閣」めぐり高まる怨嗟の声

★「尖閣」めぐり高まる怨嗟の声

   24日の中国の王毅外相、茂木敏充外務大臣の共同記者会見での王氏の尖閣をめぐる発言、そして茂木氏の黙認するそぶりへの批判がいまだに尾を引いている。

           きょう27日の参院本会議で、質問した自民の山田宏氏は「国民は茂木外相にびしっと反論してほしかったと強く感じている。なぜ反論しなかったのか」とただした。すると茂木氏は「全く受け入れられない。尖閣は歴史的にも国際法上も疑いのないわが国固有の領土だ」「会談の中で(中国公船の)領海侵入やわが国の漁船への接近など個別事案も取り上げ、こうした行動を取らないよう強く申し入れた」と反論した(11月27日付・共同通信Web版)。 質問の答えにはまったくなっていない。むしろ、不信感を増長するだけの答弁だ。

   両者をさらに手厳しく批判したのは意外にも共産党の志位和夫委員長だった。以下、26日の記者会見。志位氏は「王毅外相の発言は、“日本側に問題があったから、やむを得ず中国として対応をしている”と日本側に責任を転嫁するものだ」と批判した。その上で、今年の中国公船の尖閣諸島の接続海域への入域日数24日現在)はすでに304日に達し、昨年の282日を大きく上回ったのに加え、「中国公船が日本漁船を追い回すという非常に危険な事態も起きている」と指摘。「中国のこのような覇権主義的な行動を直ちに中止することを強く求める」と表明した(11月26日付・しんぶん赤旗WEB版)。

   さらに志位氏は、共同記者会見に同席した茂木氏は王氏に何ら反論や批判もしなかったとして、「中国側の不当で一方的な主張だけが(記録に)残るという事態になる。極めてだらしない態度だ」と批判。また、直後に王氏と会談した菅総理が王氏の「暴言」についてただした形跡もないとして、「覇権主義にモノも言えない屈従外交でいいのか」と厳しく批判した(同)。 

   日本と中国の相互意識を探る第16回日中共同世論調査(実施=言論NPO、中国国際出版集団)の調査結果(ことし9月と10月調査)で、中国に「良くない」という印象を持つ日本人は前回に比べ5ポイント増の89.7%に上った。その理由として、中国公船などによる「尖閣諸島周辺の日本領海や領空の侵犯」が同6ポイント増の57%で最も多く、以下、「国際的なルールと異なる行動」49%、「南シナ海などで行動が強引・違和感」47%で、中国による一方的な海洋活動が対中感情を悪化させている。

   韓国もさることながら、中国に対する不信の念、怨嗟の声は高まるばかりだ。そして、尖閣諸島が実に根深い外交問題になってきた。

⇒27日(金)夜・金沢の天気  はれ

☆記者会見は「戦いの場」

☆記者会見は「戦いの場」

   きのうのブログの続き。24日、来日した中国の王毅外相、茂木敏充外務大臣の共同記者会見=写真、外務省公式ホームページ=で、茂木氏は「尖閣周辺の日本の立場を説明し、中国側の前向きな行動を強く求めた」と話したのに対し、王氏は「ここで一つの事実を紹介したい。真相が分かっていない一部の日本の漁船が絶え間なく釣魚島の水域に入っている。中国側としてはやむを得ず非常的な反応をしなければならない。敏感な水域における事態を複雑化させる行動は避けるべき」と、堂々と会見で述べていた。視聴した多くの視聴者が「日本はなめられている」との印象を受けた。もう一つ、茂木大臣が黙認していたことも納得できなかった。

   王氏の発言は、尖閣周辺の主権を侵害しているのは日本側だと、中国としてはやむを得ず対応をしていると、まるで日本側に責任を転嫁する内容だった。これに対し、茂木氏が共同記者会見の場にいたにもかかわらず、王氏の発言に何らの反論もしなければ、批判もしなかった。つまり、王氏の一方的な主張だけをアピールする場となった。この映像を海外の視聴者が見れば、日本は中国の主張を認めたと理解だろう。中国の視聴者が見れば、「大勝利」と叫ぶだろう。日本側のだらしなさが露呈したカタチだ。これほど後味の悪い記者会見は見たことががない。

    おそらく茂木氏は記者会見は「戦いの場」との認識がない。「成果報告の場」くらいの感覚だったのではないか。中国では記者会見という場の設定はないが、カメラは人民に向けたメッセージの手段という認識だろう。なので、メッセージ性の高い、抑揚を効かせた言葉を発することに慣れている。この違いがまともに表れた会見の場だった。

   外交で「戦いの場」となった事例はある。河野太郎氏が外務大臣だった2019年7月、いわゆる「徴用」をめぐる問題で、日本が求めてきた仲裁委員会の開催に韓国政府が応じなかったことから、河野氏が韓国の駐日大使を呼び抗議した。これに対し、大使が「徴用」の問題の解決に向け、韓国政府が提案した案を説明しようとすると、河野氏は発言をさえぎり、「その提案は以前、国際法違反の状況を是正するものではないと伝えている。それを知らないふりをして改めて提案するのは極めて無礼だ」と強い口調で述べた(2019年7月19日付・NHKニュースWeb版)。この場はメディアの取材が入っていたので、相互がそれを意識した発言だった。ここで河野氏が反論しなければ、韓国大使の勝利だった。

⇒26日(木)夜・金沢の天気     くもり  

★「尖閣」をめぐる次なる狙い

★「尖閣」をめぐる次なる狙い

   きのう24日、来日した中国の王毅外相、茂木敏充外務大臣の共同記者会見の様子をテレビで見ていて、多くの視聴者は「日本はなめられたものだ」と憤ったのではないだろうか。茂木氏は「尖閣周辺の日本の立場を説明し、中国側の前向きな行動を強く求めた」と話したのに対し、王氏は「ここで一つの事実を紹介したい。真相が分かっていない一部の日本の漁船が絶え間なく釣魚島の水域に入っている。中国側としてはやむを得ず非常的な反応をしなければならない。敏感な水域における事態を複雑化させる行動は避けるべき」と。つまり、尖閣周辺の主権を侵害しているのは日本側だと、堂々と会見で述べていた。

   王氏の来日の目的はこれだと察した。当初は、中国の人権問題をめぐって日本は「日米豪印戦略対話(QUAD)」を推進する立場でもあり、それを切り崩すための来日が目的かと推測した。ではなく、「尖閣をめぐる宣戦布告」が目的だったと、この発言で直感した。では、次に中国が打ってくる戦術はなんだろう、と考える。日本の漁民によって中国の主権が侵害されているとの論法なので、おそらく中国側は尖閣に漁民を住まわせるための住居地をつくる。そして、通信機器や沿岸の整備を行い漁業の基地化を進めて既成事実化していくのではないだろうか。

   中国は南シナ海の南沙諸島で「九段線」と称して広大な海域の領有権を主張し、人工島の建設を進めその主張を既成事実化しようとしている。同じ論法を今度は尖閣諸島で展開する布石ではないだろうか。ただし、軍事基地にすると、アメリカを刺激するので漁業基地化だ。菅総理は今月12日、バイデン次期大統領との電話会談で、「バイデン次期大統領からは、日米安保条約第5条(アメリカの対日防衛義務)の尖閣諸島への適用についてコミットメントをする旨の表明があった」と述べていた。日米安保条約第5条をにらんで漁業基地化するというのが中国側のシナリオではないだろうか。

   日本の首都で堂々と尖閣の領有権を主張したのだから。あとは粛々と次なる一手を打つだけだ。日本は新型コロナウイルスと東京オリ・パラの対応に追われている。そのうち大震災も発生するだろう、今が先手を打つチャンスと読んでいるのだろう。実にしたたかな、日本をなめた外交ではある。

   外務省公式ホームページに掲載されている内閣官房領土・主権対策企画調整室の資料=写真=によると、1919(大正8)年冬、中国・福建省の漁船が尖閣沖で遭難して魚釣島に漂着した。その際、尖閣に住んでいた日本人の住民は中国漁民を救護した。当時の中華民国駐長崎領事は翌1920年5月に感謝状を贈ったが、そこには「日本帝国沖縄県八重山郡尖閣列島」と記されている。100年前の史実である。

⇒25日(水)夜・金沢の天気    くもり