#コラム

☆「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」

☆「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」

   庭のウメが咲き始めたので、床の間に生けてみた。ウメの花は二輪、白ツバキはつぼみ=写真=。紅白の花のコントラストが祝い事をイメージさせて心がなごむ。

   ウメの枝を切っていて、「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」ということわざを思い出した。サクラは枝の切り口から幹に腐朽菌が入り、空洞が出来たりするので、枝の剪定は難しいとされる。ウメは枝からさらに徒長枝(とちょうし)と呼ばれる枝が数多く伸びて枝が込み合う。念入りに剪定しないと花が咲きにくくなる。サクラ、ウメともに同じバラ科サクラ属の落葉樹ではあるが、これだけ性質が異なる。そう考えると、「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」は樹木の剪定作法を象徴する言葉であり、物事は違いを把握して対応せよという管理マネジメントの教えのようにも解釈できる。

   このところのニュースを見ていて、「接待する馬鹿、しない馬鹿」という言葉を思いついた。放送事業会社「東北新社」の菅総理の長男を含む幹部らが総務省のキャリア官僚に対して度重なる接待をしていた問題。NTTによる接待問題も浮上している。総務省は「放送行政」の元締め、つまり、電波の割り当てをベースとした放送事業の許認可行政の本丸なのだ。

   1957年(昭和32年)のことだ。その本丸(当時郵政省)に最初に近づいたのは新聞社だった。第一次岸改造内閣で郵政大臣に就任した田中角栄は「1県1波」のいわゆる「県域放送」を進めた。キー局の系列局を1県に1波を割り当てるという指針だ。それに乗ってきたのが現在の大手新聞社で、キー局 –ネット局体制の原型を完成させる。たとえば、読売新聞-日本テレビー系列30局、朝日新聞-テレビ朝日-系列26局という巨大なメディアネットワークだ。

   その電波割り当てに関して、大役を担ったのが、当時「波とり記者」と称された郵政省担当の新聞記者だった。新聞社が各県に系列のテレビ局をふやすため、放送免許取得の働きかけを担った。自身は1991年にテレビ朝日系のローカル局に入社した。本放送を半年後に控え、朝日新聞の「波とり記者」は新会社の経営陣・スタッフに放送行政についてレクチャーしてくれたのを覚えている。「相手が大臣であっても役人であっても、対等に話すことで相手はむしろ信頼してくれる」と語っていた。そして、よく飲んだことも話してくれて印象に残っている。

   「虎穴に入らずんば、虎子を得ず」ということわざがある。自ら血まみれになる覚悟で本丸に入り、そこで信頼を築いて情報を仕入れ、そして交渉をまとめる。その延長戦上には接待もありだろう。それが交渉術というものだ。「波とり記者」が話してくれた「対等に話すことで相手はむしろ信頼してくれる」はまさに虎穴に入る覚悟だと思っている。もちろん、接待ありきではない。まして、贈賄は対等性を否定することにもなり、論外だ。

⇒4日(木)夜・金沢の天気    くもり

★「コウノトリ」ストーリーの商品展開

★「コウノトリ」ストーリーの商品展開

  先日このブログで「世界が認める『生き物ブランド米』」(2月10日付)と題して、兵庫県但馬地域のブランド米「コウノトリ育むお米」がフランスへの輸出を始めることになったとNHKニュースWeb版(2月9日付)の記事を引用して書いた。地元のJAが特別天然記念物、コウノトリの野生復帰を促す活動に協力するため、農薬や化学肥料をできるだけ使わない環境に配慮した栽培方法で稲作を進めていて、ブランド米としての評価が高まった。動植物と共生する稲作づくりで販売するコメは「生き物ブランド米」と称される。佐渡市の「トキ米」と並び、ブランド米の代名詞だ。

   先日、金沢のスーパーで『コウノトリの郷のおかき屋さん』という袋を見つけてさっそく購入した=写真・上=。兵庫県豊岡市で栽培するモチ米でつくっていて、「生き物ブランドせんべい」と言えるだろう。となると、当然「生き物ブランド酒」もあってしかるべき。実際にある。『コウノトリの贈り物』という銘酒だ。前回のブログの繰り返しになるが、なぜそのような銘柄がついたのかストーリーをたどる。

   豊岡は古くからコウノトリが舞い降りる名所だった。ところが、戦時中には巣をつくる営巣木のマツが大量に伐採され、さらに、戦後はコメの増産から農薬が普及して、田んぼにはコウノトリのエサとなるカエルやドジョウなどが激減し、コウノトリもほとんど見かけなくなった。そこで、2005年9月に「コウノトリの里」の復元を目指して、秋篠宮ご夫妻を招いてコウノトリの放鳥が行われた。カゴから飛び立った5羽のうち一羽が近くの田んぼに降りてエサをついばみ始めた。その田んぼでは有機農法で酒米フクノハナをつくっていた。金沢の酒蔵メーカー「福光屋」が豊岡の酒米農家に「農薬を使わないでつくってほしい」と依頼していた田んぼだった。

   このことがきっかけでJAなどが中心となってコウノトリにやさしい田んぼづくりを始めるようになった。農家の人たちは除草剤など使わず、手作業で草を刈るようになった。その後、豊岡ではコウノトリが野生復帰した。コウノトリが舞い降りる田んぼの米「コウノトリ米」には付加価値がついた。コウノトリを見ようと毎年50万人が訪れ、エコツーリズムの拠点にもなった。福光屋は豊岡での限定販売で『コウノトリの贈り物』という純米酒を造っている=写真・下=。

   この物語は金沢では知られてはいないし、一般の酒屋で『コウノトリの贈り物』も販売されていない。そこで、福光屋に問い合わせると「本社のみで販売しております」との返事だった。同社のホームページをチェックすると、通信販売も可能だ。せっかくなので足を運んだ。

   1本750㍉㍑が1650円。購入しただけでも満足度が高まる。それが「ストーリー買い」というものだ。さらに、収益の一部は「豊岡市コウノトリ基金」に寄付されると記載されていた。駄目押しのセリフだ。コウノトリのストーリー展開は実に奥深い。

⇒3日(水)午後・金沢の天気     はれ

☆ジェネリック医薬品は「他人事」なのか

☆ジェネリック医薬品は「他人事」なのか

   小さいころ、親から「薬クソ売」という少々下品な響きの言葉を聞いた。効き目のない薬を高く売ってボロ儲けしている業者を皮肉る意味で使っていた。その後、「薬九層倍」という四字熟語を知る。薬の売値は原価に比べて非常に高く、利益が多いことから、巨大な利益を得ることのたとえ(三省堂「現代新国語辞典」)。今まさに「薬クソ売」、「薬九層倍」の背景が解き明かされるニュースが相次いでいる。それも北陸で、だ。

   富山市に本社を置くジェネリック医薬品製造大手の「日医工」に対し、富山県があす3日、業務停止命令を出す方針を固めたことがわかった。記録の不備など、管理体制に問題があったと判断したもので、期間はおよそ1ヵ月となる見込み。日医工では、滑川市の工場で品質試験の際の記録の不備などが発覚し、高血圧薬など75製品を自主回収している。健康被害は確認されていないが、県は自主回収した製品数が多いことから、管理体制に問題があったと判断し、行政処分を出す方向で検討を進めている。処分は、「許可取り消し」「業務停止」「業務改善」のうちの「業務停止」で、期間は富山第一工場の製造部門が30日前後、子会社などから医薬品を仕入れ販売することなどを含む製造販売部門が20日前後となる見込み(3月2日付・北日本放送ニュースWeb版)。

   75製品にも及ぶ自主回収だ。ニュースから読めることは、品質試験で不適合となった製品を廃棄せずに、再試験を行って通していた。その再試験の記録は破棄していたということだろうか。品質管理の重大な問題であり、メーカーは自ら真相を発表すべきだ。

   そこで、日医工の公式ホームページをチェックするとプレスリリース(2月25日付)が掲載されていた=写真=。文面は「本日、一部の業界紙において、富山県が当社に対して業務停止命令を出す方向で調整に入ったとの報道がありましたが、当社が発表したものではございません。また、富山県より現在、業務停止命令は受けておりません。」とまるで他人事のようだ。3月1日付では「組織変更および人事異動について」と題して、 製剤技術本部を新設し、既存品が抱えている課題の早期解決は図るなどと説明している。

   ジェネリック医薬品をめぐってはさらに不信が募る。水虫などの皮膚病治療薬に睡眠導入剤成分が混入していた福井県あわら市の医薬品メーカーの「小林化工」に対し、県は2月9日、医薬品医療機器法に基づき、同社に6月5日まで116日間の業務停止処分と業務改善命令を出した。県は、小林化工の経営陣が法令違反を把握していながら改善策を講じなかったことなどを問題視。同社は問題の治療薬以外でも、虚偽記録の作成や品質試験結果の捏造などの違反を長年続けていたという(2月9日付・時事通信Web版)。多品種生産による製造機の使い回しで、このような成分の混入は得てして起こる。怖い話だ。

   上記の一連のジェネリック医薬品メーカーの不祥事を見て、社内のガバナンスの問題が深刻だと察する。その問題の背景は何か。先発メーカーがコストと時間をかけて開発した新薬(先発医薬品)の特許が切れた後、ジェネリック医薬品として上記のメーカーなどが製造している。そして、政府が医療費抑制の切り札としてジェネリック医薬品をまさに国策として推奨してきた。言葉は悪いが、製造も販売も他人事のようだ。

   使う側にも、ジェネリック医薬品メーカーは果たして先発メーカーと同様にきちんと製造しているのかと心にわだかまりを持つ患者は今も多い。今回の不祥事で、先発メーカーのものを希望する人たちが増えるだろう。

⇒2日(火)夜・金沢の天気    くもり

★「易地思之」という言葉

★「易地思之」という言葉

   きょうから3月、季節は移ろう。金沢では日中の最高気温が21度まで上がり、春というより5月の初夏を感じさせる暖かさだった。ふと気づくと、すでに樹木の葉が芽生えて、地べたでは雑草が生えている。「草木萌え動く」。冬の間に蓄えていた生命の息吹が一気に現れる季節でもある。さらに、世界も動き出すのか、隣国から強烈なメッセージが届いた。

   読売新聞Web版(3月1日付)によると、中国国防省は1日、沖縄県・尖閣諸島の周辺海域で続いている中国当局による領海侵入について、「中国公船が自国の領海で法執行活動を行うのは正当であり、合法だ。引き続き常態化していく」とする方針をSNS上で発表した。一方、海上保安機関・海警局(海警)などの船が尖閣諸島に上陸する目的で島に接近した場合、日本側は相手を負傷させる可能性のある「危害射撃」を行える場合があるとの見解を日本政府が示したことについて、中国外務省報道官は1日の定例記者会見で「いかなる挑発行為にも断固対応する」と反発を示した。

   脅しの口実とタイミングが巧妙だ。中国は先月、海警局の船に武器の使用を認める「海警法」を施行したことから、日本では懸念が高まり、相手を負傷させる可能性のある「危害射撃」を行える場合があるとの見解を示していた。それを中国は「いかなる挑発行為にも断固対応する」と反発した。中国は明らかに尖閣支配に向けてギアを上げている。

   さらに注目していたのは韓国からのメッセージだった。韓国の中央日報Web版日本語(3月1日付)によると、文在寅大統領は、1919年3月1日に日本の統治下で起きた独立運動を記念する三一節記念式典で演説した。日本と韓国の関係については「韓国政府は常に被害者中心主義の立場で賢い解決策を模索する」と述べ、「わが政府はいつでも日本政府と向き合って対話をする準備ができている」とし「易地思之(相手の立場に立って考える)の姿勢で向き合えば、過去の問題も賢明に解決できると確信している」と強調した。

   さらに、「今年開催される東京オリンピックは韓日間、南北間、日朝間、そして米朝間の対話の機会になる可能性がある。韓国は東京五輪の成功に向けて協力する」と語った(同)。

   文氏のメッセージは強烈かと思ったが、ある意味で肩透かしだった。ただ、「易地思之」という言葉が気になった。自身はこの四字熟語を初めて見た。ネットで調べると韓国の政治家がよく使う言葉のようだ。この言葉は注意する必要がある。自分が相手の立場に立って考えるのか、相手に自分の立場を考えさせるのか、使い方によって二通りある。日本の政治家が真似してヘタに使うと、いわゆる元慰安婦問題や元徴用工問題で日本側が理解を示したと喧伝されるかもしれない。ハニートラップのような政治の言葉かもしれない。

⇒1日(月)夜・金沢の天気     はれ

☆能登・千里浜から見える海の問題の数々

☆能登・千里浜から見える海の問題の数々

   波打ち際を乗用車やバスで走行できる海岸は世界で3ヵ所と言われる。アメリカ(フロリダ半島)のデイトナビーチ、ニュージーランド(北島)のワイタレレビーチ、そして能登半島の千里浜(ちりはま)海岸だ。全長8㌔だが、うち6㌔を車で走行することが可能で「千里浜なぎさドライブウェイ」とも呼ばれる。砂のきめの細かさと、適度に海水を含んで引き締まっていることでビーチが道路のようになる。観光バスでも走ることができ、能登半島の観光名所としても知られる=写真・上=。

        車だけではない。人も違和感なく走ることができる。 5月21日と6月1日には東京五輪・パラリンピックの聖火ランナーが石川県を走るが、このビーチもそのルートに入っている。ところが、この名所が危機に瀕している。このところ、地元メディアでも大きく報じられているが、波による砂浜の浸食で幅が狭まっている、うち300㍍ほどが消滅した状態になっている。

   浸食は以前から問題となっていた。河川災害を予防するためにつくられた砂防ダムや、コンクリートの護岸が設置されて、陸からの砂が海岸に運ばれなくなった。とくに、金沢港に建設された長い堤防の影響で、砂を含んだ加賀地方からの海流がせき止められて、千里浜海岸への流れが少なくなってしまった。波による砂浜の浸食は常に起こるが、それを補給する砂の海流が細ってしまったということだ。県や関係自治体では2011年に「千里浜再生プロジェクト」を設置して対策を検討している。

   さらに不安をかき立てるのが、地球温暖化による海面上昇だ。気象庁の調べによると、昨年の日本沿岸の平均の海面水位は、平年と比べて8㌢余り高く、統計を取り始めてから最も高くなった。地球温暖化の影響で海面上昇が進展していることに加え、特に昨年は周囲より暖かい黒潮が日本の沿岸付近を通ったことが背景にあると指摘している(2月28日付・NHKニュースWeb版)。1960年から2020年までの海面水位の変化を海域別に見た場合、北陸から九州の東シナ海側で他の海域に比べ大きな上昇傾向がみられる(気象庁公式ホームページ「日本沿岸の海面水位の長期変化傾向」)

   千里浜はもう一つの名所でも知られる。春や秋の波打ち際にシギやチドリといった渡り鳥の群れが次々と降りてきて、人々を和ませる=写真・下=。渡り鳥はオーストラリアから日本を経由してシベリアを往復する。その途中で、能登半島の千里浜海岸に立ち寄る。お目当ては全長数㍉から1㌢ほどの小さなエビ、ナミノリソコエビだ。鳥たちは波が引いた砂の上に残るナミノリソコエビを次の波が打ち寄せるまでのごくわずかな時間でついばむ。

   ただ、このエビは砂質が粗くなり汚泥がたまると生息できなくなる。つまり、シギやチドリが降りる海岸はきれいな海のバロメーターでもある。しかし、砂浜の浸食によって波打ち際の生態系も危うくなっているのではないだろうか。

   砂浜の浸食だけでなく、能登半島の対岸からはポリタンクやペットボトル、食品トレー、医療系廃棄物(注射器、薬瓶、プラスチック容器など)の漂着がある。海洋プラスティックごみ、そして海中のマイクプラスティックと海のめぐる問題は複雑化している。

⇒28日(日)午後・金沢の天気     はれ

★コロナ騒動と「能登ジン」

★コロナ騒動と「能登ジン」

   能登半島の尖端に金沢大学が設けている能登学舎。ここで実施する社会人の人材育成事業「能登里山里海SDGsマイスタープログラム」についてはこのブログでも何度か取り上げている。月2回の割合で土曜日に実施し、座学や演習・実習、そして卒業課題研究などに取り組む10ヵ月のプログラムだ。卒業課題研究では自然環境問題や地域課題、起業やSDGsの取り組みなど、これまでイメージでしかなかった自分の思いを調査や実施計画の策定などを通じてストーリーとして描く。

   その卒業課題研究の発表会がきょう27日あった。2020年度の受講生は新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり人数は10人に減った。そして、これまで能登学舎での講義だったが、オンラインが中心となった。その分、教員は個別指導にもチカラを入れた。そして迎えたきょうの発表会は受講生が一堂に会する晴れの舞台、の予定だったが、急きょオンランに切り替わった。というのも、前日26日になって、「コロナ騒動」が持ち上がったからだ。

   別の研究プロジェクトのために能登学舎に来ていた学生が発熱と倦怠感を訴え、病院に運ばれた。26日午前のことだった。正午の段階で検査結果は出ていなかったが、万一に備えて、午後1時30分にはオンラインでの発表会に切り替え、全員に連絡した。というのも、受講生の中には能登地区だけでなく、県外の在住者もいるので、前泊のため午後には能登にやって来る。早めに連絡する必要があった。別日での開催、あるいは別の場所でとの案もあったが、「オンラインが無難」となった。結局、この学生のPCR検査の結果も陰性ということでひと安心。何より、スピード感を持って慎重に対処することがコロナ禍で求められることだと実感した。

   きょう午前9時30分からオンラインでの発表会。自身も審査員として参加した。発表者の一人で、東京のIT企業に勤める受講生は能登に移住し、5年後をめどに能登でジンの蒸留所の設置を目指す計画を淡々と述べた=写真=。能登の塩にユズの皮、クロモジなど、地元の素材を使った洋酒「能登ジン」を造る。この研究のため、去年9月にはEU離脱にともない蒸留酒製造が規制緩和されたイギリスの蒸留所の現場を訪れ、製造工程やコスト算出のノウハウなど学び、能登の植物素材で試作品を造ってもらった。その試作のジンが能登学舎に届けられていた。ユズの甘い香りは能登の自然豊かな里山をイメージさせる。「能登に新たな文化を持ち込む可能性」を感じた。

   受講生が夢の実現に向けて行動するとなれば、マイスタープログラムとは別途設けている金融機関と連携するセミナー「創業塾」で融資に至る手続きなど実務面を学ぶこともできる。

   3月20日には能登学舎で2020年度修了式も開催される予定だ。受講生がオンラインを超えて、初めて一堂に会する「晴れの舞台」となる。

⇒27日(土)夜・金沢の天気     はれ

☆島根の知事、「神等去出」のごとく

☆島根の知事、「神等去出」のごとく

   島根県の知事は日本一忙しい知事ではないだろうか。2月22日は島根県が条例で定める「竹島の日」だった。韓国による竹島の占拠は、国際法上、何の根拠もないとされる。島根県はこの日、松江市で式典を開き、丸山達也知事は「竹島は、わが国固有の領土だ。韓国と外交の場で、竹島問題が話し合われるよう強く要望する」と述べて、外交交渉による解決を政府に求めた(2月22日付・NHKニュースWeb版)。

   その丸山知事が一躍注目されたのは今月17日だった。この日、島根県庁で開かれた聖火リレーの実行委員会で中止を検討していると表明した。聖火リレーの実施について、県は大会組織委員会と協定を結んでおり、聖火ランナーやルートを決める県実行委の事務局を担当している。同県の聖火リレーは土日にあたる5月15、16日に実施予定。津和野町をスタートし、松江城(松江市)を目的地とする14市町村(総距離34.3㌔)で170人が聖火をつなぐ予定だ。警備費用など約9千万円を県の財源で予算化しており、県の判断で聖火リレーを事実上ストップすることもできる。

   中止理由として、東京都が感染拡大で手が回らなくなった保健所の調査を縮小したため、感染経路や濃厚接触者の追跡ができていないと不信感を表明している。全国の飲食店などが打撃を受けているにもかかわらず、緊急事態宣言が出た地域と、島根など感染者が少ない地域で、政府の支援に差がある現状にも不公平感を訴えた。

   その丸山知事はきのう25日、内閣府や経産省を訪問し、緊急事態宣言が発出された地域と島根では飲食店支援に不公平が生じていることについて改善策を求めた。 しかし、要望していた新型コロナ担当の西村経済再生担当大臣との面会は叶わず、要請文を受け取ったのは担当職員だった(2月25日付・山陰中央テレビニュースWeb版)。

   それにしても行動が素早い。聖火リレー中止の表明し、竹島の日を開催、そして、上京して政府への要望だ。3つの動きを10日でこなす。ここで思い起こすのは、2018年11月に訪れた出雲大社での神等去出(からさで)の神事だ。11月のことを旧暦の月名で神無月(かんなづき)と称するが、出雲では神在月(かみありづき)と称する。この月は、全国各地から八百万(やおよろず)の神が出雲に集うとされ、同月24日には神等去出の神事が執り行われる。神官が「お立ち、お立ち」と唱える。すると、この瞬間に神々は出雲を去り、それぞれの国に戻る。神々のまるでデジタルのような素早い動きなのだ。

   丸山知事も「お立ち、お立ち」と自らに言い聞かせながら、次々と行動を起こしているようにも思えるのだが。

(※写真は2018年11月24日に撮影した出雲大社の神等去出の神事)

⇒26日(金)朝・金沢の天気    くもり 

★テレビ嗜好と司法判断

★テレビ嗜好と司法判断

   この判決でテレビ離れがさらに進むのではないだろうか。 NHKの放送だけ映らないように加工したテレビを購入した東京都の女性が、NHKと受信契約を結ぶ義務がないことの確認を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は24日、請求を認めた一審の東京地裁の判決を取り消し、請求を棄却した (2月24日付・共同通信Web版)。

   放送法では、NHKの放送を受信できるテレビの設置者に契約義務があると規定している。受信料制度に批判的な考えだった女性は2018年、フィルター付きテレビを3千円で購入した。1審の東京地裁は原告の訴えを認め「NHKを受信できる設備に当たらない」と判断して、契約を結ぶ義務はないとする判決を言い渡し、NHKが控訴していた。控訴審判決で裁判長は「加工により視聴できない状態が作り出されたとしても、機器を外したり機能させなくさせたりすることで受信できる場合は、受信契約を結ぶ義務を負う」と判断し、受信契約を結ぶ義務があるとする判決を言い渡した(同)。

   人には好き嫌いの嗜好というものがある。例えば食に限っても、漬物は食べない、ネギは嫌いだ、刺身は食べない、など様々だ。テレビも同じだ。あのチャネルは嫌いだ、ドラマは見たくない、あのキャスターは見たくもない、など。嫌いな人にとっては見たくもない、それが嗜好というものだ。NHKを受信できないようにするためわざわざフィルター付きテレビを購入するのは、相当なNHK嫌いだ。上記の高裁判決は、受信料の公平負担を重視する視点から、そのような機器をテレビに取り付けたのは受信料を払わない口実と判断したのだろう。人のテレビへの嗜好というものを理解していないのではないだろうか。

   今回の判決でNHK嫌いの視聴者の中には、「それだったらテレビを見ない」と反感を持った人もいるのではないだろうか。これを機にテレビ視聴そのものを止めるという人もいるだろう。また、NHKをスクランブル化し、契約者だけが視聴できるようにすればよいと主張する人たちの声も高まるだろう。それでなくても若者を中心にテレビ離れは進んでいる。これは金沢大学での調査だが、テレビをまったく見ないという大学生は17%(2019年・金沢大学での調査)もいる。3年前の16年では12%だった。その理由は、ネットで動画やニュースを見ることができる、と。この判決をきっかけに、さらに若者のテレビ離れが進むのではないだろうか。

   おそらく原告の女性は上告するだろう。最高裁の判断に注目したい。自身はNHK嫌いではない。このニュースの流れを読みたいと思っている。

⇒25日(木)朝・金沢の天気   はれ

☆リアルな富士を眺めてVR会議 「Woven City」の魅惑

☆リアルな富士を眺めてVR会議 「Woven City」の魅惑

   このニュースに世界の人たちが注目したに違いない。トヨタ自動車は23日、静岡県裾野市で計画する、ITでつなぐ次世代都市「Woven City」(ウーブン・シティ)の建設に着手したと発表した。今後、人を住まわせて自動運転をはじめとするAIや通信を活用した実証実験を行い、社会課題の解決に役立つ新たなサービスや製品の開発につなげる(2月23日付・共同通信Web版)。

   豊田社長は昨年2020年1月、デジタル技術見本市「CES 2020」(ラスベガス)でウーブン・シティ構想を発表していた。当時から凝った名称だと感じ入っていた。wovenは weaveの過去分詞で「織られた」という意味合いで、「Woven City」はIT技術と人間社会がタテ糸とヨコ糸のように織り込まれたデザイン都市と解釈している。トヨタ自動車は自動織機の製造にルーツがあり、ネーミングの発想もおそらく繊維から来ているのだろう。さっそくトヨタの公式ホームページをチェックした。

   地鎮祭での豊田氏のあいさつが興味深い。都市開発の場所はトヨタの東富士工場があったところ。「東富士工場のDNA。それは、たゆまぬカイゼンの精神であり、自分以外の誰かのために働く『YOU』の視点であり、多様性を受け入れる『ダイバシティ&インクルージョン』の精神です。これらが『人中心の街』、『実証実験の街』、『未完成の街』というウーブン・シティのブレない軸として受け継がれてまいります」(HP掲載のスピーチ原稿より)

   スピーチが意義深い。この開発の意義を、多くの仲間とともに、多様性を持つ人々が幸せに暮らせる未来を創造することに挑戦する、と意欲的に述べている。人種や言語、障害などを超えて幸せに暮らせる未来都市。では、そのような都市の設計なのか。

   街の広さは約70万平方㍍。住人は約360人でスタートし、2000人以上を想定する。地上に自動運転モビリティ専用、歩行者専用、歩行者とパーソナルモビリティが共存する3本の道を網の目のように織り込み、地下にはモノの移動用の道を1本つくる。高齢者、子育て世代の家族、発明家、起業家の人々に住んでもらう。街にはロボット、AI技術を取り入れた様々な領域の新技術をリアルな場で実証していく。また、世界中の企業や研究者と一緒に取り組み、社会課題の解決に向けた発明がタイムリーに生み出せる環境を目指す(トヨタ公式ホームページ)。

   発表文だけではイメージは沸かないが、地下にモノの移動用の道を1本つくるということは、たとえばスーパーへ買い物に行かなくても、自宅からパソコンで商品を発注すれば、モノが自宅に届くというシステムなのだろうか。足の不自由なシニアや障がい者も自動運転でドアからドアへの移動が可能。どこにいてもAIによる手話や翻訳サービスがあり、多様な人々が対面でのコミュニケーションが取れる。リアルな富士山を眺めながら、オフィスでのリモートワークやVR会議ができる。

   壮大な社会実験の街でもあるウーブン・シティでの暮らしをイメージすると興味は尽きない。住んでみたいという誘惑にかられる。(※写真はトヨタ公式ホームページより)

⇒24日(水)朝・金沢の天気     はれ

★ウメは咲いたか、ワクチンはまだかいな

★ウメは咲いたか、ワクチンはまだかいな

   金沢では20日に春一番が吹いて、21日にはウメが開花した(金沢地方気象台「生物季節観測」より)。きのう22日は金沢で最高気温が19.6度まで上がり、昔から歌われる「梅は咲いたか 桜はまだかいな」のような春の気分だ。

   春気分に浮かれてはいけない。新型コロナウイルスはまだまだ治まっていない。NHKが公表している直近1週間(2月16-22日)の人口10万人あたりの感染者数で、地元石川県は9.14人と東京、千葉、埼玉、神奈川に次いで5番目だ。以下、福岡、茨木、大阪と続く。コロナ禍ではまるで大都会並み、実に「不名誉」な数字ではないだろうか。同じ北陸でも、福井1.56人、富山1.05人と石川に比べれば、感染対策をしっかりやっているという印象だ。

   その石川もようやく重い腰を上げた。金沢の繁華街(片町1丁目、2丁目、木倉町)で酒類の提供を行うクラブやバー、居酒屋など飲食の2千店を対象に、石川県庁は営業時間を午後9時までとする時間短縮の要請をきのうから始めた。3月7日までの2週間で、時短要請の協力金は1店舗当たり56万円(1日4万円)だ。地元紙によると、2月に入ってからの県内の飲食関係クラスターの7例のうち6例が片町地区で発生し、新規感染者(2月3-16日)241人のうち、約5割に当たる113人が同地区の関係者だったことから時短要請に踏み切った(2月23日付・北陸中日新聞)

   こうなると待たれるのがワクチン接種だ。県内でも先行接種として、医療従事者を対象に19日から始まっているが、医師や看護師、薬剤師、歯科医に加え、コロナ患者と接触する可能性のある救急隊員なども含めると数万人の規模だろう。次なる65歳以上の高齢者への接種はいつからなのか。

   石川県庁の公式ホームページをチェックすると、「新型コロナワクチンについて」というページがある。さらに「県民のみなさまへ」のコーナーがあるが、県民へのワクチン接種についてのスケジュールの記載などはない。厚労省へのリンクがあり開くと、「(医療従事者への接種を先行)その後、高齢者、基礎疾患を有する方等の順に接種を進めていく見込みです。なお、高齢者への接種の開始は早くても4月1日以降になる見込みです」と。要は、接種の順番しか決まっていない。これが医療先進国・日本のコロナ対策の現状なのだ。

(※写真は自宅庭のウメ。23日午前8時撮影。金沢地方気象台の生物季節観測地点より山手にあり、まだ開花には至っていない)

⇒23日(祝)朝・金沢の天気   くもり