#コラム

☆能登の二重被災地で労災多発 冬場の悪天候JPCZを迎え「二次災害」への懸念

☆能登の二重被災地で労災多発 冬場の悪天候JPCZを迎え「二次災害」への懸念

  冬の季節になると、「JPCZ」という言葉を天気予報でよく聞く。シベリアから寒気団が日本海に向かって流れてくる際に朝鮮半島北部の白頭山によっていったん二分されるが、その風下で再び合流し、雪雲が発達しやすい収束帯(ライン)となって北陸地方などになだれ込んで大雪をもたらす。それをJPCZ(Japan sea Polar air mass Convergence Zone)、日本海寒帯気団収束帯と言う。JPCZを印象付けたのは2017年12月に降った大雪で、金沢市内で積雪が30㌢に達した。

  日本気象協会「tenki.jp」による最近の解説で「JPCZ」が出ている。今月9日の発表によると、11日に日本海にJPCZのラインが発生する見込みで、JPCZの先は北陸付近にかかり、12日にかけて山陰まで南下。大雪となるおそれがある。さらに、13日夜から14日にかけてもJPCZが発生し、さらに発達した雪雲が流れ込む見込み、とある。いよいよ冬将軍がやってくるのか、と思うと同時に元日の能登半島地震の復旧工事の現場は大丈夫かと不安も連なる。

  降雪時は現場が見えにくくなり、事故が起きやすい。また、積雪のため現場の作業員が思いがけずに滑って転んでけがをするということもある。とくに屋根に上がっての作業となると危険度が増す。それでなくても、公費解体など復旧工事の現場では労災事故が多発している。地元メディア各社の報道によると、奥能登2市2町(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)を所管する穴水労働基準監督署は今月6日、「重篤労働災害多発警報」を発令、石川労働局も関係団体に安全対策の徹底を求める緊急要請を出したと発表した。(※写真は、輪島市中心部での公費解体現場=11月15日撮影)

  それによると、復旧工事での労災件数は10月末時点で39件に上り、9月から3ヵ月連続で死亡者が出る事態になっている。9月の奥能登豪雨で輪島市の国道249号中屋トンネル付近で、50代の作業員が土砂崩れに巻き込まれて亡くなった。11月には、珠洲市内の被災した木造家屋の解体現場で、油圧ショベルの先端のフォーク部分が作業をしていた岩手県の70代の作業員の頭部に接触し、頭蓋骨骨折で死亡している。

  石川県が今月6日に発表した被災家屋の公費解体の進捗状況(11月末時点)によると、累計の解体棟数は1万1020棟となり、解体見込み棟数の34%となっている。県では解体作業にあたる「解体班」を増やすなどして、来年度末の2026年3月には終了する予定だ。ただ、北陸の冬は長い。現場では悪天候が予想されることから、「二次災害」への懸念が広がっているのではないだろうか。

⇒11日(水)午後・金沢の天気    あめ

★能登の二重被災で踏ん張る食品スーパー 地域の生活守り復興拠点を目指す

★能登の二重被災で踏ん張る食品スーパー 地域の生活守り復興拠点を目指す

  元日の震災と9月の記録的な大雨に見舞われた輪島市町野町をめぐった(今月5日)。地区で唯一のスーパーマーケット「もとやスーパー」が先月営業を再開したと報道されていたので、その様子を見に行った。元日の地震で被害を受けても休まずに営業を続けてきたスーパーだったが、9月21日の豪雨で近くを流れる鈴屋川が氾濫して街一帯が飲み込まれた。同29日に現地を見に行くと、店内の柱や壁には浸水の跡が残り、商品を陳列する大型の冷蔵棚などは横倒しになっていた。

  そのもとやスーパーに今月5日に行くと「復活オープン」の看板を掲げ営業を再開していた=写真・上=。中に入ると、卵や野菜、総菜や冷凍食品などが並んでいた=写真・中=。ただ、以前見た時より売り場面積が小さい。レジの店員に聞くと、「売り場を必要最小限にして、店内をキャンプ場にするようです」との返事だった。

  その店内キャンプ場を見せてもらった。もとやスーパーの店舗の3分の2に相当する500平方㍍を充てたスペースという=写真・下=。被災地の復旧に訪れた業者や支援ボランティア向けに用意したようだ。1人用テントや布団を備える。30人から40人が利用できるが、料金は取らないのだという。町野地域には復旧業者やボランティアが宿泊できる場所がなく、これまで他地域の宿泊地と町野との移動に時間がかかっていた。さらに、冬場になると積雪も想定されることから、屋内キャンプ場がベストと47歳の店主が企画したようだ。店主はクラウド・ファンディングでこう述べている。「被災し壊滅的な状況となった輪島市町野住民の多くの方々は家も車も失い、インフラも復旧していない現在、不自由な生活を余儀なくされています。その中で、私たち『もとやスーパー』は住民の方々の生活基盤であり心の拠り所であり続けると同時に、復興拠点にならなくてはならない、そう思っています」

  このスーパーにはちょっとした思い出がある。大学教員時代に学生たちと「能登スタディツアー」を企画し、ある年、近くの景勝地である曽々木海岸の窓岩の夕日を眺め、その帰りにもとやスーパーに立ち寄り食料を買い込んでいた。すると、わざわざ当時の店主が出てきてくれて、軽妙な能登弁で地域の歴史を語ってくれた。学生たちからは「語りが分かりやすく面白い」と評判だった。

  被災地の食品スーパーとして元日の地震後も営業を続け、住民を支えてきた。9月の豪雨で一時休業したが11月に営業を再開。来春には交流拠点としての整備も予定する。しかし、大雪で地区が再び孤立すればすべてストップする恐れがある。復旧を絶え間なく進めるためも、泊まれる環境を整える。被災地の必死の叫びのように聞こえる。

⇒10日(火)午後・金沢の天気    くもり時々はれ

☆「防災」「減災」「備え」こそ大切 能登の被災地を訪れた両陛下の実感と想い

☆「防災」「減災」「備え」こそ大切 能登の被災地を訪れた両陛下の実感と想い

  元日の能登半島地震の被災地を天皇、皇后両陛下は2度見舞いに訪れている。3月22日は輪島市と珠洲市に、4月12日は穴水町と能登町を。このとき両陛下は避難所を訪れ、被害に苦しみ悲しむ人たちの声に耳を傾け、思いをじかに受け止めておられる様子をテレビ報道で拝見した。被災者にとって癒やしと慰め、そして励ましになったのではないだろうか。

  皇后さまがきょう(9日)、61歳の誕生日を迎えられた。そのお気持ちを文書で感想を公表している。宮内庁公式サイトに「皇后陛下お誕生日に際してのご感想」として掲載されている。その冒頭で「道路の寸断によるアクセスの困難さや長く続く断水など、被災された方々が、冬の厳しい寒さの中でどれほど多くの困難と御苦労を抱えながら避難生活を送られていたか、想像するに余りあるものでした」と、2度の訪問での感想が述べられている。その能登について、「私自身、学生時代に友人との旅行で能登半島を訪れたことがあり、楽しく、大切な思い出の詰まった能登の地で、多くの人々がこのような大きな試練に直面していることに、心が締め付けられる思いが致しました」とつづられている。(※ 写真は、3月22日に天皇、皇后両陛下が多くの犠牲者が出た輪島・朝市通りを訪れ黙礼をされた=宮内庁公式サイト「被災地お見舞い」より)

  震災後に奥能登を襲った9月の記録的な大雨について述べられている。「状況の少し落ち着いた3月から4月にかけて、お見舞いのために能登の被災地を訪れ、被災された方々が安心して生活できる日が一日でも早く訪れるよう、復興が一歩一歩進んでいくことを心から願いましたが、その復旧・復興への歩みを進める中、9月下旬に、今度は大雨による被害が発生したことにも心が痛みます」。被災者が追い打ちをかけられた状況に、皇后さまは「心が痛みます」と心境を明かされた。

  今後の自然災害に向けて提案もされている。「来年の1月には、能登半島地震から1年、そして、阪神淡路大震災から30年の節目を迎えます。当時の被害の大きさを改めて思い起こし、犠牲となられた方々を追悼するとともに、被災された方々への支援や、今後の防災・減災について考え、備えていくことが大切なのではないかと思います」。今後の災害に向けた「防災」「減災」「備え」のキーワードは被災地を実際に訪れた両陛下の実感と想いではないだろうか。

⇒9日(月)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

★ユネスコ無形文化遺産「日本酒」の原酒どぶろく 世界に売り込むチャンス

★ユネスコ無形文化遺産「日本酒」の原酒どぶろく 世界に売り込むチャンス

  冷え込む日が続き、晴れ間が見えたかと思っていると、急に曇が張り出し、雨が降る。そんな日が続いている。二十四節季の大雪(たいせつ)の候だ。この時節を待っていた。ズワイガニと「どぶろく」が旬を迎えた。ぴっちり締まったズワイガニの身を、とろりとしたどぶろくが包み込むように食感をひきたてる。さらに、カニみそがどぶろくとしっくりと合う。いまの言葉でいうと、「絶品マリアージュ」ではないだろうか。

  そのどぶろくについて話を少し深めてみたい。先ごろユネスコ無形文化遺産に登録された「伝統的酒造り」、日本酒の原酒はどぶろくだ。どぶろくは、蒸した酒米に麹(こうじ)、水を混ぜ、熟成するのを待つ。ろ過はしないため白く濁り、「濁り酒」とも呼ばれる。ろ過したものが清酒となる。日本酒の製造過程で一歩手前の酒、と言える。

  もともと明治初期まではどぶろくを各家々が造っていた。明治政府は国家財源の柱の一つとして酒造税を定め、日清や日露といった戦争のたびに増税を繰り返し、1899年(明治32)に自家醸造が全面禁止となった。これがきっかけで家々のどぶろくの伝統は廃れたが、宗教的行事として神社では認められた。所轄の税務署から製造許可が与えられるが、境内から持ち出すことは現在も禁じられている。現在、国内の神社では30社ほどが造っている。そのうちの3社が能登半島の中ほどに位置する中能登町にある。(※写真は、中能登町の天日陰比咩神社で造られているお神酒のどぶろく)

  そのどぶろくが全国的にちょっとしたブームになっている。構造改革特区制度を活用した「どぶろく特区」が全国の市町村で190近くに増えている。特区では、農家レストランや民宿を経営する農家が酒造免許を得て造ることができる。ご当地の観光資源や「ふるさと納税」の返礼品としても活用されている。中能登町でも2014年に「どぶろく特区」の認定を得て、農家民宿を営む2業者が生産に携わり、道の駅などでビン詰めの販売も行っている。

  前述したようにユネスコ無形文化遺産に登録された「伝統的酒造り」の日本酒の原酒はどぶろくだ。ヨーロッパでもワインの原酒がブームになっていて、フランスでは「ペティアン・ナチュレ」、イタリアでも「フリッツァンテ」などと称され人気のようだ。発酵途中でビン詰されるため、ぶどうジュースのような味わいで、泡も柔らかくて飲みやすい。SAKEはヨーロッパでも人気だが、さらにその原酒を「White SAKE」として海外に売り込めないだろうか。すでに、「Nigori」や「Shirozake」として世界に売り出している酒造業者もあるようだ。

⇒8日(日)午後・金沢の天気     くもり

☆雷鳴とどろく冬の金沢は「カミナリ銀座」 雷サージがスマホやPCを襲う

☆雷鳴とどろく冬の金沢は「カミナリ銀座」 雷サージがスマホやPCを襲う

  きょうも明け方に雷鳴がとどろいた。起きて、パソコンの電源ケーブルを外していたかどうか確認し、また寝た。雷が直接落ちなくても、近くで落ちた場合には「雷サージ」と呼ばれる、瞬間的に電線を伝って高電圧の津波現象が起きる。この雷サージが電源ケーブルを伝ってPCの機器内に侵入した場合、部品やデータを破壊することになる。万が一に備えて、雷害からPCを守るためにガードコンセントを使用しているが、それでも念には念を入れて冒頭の確認をする。うっかり電源ケーブルを外さずに外出し、雷が鳴り慌てて帰宅することもままある。金沢に住んでいると、雷は身近な危機なのだ。

  何しろ金沢は「カミナリ銀座」。全国の都市で年間の雷日数が30年(1991-2020)平均でもっとも多いは金沢の45.1日だ(気象庁公式サイト「雷日数」)。ちなみに、東京は14.5日、仙台は9.8日となっている。雷がとどろけば、落雷も発生する。石川県の消防防災年報によると、県内の落雷による火災発生件数は年4、5件だが、多い年(2002年)で12件も発生している。歴史的に知られるのは、1602年(慶長7)に金沢城の天守閣が落雷による火災で焼失。ほかにも、金沢の神社仏閣での被災事例が多い。雷が人々の恐怖心を煽るのはその音だけではなく、落雷はどこに落ちるか予想がつかないからだ。(※写真・上は、北陸電力公式サイト「雷情報」より)

  このため、金沢では落雷などによる火災に備える防災意識が高い。身近で言えば、建築基準法では高さ20㍍以下の建築物には避雷針の設置義務はないにもかかわらず、戸建て住宅で設置している家を見かける。また、地域として消火活動に取り組む自主防災組織がある。城下町独特の細い路地がある町内会では、「火災のときは家財道具を持ち出すな」というルールがある。避難の邪魔になるものをお互いが持ち出さないとの決め事だ。金沢の古くからの都市計画では、「広見(ひろみ)」と呼ばれる街中の広場が市内の何ヵ所で設けられている。これは藩政時代から火災の延焼を防ぐため火除け地としての役割があったとされる。(※写真・下は、金沢市寺町5丁目の通称「六斗の広見」。近くに「忍者寺」として知られる妙立寺がある)

  金沢など冬場の北陸に雷が多いのは、大陸から吹く冷たい風と、日本海を流れる対馬暖流の温度差が大きく開き、海側から上昇気流が発生し、雷を生み出す積乱雲が発達しやすい気象状況にあるからとされる。取り留めもない、雲をつかむような話になってしまった。

⇒6日(金)夕・金沢の天気    あめ

★「非常戒厳」が裏目に レームダック化したのか韓国・尹大統領

★「非常戒厳」が裏目に レームダック化したのか韓国・尹大統領

  韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領がこれほどレームダック化していたとは驚きだった。メディア各社の報道によると、尹氏は3日深夜の演説で「非常戒厳」を宣布すると発表した。韓国の憲法では、非常戒厳は戦時やそれに準じる国家非常事態に陥った際に大統領が宣言する。突然の発表に国会は混乱に陥った。尹氏は戒厳令をその後、6時間で解除したものの、政治家として瀬戸際に追い込まれた。ソウルで大規模な市民による抗議行動が起き、さらに最大野党「共に民主党」による尹氏に対する弾劾訴追手続きがなされた。近く開かれる国会で尹氏の真意が議論されることだろう。

  尹氏は2022年の大統領選で保守強硬派の候補として勝利し、同年5月に就任した。だが、今年4月の総選挙で野党が圧勝。政府として国会で予算案や法案を通すことができず、野党が通過させた法案に拒否権を発動する程度のことしかできない状況が続いていた。さらに、尹氏の夫人にまつわる汚職スキャンダルに見舞われている。高級ブランドのディオールのバッグを受け取ったとされる疑惑や、株価操作に関わったとされる疑惑だ(4日付・BBCニュース日本版)。  

  元検事総長の尹氏のかつてのイメージは、権力に遠慮することなく司法の刃(やいば)を向けてきたことだ。朴槿恵(パク・クネ)政権下での「崔順実(チェ・スンシル)ゲート」では朴前大統領を拘束起訴(2017年3月)。この実績により、前大統領の文在寅(ムン・ジェイン)大統領からソウル中央地検長に抜擢された。尹氏はさらに李明博(イ・ミョンバク)元大統領も拘束起訴。2019年6月に検事総長に任命されてから、矛先は文大統領の側近に向けられた。曺国(チョ・グク)前法務部長官の捜査を手初めに、蔚山市長選挙介入疑惑、月城原発経済性ねつ造疑惑など次々と捜査のメスを入れた。(※写真は、2022年3月に韓国の新大統領に選ばれた尹錫悦氏=韓国・中央日報Web版)
 
  権力と対峙してきた尹氏は「私は人(権力)に忠誠を尽くさない」という言葉を放って国民に知られるようなった。尹氏が大統領になったことで期待されていたのは、「法治国家」の確立ではなかっただろうか。ところが韓国では大統領に権力が集中している。戦時でもないのにその権力を行使して非常戒厳令を宣告したとなると、動機がなんであれ、自らがその権力に溺れ込んだと韓国国民は思い込んだに違いない。
 
⇒5日(木)夜・金沢の天気   あめ

☆蛇行する「のと里山海道」 国宝「色絵雉香炉」に愛嬌を感じる首かしげ

☆蛇行する「のと里山海道」 国宝「色絵雉香炉」に愛嬌を感じる首かしげ

  来年2025年は干支で言えば、「巳年」にあたる。「みどし」あるいは「へびどし」と読んでいる。「巳年」でイメージするのが、金沢と能登を結ぶ自動車専用道路「のと里山海道」だ。何しろ、ヘビがはうように、くねくねと左右、そして上下に曲がって走行することになり、まさに蛇行運転になる=写真・上、6月4日撮影=。元日の能登半島地震で、道路側面のがけ崩れや道路の「盛り土」部分の崩落などが起き、全線で対面通行が可能になったのはことし9月だった。その後遺症はいまも重く、この蛇行運転が余儀なくされる区間は制限速度が時速40㌔に引き下げられている。

  さらに冬の季節が本格的になれば、積雪が見込まれる。左右に土のうが積まれた箇所も随所にあり、除雪車の作業もかなりの時間を要することになるのではないかと、利用する側も案じる。

  「巳」の次は「雉」の話。きのう金沢市にある石川県立美術館に行く。「色絵雉香炉」(いろえきじこうろう)」が目玉の展示作品。地元石川県にある国宝2点のうちの1点である。京焼の祖といわれた野々村仁清が17世紀に焼いた作品。羽毛などを美しく彩り、豪華さがある。説明書によると、作品の幅 は48.3㌢、奥行が12.5㌢、高さが18.1㌢あり、鳥のキジのほぼ等身大のカタチをした香炉だ。じつに写実的に焼き上げられていて、飛び立つ寸前の姿を写し、気迫に満ちた緊張感あふれる作品と評されている=写真・中、県立美術館公式サイトより=。

  国宝に対して、これは適切な表現かどうかは分からないが、「面白い」と思ったのは首の部分だった。よく見ると、わずかに首を左にかしげていて、鳥の表情が絶妙に表現されている=写真・下、3日撮影=。ひと言で言えば、鳥の習性をじつによく観察している。個人的な話だが、幼いころ(小学低学年)に実家の納屋で十数羽のニワトリを飼っていて、エサやりが日課だった。エサを持って納屋に入ると、鳥たちは最初、首を少しかしげている。それから一斉にゆっくりと近づいてくる。エサをまくと、鳥たちはエサを突き始める。

  鳥の目は頭の横にあるので、首を横にかしげる仕草はこちらを観察しているのではなくて、周囲の鳥たちの行動を見て一斉に動き出すのだと親から教わった。それにしても、鳥が首を少しかしげる仕草は人に愛嬌というものを感じさせる。仁清もそれを表現したかったのだろうか。

⇒4日(水)夜・金沢の天気   くもり時々あめ

★燃えるような紅葉の那谷寺 青空に映える冠雪の白山

★燃えるような紅葉の那谷寺 青空に映える冠雪の白山

  久しぶりに石川県小松市にある名刹、那谷寺を訪れた。「石山の石より白し秋の風」。江戸時代の俳人、松尾芭蕉が那谷寺で詠んだ『おくのほそ道』の俳句だ。奇岩がそびえ立つ景観で知られる那谷寺は紅葉の名所でもある。境内ではモミジや、カエデなどが赤々と燃えて、見事な景観だった=写真・上、2日午前11時37分撮影=。

  境内を巡っていて、「紅葉良媒(こうようりょうばい)」という言葉を思い出した。見学に訪れている人たちを見ると、男女のカップルが多いことに気づき、この四字熟語が脳裏に浮かんできた次第。紅葉を見に行くことがきっかけとなって良縁が結ばれることを意味する言葉だ。さらに、奇岩がそびえ立つ那谷寺はパワースポットとしても知られ、若い人たちにとっては人気がある。「奇岩良媒」かもしれない。

  展望台から臨んだ「奇岩遊仙境」(国名勝指定)。ここから遊仙境を眺めると、寺でありながら赤い鳥居と稲荷社が点在するのが見える。パンフによると、奈良時代に創建された白山信仰の寺院とのこと。確かに、那谷寺の周辺からは白山が見える=写真・下、2日午前11時24分撮影=。青空に映えた冠雪の白山、じつに神々しい。

  「風かをる越しの白嶺を国の華」。これも芭蕉が詠んだとされる句。白山のまわりには、さわやかな風が吹き渡っていて、まるで国を代表するような山だ、と解釈する。白山は北陸3県ほか岐阜県にまたがる標高2702㍍の活火山で、富士山、立山と並んで「日本三名山」あるいは「三霊山」と古より称される。奈良時代には禅定道(ぜんじょうどう)と呼ばれた登山ルートが開拓され、山岳信仰のメッカでもあった。

  その白山を源流とする手取川は加賀平野を流れ、日本海に注ぎこむ。去年2023年5月にその白山と手取川がセットになって、ユネスコ世界ジオパークに認定された。遠方から白山を眺めると、白山には長く厳しい冬が訪れている。その名のとおり「白い山」となり、山容は穏やかでやさしい。芭蕉が讃えたように「国の華」のようだ。

⇒3日(火)夜・金沢の天気      くもり時々あめ

☆プラごみ国際条約の合意先送り 環境問題国と生産国との隔たり埋まらず

☆プラごみ国際条約の合意先送り 環境問題国と生産国との隔たり埋まらず

  12月に入った。先日、造園業を営んでいる人との立ち話で、「モズのはやにえ」のことが出た。鳥のモズはこの時季、捕らえたカエルなどの獲物を木の枝に突き刺す習性があり、突き刺した場所が低いと暖冬、高いと大雪になるとの風説がある。業者の人は「ことしは高めですね。例年は1.5㍍から2㍍ほどですが、ことしは3㍍のものもある。きっと大雪ですよ」と。話を聴いていた別の知人は「それは大変、ことしも雪囲いをしっかりよろしくお願いします」と真剣に受け止めていた。ただ、業者は「あくまでも話のネタですよ。当たる年もあれば当たらない年もある」と笑っていた。

  話は変わる。先月30日付のブログで、プラスチックによる環境汚染を防ぐための国際条約を2024年中にとりまとめる政府間交渉委員会(先月25日-今月1日)が韓国で開かれ、条文案の合意を目指している、と述べた。きょう公表された外務省公式サイトの「プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第5回政府間交渉委員会の結果概要」によると、焦点となっているプラスチックの生産量の世界的な削減目標を設けるかどうかなどについて各国の意見の隔たりが埋まらず、合意は見送られた。

  プラスチックの消費や廃棄物の量を減らすと同時に生産についてもできるだけ抑制していく必要があると主張した国々がある一方、プラスチックの原料になっている化石燃料の輸出に経済を依存している国々は、気候変動対策に加えて化石燃料の生産や輸出を制限される国際条約には反対した。対立点が改めて浮き上がった。

  国連環境総会(2022年3月)で法的拘束力のある国際条約を2024年中にとりまとめることを決議していたが、見送られることになった。プラスチックごみの量は2019年には世界で3億5300万㌧と20年で2倍以上に増えるなど深刻になっている。今回の政府間交渉委員会で日本は「プラスチックのライフサイクル全体での取組の促進」「プラスチック製品及びプラスチック製品に使われる化学物質に関する共通基準の明確化」「各国におけるプラスチック資源循環の促進」「環境に配慮した製品設計、リデュース・リユース・リサイクルの促進」などを提案し、積極的に条約交渉に関与していた(外務省「結果概要」より)。

  今後、改めて会合が開かれ、今回の交渉内容をもとに条文案をまとめるための協議が再開されるという。

(※写真は、2017年「奥能登国際芸術祭」の作品、深澤孝史氏作『神話の続き』。「現代の寄り神はゴミの漂着物」と訴え、海岸ゴミのポリ容器やペットボトル、漁具ゴミを白くペイントして鳥居に似せたオブジェ)

⇒2日(月)夜・金沢の天気    はれ

★プラごみ国際条約ようやく合意へ 日本海沿岸国で汚染対策条約を

★プラごみ国際条約ようやく合意へ 日本海沿岸国で汚染対策条約を

  プラスチックごみによる汚染問題は世界各地で深刻化している。排出や廃棄を規制する国際条約づくりがようやく動き出した。けさのNHKニュースによると、プラスチックによる環境汚染の防止に向け初めてとなる国際条約の案をまとめる政府間交渉委員会が、今月25日から韓国・プサンで行われている。プラスチックごみの量は2019年には世界で3億5300万トンと20年で2倍以上に増えるなど深刻なことから、各国はプラスチックによる環境汚染を防ぐため国連環境総会(2022年3月)で法的拘束力のある国際条約を2024年中にとりまとめることを決議し、今回の政府間交渉委員会で条文案の合意を目指している。

  交渉委員会のバジャス議長は29日に新たな条文の素案を示した。この中で、生産量の規制については2つの選択肢を示した。1つはプラスチックの生産量を持続可能なレベルにするため世界的な削減目標を設け、各国が生産量や、目標達成のために行った対応を報告するというもので、もう1つはプラスチックの原料となる石油を産出する産油国などが規制に強く反対していることを踏まえ生産量の規制については条約に盛り込まないとしている。そして、プラスチック製品についてゴミとして散乱したり環境中に流出したりしやすいものや再利用やリサイクルが難しいものは各国が削減や禁止などの対応をとるといった内容も盛り込まれている。プラスチックの生産から廃棄までのライフサイクル全体で削減に取り組む方向では一致している。

  以下は、日本海側に住む一人としての希望だ。沿岸国の不法投棄をどう解決すればよいか、そうした条約の枠組みも併せてつくってほしい。たとえば、「地中海の汚染対策条約」とも呼ばれるバルセロナ条約は21ヵ国とEUが締約国として1978年に発効している。日本海にも沿岸各国との汚染対策条約が必要ではないだろうか。(※図は、日本海の海流の流れ。能登半島に沿岸国からの漂着ごみが流れ着く)

  データがある。石川県廃棄物対策課の調査(2017年2月27日-3月2日)で、県内の14の市町の海岸で合計962個のポリタンクを回収した。そのうちの57%に当たる549個にハングル文字が書かれ、373個は文字不明、27個は英語、10個は中国語、日本語は3個だった。沿岸に流れ着くのはポリタンクだけではない。漁具や漁網、ロープ、ペットボトルなど、じつに多様なプラごみが漂着する。2022年にはロシア製の針つきの注射器が大量に流れ着いて全国ニュースになった。医療系廃棄物(注射器、薬瓶、プラスチック容器など)の不法投棄は国際問題だ。(※写真は、海の環境問題をテーマにしたインドの作家スボード・グプタ氏の作品「Think about me」=2021年・珠洲市の「奥能登国際芸術祭2020+」)

  なので、日本海の沿岸国である日本、ロシア、韓国、北朝鮮、中国の5ヵ国で汚染対策条約がつくれないだろうか。

⇒30日(土)午後・金沢の天気   あめ