#コラム

☆気象情報 言葉が複雑化している

☆気象情報 言葉が複雑化している

   「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったものだ。きょうの金沢の最高気温は27度で夏日だったものの、夕方からは涼しさを感じるようになった。と言うと、「随分のんきなことを」としかられるかもしれない。九州北部や中国地方を中心に記録的な大雨となっている。11日からの降り始めの雨量は佐賀県嬉野市で1000㍉を超え、8月の平年の雨量(277㍉)の3倍以上の雨量となった(15日付・気象庁公式ホームページ)。石川県内でも宝達志水町では12日午前2時の降り始めから15日午前5時までに降水量が311㍉となり、8月の平年の雨量を上回り、観測史上最大となった(同・金沢地方気象台公式ホームページ)。

         この記録的な大雨で、堤防の決壊や越水など9県の36河川で氾濫が発生。鉄道や道路も被害が相次いでいる。土砂災害は15府県で44件が発生していて、都道府県別件数(15日正午現在)では、長崎11、広島7、熊本5、佐賀4、富山、福岡各3、石川、鹿児島各2、福島、長野、岐阜、静岡、滋賀、京都、大阪各1などとなっている。さらに増える見通し(国土交通省公式ホームページ「プレスリリース」)。

             これまでの雨のイメージとはまったく異なる強い雨や雨量、そして、「線状降水帯」といった帯状に連なる積乱雲など、気象庁から発表される気象情報のレベルが一気にアップしている。その分、国民や視聴者にはとても分かりにくくなっている。たとえば、きょう午前中に民放テレビが報じていた。「気象庁は午前10時7分、神奈川県山北町に記録的短時間大雨情報を発表しました。この情報が発表された地域では、災害の発生に結びつくような猛烈な雨が降っています。ただちに身の安全を確保してください」(15日付・TBSニュース)。「記録的短時間大雨情報」とあるが、「顕著な大雨に関する情報」や「大雨警報」はどう違うのか。

    これだけではない「警報」と「特別警報」の違いや、「氾濫危険情報」と「氾濫警戒情報」の違いを国民、視聴者はどれほど理解しているだろうか。単なる気象情報ではなく、防災情報を含めているので、言葉の複雑化が生じているのだろう。ただ、情報は流せばよいというものではない。言葉の分かりやすさが人々にいち早く訴える。「大雨洪水警報」、これで十分伝わるのではないか。(※写真は日本気象協会の天気予報専門サイト「tenki.jp」より)

⇒15日(日)夜・金沢の天気      くもり時々はれ

★「つづれ米」と米食い虫の話

★「つづれ米」と米食い虫の話

   「つづれ米」という言葉を初めて知った。自宅のガレージに置いていた米袋にガのような虫が群がっていた。さらに袋を開くと玄米に無数の虫が繁殖していた。毎日のようにガレージを出入りしていたが、一気に虫が繁殖したようだ。袋の底には玄米がまだ10㌔ほどある。袋ごと処分しようかとも考えたが、いただいた米でもあるのと「もったいない」の気持ちが心をよぎって、まず虫を除けることから始めた。

   米作りに詳しい知人にメールで処理の仕方を尋ねると、「つづれ米ですね。まず、ムシを除去して天日で乾燥してください」との返信だった。このとき、初めて「つづれ米」という言葉を知った次第。「綴(つづ)れ」は 破れ布をつぎ合わせた古着のことで、生まれ育った奥能登ではかつて農作業などでおじさんやおばさんたちが着ていたことを思い出した。 確かに虫がいる玄米の表面を見ると米が一部変色していて、糸でつながっているような「つづれ」に見える。

   米粒を通すほどの荒い目の金網と通さない細か目の金網の2種を近くの「カーマホームセンター」で購入。ポリバケツの上に金網を乗せて、その上から虫のついた玄米を注ぎ込む。虫は数種類いる。ガはパッと飛び散り、クワガタのような黒い虫は逃げ回っている。インターネットなどで調べると、ガのようなものは「ノシメマダラメイガ」、クワガタのようなものは「コクゾウムシ」、別名「米食い虫」と言うようだ。変色した米粒が白い糸のようなものでつながっているのは、ノシメマダラメイガのサナギが出す分泌物という。(※写真・左がノシメマダラメイガ、右がコクゾウムシ=「Wikipedia」より)

   金網でこした玄米を今度は広げた新聞紙の上で天日干しにする。ムシやサナギはなんとか除去できたが、おそらく米粒の間には卵もあるだろう。3時間ほど天日で乾かした後、今度は米粒を通さない目の細かな金網で干した玄米をふるう。卵だろうか、白い粉のようなものがパラパラと落ちてくる。そして、ふるった玄米を別のポリバケツに入れて、なんとか作業は完了した。

   玄米ご飯を食べるために精米せずに玄米のまま米袋に入れておいた。まさか、虫がつくとは思ってもいなかったのが甘かった。せめて袋の口をヒモでしっかり結ぶなどしておけばよかった。ボリバケツの中を乾燥させるため玄米の上に木炭を置いて、フタをする。なんと一日がかりの「つづれ米」作業となった。

⇒13日(金)午前・金沢の天気     あめ

☆ワクチン接種完了もコロナ禍との戦いは尽きず

☆ワクチン接種完了もコロナ禍との戦いは尽きず

   石川県内の新型コロナウイルスの感染者で、感染力が強いとされる「デルタ株」の占める割合が今月に入り74.9%になった(石川県公式ホームページ「新型コロナウイルス」)。それにともなって、若年層(19歳から30歳)向けに県が開設した大規模ワクチン接種センターの新規予約が、国からのワクチンの供給が滞り、一時停止されたと報道されている。ワクチンはモデルナ社製だが、世界的に需要が高まり、供給がひっ迫している。

   ただ、ワクチンを接種したからといって安心できるだろうか。自身は7月18日に2回目のワクチン接種を終え、今月4日に抗体検査をした。ファイザー製ワクチンは、発症予防効果は95%とされているものの、効果には個人差があると言われている。自身の場合、ワクチン接種後の副反応がなかったため、本当に抗体ができたのかどうか、数値で調べてみたいと抗体検査を思い立った。接種を受けた金沢市内の病院で採血、その血液は検査機関で分析された。保険適用外で税込み6000円。きのう結果が書面で届いた。

   検査の項目名称は「SARS-CoV-2 抗S抗体定量 」。説明書などによると、ワクチンを打つと、スパイクタンパク質(Sタンパク質)の抗体を獲得する。Sタンパク質はコロナウイルスのトゲトゲの部分だ。このトゲトゲの構造に人体の免疫系が強く反応することで、ウイルスの感染に対する抵抗力、つまり抗体が獲得できる。その抗体獲得を示す抗体値が「定量」として示されている。結果は定量が「778.00 U/mL」で、判定は「陽性(+)」と書かれてあった。基準値は「0.80未満」が陰性の判定なので、数字的には大きく超えている。ひとまず安心したが、それにしても「陽性」という表現が釈然としない。ほかに適切な言葉がないものか。

   検査結果の書面を見て、接種後2週間余りでどのくらいの抗体値ができるものなのか、その中央値が知りたくなり、病院に電話で問い合わせた。すると、検査担当者は、「日本ではそのデータはまだない」とつれない返事だった。もう一つ質問した。接種してから日数が経過すると抗体値が減少するので、ファイザー製ワクチンを使用したイスラエルでは接種後5ヵ月経った60歳以上に3回目の接種を行っている。日本ではいつから3回目接種を行うのか、と。返事はこうだった。「抗体値が減少していても、感染源に触れると抗体は増加するものだ。また、3回目接種に関しては政府の方針が定まっていない」と。

   ワクチン接種を終えたからといってコロナとの戦いは終わったわけではない。この戦いはさらに続く。(※写真はファイザー社のワクチン=同社の公式ホームページより)

⇒12日(木)午後・金沢の天気     くもり

★問われているのは企業のガバナンス

★問われているのは企業のガバナンス

   けさテレビ朝日の番組「羽鳥慎一モーニングショー」を視聴した。コロナ禍の緊急事態宣言下で、テレビ朝日のオリンピック番組を担当したスポーツ局の社員や外部スタッフ10人が閉会式後から9日未明まで打ち上げ宴会を行い、そのうちの社員1人が店外に転落し、救急搬送された問題。リモートで出演中だったコメンテーターの玉川徹氏が「テレビ朝日の社員として謝罪を申し上げます」と頭を下げ、調査委員会をつくって不祥事の原因を徹底的に究明すべきだと訴えていた=写真・上=。ただ、個人的には違和感があった。

   3月に厚労省老健局の職員23人が深夜まで送別会を開いていた問題では、「どうなっているんですかね」「担当課長に話が聞きたい」などと玉川氏の舌鋒は鋭かった。それだけに、今回、身内の不祥事が起きてしまった場合は番組としてこうした「けじめ」をつけ方でないと視聴者は納得しないだろ。ただ、玉川氏が同社を代表して謝罪しているかのような印象を受けたので、個人的に違和感を覚えた次第だ。コメンテーターはあくまでも番組の論調を発する立場であって、会社を代表して発する立場ではない。

   それにしても違和感はさらに残る。この問題の責任の所在は番組にあるのではなく、会社のリスク管理というガバナンス(企業統治)の問題だ。むしろ、「テレビ朝日として」の謝罪の言葉を会社の最高責任者が真っ先に発すべきだ。会社として記者会見が必要だろう。

⇒11日(水)午前・金沢の天気    くもり時々はれ

☆オリンピック打ち上げ宴会 テレ朝が問われること

☆オリンピック打ち上げ宴会 テレ朝が問われること

         オリンピックは強かった。ビデオリサーチ社Webサイト(10日付)の「オリンピック関連番組 視聴率・視聴人数」(関東地区)によると、7月23日の開会式は56.4%(NHK総合)、今月8日の閉会式は46.7%(同)だった。そして競技では、侍ジャパンが優勝した今月7日の野球、対アメリカ戦は37.0%(同)だった。はやり東京オリピック番組は視聴率を稼ぐのだと実感した。

   その視聴率と向き合い、オリンピックの番組制作に苦心したのがテレビ局の制作スタッフであることは言うまでもない。おそらく、オリンピックが終了し、一気に解放感が包まれたのだろう。気が緩んだようだ。テレビ朝日は10日付の公式ホームページで「当社社員の緊急搬送事案について」と題して、プレスリリースを掲載している。

   「今月8日夜、東京オリンピックの当社番組担当スタッフ 10 名が緊急事態宣言下における東京都の要請及び社内ルールを無視して打ち上げ名目の飲酒を伴う宴席を飲食店で開き、翌 9 日未明退店する際に当社スポーツ局社員1 名が誤って店の外に転落し、負傷して緊急搬送されました。当該社員は現在入院中で、事案の詳細は確認中です。」

   この事案はメディア各社もニュースとして大々的に報じている。NHKニュースWeb版(10日付)によると、東京オリンピック関連の番組を担当したテレビ朝日の社員6人と外部スタッフ4人の合わせて10人は、閉会式が行われた8月8日の夜から翌日の明け方にかけて、東京 渋谷区の飲食店で打ち上げの名目で飲酒をともなう宴会を開いていた。10人のうち社員1人が途中で帰ろうとした際、飲食店が入るビルの非常階段から誤って路上に転落して足の骨を折る大けがをし、救急搬送された。

   では、テレビ朝日のオリンピック番組を担当スタッフはどのような番組づくりをしていたのか。オリンピック映像の基本はOBS(Open Broadcaster Software)という国際組織が撮影を担当し、放映権を持つ各国の放送局へフィードバックしていた。つまり、映像は基本的に配信されていた。それを各放送局は独自の番組として報道をするためにアナウンサーやキャスターのほかにコメンテーターをスタジオに配置。また、試合の展開をある程度予想しながら過去の映像や関係者のインタビィーなどを行い番組を構成する役割を担っていた。多局との違いを出しながら、情報を抜かれないように、少なくとも五輪期間中の17日間は相当の緊張感を強いられていたことは想像に難くない。

   しかし、このような事態に陥った場合、テレビ朝日には当然容赦ない批判が浴びせられる。これまで同類の事案があった厚労省に向けて、テレビ朝日の「報道ステーション」や「羽鳥慎一モーニングショー」といった番組では痛烈な批判を展開していた。ところが逆の立場に追い込まれた。今回の社員の不祥事では、テレビ朝日の社長がまず釈明の会見を行い経緯の説明をすることが先決だろう。

⇒10日(火)夜・金沢の天気  くもり

★オリンピックを妙に盛り上げた選手たち

★オリンピックを妙に盛り上げた選手たち

          きのう閉会した東京オリンピックのことを海外メディアはどのように評価しているのだろうか。イギリスBBCのスポーツ編集長は「Tokyo Olympics : Sporting drama amid a state of emergency but how will Games be remembered?」との見出しで記事を書いている。印象の深いのは最後の下りだ。「パンデミックという事態であっても、オリンピックを否定することはできなかった。そのことに安堵した人も、失望した人もいたはずだ。そして、東京オリンピックの開催が正しかったのかどうかは、今後ずっと議論されていくだろう。しかし、不安に満ちた時代でも、スポーツ選手はこれまでと同じように、その元気な姿で我々を励ましてくれる存在であり続けた。それだけは確かなことではないだろうか」

   17日間、自身がテレビでオリンピック競技を視聴して、印象に残っているのは、番組での解説やコメントなどスタジオのバックで流れていた、桑田佳祐の『波乗りジョニー』だった。もともと、テレビCMに流れる、日本の夏を象徴する曲だった。夏のテーマソングがそのままオリンピックのテーマソングのようになり、盛り上げてくれた。

   逆説的な意味でオリンピックを盛り上げてくれたのは韓国選手団だったのかもしれない。選手団は選手村入りすると、さっそくにバルコニーに掲げた横断幕だった。豊臣秀吉の朝鮮出兵に抗した李舜臣将軍の言葉にちなんだと連想させる、「臣にはまだ5000万国民の応援と支持が残っています」とハングルで書かれていた。IOCは政治的宣伝と勧告し、横断幕は7月17日に撤去された。

   さらに韓国選手団は、選手村の食材は放射能で汚染されている可能性があるとし、独自に給食センターを設置して選手らに配給した。選手村の食材の一部が福島県から調達されたものであったことから、「放射能フリー弁当」を自国で調達すると、「復興五輪」のネガティブキャンペーンを展開した。

   世界から批判されたのは、7月23日の開会式を生中継した韓国のテレビ局だった。MBCは、ハイチの選手団が入場した際のテロップで「大統領の暗殺によって政局は霧の中」と、マーシャル諸島を選手団を紹介するテロップには「アメリカのかつての核実験場」と、ウクライナの選手が入場する際にはチェルノブイリ原発事故の画像が使われた。不適切放送として批判を浴びた(7月26日付・CNNニュースWeb版日本語)。

   メダル以外に大会をいろいろと盛り上げてくれた選手もいる。男子テニスのダニール・メドベージェフ選手(ロシア五輪委員会)は7月28日、東京の暑さの中で「オリンピックの試合中に暑さで死亡した場合、いったい誰が責任を取るのか」と審判に問いただした。世界2位ランクの選手のひと言で、国際テニス連盟は暑さ対策として、29日の第1試合の開始時間を当初予定していた午前11時からを午後3時に変更した。その29日の準々決勝で、メドベージェフ選手はスペインの選手にストレ-ト負けを喫した。ラケットを破壊し、無観客のスタンドに放り投げた(7月29日付・AFP通信Web版日本語)。何かと話題の多い選手だった。

   オリンピックを多様に盛り上げてくれた人たちだった。「そして笑って もう一度 せつない胸に波音が打ちよせる」。2024年のパリオリンピックもぜひ盛り上がってほしい。

(※写真は8日の東京オリンピック閉会式で映し出された2024年のパリ五輪の映像=NHKテレビ)

⇒9日(振休)午後・金沢の天気     はれ後くもり

☆オリンピックにARIGATO、あすから「五輪ロス」が

☆オリンピックにARIGATO、あすから「五輪ロス」が

           最後はビジョンに「ARIGATO」の文字が映し出された=写真・上=。この東京の暑い最中に選手たちはよく耐えた。「ARIGATO、よく頑張って、スポーツの醍醐味で見せてくれた」と国民の一人として思うことだ。新型コロナウイルスのパンデミックが広がる中での東京オリンピックの閉会式は静かに幕を下ろした。

   午後8時からテレビで閉会式の模様を視聴していた。注目していたことが一つあった。それは、広島市の松井市長がIOCのバッハ会長に書簡を送り、(原爆が投下された8月6日午前8時15分に)選手村などで黙とうを呼びかけてほしいと求めていた。これに対し、今月2日午後、IOCから、黙とうを呼びかけるなどの対応はとらないといった返答が広島市にあった。その理由についてIOCは「歴史の痛ましい出来事や様々な理由で亡くなった人たちに思いをはせるプログラムを8日の閉会式の中に盛り込んでおり、広島市のみなさんの思いもこの場で共有したい」と説明していた(8月2日付・NHKニュースWeb版)。それは閉会式でどのようなプログラムなのか。

   このことかと思ったのが、新型コロナウイルスで亡くなった世界の死者への葬送のパフォーマンスと日本各地の盆踊りだった。アイヌ古式踊や、沖縄県の琉球エイサー、岐阜県の郡上踊りなどの映像が新国立競技場のスクリーンで流された。確かに、旧盆に全国各地で催される盆踊りは亡くなった人々への供養や弔いの踊りである。しかし、普通に考えても、「ヒロシマの祈り」とは意義付けが異なる。

   そこで、今度はバッハ氏の閉会宣言に「祈り」の言葉が込められるのか、7分間のスピーチを最後まで聞いていた。「パンデミック以来初めて、全世界が一つになった。何十億の人が心を一つにし、喜びと感動の瞬間を共有した。これが希望をもたらし、未来を信じる気持ちを与えてくれた」との言葉には自身も心が動いたが、「祈り」「ヒロシマ」についてのワードは宣言になかった。結論、広島市長への回答は「葬送のパフォーマンスと盆踊りプログラム」だった。

   東京オリンピックの17日間はテレビを堪能した。スケートボード女子で13歳の西矢椛選手の日本史上最年少の金メダリストに=写真・下=、卓球の混合ダブルスで水谷隼・伊藤美誠選手が「チャイナの壁」を突破して日本の卓球界に初の金メダル、地元びいきかもしれないが、レスリング女子で川井梨沙子・友香子の姉妹選手がそろって金メダルを獲得した。そして、野球の日本とアメリカの決勝戦。この17日間は十分に楽しませてもらった。

   ほとんどの競技場が無観客での開催だったので、魂の抜けたようなひっそりとした大会ではないかと想像してもいたが、テレビの映像技術が臨場感を湧き立たせ、そして世界の選手たちがオリンピックに魂を吹き込んだ。あすからコロナ禍のニュースばかりに日々に戻り、「五輪ロス」が始まるかもしれない。

⇒8日(日)夜・金沢の天気       くもり

★オリンピック野球決勝 日米対戦の報道を裏読み

★オリンピック野球決勝 日米対戦の報道を裏読み

          東京オリンピックもきょうを入れてあと2日。ハイラトシーンをリアルで視聴したいと思い、午後7時から横浜スタジアムでの野球、日本とアメリカの決勝戦を放送するテレビ前に陣取った。予選リーグから4連勝の日本と、敗者復活戦から勝ち上がったアメリカだったが、正直、勝敗は五分五分と思っていた。

         3回、1アウト後に村上宗隆選手がソロホームランを打って先制。そして、8回は1アウト二塁で吉田正尚選手がセンター前にヒット、相手のエラーも重なって追加点。投手陣は5人を繰り出し、先発した森下暢仁選手は5回をヒット3本無失点と好投し、6回は千賀滉大選手、7回は伊藤大海選手、8回途中からは岩崎優選手が登板して、得点を与えなかった。9回は栗林良吏選手が2アウトからランナーを出したが、後続を抑えて2-0で勝った。この瞬間「強い、侍ジャパン」と思わず叫んだ。

   ところで、アメリカはこの試合をどう報じているのか気になった。アメリカでの放送権を独占しているNBCテレビのニュースWeb版は「Team USA shut out by Japan, settles for baseball silver as hosts win Olympic gold」との皮肉を込めた見出しで伝えている=写真・上=。ホスト国の日本チームはプロ野球球団から構成するオールスターメンバーだったが、アメリカチームは大リーグ(MLB)がシーズンを中断しなかったため、スター選手は出場しておらず、マイナーリーグやフリーエージェントの選手たちで構成されていたと報じている。

  また、CNNニュースWeb版は「Japan beats US to win first-ever gold medal in baseball」との見出しで、アメリカは銀メダル、これで4度目のオリンピック野球メダルを獲得した、と淡々と伝えている=写真・下=。試合の経過は記事にしていない。

   このNBCとCNNの違いはなんだろう。IOCの収入は放送権料が73%、スポンサー料が18%だ。その放送権料の50%以上をNBCが払っている。韓国・平昌冬季大会(2018年)と東京大会の合算した数字だが、NBCの供出額は21億9000万㌦だ。ちなみに、開催国の日本はNHKと民放がコンソ-シアムを組んで5億9400万㌦だ。五輪開催前の6月の投資家会議でNBCの最高経営責任者(CEO)が「the pandemic-tainted Tokyo Games “could be our most profitable Olympics in the history of the company.“」(パンデミック下での東京大会は「当社の歴史の中で最も収益性の高いオリンピックになるかもしれない」)と述べて、モラルハザードではないかと問題視されたことがある。

   NBCテレビのスポンサーにはさまざまポリシーを持った企業がある。このようなスポンサーをバックにしていると、あえて「Team USA shut out by Japan」という表現を使わざるを得ないかもしれない。8月3日付のブログでも書いたように、広島市長から6日の広島の原爆投下の時刻に選手たちに黙とうを捧げてほしいとの要請をIOCを受け入れなかったのも、NBCが裏で却下するように動いたではないかと個人的に憶測している。アメリカには原爆投下で先の戦争を終わらせたという意識が根強くあるのだ。

(※NBCは写真でアメリカチームの様子を、CNNは日本チームの胴上げの模様を掲載)

⇒7日(土)夜・金沢の天気      はれ時々くもり

☆姉妹でレスリング金メダル 東京五輪の新たなレジェンド

☆姉妹でレスリング金メダル 東京五輪の新たなレジェンド

   連日、地元紙が派手に報じている。レスリング女子57㌔級の決勝で石川県津幡町出身の川井梨沙子選手が5日、ベラルーシの選手を下し、前回のリオデジャネイロ大会に続いて金メダルを獲得した。川井選手の妹・友香子選手も前日4日に62㌔級で金メダルだったので、姉妹で「金」は日本勢初の快挙と讃えている。地元紙の北國新聞は連日の特別紙面で「最強の姉 約束の金lと、本紙では「梨沙子連覇 川井姉妹そろって金」、北陸中日新聞は「川井 姉妹で金 梨沙子連覇」とそれぞれ一面の通し見出しだ=写真=。

   昨夜は民放テレビで観戦していた。横綱相撲という感じだった。ベラルーシの選手を横に投げて動かし、後ろに回って抱える。場外際の投げで2点を先制。素早いタックルなどで場外に押し出してさらに1点。腕を相手の胴体に入れて一気に投げて2点。5‐0で下した。試合後にマットの外に出て、日の丸を背負って初めて笑みを浮かべていた。観客席にいた妹・友香子選手にも両手を上げていた。もし、観客席に人が大勢の人がいたら、「梨沙子」コールがわき起こっていたに違いない。

   インタビューで、梨沙子選手は「最後の1秒まで絶対に相手から目を逸らさないって決めていた。友香子にきのうあんな試合を見せられたらやるしかないって思っていたのでよかった」と。東京オリンピックの日本勢で、姉妹による金メダルは初めてなので、まさに日本のオリンピックの歴史に新たなレジェンドをつくったのではないだろうか。

   話はそれる。金メダルの「番外レジェンド」もある。NHKニュースWeb版(8月5日付)によると、名古屋市の河村市長は4日、ソフトボール日本代表チームのメンバーで、名古屋市出身の後藤希友投手から金メダル獲得の報告を受け、後藤投手からメダルを首にかけてもらった際、突然、マスクを外してメダルをかんだ。これを受け、市の広聴課には、河村市長の行為を批判する電話やメールなどが5日午後5時半までに4000件余り寄せられた。5日午前、後藤投手の所属先のトヨタ自動車から豊田章男社長の名前で、河村市長宛ての抗議文が提出された。

   河村氏の気取らずモノを言い行動するキャラは超絶だ。それにしても、金メダルに突然かぶりつくとは、「とんでもにゃあ」。

⇒6日(金)朝・金沢の天気     はれ

★メダルラッシュに沸く そしてあの論調はどこへ

★メダルラッシュに沸く そしてあの論調はどこへ

    金メダルのラッシュだ。きのう夜、民放テレビでレスリング女子フリースタイル62㌔級の決勝を見ていた。日本の川井友香子選手がキルギスの選手を4‐3で下し、金メダルを獲得した。川井選手の姉の梨沙子選手も前回のリオデジャネイロ大会の63㌔級で「金」を獲得していて、きょう夜は57㌔級で決勝戦に臨む。姉妹で金メダリストなのだ。そして姉妹は、石川県津幡町出身ということもあって、当地ではかなりテレビの視聴率は高かったのではないだろうか。

   オリンピックの地ダネだけに、地元紙の朝刊は派手に報じている=写真=。「友香子 金 井川姉妹でメダル」(8月4日付・北國新聞)、「川井友『金』 姉・梨沙子連覇に王手」(同・北陸中日新聞)とどれも一面トップだ。北國は両面見開きの裏表で「2人の夢 たどり着いた妹」と特別紙面を組んでいる。。

   話はそれるが、1ヵ月前、オリンピックの開催については反対意見が盛り上がっていた。東京五輪の中止を求めるオンライン署名サイト「Change.org」の署名は45万筆を超えていた。署名の発信者は弁護士の宇都宮健児氏で、相手はIOCのバッハ会長らだった。そして、もっとも強烈なメッセ-ジを発したのはトヨタだろう。7月19日、トヨタは東京オリンピックの大口スポンサーでもあるが、新型コロナウイルスの感染拡大が収束しない中での開催の是非について世論が割れていることを理由に、オリンピック関連のテレビCMをいっさい見送ると発表した。CMはすでに完成していて、流すだけになっていた。確かに五輪番組をテレビを見ていてもトヨタのCMは見ない。

   東京オリンピックの開催に疑念を呈していたテレビメディアも新聞メディアもまるで「手のひら返し」をしたかのように、連日オリンピックの競技を報じている。NHKや民放のテレビのアナウンサーの大声は特に響く。

   いま思えば、コロナ禍でのオリンピックは是か非かという単純な論調、あるいは読者や視聴者に分かりやすかった。ただ、どのような工夫を凝らせばオリンピックの開催は可能かという論調はあったのかもしれないが、印象に残るメディアの論調はない。トヨタのCM見送りは当時の世論を見極めた上での判断だったのだろう。ただ、いまどう思っているのだろうか。

⇒5日(木)午後・金沢の天気     くもり一時あめ