#コラム

☆五輪後に漂うキナ臭さ

☆五輪後に漂うキナ臭さ

   日増しにキナ臭さが漂う世界の動きだ。時事通信Web版(2月15日付)によると、防衛省は15日、ロシア海軍の艦艇24隻が今月1日以降、日本海とオホーツク海南部で活動しているのを確認したと発表した。さらに、岸防衛大臣は次のように述べている。

   「(ロシア海軍は)オホーツク海および太平洋に広大な訓練海域を設定して演習を実施するとともに、2月12日には、演習に参加するロシア海軍の艦艇が、アメリカ海軍の原潜のロシア『領海』への進入に対応した旨、主張しています。こうしたことを踏まえれば、少なくとも昨今のウクライナ周辺におけるロシアの動きと呼応する形で、ロシア軍が東西双方で同時に活動し得る能力を誇示するため、ロシアの戦略原潜の活動領域であるオホーツク海においても、その活動を活発化させていると考えられます」(2月15日付・防衛省公式ホームページ「防衛大臣記者会見」)

   BBCニュースWeb版日本語(15日付)は「ロシアはウクライナ国境付近に約13万人規模の軍部隊を配置している。戦車、大砲、医療施設、後方支援態勢など、すべてがそろっている」と報じている。また、20日付では、イギリスのジョンソン首相がウクライナ問題について、「ロシアは1945年以来、ヨーロッパで最大の戦争を計画している」と語ったと報じている=写真=。その一方で、東側の日本海とオホーツク海南部にロシアは艦艇24隻を配備している。なぜロシアはこのような西と東の2正面展開を行っているのか。

   以下はあくまで憶測である。中国の習近平国家主席は今月4日、北京オリンピックの開幕に合わせて北京を訪問したロシアのプーチン大統領と会談を行っている。このときの確認事項は、中国はロシアのウクライナ併合を支援し、ロシアは中国の台湾併合を支援することではなかったか。そう考えると、ロシアの艦艇24隻が今後日本海を南下して台湾を囲んで、アメリカ海軍と対峙するのではないかと想像する。中国海軍とロシア海軍が合同でアメリカ海軍と向かう。同時に尖閣諸島を取り囲み、日本と対峙する、そのようなシナリオではないのか。

   CNNニュースWeb版日本語(20日付)によると、オーストラリア国防軍は19日、空軍の哨戒機が飛行中に中国軍艦からレーザー照射を受けたとして、「命を危険にさらす恐れのある行為」を非難する声明を出した。 声明によると、哨戒機は17日、豪州北部とインドネシア東部ニューギニア島の間に位置するアラフラ海の上空で、東進中の中国軍艦2隻のうち一方からレーザーを照射された。レーザーを照射された操縦士は方向感覚を失ったり、痛みやけいれん、視界の異常を起こしたりすることが知られている。

           中国軍の挑発的とも読めるこの行為は何を意味しているのか。北京オリンピックの後、何が始まるのか。軍事力による一方的な現状変更が西と東で起きるのか。

⇒20日(日)夜・金沢の天気     くもり

★「そだねー」が聞きたいカーリング女子決勝

★「そだねー」が聞きたいカーリング女子決勝

   昨夜は北京オリンピックのカーリング女子の日本代表「ロコ・ソラーレ」の準決勝の中継をNHK総合で視聴していた。相手のスイスには17日の予選リーグ最終戦で敗れていて、2日連続の対戦。見せ場は第5エンド。スキップ藤沢選手が相手のストーン2つを一気にはじき出すダブルテイクアウトを決め=写真=、日本側に試合の流れを引き寄せる。これが4点を奪うビッグエンドとなり、逆転の5対2に。その後も第6、第8、最終第10エンドにそれぞれ1点を加えて8対6で逃げ切った。

   カーリングにはまったく興味はなかったが、2018年の平昌オリンピックでロコ・ソラーレのメンバーたちが競技中に「そだねー」と声をかけ合っていたのが印象的で何度か見た。今回も競技よりもむしろ、「そだねー」が聞きたかったので、新聞のテレビ欄を見てチャンネルを合わせた。ところが、きのうの試合では「そだねー」が聞こえなかった。「ナイッスー」に変わっていた。なぜだろう。

   標準語だと「そうだね」だが、「そだねー」は「う」が抜けて、語尾が下がらない独特なイントネーションだ。北海道の北見市出身の選手が多く、北海道地方の独自の言い回しなのだろう。アスリートたちが自然に発した意思疎通のための地の言葉だが、初めて聴く視聴者にとっては新鮮で心が和み、ほっとする光景でもあった。

   ここからは憶測だ。北海道に住む人とそうでない人で、言葉で受ける印象に違いがあるのかもしれない。北海道の人たちが「そだねー」を聞けば、普段聞き慣れているだけに、「ウザイ」と感じた人がいたかもしれない。ましてそれが、テレビ中継されて全国に広まったことで、恥ずかしと感じた人もいたかもしれない。金沢でも似た意味の言葉で「そうながや」「そうしまっし」という方言がある。もし、金沢のアスリートたちが使い、テレビで全国に広まったとしたら、観光のキャッチで使えると喜ぶ人もいるかもしれないが、競技では別の言葉でモチベーションを上げてほしいとモノ申す人もいて、金沢で意見は2分するかもしれない。

   そう考えると、今回は「そだねー」は北海道の人たちの気持ちや、言葉の賞味期限ということを考えてチームとして使わないことにしたのだろうか。また、逆なことも憶測してみた。「そだねー」は世相を反映した言葉を選ぶ「2018ユーキャン新語・流行語大賞」で年間大賞に選ばれた。そこでチームとして2022流行語大賞を狙うため、あえて「ナイッスー」を使っているのかもしれない。

   金メダルをかけた決勝はあす20日、イギリスとの対戦だ。「ナイッスー」も悪くはないが、「そだねー」をもう一度聞きたいものだ。

(※写真は、民放テレビ局オリンピック公式競技動画配信サイト「gorin.jp」のカーリング 女子準決勝・日本×スイス戦 ハイライトより)

⇒19日(土)午前・金沢の天気      くもり

★聞き捨てならないニュース

★聞き捨てならないニュース

   聞き捨てならないニュースをいくつか。秋篠宮家の長男悠仁さまが書かれて受賞したという、「第12回子どもノンフィクション文学賞」(北九州市主催)の作品『小笠原諸島を訪ねて』がネットで掲載されているので読んだ。報道では、ガイドブック『世界遺産 小笠原』(JTBパブリッシング、2012年刊行)と一部文章が似ていて、コピーペーストではないのかと問題が指摘がされている。自身の手元にこのガイドブックがないので比較はできないが、悠仁さまの作品を読んだ感想を述べてみたい。

   この作文は悠仁さまが2017年、小学5年生のときに母の紀子妃と旅行された小笠原諸島の思い出を綴ったものと冒頭で記されている。執筆したのは中学2年のときで、「ノンフィクション文学賞」にふさわしく、事実関係がしっかりと描かれ、形容詞もほとんどない。なので、読み手の想像力を膨らませ、一気に読ませる。むしろ読んでいて、気になったのはこれが中学2年の文章表現と思うほど、大人っぽいのだ。

   たとえば、受賞作品集の77㌻にある、「あるものは海流に乗って運ばれ、あるものは風によって運ばれ、翼をもつものは自力で、あるいはそれに紛れて、三つのW、Wave(波)、Wind(風)、Wing(翼)によって、海を越えて小笠原の島々にたどり着き、環境に適応したものだけが生き残ることができました」という下り。海流、気象、生物に熟知したプロが表現するような文章との印象だ。さらに、「です」「ます」調なら少年らしいと読めるが、「でもあります」という表現も出てきて少々大人っぽい。文章表現だけでなく、ぜひご本人の言葉で小笠原諸島の旅の話を聞いてみたいものだ。

   総務省は放送制度について検討する有識者会議で、特定の事業者が多数の放送局に出資し、経営支配することを避ける「マスメディア集中排除原則」を緩和する方針を示した(16日付・共同通信Web版)。集中排除原則は表現の自由を確保することを目的に多くの企業に放送事業に参入する機会を与えるもので、ローカル局が別の局を経営することを原則として禁止している。地方局の経営環境が厳しさを増していることから、今後、東京キー局を中心とした持ち株会社が系列局を傘下に収めることになるだろう。

   そもそも、ローカル局には放送法で「県域」という原則があり、放送免許は基本的に県単位で1波、あるいは数県で1波が割り与えられている。1波とは、東京キー局の系列ローカル局のこと。現在は地方にいても、パソコンやスマホ、タブレットがあれば動画配信サービス「TⅤer」で東京キー局の番組を視聴できる。ローカル局は視聴されなくなるかもしれないという不安がローカル局にはある。テレビ業界における「ポツンと一軒家」化だ。マスメディア集中排除原則という理念そのものがすでに形骸化している。

⇒17日(木)夜・金沢の天気      あめ

☆北陸に春一番、一転あすから大雪

☆北陸に春一番、一転あすから大雪

   けさ突風が吹いていた。一瞬地震かと思うような家屋の揺れも。テレビのニュースでは、なんと「春一番」だった。気象庁の公式ホームページによると、金沢の最大瞬間風速は19.2㍍だった。道を歩いている人が転倒するくらいの風の強さだ。そして、この春一番は驚くことに、全国に先駆けて北陸に吹いたようだ。気温も午前中は9度だった。しかし、気象は一変するようだ。

   日本海にある低気圧が発達しながらあす16日から17日にかけて北陸から東北付近に近づき、上空には強い寒気が流れ込む。このため、日本海側を中心に雪となり、北陸ではこの冬一番の大雪となるおそれも。17日夕方までの24時間に、北陸で60㌢から80㌢の雪が降り、その後も18日の金曜日にかけて積雪が増える。春一番が大雪に逆戻り。しかし、こうした「寒の戻り」は北陸ではよくあることだ。(※天気図は15日付・日本気象協会「tenki.jp」より)

   大雪もさることながら、むしろ警戒するのは落雷だ。気象庁の雷日数(雷を観測した日の合計)の平年値(1991-2020年)によると、全国で年間の雷日数がもっとも多いは金沢の45.1日だ。雷がとどろけば、落雷も発生する。落雷はどこに落ちるか予想がつかない。きょうも金沢に雷注意報が出ている。

   これが怖いので、自身のパソコンは常に雷ガードのコンセントを使用している。雷が直接落ちなくても、近くで落ちた場合でも「雷サージ」と呼ばれる現象が広範囲に起きる。いわゆる電気の津波だ。この雷サージがパソコンの電源ケーブルから機器内に侵入した場合、部品やデータを破壊することになる。いわゆる「雷害」からパソコンを守るためにガードコンセントは不可欠だ。このコンセントは金沢市に本社があるメーカーが製造したもの。北陸で雷害のケースと実情を研究し耐雷対策に取り組んできた企業の製品なので信頼を寄せている。

   話は春一番に戻る。加賀や能登では生暖かい春一番を「ぼんぼら風が吹く」と言ったりする。今回は生暖かさを感じなかった。三寒四温、ゆっくりと春の訪れを待つ。

⇒15日(火)夜・金沢の天気  あめ    

★ニュース悲喜こもごも

★ニュース悲喜こもごも

   残念なこと。今月2日付のブログ「☆現場を行く~海上の空で消えたF-15戦闘機~」の続報。先月31日、航空自衛隊小松基地のF15戦闘機1機が訓練のために基地を離陸したあとにレーダーから機影が消え、小松市沖の日本海に墜落した。この事故で戦闘機に乗っていた飛行教導群司令の田中公司1等空佐52歳と飛行教導隊隊員の植田竜生1等空尉33歳の2人が行方不明になっていた。田中1佐が前席、植田1尉が後席に乗っていた。捜索できょう14日までに2人の遺体が発見された。

   地元紙の報道によると、11日午前11時50分ごろ、海上自衛隊の隊員が潜水して捜索していたところ、機体がレーダーから消えた基地からおよそ5㌔の海域で一人の遺体を発見。そしてきのう13日午前9時10分ごろ、現場海域で海自の隊員が新たに一人遺体を見つけ、それぞれ身元を特定した。航空自衛隊のこれまでの捜索で、水平尾翼やエンジン排気口、燃料配管などの一部がそれぞれ見つかっている。空自が委託した民間のサルベージ船が近く機体を引き揚げ、原因究明を進める。

   あっぱれ。北京オリンピックのあのダイナミックな演技は冬季五輪の歴史に輝くだろう。平野歩夢選手が11日にスノーボード男子ハーフパイプで金メダルを獲得した。テレビで協議の中継を見ていた。言葉も初めてだった。「トリプルコーク」。最高難度の大技で「1440(斜め軸に縦3回転、横4回転)」を決めた。2回目で2位の91.75点は物議を醸したが、3回目に96.00点をマークして逆転で金メダルを獲得した。このトリプルコーク1440というのが人類初めての公式戦で演技だったというので納得した。

   危うい。紛争は2014年からあったが、今もっとも緊張が高まっている。ロシアがウクライナを侵攻すれば、エネルギーの需給がひっ迫するとの見方から原油価格も上昇している。アメリカの政府高官が11日に、「ロシアの侵攻が北京オリンピックの期間中にもありうる」と発言したあたりから世界に緊張感が高まった。日本の外務省はウクライナの危機情報を最高度の「レベル4」(退避勧告)に引き上げ、滞在する日本人にただちに退避するよう指示している。

⇒14日(月)夜・金沢の天気       くもり

☆春を待つ花のいとおしさ

☆春を待つ花のいとおしさ

   北陸に大雪をもたらすJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)は気象ニュースにもよく取り上げられていて、このブログでもよく使う言葉になった。シベリアから寒気団が日本海に向かって流れてくる際に朝鮮半島北部の白頭山によって、いったん二分されるが、その風下で再び合流し、雪雲が発達しやすい収束帯(ライン)となって北陸地方などになだれ込んでくる。

   そして、最近よく関東地方に大雪をもたらすとして気象ニュースでよく使われているのが「南岸低気圧」だ。これまで日本列島南岸を発達しながら東に進んで関東地方などに雨を降らせると聞いていたが、雪も降らせている。予報では今夜から次第に雨が雪に変わり、あす14日朝までに東京都心でも2㌢から5㌢の積雪が予想されている(13日付・ウエザーニュースWeb版)。

   北陸はこのところ気温が7度まで上がり、雪解けが進んでいる。自宅近くの川も水かさが増している。冬から春にかけての季語で、桃花水(とうかすい)という言葉がある。氷や雪が解けることで増す川の水のことを言う。

   自宅庭にはロウバイとスイセンの花があったので、床の間を飾ってみた。掛け軸は桃花水からイメージして、「桃花笑春風」(とうかしゅんぷうにえむ)を選んだ。唐代の詩人・崔護の漢詩の一部「桃花依旧笑春風」が元の書である。うららかな春風に揺られて咲く桃の花は、まるで微笑んでいるようだ。無心に咲く、花の美しさよ(淡交社『茶席の禅語大辞典』より)。

    16日から17日にかけて日本海側にはマイナス40℃以下の強烈な寒気が流れ込んで、北陸など局地的に大雪となる恐れがあるという(同)。床の間をじっと眺めていると、桃花もロウバイもスイセンも春を待つ花のように見えていとおしい。

⇒13日(日)夜・金沢の天気     くもり

★メディア企業トップが揺るがしたガバナンスの実態

★メディア企業トップが揺るがしたガバナンスの実態

   この半年間でテレビキー局のテレビ朝日で不祥事が相次いでいる。ガバナンス(企業統治)の問題として、このブログで取り上げたのは去年8月11日付だった。コロナ禍の緊急事態宣言下で、東京オリンピック番組を担当したスポーツ局の社員や外部スタッフ10人が8日の閉会式後から翌日未明まで打ち上げ宴会を行い、そのうちの社員1人が酔って店外に転落し救急搬送された問題。同局番組『羽鳥慎一モーニングショー』(8月11日付)で、コメンテーターの玉川徹氏が「テレビ朝日の社員として謝罪を申し上げます」と頭を下げ、調査委員会をつくって不祥事の原因を徹底的に究明すべきだと訴えた。これにはむしろ違和感を覚えた。

   同局ではコロナ禍で「宴席を禁じる」など社内ルールを設けており、それに反する行為だった。なので、この問題の責任の所在は番組にあるのではなく、会社のリスク管理というガバナンスの問題だ。むしろ、「テレビ朝日として」の謝罪の言葉を会社の最高責任者が真っ先に発すべきだった。ところが、この問題についてのトップの釈明会見はなかった。

   その後も、テレビ朝日スポーツ局の社員が、自社で製作し、東京オリンピック関係者に配布する「五輪ドラえもんピンバッジ」(非売品)を社内から持ち出して、フリマアプリ「メルカリ」で1個2万円から3万円で販売し多額の利益を上げていた(「週刊文春」2021年9月30日号)。ことしに入って、中小企業のデジタル化を支援する経産省の「IT導入補助金」をめぐり900万円を不正受給したとして、同局のセールスプロモーション局ソリューション推進部長が大阪府警に詐欺容疑で逮捕された(2月9日付・共同通信ニュースWeb版)。

   そしてきのう企業ガバナンスの本丸に激しい亀裂が入った。テレビ朝日は10日、亀山慶二・代表取締役社長が辞任を申し出て、取締役会において受理されたと発表した(2月10日付・テレビ朝日公式ホームページ「ニュースリリース」)。辞任に至る経緯が記されている。去年8月以降、スポーツ局の社員・スタッフによる不祥事が連続して発覚したことから、12 月に「役職員の業務監査・検証委員会」を設置した。スポーツ局のガバナンスを中心に検証した過程で、スポーツ局統括でもある亀山氏の業務執行上の不適切な行為が明らかになった。

   2019年6月の社長就任から亀山氏は毎週のようにスポーツ局内の主要な役職者を招集して報告会を開催していたが、理由もなくスポーツ局長だけを外していた。局内での意思疎通や情報共有、円滑な指揮命令の伝達といったガバナンスがこの時点で崩れていた。さらに、スポーツイベントへの出席・営業活動のため、会社の費用負担で国内各地に出張していたが、業務との関連が認められない私的な会食やゴルフなどの費用を業務上を装って会社経費として精算していた。

   上記の行為についてリリース文では、「亀山氏の行為は当社社長として許されるものではないと判断しております」と断言している。リリース文では今後の刑事告訴などについて触れてはいない。企業のガバナンスを根底から揺さぶっていたのは、まさに社長、その人だった。

⇒11日(金)午後・金沢の天気    くもりと時々はれ

☆アサリ、ウナギ産地偽装は日本版「毒菜」「下水油」

☆アサリ、ウナギ産地偽装は日本版「毒菜」「下水油」

            中国産の食品を避けるようになったのは、中国人の言葉からだった。金沢大学にきていた中国人留学生が「毒菜」の話をしてくれた。「毒菜」は姿やカタチはよいが、使用が禁止されている毒性の強い農薬(有機リン系殺虫剤など)を使って栽培された野菜だ。さらに、「下水油」の話も。残飯や汚水に浮かぶ油をくみ取って精製した油、あるいは劣化した油を処理して見栄えをよくした油のこと。「同年代の若い人たちは屋台の食堂には行かなくなりましたよ。なんだか怖くて」と。11年も前の話だが、それ以来「毒菜」と「下水油」が頭から離れない。

   先月のTBS番組『報道特集』(1月22日放送)で「輸入アサリが国産に アサリ産地偽装の実態は」を視聴した。3年をかけた調査報道で、中国産アサリが巧妙に産地偽装され、国産として全国に広く流通している実態をカメラが追いかけた。夜の熊本の干潟にばら撒かれる中国産のアサリ。1週間ほど寝かせて国産に化けさせる。そして、スーパーの店頭では熊本産という国産品で並んでいく。

   業界内部の闇も浮かび上がる。かつて、この干潟で産地偽装をして脱税の罪で執行猶予付きの有罪判決を受けた元業者は現在は偽装をなくすための活動をしている。しかし、現地では相手にされなくなった。その背後にある「同調圧力」はすさまじい。業者の一人一人は「いけないことと理解はするが、仕方なく」に陥っている。その負のスパイラルをカメラは丁寧に追っていた。この報道の後、農水省は、熊本産として販売されているアサリの97%に「外国産が混入している可能性が高い」と調査結果を発表した。

   見かけはブランドもの、そして得体の知れないものを売る。この報道を見て、この産地偽装は日本版の「毒菜」「下水油」だと感じた。ウナギの産地偽装も問題になった。うなぎ料理専門店を経営する奈良県大和高田市の食品販売会社「うな源」は中国産ウナギを国産と偽って、ネット通販やふるさと納税の返礼品として2020年4月1日から同11月30日の間に15万8873個を販売していた。近畿農政局により、食品表示法に基づく立入検査が行われていた。うな源はことし1月下旬から各店舗を閉店・休業していたが、信用も失墜。事業再開のめどが立たず、今月8日までに破産手続きに入った(9日付・東京商工リサーチWeb版)。

   今回明るみになった一連の産地偽装問題は氷山の一角ではないだろうか。産地偽装と合わせて、監督官庁には中国の汚染水で育ったであろうアサリやウナギの安全性も追及してほしい。

(※写真は、アサリの産地偽装問題を受けて2月1日に緊急記者を行った熊本県知事=熊本県庁公式ホームページより)

⇒10日(木)夜・金沢の天気    くもり

★カニカマや大豆ミート  代替食品に手を伸ばす不思議

★カニカマや大豆ミート  代替食品に手を伸ばす不思議

   日本酒のつまみにカニカマを重宝している。ラップを外してそのまま箸でつまんで食べる。なんとなくカニの風味のあの味は酒の旨みをじゃましない。最近はスパークリングワインや白ワインのグラスの傍らにも置いている。

   この商品が世に出回ったころは高校時代だった。金沢で下宿をしていて、近くの食料品店で買って、おやつ代わりに食べていたことを思い出す。もう50年前のことだ。なぜそのようなことを覚えているのかと言うと、生まれ育った能登の水産加工会社「スギヨ」(七尾市)で開発された商品ということで印象深かった。

   ただ、正直言うと当時の若者言葉で「だっさい」、あかぬけしない商品だった。というのも、当時は「かにあし」という商品名で、細かく身をほぐしたような中身だった。いま販売されているようなカニの脚を模した標品ではなかった。風味はカニだが、商品イメージはカニとは異なった。当時のテレビCMも「カニようでカニでない・・」というちょっと言い訳がましいCMだったが、そのキャッチフレ-ズが話題を呼んだ。おそらく当時は「カニまがい商品」「インチキ」などとクレームが来て、スギヨはそれを逆手に取ってCMに仕立てたのではないだろうか。

   あれから半世紀、金沢のスーパーでは本物の香箱ガニの脚を再現したスギヨの『香り箱』という商品は練り物コーナーではなく、鮮魚コーナーに陳列されている。消費者は本物のカニではないと知りながらこの商品に手を伸ばす。不思議な食材ではある。

   さらに、肉もカニカマ化しているのかもしれない。「大豆ミート」「ソイミート」という商品がスーパーやコンビニ、ドラッグストアの棚に並んでいる。大豆を原材料とした肉のような加工食品だ。この商品も以前から商品として開発されていた。その後、発芽させた大豆を原料にすると、アミノ酸やビタミン、糖類などの栄養素が増えて肉の成分と似てくることから商品開発が進んだ。健康志向や環境問題への関心の高まりもあって、いまでは棚の一角を占めるようになっている。唐揚げ、炒め物、ハンバーガー、肉まんなど種類も豊富だ。

   カニや肉だけではない。「マツタケの味」の吸い物も商品化されている。日本人はこうした代替食品に違和感を持たない、考えてみればこれも不思議だ。

⇒9日(水)午後・金沢の天気     はれ

☆IOC声明 中国との妙な関係性を裏読み

☆IOC声明 中国との妙な関係性を裏読み

   北京オリンピックをはじめとして連日のように「中国」が日本のメディアをにぎわせている。「たかが中国、されど中国、やっぱり中国」と感じたニュースを。北京五輪で中国を訪れているIOCのバッハ会長は、中国の前の副首相から性的関係を迫られたことをSNSで告白したとされるプロ子テニスの彭帥(ペン・シュアイ)選手と5日、夕食をとりながら会談したとIOCが発表した(7日付・NHKニュースWeb版)。新型コロナの感染対策として北京オリンピックの大会関係者が外部の人と接触しないようにしているいわゆるバブル内で、別のIOC委員を含め3人での会食だった。会談で話した内容についても詳しくは言及されていないが、3人はそれぞれオリンピアンとしての経験を話し合ったとしている(同)。

   さっそくIOC公式ホームページをチェックした。サイドの「ニュース」覧に「IOC statement on meeting with Peng Shuai」の見出しで掲載されている=写真=。読んで感じたことは、なぜ3ショットの写真を掲載していないのか、そもそもこの会食はIOC公式ホームページで「声明」として取り上げるべき話題なのだろうか。さらに奇妙に感じたのはこの下りだ。

「In this context, she also shared her intention to travel to Europe when the COVID-19 pandemic is over, and the IOC President invited her to Lausanne to visit the IOC and The Olympic Museum, to continue the conversation on their Olympic experiences. Peng Shuai accepted this invitation.」(意訳:彭選手はパンデミックが治まったらヨーロッパを旅行したいと話題にすると、バッハ会長はスイス・ローザンヌにあるオリンピック博物館に彼女を招待したいと述べ、引き続きIOCとの対話を続けることを提案した。彭選手も承諾した)

   文面を読めば、和やかな雰囲気が伝わってくるのだが、このホームページの記事を読んだ世界の多くの人は、「IOCのバッハ会長はなぜペン・シュアイ選手と会食したり、誘ったりしているのか。彼女がSNSを発信して一時消息が分からなくなっていた。それが問題ではないのか」と勘繰っているに違いない。

   世界ではすでにIOCのバッハ会長は「Baron Von Ripper-off」(ぼったくり男爵)で知られている。IOCは公的な国際組織ではなく、非政府組織 (NGO) の非営利団体 (NPO)で、4年に1回のイベントで得た収入で運営される。収入の73%は放映権料、最上位スポンサーからの協賛金は18%を占める。収入の9割を各国・地域のオリンピック委員会(NOC)や国際競技団体(IF)に分配し、残り1割は運営費。金額で5.7億㌦(2013-16年収入実績)がIOCの手元に残る。なので、バッハ会長はパンデミックになろうと人権侵害・ジェノサイドがあろうと、オリンピックは簡単に中止にはしない。

   以下裏読みだ。IOCと中国の間で「密約」があるのではないか。中国は彭選手をIOC委員として送り込もうとしている。彭選手はオリンピック3回出場(2008年北京、12年ロンドン、16年リオ)のベテラン選手でもあるので、バッハ会長もこれに同意した。オリンピック博物館に彼女を招待するのはその雇用契約のためではないのか。中国側の狙いはバックヤードからIOCをコントロールするためではないか。このように憶測すると話のつじつまが妙に合ってくる。

⇒8日(火)午前・金沢の天気     くもり