#グレタ・トゥーンベリ

☆電気料金値上げの「闇」と「負のスパイラル」

☆電気料金値上げの「闇」と「負のスパイラル」

   もう4年も前の話になるが、金沢大学で教員をしていたころ、学生や留学生たちと語り合う機会があった。話題が、スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんが日本に来てホームステイをしたら、彼女は何を言うかという話になった。すると、ドイツとフィンランドからの留学生が声をそろえ、「トイレットペーパーのムダ遣い、ウオシュレットによる水のムダ遣い、電気の消し忘れによるムダ遣い、彼女は日本人のこの3つのムダ遣いに怒りまくるだろう」と。

   では、トイレットペーパーのムダ遣いは実際どれほどなのか、試しに目測で一回で使うトイレットペーパーの長さを左右の手で間隔を示してもらった。それを定規で測ると、日本人学生(男子)2人は85㌢と90㌢、ドイツとフィンランドの男子学生はそれぞれ50㌢と60㌢だった。最大で40㌢も差があった。ドイツの留学生は小さいころから折りたたんで使うことをしつけられたそうだ。ウオシュレットも日本人学生は清潔で便利と絶賛していたが、留学生たちは丁寧に尻を拭けばよいだけで、また、少し腰を上げただけで水が流れる日本のウオシュレット便器は水の浪費だと違和感を感じていると語っていた。

   そして、3つ目の電気の消し忘れによるムダ遣いはむしろ日本人学生たちが実感していた。学生たちが海外に留学した折に寮の管理人から「日本人はルーズだ」と電気を消さないで外出したことを何度か叱責されたと話していた。自身もそうなのだが、テレビはつけっ放しで、部屋の照明やエアコンもまめに消さない。確かに、日本人には節電という意識が薄い。

   話は変わるが、日本人が電気のムダ遣いに襟を正すきっかけとなりそうだ。電力各社は6月から電気料金を一斉に値上げする。自身が契約している北陸電力の場合は39.7%も値上げとなる=写真=。標準的な家庭の値上げ幅は2548円とされる。値上げの背景には、ロシアによるウクライナ侵攻やこのところの円安によって、火力発電の燃料価格が高騰していることが理由とされている。そして、関西電力や九州電力など原発が稼働中の電力会社は今回値上げを予定していない。となると、原発の再稼働問題と電気料金値上げを絡めて、政府が世論づくりに利用するのではないかと勘繰ってしまう。

   さらに気になるのは、このところの円安だ。円相場は半年ぶりに1㌦=140円台に下落した。これが150円台に下落となれば、円安を理由とした食品の一斉値上げなどが家計を圧迫してくるに違いない。さらに、電気料金の再値上げもありうるのではないか。電気料金値上げの「闇」と「負のスパイラル」は今後も続くのか。

⇒27日(土)午後・金沢の天気    くもり時々はれ

★「飛び恥」からカーボンニュートラルへ

★「飛び恥」からカーボンニュートラルへ

   先日、友人たちと会って「コロナ禍」後のことについて語り合った。「世界の人々の海外旅行の欲求が一気に高まり、ビッグバン(大爆発)のようなブームが起きるかもしれない」と話すと、友人の一人が「そうそう、CO2の削減が世界の課題で、ヨ-ロッパでは飛び恥より鉄道での旅行がブームらしい」と。「飛び恥って」と聞き返すと、「環境問題を考えるなら、CO2排出量の多い飛行機を使わないという意味だよ」と友人は教えてくれた。このとき初めて「飛び恥」という言葉を知った。

   ネットで「飛び恥」を検索してみると、この言葉は、若き環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが育ったスウェーデンが発祥の地のようだ。2019年9月、16歳のグレタさんが参加した国連気候行動サミット(国連本部)には、温室効果ガス排出量が大きい飛行機には乗らないと、太陽光パネルと水中タービン発電機が付いたヨット船で父親らと大西洋を横断してニューヨーク港に着いたことが、世界のメディアに大きく取り上げられた。

   HUFFPOST日本語版(2019年11月14日付)の記事を以下引用。多くのスウェーデン人にとって、飛行機での旅行は自慢の対象ではなくなっており、ヨーロッパを移動する際には、鉄道を利用するのが一種のトレンド。「飛び恥(Flygskam/ 英語ではflight-shaming)」「鉄道(列車)自慢(Tågstolthet/英語ではTrain Pride)」という言葉ができている。個人旅行だけでなく、ビジネスでの出張を減らそうという動きもある。ビジネスパーソンたちも、国際会議を減らしたり、なるべくスカイプに切り替えたりしている。

   HUFFPOSTは、グレタさんの母親でオペラ歌手のマレーナ・エルンマンさんは「なぜ飛行機に乗らないか」(2017年)というコラムを書いて、地球温暖化に警鐘を鳴らしている著名人の一人だと紹介している。確かに、スウェーデンは1972年にストックホルムでの第1回地球サミット「国連人間環境会議」のホスト国を務めるなど環境問題には熱心で、二酸化炭素の排出量が世界で最も少ない国として注目されている。そして、地球温暖化を数値で予測可能にした真鍋淑郎氏にノーベル物理学賞を贈ったのはスウェーデン王立科学アカデミーだ。 

   では、スウェーデンはなぜここまで二酸化炭素と地球温暖化問題に熱心なのか。以下憶測だが、ツンドラ地帯の永久凍土の融解や生態系の変化など北欧諸国では地球温暖化の影響が目に見えて変化しているのではないだろうか。とくに、永久凍土が融けると大規模な地盤沈下が起きると言われている。

   話を冒頭に戻す。では、「飛び恥」でこれから航空産業は衰退するのだろうか。むしろ、大気中のCO2濃度を増やさないカーボンニュートラルな航空機燃料、つまりバイオジェット燃料の増産が解決策ではないだろうか。ことし6月、バイオジェット燃料を使い、鹿児島から羽田まで930㌔を飛んだことがニュースになった(6月29日付・NNNニュースWeb版)。 バイオベンチャー企業「ユーグレナ」が、ミドリムシと廃食油でバイオ燃料をつくることに成功。国内初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントを2018年11月に横浜市で完成させている。

    日経新聞Web版(10月8日付)によると、ANAとJALは廃油や植物を原料にした環境負荷の少ない「持続可能な航空燃料(SAF)」の活用推進に向け、共同で市場調査を実施した報告書をまとめたと発表した。日本の航空大手2社が環境関連の活動で手を組むのは初めてと報じている。

   ようやく「飛び恥」からカーボンニュートラルへ。CO2をめぐる航空産業界の動きが一段と加速しそうだ。

⇒12日(火)午後・金沢の天気      あめ

★こんな「ノーベル賞」を上げたい2人

★こんな「ノーベル賞」を上げたい2人

   「ノーベル賞」という言葉がメディアで目立ってきた。10月はノーベル賞の季節でもある。ノーベル財団の公式ホームページによると、10月5日に医学生理学賞を発表し、その後、物理学賞、化学賞、文学賞、平和賞と順次発表。12日の経済学賞をもって終える。 今年の授賞式は、新型コロナウイルスの影響でリモート形式のようだ。毎年気になるノーベル賞だが、もし、このようなノーベル賞があったらと想定して、自身が贈りたい人物を思い描いてみる。

   もし、「ノーベル環境賞」があるとすれば、あげたい人物は17歳の環境活動家、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんだ。なんと言ってもパンチの効いたスピーチが心に響く。「You have stolen my dreams and my childhood with your empty words. And yet I’m one of the lucky ones. People are suffering. People are dying. Entire ecosystems are collapsing.」(あなたたちは空虚な言葉で、私の夢を、私の子ども時代を奪った。それでも、私は幸運な者の1人だ。人々は苦しんでいる。人々は死んでいる。生態系全体が崩壊している)=国連気候アクション・サミット2019(9月23日)でのスピーチから引用。

         地球温暖化対策に本気で取り組んでいない大人たちを叱責するメッセージだ。「私たちが地球の未来を生き抜くためには温暖化対策が必要なんです」と必死の叫び声が聞こえる。(※写真は、2019年9月21日に国連本部で開かれた「若者気候サミット」で温暖化対策を訴えるグレタさん(右)。左はグテレス事務総長=国連「Climate Action Summit 2019」公式ホームページより)

   もし、「ノーベル民主活動賞」があるとすれば、あげたい人物は、香港国家安全維持法の違反容疑でことし8月に逮捕され、保釈された民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)さんだ。周さんは保釈後、日本のメディアに対し、香港警察から証拠の提示もなく、パスポートも押収され、「なぜ逮捕されたのか分からない」と流暢な日本語で答えていた。そして、拘束中に「欅坂46」のヒット曲『不協和音』の歌詞が頭の中に浮かんでいたという。

   『不協和音』には「絶対沈黙しない」「最後の最後まで抵抗し続ける」などの歌詞があり、民主活動家としての彼女の心の支えになったのだろうか。2014年のデモ「雨傘運動」に初めて参加してから、今回含めて4回目の逮捕だ。

   周さんは保釈後、「ユーチューブ」で動画を配信している。「釋放後Live!憶述警察爆門拘捕過程」のタイトルで逮捕について述べ、この中で3分間ほど日本語で語りかけている。「心の準備ができていないまま逮捕され本当に不安で怖かった。国家安全維持法では起訴後の保釈は認められていないため、このまま収監されてしまうのではないかと怖かった」「2台のパソコンと3台のスマホが没収された」と当時の状況を述べている。最後に「日本の皆さんも引き続き香港のことに注目してほしい」と呼びかけている。

    彼女の言葉には矜持を感じる。中国政府に対する葛藤、23歳にして香港という自らの居場所を死守するために戦い続ける勇ましさだ。

⇒30日(水)夜・金沢の天気     くもり