#グテーレス

★国連事務総長が語るべき「地獄の黙示録」

★国連事務総長が語るべき「地獄の黙示録」

   ロシアを26日訪れ、プーチン大統領と会談した国連事務総長のグテーレス氏は28日、ウクライナの首都キーウでゼレンスキー大統領と面談した。その夜、キーウで2回にわたって爆発音が響いた。ロシア軍のミサイル2発が撃ち込まれた。このため、グテーレス氏はウクライナ政府の建物に数時間にわたって足止めとなった(29日付・NHKニュースWeb版)。

   BBCニュースWeb版(29日付)によると、その後のインタビューにグテーレス氏は「私が訪れているキーウに2発のミサイルが着弾してショックを受けている。私たちは絶対にこの戦争を終わらせる必要がある」と述べた=写真=。グテーレス氏はウクライナでの「地獄の黙示録」を目の当たりにした。

   グテーレス氏は、ゼレンスキー氏との会談で、「ロシアによる侵略は明らかな国連憲章違反だ」と厳しく非難したうえで、マリウポリに取り残されている市民の避難に向け国連として全力を尽くすと強調した。その後、キーウの北西にあるボロディャンカの町を実際に訪れ、攻撃によって破壊された建物の前で、ロシアによる侵攻を「absurdity in the 21st Century(21世紀の不条理)」と呼んだ。さらに、マリウポリでは、「マリウポリは危機の中の危機だ」と述べた。「何千人もの民間人が命を救う支援を必要としており、その多くは高齢者で医療を必要としているが、移動が制限されている。彼らには黙示録からの逃げ道が必要だ」と語った。

   グテーレス氏が語った言葉だ。「I am here to say to you Mr President, and to the people of Ukraine, we will not give up」(意訳:「私はゼレンスキー大統領、そしてウクライナ国民に、私たちはあきらめないと言うためにここにいます)

   そもそも、グテーレス氏は行く順番を間違えた。まずウクライナの現場を見て、それからプーチン氏と語るべきだったのではないか。ならば、もう一度、ロシアに行くべきだろう。そして、「absurdity in the 21st Century」を訴えるべきだ。国連安保理は常任理事国のロシアによる拒否権の発動で機能不全に陥っている。崖っぷちに立っているのはむしろ国連ではないか。

⇒29日(祝)夜・金沢の天気   あめ

★「コケの一念」プーチン 「コケにされた」グテーレス

★「コケの一念」プーチン 「コケにされた」グテーレス

   よい表現ではないが、「人をコケにする」という言葉がある。コケの意味を国語辞典で調べると、「こけ(虚仮)」は「愚かなこと」「愚かな人」を意味し、例文として「人をこけにする」は「人をばかにする」の意味。慣用句として「こけの一念」があり、「愚か者が、(たとえ笑われようとも)一つのことをやりとげようと専念すること」。「こけの一念岩をも通す」もある(三省堂『現代新国語辞典』)。

   さらにネットで「虚仮」を検索すると、鎌倉時代の仏教書『歎異抄』の一文が出てきた。「道場にはりぶみをして、なむなむのことしたらんものをば、道場へいるべからず、なんどということ、ひとえに賢善精進の相をほかにしめして、うちには虚仮をいだけるものか」(第十三条)。現代語で「念仏の道場に、禁止事項を書いた紙を貼り、このようなことをした者は、道場に入ってはならない、などということは、ただただ外見には真面目な念仏の行者を装って、内心には虚偽をいだいている者ではないのか」(親鸞仏教センター公式サイト)。

   コケの意味を調べようと思ったきっかけは、国連のグテーレス事務総長が26日、ロシアによる軍事侵攻が始まってから初めてロシアの首都モスクワを訪れプーチン大統領と会談した。話し合いは例の20フィート(約6㍍)離れて向かい合って座るテーブルで行われ=写真、27日付・BBCニュースWeb版=、肝心の停戦については協議にも至らなかった。「平和の使者」であるグテーレス氏はプーチン大統領にコケにされたのではないかとの印象だった。

   念のため、国連公式サイトでグテーレス氏とプーチン氏の会談内容をチェックする。「The President agreed, in principle, to the involvement of the United Nations and the International Committee for the Red Cross in the evacuation of civilians from the Azovstal plant in Mariupol.」(意訳:大統領はマリウポリのアゾフスタル工場地下の民間人の避難に国連と赤十字国際委員会が関与することに原則的に同意した)などと掲載されているものの、停戦交渉についての記述はまったく見当たらない。グテーレス氏はこれまで、ロシアの軍事侵攻は一方的な措置で国連憲章に反していると繰り返し述べてきた。それが、会談ではプーチン大統領に完全に無視されたということだろう。

   話は冒頭に戻る。現在のプーチン大統領のやり様をメディアで見る限り、まさに「コケの一念」ではないだろうか。そして、歎異抄にもあるように「外見には真面目な念仏の行者を装って、内心には虚偽をいだいている者」のようにも思える。ここで、ロシア帝国崩壊の一因をつくった人物の一人とされる「怪僧ラスプーチン」をイメージしてしまう。単なる言葉の連想ゲームではある。

⇒27日(水)夜・金沢の天気     くもり