#カルロス・ゴーン

☆世界の「ぼったくり男爵」2人

☆世界の「ぼったくり男爵」2人

          最近ネットで東京オリンピック関連の記事へのコメントをチェックしていると、「ぼったくり男爵」という言葉がひんぱんに出ている。そのルーツを調べると、アメリカのワシントン・ポストWeb版(5月5日付)にあった。「Japan should cut its losses and tell the IOC to take its Olympic pillage somewhere else」の見出しのコラム=写真・上=。IOCのバッハ会長を「Baron Von Ripper-off」と名指している。

   「Baron」は男爵で、「Von」は貴族に使われるドイツ語。バッハ氏がドイツ出身ということであえて付けているようだ。そして、「rip off」は法外な金をとる、騙しとるという意味で、「Ripper-off」はストレートに「ぼったくり師」、それに敬称を付けて「ぼったくり男爵」として広まったのだろう。

   IOCは公的な国際組織のようにとらえているが、非政府組織 (NGO) の非営利団体 (NPO)で、4年に1回の大規模イベントで得た収入を中心に運営される組織。2013年から2016年の総収入は57億㌦(約6200億円)。うち、放映権料が73%、「TOP」と呼ばれる最上位スポンサーからの協賛金が18%を占める。その収入の9割を各国・地域のオリンピック委員会(NOC)や国際競技団体(IF)などに分配して、スポーツの振興を図るという役割を持っている。残り1割620億円は運営費として懐に入る。

   記事では、こうした収入でIOCは成り立っているので、新型コロナウイルスでパンデミックになろうと、そう簡単に中止にはしない。「地方行脚で小麦を食べ尽くす王族のように、開催国を食い物にする悪い癖がある」と批判している。日本はこの際、思い切って、「Japan’s leaders should cut their losses and cut them now.」(日本のリーダーたちは今こそ損切りをすべき)と提案し、オリンピック中止を迫っている。

   記事を読んでいて、もう一人「ぼったくり男爵」を思い出した。2019年12月30日に秘密裏に中東のレバノンに逃亡して物議をかもした、日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告だ。そのぼったくりぶりがきょうニュースになっていた。NHKニュースWeb版(5月21日付)によると、ゴーン氏は日産と三菱自動車工業がオランダに設立した統括会社「日産・三菱BV」と結んだ雇用契約を不当に解除されたとして、2019年にアムステルダムの裁判所に最大で1500万ユーロ、日本円にしておよそ20億円の損害賠償を求める訴えを起こしていた。これに対し、会社側は「法的に有効な雇用契約は結ばれていない」としたうえで、ゴーン元会長に支払われていた報酬を返還するよう求めていた。

   アムステルダムの裁判所は20日「原告は会社が契約書を承認したと主張したが、その証拠を示していない。会社と原告の間にはいかなる雇用契約も結ばれていない」としてゴーン氏の訴えを退けた。そのうえで、会社側の主張を認め、ゴーン氏に対し、およそ500万ユーロ、日本円にしておよそ6億6000万円を返還するよう命じる判決を言い渡した(同)。

   東京地検特捜部によるゴーン氏の日本での逮捕は4回。有価証券報告書に自身の役員報酬の一部を記載しなかったとして金融商品取引法違反で2回。さらに、日産に私的な投資で生じた損失を付け替えたとする特別背任で3回目の逮捕。4度目の逮捕容疑は、ゴーン氏が中東オマーンの販売代理店に日産資金17億円を支出し、うち5億6300万円をペーパーカンパニーを通じてキックバックさせて日産に損害を与えた会社法違反(特別背任)だった。(※写真・下は2019年3月、一回目の保釈で東京拘置所から出てきたカルロス・ゴーン被告の記事。青い帽子に作業服姿、顔の半分以上はマスクで隠していた)

   平和とスポーツの祭典を称するか、ビジネスと称するかは別として、まるで、「ぼったくり」の見本市のような話になってしまった。

⇒21日(金)午後・金沢の天気    あめ時々くもり

★マスク逃亡者はいま何思う

★マスク逃亡者はいま何思う

    昨年12月30日にレバノンに逃亡し物議をかもしたカルロス・ゴーンという人物はとてもマスクが似合う。昨年3月6日、一回目の保釈で東京拘置所から出てきた姿は、青い帽子に作業服姿、顔の半分以上はマスクで隠していた=写真=。その場を逃げるような姿だった。なぜ、このような姿で拘置所から出てくる必要性があったのだろうか。この作業服を着た意味は何か、と思ったものだ。このとき、保釈金10億円を納付したのだから堂々と出てきて、記者会見をすればよかったのではないか。もともと逃亡癖があったのだろうか。

   ゴーン被告の逃亡先レバノンはこのところ災難続きだ。首都ベイルートの港湾地区で現地時間で4日、大規模な爆発が連続して発生し、100人以上が死亡、4000人以上が負傷した(8月5日付・共同通信Web版)。日本人1人も軽傷を負っているという。レバノンの首相は演説で、倉庫が6年前から危険な状態で放置されていたと指摘し、原因究明を約束した。2700㌧の硝酸アンモニウムが貯蔵されていたとみられる(同)。テレビ映像でもこの爆発シ-ンを視聴したが、「まるでこの世の終わり」と思うほどすさまじい大規模爆発だった。

   ゴーン被告の住宅も被害を受けたようだ。妻のキャロル・ナハス容疑者(偽証容疑で逮捕状)が「私たちは大丈夫だが、家は壊れた。ベイルート全体が壊された」と話している(8月5日付・NHKニュースWeb版)

   もう一つの災難。レバノン政府は3月7日、償還期限を迎える外貨建て国債12億㌦の返済について、財政難を理由に見送ると発表した。レバノンがデフォルト(債務不履行)に陥るのは初めて。同国は長年の汚職や政情不安を解消できず、深刻な財政危機に見舞われている(3月8日付・時事通信Web版)。財政悪化に苦しむレバノン政府は昨年10月、通信アプリの無料通話への課税案を発表したが、市民の抗議デモを受けて撤回。その後、国際送金や米㌦預金引き出しを制限したももの、通貨レバノン・ポンドの急落を招いた。反政府デモで暴徒化した市民と治安部隊の衝突も起きた(同)。

   ゴーン被告はおそらく浮き浮きとした気分で逃亡の成功を祝ったことだろう。その後、降りかかる災難と国内の政情不安をどう見ているのか。国際手配されていて他国に逃げようがない。まさか、日本で裁判を受けていればよかったなどとと後悔してはいまい。

⇒5日(水)夕・金沢の天気   はれ