#オーバーツーリズム

★「今年の漢字」の「金」の意味 金沢でのオーバーツーリズムの現場

★「今年の漢字」の「金」の意味 金沢でのオーバーツーリズムの現場

  「今年の漢字」に「金」が選ばれた。公益財団法人「日本漢字能力検定協会」がその年の世相を表現する漢字一字を投票で募り発表するイベントで、毎年、京都の清水寺で発表されている=写真=。日本漢字能力検定の公式サイトをチェックすると、今回選ばれた「金」には2つの意味があって、輝かしいという意味のキン)」と、影がつきまとうかね)」の2つの側面があるという。キンはパリオリンピック・パラリンピックでの日本人選手の金メダルの活躍やアメリカ大リーグで大谷翔平選手がMVPを獲得した意味が込められいる。「かね」は政治の裏金問題を象徴し、衆院総選挙での与党過半数割れと連動した表現のようだ。

  サイトでは「今年の漢字」トップ20が掲載されている。1位は1万2148票で「金」だが、2位は9772票で「災」、そして4位に7487票で「震」が入っている。この「災」と「震」は元日の能登半島地震、そして9月に能登を襲った記録的な大雨による災害を象徴しているのだろうと解釈した。能登半島地震では金沢も震度5強の揺れがあり、金沢城や兼六園の石垣が崩れ、全国ニュースにもなった。ひょっとして1位の「金」には金沢という思いも込められた票が入っているのではとも憶測した。

  話は飛ぶ。地元メディアの報道によると、兼六園周辺にイノシシが出没していると大騒ぎになっている。体長1㍍のオスとみられ、今月12日撮影の防犯カメラに走り去る姿が映っている。人的な被害はいまのところないようだ。10年前の2014年9月のことだが、兼六園と隣接する金沢城公園でクマが出没し捕獲されている。兼六園と金沢城公園は小立野(こだつの)と呼ばれる丘陵地の尖端部にあり、山から緑地を伝ってエサを探しに来ているのかもしれない。

  さらに話は飛ぶ。ことしに入って兼六園を訪れたインバウンド観光客は11月末時点で50万2502人となり、コロナ禍前の2019年に記録した47万5020人を上回り、過去最多となった(地元メディアの報道)。一方でインバウンド観光客による、オーバーツーリズムの問題も目に付く。これは実際に見た現場の光景だ。今月初めにJR金沢駅近くあるホテルから外国人団体客がぞろぞろと出てきた。先頭の数人がホテルの前の横断歩道を渡ると交通信号が赤から青になり、横断歩道は赤となった。にもかかわらず、会話しながらゆっくりと横断歩道を渡っている。信号無視に業を煮やした車からはクラクションが鳴らされたが、それでも団体の最後部が渡り切るまでこの状態が続いた。欧米風の顔立ちで、団体は50人ほどだっただろうか。

  交通ルールに関しては理解しているが、「みんなで渡れば怖くない」的な一時的な団体行動だったのか、あるいは、彼の国では信号無視がまかり通るのか、と考えさせられた光景だった。交通事故が起きないことを祈る。

⇒14日(土)午前・金沢の天気    あめ

★金沢人の「おでん」好き その季節がやってきた

★金沢人の「おでん」好き その季節がやってきた

   きょうの金沢は晴れ間が広がり、昼過ぎには25度以上の夏日となったが、夕方になるとずいぶんと涼しくなってきた。この時節に友人たちと話していて何かと話題に上るのが、「おでん」だ。「そろそろ、源助だいこんやガンモの季節だね」とか、「ことしは、かに面が食えるかな」などと。そして、家庭の食卓にガンモドキなどおでんが出るようになるのがこの季節だ=写真・上=。

   金沢人のおでん好きは、「金沢おでん」の言葉もあるくらいだ。季節が深まるとさらにおでん好きが高じる。「かに面」だ。かに面は雌の香箱ガニの身と内子、外子などを一度甲羅から外して詰め直したものを蒸し上げておでんのだし汁で味付けするという、かなり手の込んだものだ=写真・下=。季節限定の味でもある。資源保護のため香箱ガニの漁期が毎年11月6日から12月29日までと設定されている。

   漁期が限定されているため、価格が跳ね上がっている。なにしろ、金沢のおでん屋に入ると、品書きにはこれだけが値段が記されておらず、「時価」としている店が多い。香箱ガニの大きさや、日々の仕入れ値で値段が異なるのだろう。去年1月におでん屋で食したかに面は2800円だった。それまで何度か同じ店に入ったことがあるが、数年前に比べ1000円ほどアップしていた。   

   値段が急騰したのは2015年3月の北陸新幹線の金沢開業のころだった。金沢おでんが観光客の評判を呼び、季節メニューのかに面は人気の的となり、おでんの店には行列ができるようになった。極端に言えば、「オーバーツーリズム」だ。

   この現象で戸惑っているのは金沢人だけではない。能登や加賀もだ。金沢おでんが観光客の評判を呼び、季節メニューのかに面は人気の的となった。すると水揚げされた香箱ガニは高値で売れる金沢に集中するようになる。それまで能登や加賀で水揚げされたものは地元で消費されていたが、かに面ブームで金沢に直送されるようになった。

   かに面をめぐるぼやきを上げればきりがない。季節に一度食することができるかどうか。できれば幸せ、それだけのことだ。

⇒4日(水)夜・金沢の天気    くもり時々あめ  

☆「ノドグロ」と「かに面」の話 ~下

☆「ノドグロ」と「かに面」の話 ~下

   この時季、庶民の味から遠ざかっているのはノドグロだけではない。「かに面」も、だ。かに面は雌の香箱ガニの身と内子、外子などを一度甲羅から外して詰め直したものを蒸し上げておでんのだし汁で味付けするという、かなり手の込んだものだ=写真=。もともと金沢の季節限定の味でもある。

   それが、このところ価格が跳ね上がっている。なにしろ、金沢のおでん屋に入ると、品書きにはこれだけが値段記されておらず、「時価」とある。香箱ガニの大きさや、日々の仕入れ値で値段が異なるのだろう。今季はまだおでん屋で食べてはいなが、ことし1月におでん屋で食したかに面は2800円だった。それまで何度か同じ店に入ったことがあるが、数年前に比べ1000円ほどアップしていた。

   資源保護政策で香箱ガニの漁期は11月6日から12月29日に短縮された。そこで、値段は徐々に上がってはいたものの、それが急騰したのは2015年3月の北陸新幹線の金沢開業だった。金沢おでんが観光客の評判を呼び、季節メニューのかに面は人気の的となり、おでんの店には行列ができるようになった。

   ノドグロにしてもかに面にしても値段が急騰した背景の一つには北陸新幹線の金沢開業がある。極端に言えば、「オーバーツーリズム」なのかもしれない。この現象で戸惑っているのは金沢の人たちだけではない。能登や加賀もだ。金沢おでんが観光客の評判を呼び、季節メニューのかに面は人気の的となった。すると水揚げされた香箱ガニは高値で売れる金沢に集中するようになる。それまで能登や加賀で水揚げされたものは地元で消費されていたが、かに面ブームで金沢に直送されるようになった。

   食べる話ばかりしてきたが、問題は資源管理だ。富山県以西から島根県の海域にかけて、2007年には5000㌧だった漁獲量が2020年には2700㌧に減っている(水産研究・教育機構「令和2年度ズワイガニ日本海系群 A 海域の資源評価」)。今季は幸いなことに、2013年度から始まった卵を産む雌ガニの漁期を短縮が奏功して、漁獲量が増えているようだ。しかし、持続可能に資源量を回復させるには、さらに雌の漁獲をさらに制限することも想定される。はやい話が「かに面ストップ」ができるか、どうか。

⇒30日(水)夜・金沢の天気     あめ

★「かに丼」と「かに面」 オーバーツーリズムの相関関係

★「かに丼」と「かに面」 オーバーツーリズムの相関関係

   北陸の冬の味覚はカニに勝るものはない。きょう能登半島の尖端の珠洲市で評判の「かに丼」があると聞いて、会合の帰りに店に立ち寄った。かに丼というのは初めてだった。この店は10数年前から季節メニューとして出している。注文すると、ご飯と海藻の入った丼の上にズワイガニの雌の香箱ガニの甲羅が2つ乗って出てきた=写真・上=。

   机の上には「かに丼の召し上がり方」というマニュアルがあった。それを見ながら、甲羅から身と外子(卵)、内子(未成熟の卵)をかき出す。2つ分の甲羅からの分量はけっこう多く、丼の表面がカニの身でいっぱいになった。それをご飯とかき合わせる。ワサビを入れた皿があり、しょうゆを少々注ぐ。わさび醤油を丼にかける。

   さっそく食べる。これまで、丼の上にブリやイカ、カニの身が乗っている海鮮丼は能登で何度か食べたことがある。香箱ガニだけの丼となると贅沢な気持ちになる。細く刻んだ海藻、そしてご飯は少々酸味がつけてあり、これがカニの身と合う。さらに、わさび醤油がアクセントとなって、カニのうまみを引き立てる。勘定は税込みで2750円。満足感が勝り、高いとは思わなかった。

   カニの話をもう一つ。先日、金沢のおでん屋に入った。「かに面」を注文した=写真・下=。このかに面は香箱ガニの身と内子、外子などを一度甲羅から外して詰め直したものを蒸し上げておでんのだし汁で味付けするという、かなり手の込んだものだ。この店のだし汁は昭和30年代の創業以来ずっと注ぎ足しながら今にいたるものなので、半端な味ではない。カニの身とおでんのだし汁がミックスして独特の食感がある。

   金沢のおでんの中ではかに面は季節限定の高級品だ。品書きにはこれだけが値段記されておらず、「時価」とある。香箱ガニの大きさや、日々の仕入れ値で値段が異なるのだろう。勘定をしてもらうと、2800円だった。これまで何度かこの店に来たことはあるが、数年前に来た時よりも1000円ほどアップしていた。

   金沢や能登では香箱ガニは庶民の味だったのだが、最近は高級品となっている。その原因の一つは資源保護のため香箱ガニの漁期が毎年11月6日から12月29日までと設定されていることだ。冒頭の能登の店でも漁期に買い求めたものを冷凍で保存し、漁期外は冷凍ものを出していると、店のマスターが話してくれた。店では10数年前にメニューとして初めて出したときは1280円だった。「むしろ値段が上がったのは金沢のかに面のせいなんです」と少々渋い顔で話してくれた。

   資源保護の政策で香箱ガニの値段は徐々に上がってはいたものの、それが急騰したのは北陸新幹線の金沢開業(2015年)以降だったという。金沢おでんが観光客の評判を呼び、季節メニューのかに面は人気の的となり、おでんの店には行列ができるようになった。すると水揚げされた香箱ガニは高値で売れる金沢に集中するようになる。それまで能登で水揚げされたものは地元で消費されていたが、かに面ブームで金沢に直送されるようになった。この店がかに丼を値上げせざるを得なくなったのもこのころからだったという。香箱ガニの地元素通りと値段高騰。能登の「かに丼」と金沢の「かに面」の値段の相関関係がオーバーツーリズムから見えてくる。

⇒7日(金)夜・金沢の天気