#イギリス

★世界が加盟に動く 新たな2極化なのか

★世界が加盟に動く 新たな2極化なのか

   これはロシアのプーチン大統領の「敗北」を意味しているのかもしれない。国連憲章違反であるにもかかわらず偽旗を掲げてウクライナを侵攻して500日が過ぎ、さらに国連安保理を拒否権で機能不全に落とし込んでいるロシアに対して世界の多くの国々が疑心暗鬼になっている。これまで伝統的に中立政策を掲げてきた北欧のスウェーデンとフィンランドでさえ、NATOの加盟を申請し、フィンランドはことし4月に正式加盟。スウェーデンも難色を示してきたトルコが議会で批准の手続きを進めることになり、加盟に向け前進することになった(11日付・NHKニュースWeb版)。

   プーチン大統領にとってはNATO拡大そもののがロシアの脅威に映っているに違いない。そして、ウクライナも去年9月にNATOへの加盟を正式に申請している。ただ、NATOは第三国からの攻撃に対し加盟国が互いに防衛参画することで合意しているため、ウクライナの加盟がNATOとロシアの全面的な対立となる可能性もあるとして、加盟に慎重な国もある。そのNATOの首脳会議が11日から12日まで、ロシアと国境を接するバルト三国のリトアニアで開かれる。この会議でウクライナの加盟についてどのような議論が交わされるのか。

   「ブレグジット(Brexit)」と呼ばれ、イギリスがEUから離脱したのは2020年1月だった。そのイギリスが今月16日にニュージランドで開催されるTPP(環太平洋連携協定)の閣僚級会合で加盟を認めることが正式に承認される。IMFによると、イギリスの加盟によりTPPの経済圏は世界全体のGDP合計額の15%を占めることになる(今月8日付・Bloomberg-Web版日本語)。

   TPPは当初、アメリカを含めた12ヵ国の協定だったが、2017年にトランプ大統領が離脱を決め、日本など11ヵ国で「CPTPP(環太平洋パートナーシップ経済連携協定)」として再出発した。日本は引き続きアメリカに復帰を求めている(同)。ただ、アメリカは対中包囲網の構築に向けて、ローバルサウスの代表格であるインドとインドネシアを加えた新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の構築を進めている。

   軍事の対ロシア包囲網をNATOが、経済の対中国包囲網をアメリカが、それぞれ担っている。世界の新たな2極化の動きでもある。

⇒11日(火)午後・金沢の天気    くもり

★イギリスの女王国葬 洗練された伝統的な儀式

★イギリスの女王国葬 洗練された伝統的な儀式

   今月8日に死去したイギリスのエリザベス女王の国葬をNHKの放送とネットで生中継していた。国葬はロンドンのウェストミンスター寺院で執り行われ、就任間もないトラス首相が聖書を読み上げ、参列者が聖歌を歌った。女王の棺は「砲車」に載せられ、兵士に引かれて、チャールズ国王も行進していたた=写真=。

   その後、棺は車で運ばれ、沿道を埋め尽くした大勢の市民が歓声と花束を投げて見送っていた。そして、沿道ではマスクしている人の姿はなかった。中継を見た視聴者は、イギリスの洗練された伝統的な儀式を見て、国葬の真価に感じ入ったのではないだろうか。

   ふと、邪推が脳裏をよぎった。今月27日の安倍元総理の国葬には海外からの700人ほどが参列し、アメリカのハリス副大統領やインドのモディ首相、オーストラリアのアルバニージー首相も出席を予定していると報じられている。が、参列して、がっかりするのではないだろうか。「これが日本の国葬なのか」と。エリザベス女王の国葬とあまりにも違いすぎる、と。

   そもそも、国家元首でもない安倍元総理を「国葬」にする理由について、岸田総理は憲政史上最長の通算8年8ヵ月にわたり総理を務めたことなどを挙げていたが、エリザベス女王は在位70年だ。さらに、岸田総理は「弔問外交」の重要性を掲げているが、ハリス副大統領やモディ首相、アルバニージー首相のほかは、たとえば、G7では元職が多いようだ。

   おそらく、今後何かと国葬については、イギリスと比較されるのではないだろうか。

⇒19日(月)夜・金沢の天気      あめ

★天皇が参列するイギリスの国葬、しない日本の国葬

★天皇が参列するイギリスの国葬、しない日本の国葬

   前回のブログの続き。イギリスの君主として歴代最長となる70年にわたって在位してきたエリザベス女王が96歳で亡くなった。女王の国葬は2週間以内にウェストミンスター寺院で執り行われる予定(9日付・BBCニュースWeb版)。

   NHKニュースWeb版(10日付)によると、エリザベス女王の国葬には天皇陛下が参列される方向で政府と宮内庁の間で調整が進められている。皇室とイギリスの王室は、昭和28年(1953年)に上皇がエリザベス女王の戴冠式に昭和天皇の名代として出席するなど、古くから親密な関係にある。天皇陛下は2019年5月に即位後、2020年にエリザベス女王からイギリスに招待されていたが、新型コロナウイルスの影響で延期となっていた。こうした経緯など踏まえてイギリスでの国葬に参列する調整が進められている、という。

   エリザベス女王の国葬には、天皇陛下が参列する。そして、安倍元総理の国葬(今月27日)には、秋篠宮夫妻ら皇族の参列を宮内庁が調整していると報じられている(8月29日付・毎日新聞Web版)。葬儀委員長を務める岸田総理から宮内庁に「皇族各殿下」の国葬への参列依頼が文書で出されていた。「皇族各殿下」には天皇、皇后両陛下と上皇ご夫妻は含まれない。両陛下と上皇ご夫妻は使者を派遣するとみられる。1967年の吉田元総理の国葬には、当時は皇太子夫妻だった上皇ご夫妻が参列し、昭和天皇ご夫妻は使者を派遣した。2020年の中曽根元総理の内閣・自民党合同葬には秋篠宮夫妻が参列し、両陛下と上皇ご夫妻は使者を派遣している(同)。

   上記の記事を読んでの印象だが、日本の国葬には天皇、皇后両陛下はこれからも参列しないだろう。国葬に関して取り決めた法律がない、また、国葬に値する人物の基準もないので当然と言えば、当然だろう。議論を呼ぶような国葬にあえて両陛下が参列するはずもない。岸田総理は国会の閉会中審査(今月8日)で「憲政史上最長(通算8年8ヵ月)の政権を担った」「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜くという決意を示す」などと国葬を実施する理由を繰り返し述べていたが、政権の単なる理屈にすぎない。

   国葬は国民がこぞって賛同するような価値基準がない限り難しい。内閣府設置法という法律の枠組みの中で「国の儀式」が出来るから国葬を行うというのでは、今後さらに有権者の反発を招くのではないか。

(※写真は、2020年10月17日に都内のホテルで営まれた中曽根元総理の「内閣・自民党合同葬」=総理官邸公式サイトより)

⇒10日(土)夜・金沢の天気   はれ

☆女王の威厳を讃えるイギリスの国葬

☆女王の威厳を讃えるイギリスの国葬

   イギリスのエリザベス女王が亡くなった。イギリスの君主として歴代最長となる70年にわたって在位し、96歳で亡くなった。BBCニュースWeb版(9日付)は「Nation mourns Queen with flowers, gun salutes and address from new King」の見出し=写真=で、女王の死去を受け、長男のチャールズ皇太子が国王に即位したと伝えている。女王に敬意を表してウェストミンスター寺院、セントポール大聖堂、ウィンザー城で鐘が鳴り、女王の人生を記念して96発の銃による敬礼がハイドパークなどで発射される。女王の国葬は2週間以内にウェストミンスター寺院で執り行われる予定で、正確な日はバッキンガム宮殿によって後日発表される、という。

   エリザベス女王の死去を受けて、天皇陛下のお気持ちを宮内庁が文書で発表した(TBSニュースWeb版)。「女王陛下は、70年の長きにわたり英国女王として同国並びに英連邦諸国の国民を導き、励まされました」「我が国との関係においても、女王陛下は両国の関係を常に温かく見守ってくださり、英王室と皇室の関係にも御心を寄せてくださいました。私の英国留学や英国訪問に際しても、様々な機会に温かく接していただき、幾多の御配慮をいただいたことに重ねて深く感謝したいと思います。 また、女王陛下から、私の即位後初めての外国訪問として、私と皇后を英国に御招待いただいたことについて、そのお気持ちに皇后とともに心から感謝しております」

   天皇のお言葉からも、70年の長きにわたってイギリスの女王として威厳を保ち続けたことが伝わって来る。さまざまな王室スキャンダルの嵐が吹き、イギリスそのものもかつてはEU離脱という国論を二分するよう状況下もあった。その中でも、威厳を湛えながら国をまとめていた。

   エリザベス女王の国葬は2週間以内にウェストミンスター寺院で執り行われる。誰もが弔意を持って、その日を迎えることだろう。これが本来の国葬のあり様でもある。日本の「国葬」と比較するつもりはいっさいない。

⇒9日(金)夜・金沢の天気      くもり 

☆イギリスに受信料廃止の風は吹くのか

☆イギリスに受信料廃止の風は吹くのか

   NHK受信料制度の見直しにつながる動きになるかもしれない。イギリスの「デジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS)」が4月28日に発表した放送政策全般を見直す年次報告書(白書)『Up Next The Government’s vision for the broadcasting sector』が注目されている。その中にはことし100年の歴史を刻む公共放送BBCの改革の方針が述べられている。そのホワイトペーパーがDCMS公式サイトにアップされているのでチェックした=写真、人物はナディーン・ドリスDCMS担当相=。

   前置きで「The UK’s creative economy is a global success story, and our public service broadcasters (PSBs) are the beating heart of that success. (イギリスのクリエイティブな経済は世界的なサクセス・ストーリーであり、公共放送局はその成功の脈動する心臓に相当する)」と評価しながらも、改革は避けられないとそのポイントを上げている。

   直面するのはネット環境だ。イギリスの視聴者の「メディア消費」のあり様が大きく変化していることを数値を紹介している。イギリスでは79%の世帯がネットに接続されたテレビを所有している。このため、放送局の番組を視聴する時間の割合は2017年の74%から2020年の61%に減少。逆に有料制の動画サービスの視聴時間における割合は2017年の6%から2020年の19%に増加している。さらに、コンテンツのグローバル化問題を指摘している。アメリカ発の動画配信サービス「ネットフリック」などはイギリスの放送業者よりもはるかに大きな予算でコンセンツ制作を展開している。

   このような時代の変化にも関わらず、国民は世帯当たり年間で159ポンド(およそ2万5000円)の受信料(ライセンス料)をBBCに払い続けている。国民の間では不公平感が募っている。また、ライセンス料の支払いを拒んだ場合は刑事裁判がある。件数は示されていないが、2019年に支払いを拒否して有罪判決を受けた人々の74%は女性だったと白書で記載されている。イギリスでは、テレビを見たい視聴者は近くの郵便局で1年間有効の受信許可証を購入する。この許可証がなければ、電気屋でテレビそのものが買えないシステムだ。ネット時代で、この受信許可モデルは不公平感を増長するだけではないだろうか。

   BBCの放送事業の認可であるロイヤルチャーター(女王の特許状)は2027年にいったん切れる。それまではライセンス料の徴収は継続する。白書では、「BBCの受信料制度について見直しを進める」、さらに「BBCの商業部門の限度額(広告枠)を2倍以上に増やす」などと記載されてはいるが、具体案はない。「We will set out more details in the coming months.」と数か月後に詳細を提示すると述べている。

   ジョンソン首相は、BBCの受信料の廃止と視聴する分だけ金を払う有料放送型の課金制(サブスクリプション)への移行を公約として掲げてきた。一方で、受信料が廃止されることで、収入が不安定になり報道の質の高さや公共性が失われるという懸念もある。公共放送の経営と安定、視聴者の不公平感の解消、次なるメディアのコンテンツのあり様、さまざまな課題が凝縮されている。そして他人ごとではない。

⇒20日(金)午後・金沢の天気    くもり

☆「オミクロン株」がやって来る

☆「オミクロン株」がやって来る

   民族の生き残りをかけて戦ってきた歴史のある国はパンデミック下の対応も的確だと感心させられる。イスラエルのことだ。報道によると、南アフリカで確認された新たな変異ウイルス「オミクロン株」はイギリスやドイツなどヨーロッパでも感染の確認が相次いでいる。こうした中でイスラエルは水際対策を強化するため、今後14日間は特別な許可がない限りすべての外国人の入国を禁止、また、帰国者はワクチン接種を終えていても3日間の自宅隔離を義務付けることを決めた(11月28日付・NHKニュース)。

   イスラエルは世界に先駆けてワクチン接種(ファイザー社製)を開始したことでも知られる。そして、3回目のワクチン、いわゆる「ブースター接種」にいち早く着手したのもスラエルだった。ワクチン接種の効果でことし5月から6月にかけては、感染者数がゼロに近づいた=写真・上、11月28日付・ジョンズ・ホプキンス大学「コロナダッシュボード」より=。ところが、7月以降は変異ウイルス「デルタ株」による感染再拡大に見舞われる。そこでワクチン接種後の時間経過とともに効果が減少することを問題視し、7月末からは60歳以上を対象にブースター接種を開始する。それでも、9月をピークに第4波が訪れた。現在は収まってはいるが、そこにオミクロン株が登場した。なかなか収束しない中で今回、外国人の入国制限を決断したのだろう。

   日本の現状はどうか。現在はイスラエルの5月から6月かけての状況と似ている=写真・中、同=。が、時間が経過すればワクチン効果が薄れる。その間隙をぬって第6波がやってくるだろう。日本の水際対策は大丈夫なのか。政府は今月8日から、ビジネス目的の入国規制緩和や、新規留学生および技能実習生の受け入れ再開が実施している。これまで、ワクチン接種を終えたビジネス来訪者には入国後10日間の待機を求めていたが、3日間に短縮。留学生や技能実習生を対しても、受け入れの大学や企業や団体による入国者の行動管理を条件に認めた。インバウンド観光客の入国は現在も認めていない。

   新たなオミクロン株の感染拡大によって、政府は新たな措置として今月27日から南アフリカのほか8ヵ国(エスワティニ、ジンバブエ、ナミビア、ボツワナ、レソト、モザンビーク、マラウイ、ザンビア)からの邦人帰国者や在留資格を持つ外国人入国者に対して、指定宿泊施設での10日間の待機を義務付けた。はたしてこれで十分なのか。

    日本と同じ島国のイギリスでは感染拡大の勢いが現在も増している=写真・下、同=。さらに、国内でオミクロン株の感染が確認された。BBCニュースWeb版日本語(11月28日付)によると、ジョンソン首相は緊急記者会見で、国民には店舗や公共交通機関でのマスクの着用の義務化、さらに入国する人すべてを対象に2日以内にPCRの検査を受けて陰性だと確認されるまでは隔離を義務づけるなどの新たな対策を打ち出した。

   イギリスは昨年12月に感染拡大が急増し、クリスマスの直前になって規制緩和を中止するという事態に陥った。ことしはクリスマスの前までにはオミクロン株によるさらなる感染拡大を何とか収めたいと必死なのではないか。

⇒29日(月)午後・金沢の天気     はれ

★”phase down” か “phase out”でもめたCOP26

★”phase down” か “phase out”でもめたCOP26

   イギリスのグラスゴーで開催されていた国連の気候変動対策会議「COP26」が13日夜(日本時間14日朝)に閉幕となった。成果文書「グラスゴー気候協定」を採択した。時折、ニュースなどをこの会議をチェックしてきたが、ポイントはいくつかあった。BBCニュースWeb版の記事(13日付)=写真=などからまとめてみる。

   「It’s been a long two weeks of wrangling at COP26 in Glasgow to reach a deal.」で始まるBBCの記事は、「COP26は合意に至るまでに長い2週間を要した」と合意に至るまでの議論の白熱ぶりを表現している。そもそも会期は12日までの予定だったが1日延長となった。注目する数字が「1.5度」だった。世界の平均気温の上昇を産業革命前から1.5度に抑える努力を追求すると成果文章で明記された。2015年のパリ協定で各国が合意したこの「1.5度目標」の実現には、世界全体の温室効果ガスの排出量を2030年までに2010年比で45%削減する必要がある。さらに、2050年にほぼゼロに達するまで排出量を削減し続けることになる。

   そこで議論の焦点となったのが石炭対策だ。世界の年間の二酸化炭素排出量の約4割が火力発電など石炭を燃やすことで発生している。気候変動対策に関する国連の合意文書で石炭対策が初めて明記されたことになる。ただ、その表現をめぐって土壇場で議論が交わされた。文書案では当初、石炭の使用を「phase out(段階的に廃止)」という表現になっていた。しかし、合意採択を協議する最後の全体会議でインド代表がこれに反対した。飢餓の削減に取り組まなくてはならない発展途上国にとって、石炭使用や化石燃料を段階的に廃止する約束するなどはできないと主張。インドの主張を中国も支持し、石炭産出国のオーストラリアも賛同した。議論の挙句に「phase down(段階的な削減)」という表現になった。

   BBCニュースはこの土壇場のドラマをこう述べている。議長国イギリスのアロク・シャーマCOP26議長は、「この展開について、謝ります」と全体会議を前に謝罪。「本当に申し訳ない」と述べた。ただし、合意全体を守るためには、不可欠な対応だったと説明すると、声を詰まらせて涙ぐんだ。この議長の様子に、各国代表は大きな拍手を送った。

   これも議長国イギリスの提案だった。2040年までにガソリン車の新車販売を停止し、全てをゼロエミッション(排出ゼロ)車とする提案に24ヵ国が合意したが、日本やアメリカ、中国などの主要国は提案には参加しなかった。電気自動車(EV)への急速な移行を掲げたイギリスの思惑は外れた。ただ、EV普及のため、充電インフラの整備や車体価格の引き下げなどを目指す取り組みには日米独などが参加を表明した(11日付・時事通信Web版)。一方、航空機の温室効果ガス排出量を削減する宣言には、日本は米英仏などと共に署名。炭素を排出しない航空燃料の開発・導入を目指す(同)。

   全体を通じて議長国イギリスの大胆で急進的な提案が目立った。18世紀半ばに石炭利用によるエネルギー革命を起こしたのはイギリスだった。次なるゼロエミッションの産業革命もイギリスが興すと意気込んでいるのかもしれない。

⇒14日(日)夜・金沢の天気      はれ

☆台湾めぐる「海峡」と「WHO」が国際問題に浮上

☆台湾めぐる「海峡」と「WHO」が国際問題に浮上

   菅総理がホワイトハウスを訪れ、バイデン大統領と初めて対面での会談を行った日米首脳会談(ことし4月16日)。「台湾海峡の平和と安定の重要性」が初めて盛り込まれた共同声明「“U.S. – JAPAN GLOBAL PARTNERSHIP FOR A NEW ERA”(新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ)」はある意味で新鮮だった。あれから2ヵ月、いまでは国際政治、安全保障を語る上でのキーワードとして浮上している。

   そして、台湾をめぐるもう一つのキーワードがWHOだ。WHO公式ホームページをチェックすると、第74回年次総会(5月24日-6月1日、オンライン)=写真・上=の模様が詳しくホームページ掲載されている。今回の総会で注目を集めたのは、台湾のオブザーバー参加についてだった。結局、中国などの反対で認められなかったもの、以前から中国寄りと批判が向けられているWHOへの風当たりがさらに強くなった。

   台湾はWHOに非加盟であるものの、2009年から2016年までは年次総会にオブザーバーとして参加していた。2017年以降は、中国と台湾は一つの国に属するという「一つの中国」を認めない蔡英文氏が台湾総統に就いたことで、「一つの中国」を原則を掲げる中国が反対し、オブザーバー参加が認められなくなった。

   ところが、新疆ウイグル自治区での人権問題や香港の民主主義運動への抑圧などで中国への懸念が高まる中、台湾問題がクローズアップされるようになった。先のG7外相会合(5月3-5日・ロンドン)の共同声明では、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調すると同時に、中国が反対する台湾のWHO会議への参加も支持した(5月6日付・共同通信Web版)。G7の共同声明で台湾問題をめぐる2つのテーマで盛り込まれるのは異例だった。
 
   日本でもこれまでになかった動きが起きている。年次総会に台湾の出席が認められなかったことをめぐり、今月11日の参議院本会議では、次の総会から参加を新型コロナウイルス禍からのより良い回復をテーマとしたセッション認めるよう各国に求める決議を全会一致で可決した(6月11日付・NHKニュースWeb版)。決議文は超党派の議員がまとめたもので、「検疫体制の強化などに先駆的に取り組んできた台湾が会議に参加できないことが、国際防疫上、世界的な損失であることは、各国の共通認識になっている」との内容で、政府にも今後、台湾が会議に参加する機会が保障されるよう各国に働きかけることを求めている(同)。

   そして、現在、イギリス・コーンウォールで開催されているG7サミット(6月11-13日)=写真・下、外務省公式ホームページより=の共同声明でどのような表現で2つの台湾問題がメッセ-ジとして盛り込まれるのか注目している。

   話はそれるが、WHO公式ホームページをふと見ると、北朝鮮が声明文を出している。新型コロナウイルスのワクチンの供給をめぐって、強烈な内容だ。「The development of COVID-19 vaccines and medicines might be the achievement for the common mankind whereas an unfair reality is to be seen that some countries are procuring and storing the vaccines more than its needs by inspiring the vaccine nationalism plainly when other countries can’t even procure it with their affordability. 」

 
   意訳すれば、一部国家が必要以上にワクチンを確保し、ワクチンのナショナリズムをあからさまに煽って、世界に不公平な事態を招いている、と。名指しこそしていないが、アメリカを意識しているのだろう。WHOの「パンデミック宣言」(2020年3月11日)下で、北朝鮮は弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射している(同3月25日)。弾道ミサイルを1発打ち上げると、そのコストはいくらなのだろうか。ミサイルの打ち上げより、ワクチンの確保に自助努力する方が賢明だと誰しもが思うのだが。

⇒13日(日)午後・金沢の天気   くもり時々はれ

★「オリンピックは参加することに意義」 ありやなしや

★「オリンピックは参加することに意義」 ありやなしや

   昨夜遅く、福島と宮城の両県で震度6強の激しい揺れがあった。日本海側の能登半島でも、半島尖端にある珠洲市で震度3を観測したほか、七尾市・輪島市・羽咋市などで震度2だった。金沢も震度1だったが、気づかなかった。気象庁の公式ホ-ムページでチェックすると、日本海側だけでなく、北海道まで広範囲に揺れている=写真、13日午後11時44分発表=。

   多くの国民は「オリンピックは大丈夫なのか」と案じているのではないだろうか。新型コロナウイルスによるパンデミック、そして、オリンピック組織委員会会長(12日辞任)の森喜朗氏の女性蔑視と取れる発言が国内外で問題になっていて、さらに東日本を揺さぶる地震だ。そして、福島市では7月21日、22日、28日に野球・ソフトボール競技が開催されることが決まっている。各国の代表選手も大丈夫かと気にしているのではないだろうか。

   話は変わる。イギリスのBBCニュースWeb版日本語(2月12日付)によると、中国の放送規制当局は、BBCワールドニュース(国際ニュース放送)の放送を中国国内で禁止すると発表した。中国はこれまで、新型コロナウイルスや少数民族ウイグル族への迫害をめぐるBBCの報道を批判してきた。中国の放送規制当局・国家広播電視総局は、BBCワールドニュースの中国報道について、「ニュースは真実かつ公平でなくてはならない」などとする中国の放送ガイドラインに「著しく違反した」と述べた。その上で、BBCの次年度の放送免許の更新申請を受け付けないとした。

   上記のニュースには伏線がある。同じくBBCニュースWeb版日本語の今月5日付。イギリス通信業界の独立監視機関、放送通信庁(Ofcom)は、中国の国営テレビ「中国環球電視台(CGTN)」のイギリス国内での放送免許を取り消した。CGTNのライセンスを保有するスター・チャイナ・メディア・リミテッド(SCML)が、英語の衛星ニュース・チャンネルについて「編集責任」を持たないことが、Ofcomのルールに違反したためとしている。

   さらに、同日付でBBCは中国での人権問題を報じている。新疆ウイグル自治区の収容施設に入れられたウイグル族の女性らが、組織的なレイプ被害を受けたとBBCに証言した。この報道を受け、アメリカとイギリスの政府は「深く憂慮している」と懸念を表明した。新疆ウイグル自治区の収容施設では、ウイグル族などの少数民族100万人以上が拘束されていると推測されている。

   米英と中国で「メディア戦争」が勃発しているのだ。バイデン政権も、国務省の報道官が先日、中国がウイグル人に対して「ジェノサイド(大量虐殺)」を行っていると認め、この点においては前のトランプ政権と現政権の見解は一致していると改めて述べた(2月5日付・AFP通信Web版日本語)。

   この一連のニュースで連想するのは、旧ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議し、アメリカや日本など50ヵ国が1980年のモスクワオリンピックをボイコットした一件だ。すでに、開幕まであと1年と迫った2022年北京冬季五輪も似たような状況に展開しつつある。世界の180以上の人権団体が署名して、人道上の理由からボイコットを呼びかける書簡を発表した。書簡は「チベット、ウイグル、南モンゴル、香港、台湾、中国民主、人権運動団体連合」の名で発表された(2月5日付・CNNニュースWeb版日本語 )。オリンピックをめぐる争いの火ダネになりそうな気配だ。

           有名な言葉、「オリンピックは参加することに意義ある」(元IOC会長・クーベルタン)はもう過去の話なのかもしれない。

⇒14日(日)夜・金沢の天気    はれ

☆コロナ禍、世界は再びロックダウン

☆コロナ禍、世界は再びロックダウン

          けさイギリスBBCニュ-スWeb版(1月4日付)をチェックすると、新型コロナウイルスの感染拡大がすさまじい。変異種化したウイルスの感染によって、1日当たりの感染者が5万人を超える日が続き、ジョンソン首相は4日夜のテレビ演説で外出を厳しく制限する措置(ロックダウン)をイングランド全域で導入することを明らかにした=写真=。

   BBCによると、食料品の買い物や通院、1日1回の運動などを除き、外出を厳しく制限し、違反した場合には200ポンド(円換算で2万8000円)の罰金が科される。生活必需品をあつかう店舗以外は原則として営業を禁止とするほか、小中学校や大学は原則として閉鎖し、来月中旬まではオンラインでの授業となる。

   感染者数はイギリスほどではないが、日本でもコロナ禍の勢いが増している。5日は全国で4900人超えの感染が発表され、死亡者も68人。感染者数、死亡者数とも1日当たり過去最多を更新した(1月5日付・共同通信Web版)。日本相撲協会は同じ日、横綱・白鵬の感染を発表した。白鵬は嗅覚異常の症状で4日にPCR検査を受け、けさ陽性と判定された。10日から始まる初場所の出場については休場となる見込み(同)。

   菅総理は感染拡大を受けて、きょうの自民党役員会で、東京都と埼玉、千葉、神奈川3県を対象とする緊急事態宣言の発令を7日に決定する方針を表明した(同)。宣言の発令は昨年4月に続いて2回目だ。

   当地の石川県でもきょう感染者が20人となった。金沢大学でも3日付でこのような一斉メールが届いた。「本日、共通教育科目受講学生に新型コロナウイルスの感染者が報告されました。行動歴の調査から,複数の濃厚接触者またはその疑いがある学生の存在が危惧されます。大学入学共通テストを控えて感染の拡大を予防するために1月4日(月)から7日(木)の授業についても、対面講義を取り止め遠隔授業といたします」と。コロナ禍の新年、仕事始めから強烈だ。

⇒5日(火)午後・金沢の天気    くもり