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★「9・11」から21年、アメリカ執念の復讐劇

★「9・11」から21年、アメリカ執念の復讐劇

   「9・11」同時多発テロに対するアメリカの復讐の執念を感じるニュースだ。CNNニュースWeb版は「US kills al Qaeda leader in Afghanistan drone strike」の見出しで、アメリカはアフガニスタンにいた国際テロ組織アルカイダの指導者アイマン・アル・ザワヒリを無人攻撃機で殺害したと報じている=写真・上=。ホワイトハウスでバイデン大統領が演説して明らかにした。

   記事によると、ザワヒリは家族とカブールのダウンタウンに潜伏していて、住宅のバルコニーに出ていたところを、無人攻撃機に搭載した2発のヘルファイアミサイル(空からの対戦車ミサイル)で攻撃した。7月30日午後9時48分(アメリカ東部標準時)に殺害計画は実行された。

   アルカイダによるアメリカへの同時多発テロは2001年9月11日、現地時間で午前8時46分だった。ニューヨ-ク・マンハッタンの高層ビル「ワールドトレードセンター」に民間航空機が追突した=写真・下=。日本でも当初、航空機事故としてテレビ朝日の報道番組「ニュースステーション」などは生中継で伝えていた。間もなくして、2機目が同じワールドトレードセンターの別棟に突っ込んできた。世界の多くの視聴者が「9・11」テロリズム(terrorism)の目撃者になった。

   アメリカは「テロとの戦い(War on Terrorism)」を錦の御旗に掲げ新たな闘いを始める。当時のブッシュ大統領はアフガニスタンで政権を握っていたタリバンが、テロ事件の首謀者とされたオサマ・ビン・ラディンをかくまっていると非難。10月にはアメリカ主導の有志連合軍がアフガンへの空爆を始め、タリバン政権は崩壊する。大規模な捜索にもかかわらず、ビン・ラディンを捕捉できなかった。

   テロとの戦いはオバマ大統領に引き継がれる。2011年5月1日、パキスタンのイスラマバードから60㌔ほど離れた、ビン・ラディンの潜伏先をステルスヘリコプター「ブラックホーク」などで奇襲し殺害。DNA鑑定で本人確認をし、アラビア海で待機していた空母カール・ビンソンに遺体を移送し、海に水葬した。作戦完了の直後、オバマ大統領はホワイトハウスでの緊急声明で、「Justice has been done」と発した。しかし、アメリカの復讐はこれで終わりではなかった。

   ザワヒリはかつてビン・ラディンの主治医であり、同時多発テロの首謀者の一人でもあった。アメリカは、ザワヒリの逮捕に直接つながる情報に最大2500万㌦の報奨金を用意し行方を追っていた。「9・11」から21年、冒頭のホワイトハウスでの声明で、バイデン大統領は「Now, justice has been delivered and this terrorist leader is no more.」と復讐劇の終わりを宣言した。

⇒2日(火)午後・金沢の天気    はれ

☆ICBMをぶっ放す「悪の枢軸」

☆ICBMをぶっ放す「悪の枢軸」

   まさに「悪の枢軸」とはこのことだ。NHKやCNNニュースWeb版(21日付)によると、ロシア国防省は日本時間の20日午後9時すぎ、北部アルハンゲリスク州にあるプレセツク宇宙基地の発射場から新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「サルマト」を発射し、およそ5700㌔東のカムチャツカ半島にあるクーラ試験場に向けて目標に命中したと発表した。BBCニュースWeb版は「Russia releases video of intercontinental ballistic missile launch」と題して、ロシア国防省が撮影した「サルマト」の発射映像(43秒)を公開している=写真=。

   読売新聞Web版によると、このICBMは射程1万1000㌔以上、重量200㌧を超える重量があり、10以上の核弾頭の搭載が可能とされる。弾頭部分をマッハ20(時速約2万4500㌔)で滑空飛行させ、既存のアメリカのミサイル防衛網での迎撃は困難とも指摘される。ロシア大統領府の発表として、プーチン大統領は「ロシアの安全を確保し、攻撃的な言動でロシアを脅かす人々に再考を迫るだろう」と述べ、ウクライナ侵攻を受けて対露制裁を科している米欧をけん制した。

   CNNニュースWeb版日本語によると、「サルマト」についてはプーチン大統領が2018年の演説で新型兵器として言及し、これでNATOの防衛は「完全に使い物にならなくなる」と誇示していた。

   NATOだけでなく、東京も射程距離に入る。さらに、この射程1万1000㌔以上のICBMをロシア極東に配備すればほぼアメリカ全土が射程距離ではないだろうか。北朝鮮が3月24日に発射したICBM「火星17型」も首都ワシントンほかアメリカ全土がほぼ射程距離内とされる。北朝鮮の労働新聞Web版(3月25日付)は、金正恩総書記が「もし誰かがわが国家の安全を侵害しようとするなら、彼らはその代償を払うこと、そして我々の国防能力はアメリカ帝国主義との長期的対決に徹底的に備える強力な軍事技術を持っていることを明確にしなければならない」(意訳)と述べたと伝えている。

   「悪の枢軸」を最初に唱えたのは、アメリカの第43代大統領のジョージ・W・ブッシュ氏だった。2002年1月の一般教書演説で、「States like these, and their terrorist allies, constitute an axis of evil, arming to threaten the peace of the world. 」と激しく、当時、アメリカがテロ支援国家と呼んでいたイランとイラク、北朝鮮を名指しした。

   そして今、「悪の枢軸はどこの国」と世界の人に問えば、多くはロシアと北朝鮮と答えるのはないだろうか。ウクライナを侵攻して、ICBMをぶっ放すロシア、アメリカを標的にICBMを繰り返す北朝鮮。この先の世界の歴史はICBMが飛び交う悲劇なのか、和平の落としどころあるのか。

⇒21日(木)夜・金沢の天気    あめ

☆アフガン政変で見えたアメリカのドライなリセット

☆アフガン政変で見えたアメリカのドライなリセット

   アフガニスタンにおける政変で、クローズアップされているのが「自主防衛」という言葉ではないだろうか。アメリカにとって、アフガンは「保護国」であって同盟国ではない。なので、アメリカはトランプ政権下の2020年2月、タリバンとの和平交渉で「アメリカは駐留軍撤退」「タリバンは武力行使を縮小」で合意。そして、バイデン大統領は今年4月に同時多発テロ事件から20年の節目にあたる「9月11日」まで完全撤退すると表明していた(4月14日付・BBCニュースWeb版日本語)。

   では、タリバンが一方的に合意を破って首都カブールに進攻したのであれば、アメリカは駐留軍撤退の合意を破棄すべきではないか、との世界の論調も高まるだろう。現に、アメリカ世論は揺れている。ロイター通信はタリバンが首都カブールを制圧した後の16日に実施した世論調査を17日に公表した。バイデン大統領への支持率は46%で、先週の53%から7ポイント低下し、1月の就任後で最低を記録した(8月18日付・時事通信Web版)。一方で、アメリカのイプソス社が16日に行った世論調査では、アフガン駐留軍の完全撤収の判断には、61%が支持すると回答した。野党・共和党支持者に限っても支持(48%)が不支持(39%)を上回った(同・読売新聞Web版)。

   アメリカの世論がこれほど動くのも、歴代政権が支援してきたアフガンの民主政権を守れなかったのではないかとの国民の評価が分かれ、一方で、アメリカ軍と協力するはずの民主政権の「自主防衛」の有り様が問われた。このニュースは世界中に流れた。ロシア通信は16日、アフガンのガニ大統領が、車4台とヘリコプターに現金を詰め込んで同国を脱出したと伝えた。在アフガニスタンのロシア大使館広報官の話としている(同・共同通信Web版)。多額の現金に関してはフェイクニュースとの見方があるものの、軍の総司令官でもある大統領が抵抗勢力と戦わずして高跳びしたことは事実である。言うならば「無血開城」。これでは、アメリカ軍も手出しようがない。

   このアフガンの事態を見て、緊張しているのは台湾だろう。アメリカと台湾は1954年に「相互防衛条約」を締結し強固な同盟関係を結んだ。しかし、1979年のアメリカと中国の国交樹立を機に翌年1980年に条約は失効し、アメリカ軍の司令部や駐留軍は台湾から撤退した。ただ、アメリカは中国との軍事バランスの見地から、1979年にアメリカの国内法である「台湾関係法」を制定し、有事の際は日本やフィリピンのアメリカ軍基地からの軍隊の派遣を定めている。その代わりに台湾はアメリカから武器を購入するという、「柔らかな同盟」だ。

   今回のアフガンの政変で台湾側は危機感を持った。NHKニュースWeb版(8月18日付)によると、蔡英文総統は18日、与党・民進党のオンライン会議で「台湾の唯一の選択肢は、より強大になり、より団結し、よりしっかりと自主防衛することだ。自分が何もせず、ただ人に頼ることを選んではいけない」と述べた。そして、民主と自由の価値を堅持し、国際社会で台湾の存在意義を高めることが重要だと強調した。

   蔡氏があえて「自主防衛」を持ち出したのは、台湾をアフガンの二の舞にしてはならないという確固たる決意の表れだ。一方で、中国は今回のアフガンのように民主政権ならば何が何でも守るというスタンスではないアメリカのドライな一面を理解した。今後、中国は台湾海峡での海上封鎖といった緊張状態を仕掛けて、あるいは融和策を台湾に持ち掛けて、アメリカの出方をうかがうのではないか。その上で、アメリカ世論の動向も読みながら、「柔らかな同盟」を踏みつぶしにかかってくる。裏読みではある。 (※写真は、The White House公式ホームページより)

⇒19日(木)午後・金沢の天気   くもり時々あめ

★中国漁船の違法操業と人権問題 日本の打つ手は

★中国漁船の違法操業と人権問題 日本の打つ手は

     中国・新疆ウイグル自治区の少数民族を強制的に働かせてつくった木綿や衣類が問題となって輸入の差し止めや不買運動が世界各地で起きているが、さらに水産業にも飛び火している。アメリカのサリバン大統領補佐官(安全保障担当)はツイッター=写真・上=で「CBP(税関・国境警備局)は 残虐で非人道的な労働慣行に従事していることが判明した中国漁船団全体からの海産物の輸入を防止するための措置をとった」と速報を流した。

    ロイター通信Web版(5月29日付)によると、CBPは中国の大連海洋漁業有限公司からのマグロ、メカジキなどの海産物を全米の税関で差し止めすると発表した。マグロ缶詰やペットフードなど水産加工品にも適用する。調査により、同社に雇われた多くのインドネシア人労働者は当初示された労働条件が大きく異なり、身体的暴力や債務による束縛、虐待的な労働と生活環境が強いられていることが明らかになった。

    中国漁船での虐待問題は以前から問題となっていた。賃金未払いや酷使、暴力といった目に遭うことも、時には命を落とすこともニュースとなっていた。AFP通信Web版日本語(2020年7月10日付)によると、2020年6月、インドネシア人船員2人が中国漁船から海に飛び込んで脱走する事件があった。2人はその後、インドネシア漁船に救助され、虐待と劣悪な環境から逃れるためだったと語った。5月にも、インドネシア人船員3人の遺体が中国船から海に投げられる出来事があった。インドネシア政府はその後、3人は病気で死亡したとの報告を受けたと発表。中国政府は国際法に基づき水葬したと説明した。

   90年ほど前に描かれた小説だが、小林多喜二の『蟹工船』のストーリーにある過酷な労働環境を彷彿とさせる。まるで、現代版蟹工船のような話だ。ウイグルでの少数民族への強制労働とあわせ、現実が見えてくる。

   「板子一枚、下は地獄」と言われるように、漁業は常に危険が伴う労働環境だ。そのため、日本でも慢性的な人手不足に陥っている。イカ釣り漁業の拠点である能登半島の小木漁港でも、インドネシアからの漁業実習生が常時70人ほどいる。貴重な労働力として大切にされている。操業中にケガや病人が出れば、水産庁や海上保安庁の救助船が駆け付ける。地域の文化祭を見に訪れたことがあるが、彼らがステージで歌や演奏を披露をしたり、地元の人たちと溶け込んでいるという印象がある。

   それにしても、中国漁船の無法ぶりは日本海側でも深刻だ=写真・下=。日本側のスルメイカのイカ釣り漁の漁期は6月から12月だが、すでに多数の中国漁船がEEZ(排他的経済水域)である大和堆などに入り込んでいて、水産庁は4月から320隻に退去警告を発し、うち91隻に放水措置を行っている(5月27日現在・水産庁公式ホームページ、写真も)。日本の漁船に先回りして、日本海のイカ漁場を荒らしている。そして、この中国側の漁船に多くのインドネシア人が不当に働かされているに違いない。まさに違法操業と人権問題。日本政府もアメリカと同様に強い措置を講じる段階に入って来たのではないだろうか。

⇒29日(土)夜・金沢の天気    くもり

☆バイデン大統領 就任100日目の演説

☆バイデン大統領 就任100日目の演説

   テレビニュース(4月29日)がアメリカ、バイデン大統領の施政方針演説の様子を報じていた。演説のキーワードは何かと思い、ホワイトハウスの公式ホームページをチェックする。「Remarks by President Biden in Address to a Joint Session of Congress」(バイデン大統領の上下両院合同会議での演説)と題するページに演説の全文が掲載されていた。

   「アメリカらしい」と感じさせたのが冒頭での言葉だ。「Madam Speaker, Madam Vice President — (applause) — no President has ever said those words from this podium.  No President has ever said those words, and it’s about time.  (Applause.) 」

   演壇に立ったバイデン氏はまず自分の後ろに並ぶナンシー・ペロシ下院議長と上院議長でもあるカマラ・ハリス副大統領にあいさつした。確かに、大統領の議会演説で後ろの上下院両議長がともに女性という光景はアメリカ史上初めてのこと。「Madam Speaker, Madam Vice President」で議場内は拍手や歓声で沸いたに違いない。

   演説で最初に触れたのは、「100年で最悪のパンデミックだ。大恐慌以来最悪の経済危機。南北戦争以来最悪の民主主義への攻撃だ」と表現したコロナ禍への対策だった。演説は就任100日目の日でもあった。「就任100日以内に1億回のワクチンを注射すると約束したのに、100日間で2億2000万回以上のワクチンを接種したことになる」と実績を。そして、アメリカの世帯の85%に1400㌦の救済小切手を送り約束を守ったと強調している。

   次に述べたのが経済の取り組みについての実績だ。「経済はこの100日間で130万人以上の雇用を生み出した。100日でこの数字は史上最多の雇用を創出だ」。そして、産業の内製化の方針を打ち出している。「考えてみてほしい。風力タービンのブレードを北京ではなくピッツバーグで製造できない理由はない」「だから皆さん、アメリカの労働者が電気自動車やバッテリーの生産で世界をリードできない理由はない。私たちの国には世界で最も聡明で訓練された人々がいます」と。産業の内製化はトランプ前大統領も強調していたが、主語を労働者に置いているところが民主党のバイデン氏らしい表現だ。

   中国との関係については、習近平国家主席のことを「autocrats」(独裁者)と称して、習氏との電話会談の印象をこう述べている。「彼をはじめとする独裁者たちは、民主主義が21世紀には独裁国家と競争することはできないと考えている。なぜなら、コンセンサスを得るのに時間がかかりすぎるからだ」と。

   富裕層への課税の話も具体的な数字で述べている。「私は時々、民主党の友達と口論する。あなたは億万長者にも百万長者にもなれるが、相応の分け前は払うべきです、と。昨年、アメリカの大手企業の55社が連邦税を納めなかった。これら55社の利益は400億㌦を超えた。スイスやバミューダ、ケイマン諸島のタックスヘイブンを通じて脱税する企業も多い。利益の海外移転に対する税金の抜け穴や控除の恩恵も受けている。それは正しくない」「2000万人のアメリカ人がパンデミックで職を失った。一方、アメリカの650人のビリオネアは純資産を1兆㌦以上増やした。今その増やした資産は4兆㌦以上の価値になっている」

   後半になって、中国への警戒感をあらわにしている。習氏との電話会談を再度持ちだす。「私は『われわれは、中国との競争を歓迎します。私たちは対立を求めているのではない』と述べ、アメリカの利益を全面的に守ることを明確にした。中国が行っている国有企業への補助金、技術や知的財産の盗用など、アメリカの労働者や産業を弱体化させる中国の不公正貿易の慣行に立ち向かう」「また、私は習氏に欧州におけるNATOと同じように、インド太平洋地域でも強力な軍事的プレゼンスを維持し、紛争を開始するのではなく予防するつもりだと伝えた」

   さらに、安全保障面での言及。「私たちは世界史上最大の戦闘部隊を持っている。私は、息子を戦争地帯で働かせることの意味を知っている40年ぶりの大統領だ」と。国内問題では、「銃暴力の蔓延からアメリカ国民を守るために私は全力を尽くすが、議会も行動を起こす時だ」と強調した。

  「We can do whatever we set our mind to do if we do it together.」(みんなが心を一つにして取り組めば、アメリカにできないことなど何もない)と述べて、66分の演説を終えた。バイデン氏の演説は数字を駆使して、具体的で実に分かりやすい内容だった。性格そのものが演説に表れているのかもしれない。ただ、アメリカ大統領の演説として、刺激的な言葉で国民に訴えてもよいのではないか。たとえば、ジョン・F・ケネディが「Ask not what your country can do for you―ask what you can do for your country.」と語ったように。(※写真は「The White House」公式ホームページより)

⇒30日(金)朝・金沢の天気     はれ時々くもり

★「大麻解禁」アメリカへの留学

★「大麻解禁」アメリカへの留学

   「五風十雨(ごふうじゅうう)」は五日に一度は風が吹き、十日に一度は雨が降るという、落ち着いた天気のことを表現する言葉だ。季節的には春から初夏にかけての今ごろの天候を言う。庭にウツギの白い花が咲き、ツキヌキニンドウの赤い花も青空に映えている。二つの花を切って、玄関に生ける=写真=。赤と白の花のコントラストがまたいい。自慢話になってしまった。

   確かに植物は人に安らぎを与えてくれるが、この植物はどうだろう。アサ、つまり大麻草のこと。茎の皮の植物繊維は麻織物として重宝され、人類が栽培してきた最も古い植物の一つに数えられる (「Wikipedia」)。それを人類はいつしか「快楽の薬」として使い始めた。大麻やマリファナはアサの花や茎、葉を乾燥させたもので、細かく切り刻んで燃やして発生した煙を吸引する。薬の作用もあり、医療薬として用いられるケースもある。大麻をめぐっては、麻薬ほど強くないのでタバコと同様に認めるべきだとの声や、大麻がきっかけで他の薬物にはまっていくのではないかと懸念する声もある。

   きょうのニュースで、慶応大学の男子学生19歳が大麻取締法違反(有償譲渡)の疑いで、また、アメリカ・ニューヨーク州にある慶応ニューヨーク学院(高等部)の男子生徒18歳ら4人が同法違反(所持)の疑いで逮捕された。男子学生はニューヨーク学院の卒業生で、同学院の生徒らはコロナ禍で一時帰国していた(4月27日付・朝日新聞Web版)。

   このニュースの微妙なところは、ニューヨーク州ではことし3月31日に大麻の使用や栽培を合法化していることだ。大麻は許可を得た小売店で販売され、21歳以上の成人であれば購入できる。大麻を使用した際の車の運転は禁止されるなど規制も設けられている(4月1日付・NHKニュースWeb版)。このほか、首都ワシントンやカリフォルニア州など16の州で認められている。隣国のカナダも3年前に合法化している。

   アメリカの大麻解禁の流れには背景がある。国連麻薬委員会(CND)が最も危険な薬物に分類していた大麻および大麻樹脂をリストから除外することを承認し、大麻の医療的価値を認めたことによる(2020年12月3日付・CNNニュースWeb版日本語)。アメリカでこの動きは全土に広がるだろう。日本人が旅行やビジネスでアメリカに出かけ、大麻を勧められたとしても、渡航先での使用は現行の日本の大麻取締法では罰則対象とされてはいない。日本に持ち帰った場合、所持であっても罰せられる。

   「民主主義・人権」は共有できても「大麻」は共有できない日本とアメリカ。その是非を政治の場で議論すべき時が日本でもめぐってきたのではないか。前述の記事を読んで感じたことだ。

⇒27日(火)夜・金沢の天気    くもり

☆コロナ禍 1億人の感染・200万人の死

☆コロナ禍 1億人の感染・200万人の死

   時折チェックしているジョンズ・ホプキンス大学のコロナダッシュボ-ドによると、新型コロナウイルスの感染者は世界全体で累計9449万人、死者は同202万人となっている(日本時間で7日午後4時現在)=写真=。この勢いだと今月中には感染者は1億人を突破するだろう。このとき、世界の論調はどう動くのか。

   国別ではアメリカの死者が累計39万人超で最多だ。アメリカに次いでブラジル、インド、メキシコ、イギリスとなっている。この5ヵ国を合わせた死者数は世界全体のほぼ50%を占める。こうした数字からもアメリカは中国に対して厳しい論調を突き付けている。

   新型コロナウイルスの発生源などについて調べるWHOの調査チームが14日に中国・武漢に入ってのに合わせて、アメリカのポンペイオ国務長官は、中国科学院武漢ウイルス研究所に関する「新たな情報」として声明を発表した(1月16日付・NHKニュースWeb版)。ポンペイオ氏は「アメリカ政府には、感染拡大が確認される前のおととし秋、研究所の複数の研究員が新型コロナウイルス感染症やほかの季節性の病気とよく似た症状になったと信じるに足る理由がある」と主張。加えて、「研究所は新型コロナウイルスに最も近いコウモリのコロナウイルスを遅くとも2016年から研究していた」「中国軍のための極秘の研究に関わっていた」と発表している(同)。

   ポンペイオ氏の言及の背景には裏付けがあると憶測する。アメリカのハーバード大学教授が中国政府からの学術・研究協力の名目で多額の研究資金などを受け取っていたことを報告していなかったとして、アメリカ司法省は2020年1月下旬、教授を「重大な虚偽、架空請求、詐欺」の容疑で訴追(逮捕は2019年12月10日、その後、21種類の生物学的研究を中国に密輸しようとした罪で起訴)している。教授はハーバード大学化学・化学生物学部のチャールズ・リーバー氏で、ナノサイエンス・ナノテクノロジーの分野で世界最先端の研究を行っている化学者。リーバー氏は中国の武漢理工大学の「戦略科学者」として2011-16年までの雇用契約を結んでいた(2020年2月6日付・ニューヨーク・タイムズWeb版記事「China’s Lavish Funds Lured U.S. Scientists. What Did It Get in Return?」)。   

   リーバー教授は「武漢理工大・ハーバード大共同ナノテクノロジー研究所」を設立。教授がアメリカ国防総省と国立衛生研究所から研究資金を受け取っていたころ、武漢理工大学に出向いていた。アメリカ側はその後の捜査で、リーバー教授から証言を得ていると考えても不思議ではない。こうした証言をベースに、ポンペイオ氏は「研究所は新型コロナウイルスに最も近いコウモリのコロナウイルスを遅くとも2016年から研究していた」「中国軍のための極秘の研究に関わっていた」などと述べたのではないだろうか。

   WHOの調査チームには、ウイルスのサンプル調査だけでなく、中国での内部告発者からのヒアリングなど徹底した調査を行ってほしいと願うのはアメリカだけでなく世界の要望だろう。

⇒17日(日)午後・金沢の天気  あめ

☆大麻をめぐる是非論

☆大麻をめぐる是非論

   「アヘン戦争」(1840-42年)は日本の歴史教科書にも出てくるので誰でも知っている。イギリスの貿易商たちがインドで得た麻薬のアヘンを中国で売りさばき、その金で中国で茶葉を買うという「三角貿易」で貿易商たちは莫大を利益を上げていた。そのアヘンの取り締まりを強化した中国に対してイギリスが武力報復をしたのがアヘン戦争だと理解している。

   以下は記者時代に警察の担当者から教わった知識だ。アヘンは麻薬の一種で、ケシの実からつくられる。大麻やマリファナはアサの花や茎、葉を乾燥させたもので、細かく切り刻んで燃やして発生した煙を吸引する。薬の作用もあり、医療薬として用いられるケースもある。大麻は麻薬ほど強くないのでタバコと同様に認めるべきだとの声もあるが、大麻を吸う人のほとんどは麻薬や覚醒剤へとはまっていく。

   上記の2つのことが知識としてあったので、新聞記事を読んでアメリカは大丈夫かと懸念している。以下は記事内容。大麻の合法化をめぐる住民投票で、ニュージャージー、アリゾナ、サウスダコタ、モンタナのアメリカ各州では合法化が決まった。これで大麻を合法的に使えるアメリカ人は1億900万人に上り、総人口の3人に1人に相当する。合法化の結果、ニュージャージー州はアメリカで最大級の大麻市場になると予想される(12月5日付・日経新聞Web版)。

   同州は販売や税収などで年間1億2600万㌦(130億円)の収益を生み出せると計算している。歴史的には大麻合法化に反対してきた共和党支持者の多いサウスダコタとモンタナ州でも合法化が支持され、同党内での意識の変化が起きている。今後、大麻合法化がアメリカ国内で加速する可能性が高くなっている(同)。

   このアメリカの大麻をめぐる動きを見て笑っているのは中国ではないだろうか。「バイデンが大統領になれば、さらに加速するだろう。大麻は自由の象徴だと勘違いしているのが民主党だ」と。確かに、税収の確保のため大麻を合法化するというアメリカの動きも、日本人にとっても不可解だ。もし、アメリカでこの動きが全土に広まれば、日本の学生たちにアメリカへの留学を勧められなくなる。最近、アメリカから帰国後に自宅で大麻栽培をして使っていたというニュースも目につくようなってきた。

   無害というのであれば、堂々とカミングアウトして大麻解禁の運動を展開し、できれば選挙の争点としてほしい。日本でも、きっちりとした議論をするべき時が来ているのではないだろうか。自身は禁煙論者であり、タバコも吸わない。

⇒6日(日)夜・金沢の天気     はれ

☆アメリカ大統領選 「オクトーバーサプライズ」を逃す

☆アメリカ大統領選 「オクトーバーサプライズ」を逃す

   CNNニュースWeb版(11月8日付)は「BIDEN WINS」と大見出しで伝えている=写真=。「Pennsylvania’s 20 electoral votes put Biden over the 270 electoral votes needed to win.」。僅差で激戦が続いていたペンシルベニア州(選挙人20人)でバイデン氏が勝利し、大統領選で必要な選挙人過半数の270を超えることが確定したと報じている。今回の大統領選で勝敗を分けたのは何だったのか検証してみる。

   CNNは、バイデン氏の勝利についてニューヨーク市の医師のインタビューを紹介してる。「このパンデミックを乗り越えて、やるべきこと、つまり私たちがそれをコントロールできるようにするために、都市や国でやらなければならないことをやろうとしているリーダーだ」と語った。このリーダーとは女性初の副大統領に就任予定のカマラ・ハリス氏のこと。先月15日にハリス氏が遊説中にスタッフ2人の新型コロナウイルス感染が発覚、ハリス氏は念のため18日まで遊説を自粛した。医師はコロナにしっかり向き合うバイデン陣営の姿勢を評価したのだ。

   一方、トランプ氏は対照的だった。投票日を1ヵ月後に控えた先月2日、本人のウイルス感染が判明しワシントンの陸軍病院に入院した。ところが、3日後早々に退院した。選挙遊説でもトランプ氏はコロナ感染を克服したことをアピールするためにあえてマスクを外して強さをアピールした。まさに地で行く「オクトーバーサプライズ(October surprise)」となった。その後、ホワイトハウスの関係者に感染が広がった。

   では、バイデン氏とトランプ氏の対称的なコロナ対応が、有権者にどう影響を与えたのだろか。その際立った違いは「郵便投票」への両陣営の呼びかけだろう。バイデン氏は感染対策として郵便投票や期日前投票を活用するよう促していた。一方、トランプ氏は不正につながるとして郵便投票をしないよう呼びかけていた。トランプ氏が指摘した不正とは、郵便と投票所で「二重投票」が起きるとの主張だ。郵便投票の用紙を申請した直後に期日前投票をすれば、二重投票の可能性は出てくるが、事務的チェックで防げるだろう。

   アメリカのメディアがよく引用するフロリダ大学「US Elections Project(アメリカ選挙プロジェクト)」のサイトをチェックすると、今回の選挙の投票総数は1億5883万人で投票率は66.4%だった(大学独自集計)。期日前投票は1億100万人以上で、うち6450万人超が郵便投票を選んだと推定される。2016年の選挙では1億3900万人が投票し、うち郵便投票は3300万人だったので倍近い数字となる(AFP通信Web版日本語)。トランプ氏が 「 Mail-in ballots are very dangerous」と呼びかけたにもかかわらず大幅に増えたということは、それだけ投票所での「3密(密集、密接、密閉)」を避けたいとの有権者の意識の表れだろう。

   トランプ氏はコロナ禍での国民の心情・心理を読み誤った。自らが回復したからと強気に出るのではなく、あの時に「コロナを経験して怖さを知った。郵便投票でOKだ。ワクチン開発を急ぐ、国民は安心してほしい」と言えば、それで選挙情勢は変わっていたかもしれない。自らの「オクトーバーサプライズ」のチャンスを逃した大統領になった。バイデン氏の大統領就任式は2021年1月20日だ。

⇒8日(日)朝・金沢の天気      くもり

☆アメリカ大統領選 往生際の悪さ

☆アメリカ大統領選 往生際の悪さ

   新型コロナウイルスの感染拡大が止まない。ジョンズ・ホプキンス大学のコロナ・ダッシュボード(一覧表)によると、アメリカの感染が最も多く958万人、インド836万人と続く。亡くなった人もアメリカが23万人、ブラジル16万人と続く。アメリカでは今月4日(現地時間)に新規感染者は10万2831人と1日当たりの感染者が初めて10万人を超えた(11月5日付・CNNニュースWeb版日本語)。

   これが社会不安にもつながっているのだろうか。ニューヨーク市警が公表した犯罪統計によると、ことし年初から10月までの間に発生した発砲事件は1299件で、前年同期に比べ93.9%も増加している(同)。ニューヨーク市では毎日4.3回の発砲音が聞こえていることになる。コロナ禍に加えて、アメリカ大統領選がデスマッチの様相だ。

   開票作業が長引いているペンシルベニア州(選挙人20人)のフィラデルフィアでは、トランプ、バイデンの両候補の支持者らによるデモが繰り広げられた。トランプ氏の支持者らは「投票は選挙日まで」「投票所は閉まりました」と書かれたプラカードを掲げた一方で、バイデン氏の支持者らはバリケード内でダンスする姿が見られた(11月6日付・ロイター通信Web版日本語)。

   SNSも大混乱だ。フェイスブックは5日、誤情報などを投稿し「民主党が選挙を盗んでいる」と根拠のない主張を続けているトランプ支持者のグループ「STOP THE STEAL(盗みを阻止しろ)」をプラットフォーム上から削除した。フェイスブックは声明で「同グループは選挙プロセスの非合法化を目的に組織され、一部メンバーは懸念を誘う暴力行為を呼び掛けていた」と説明した(同)。

            アメリカでは、SNS各社は通信品位法(CDA:the Communications Decency Act )230条に基づき、利用者の投稿内容について免責されるという法的保護を受けている。つまり、SNSは基本的に違法な投稿を掲載したことの責任を問われない。その一方で、ヘイトスピーチなどのコンテンツは独自にファクトチェックの規定を設けて規制しているのだ。むしろ、SNS各社はそのファクトチェックの作業で大混乱しているのではないだろうか。差別や相手を圧迫するようなヘイトスピーチは分かりやすいが、ファクトチェックとなると独自に事実関係を収集・構築した上での判断となるので簡単ではないだろう。

          SNSを政治の舞台として活用したのは、ある意味でトランプ氏だった。2017年1月の大統領就任前からゼネラル・モーターズ社やロッキード社、ボーイング社などに対し、ツイッターで雇用創出のために自国で製造を行えと攻撃的な「つぶやき」を連発した。ホワイトハウスでの記者会見ではなく、140文字で企業に一方的な要望を伝えるという前代未聞のやり方だった。

   そのSNSが今回の大統領選でトランプ氏の書き込みに目を光らせている。ツイッターは「誤解を招く可能性がある」として警告ラベルを付けて閲覧者に注意を促している。その数は尋常ではない=写真=。一国の大統領のツイッターにここまでするのかとも思うくらいだ。一方で、追い詰められたトランプ氏がこの場におよんで無茶ぶりのコメントを連発しているのだろう。往生際の悪さか。

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