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★「独裁者」なのか、「改革者」なのか~アメリカ・韓国の大統領の振る舞い方

★「独裁者」なのか、「改革者」なのか~アメリカ・韓国の大統領の振る舞い方

それにしてもよく分からないニュースだ。メディア各社の報道によると、韓国の尹錫悦大統領による「非常戒厳」の宣布(2024年12月3日夜)をめぐり、憲法裁判所はきょう4日、弾劾訴追された尹氏の罷免を8人の裁判官の全員一致で決定した。尹氏は即時失職し、60日以内に大統領選が行われる。憲法裁は戒厳令は違憲で、国会に対する軍の投入などについても違法かつ重大だと認めた。大統領が弾劾・罷免されたのは2017年3月の朴槿恵氏以来2人目だ。

よく分からないのは、尹氏が「非常戒厳」を宣布した理由だ。政府の方針に反対し続ける最大野党「共に民主党」を国政をマヒさせる「反国家勢力」と指弾し、戒厳令を出して国会などに軍や警察を投入した。が、国会が2時間半後に戒厳令の解除を要求する決議案を可決し、その後に解除された。このときの尹氏は大統領の権限をさらに超えた「独裁者」として立ち振る舞おうとしたのか、あるいはマヒした国政を改革するための手立ての第一歩として、「非常戒厳」の宣布をしたのか。独裁者になろうとしたのか、改革者になろうしたのか。

アメリカのトランプ大統領についてもよく分からない。今月2日に世界各国からの輸入品に対して「相互関税」をかけると公表し、各国に一律10%の関税をかけたうえで、国・地域ごとに異なる税率を上乗せした。トランプ氏はこのとき、「2025年4月2日はアメリカの『Liberation day(解放の日)』として永遠に記憶される」と演説し、相互関税を実施するための大統領令に署名した。アメリカは第二次世界大戦後に率先して関税を引き下げ、いわゆる自由貿易体制を構築した。それをぶっ壊し、先進国で最も閉ざされた孤立市場に変質した。

大統領権限で相互関税を発動する根底には、トランプ氏がこれまで何度も述べているように、年1.2兆㌦を超えるアメリカの貿易赤字や工業を中心とした国内産業の空洞化がある。このため中間層が破壊され、勝者と敗者を生み出す経済構造になったと憂い、これをトランプ氏は今回の演説でも「国家の非常事態」と強調した。そして、相互関税により6兆から7兆㌦がアメリカに流入するとの見通しを示し、「市場は活況となり、株価は上昇し、国は急成長するだろう」と語った。

しかし、今回の一律関税および相互関税が額面通りに実行に移された場合、もっとも割を食うのはアメリカ経済ではないのか。個人消費がGDPの7割を占めるので、輸入品の値上がりの影響を直接こうむることになる。そして今、アメリカ株の全面安、ドル安など金融市場に激震が走っている。このまま景気後退へと突入していくのか。

⇒4日(金)夜・金沢の天気   くもり

★トランプ政権に傾くSNS経営者 ファクトチェックは死語となるのか

★トランプ政権に傾くSNS経営者 ファクトチェックは死語となるのか

  1月20日はアメリカのトランプ氏が大統領に復帰する日だ。メディア各社の報道によると、トランプ氏は就任後、ただちに100本に及ぶ大統領令に署名し、不法移民の強制送還や関税の引き上げなど選挙公約の実現に向けて動き出すようだ。その一方でトランプ氏の大統領復帰に合わせるかのような動きも報じられている。IT大手メタ社のザッカーバーグCEOは今月8日、アメリカ国内のフェイスブックやインスタグラムなどで行ってきた投稿内容のファクトチェック(事実確認)を廃止すると発表した。

  メタ社はこれまで119ヵ国のファクトチェック団体と提携し、60を超す言語でファクトチェックを実施してきたことで知られる。廃止対象となるアメリカでは、これまでAFPやUSAトゥデイなどの通信社を含む10のファクトチェック団体と提携してきた。それを解消するという。この背景で浮かぶのがトランプ氏との関係の修復を図ろうとするザッカーバーグ氏の思惑のようだ。(※写真は、ファクトチェックをめぐるザッカーバーグ氏の大きな変化は、自己防衛なのか、それとも影響力を期してのことなのか、と報じるCNNニュースWeb版)

  そもそもプラットフォーマーがフェクトチェックに動いたはトランプ氏の投稿がきっかけだった。2020年5月、ツイッター社は当時のトランプ大統領がカリフォルニア州知事が進める大統領選挙(同年11月)の郵便投票が不正につながると主張した投稿について、誤った情報や事実の裏付けのない主張とファクトチェックで判断し、「Get the facts about mail-in ballots」とタグ付けして警告を発した。さらに、同じ5月にミネソタ州ミネアポリスで、アフリカ系アメリカ人の男性が警察官に首を押さえつけられて死亡する事件が起き、抗議活動が広がった。このとき、トランプ大統領がツイートした内容のうち、「略奪が始まれば(軍による)射撃も始まる」との部分が個人または集団に向けた暴力をほのめかす脅迫に当たると同社は判断し、大統領のツイッターを非表示とした。

  アメリカでは、SNS各社は通信品位法(CDA:the Communications Decency Act )230条に基づき、ユーザーの違法な投稿をそのまま掲載したとしても責任は問われない。だからといって、ヘイトスピーチなどを野放しにしておくわけにはいかないというのがSNS各社のスタンスだった。そして、トランプ氏とSNS各社の緊張関係がピークに達したのが、2021年1月だった。大統領選に敗れたトランプ氏の支持者らによるアメリカ連邦議事堂への襲撃事件。トランプ氏は暴徒を「愛国者だ」などとメッセージを投稿したことから、ツイッターやフェイスブック、グーグルなど各社は公共の安全が懸念されるとしてトランプ氏のアカウントを相次ぎ停止した。

  風向きが変わったのは、実業家イローン・マスク氏が2022年10月にツイッター社を買収してからだ。マスク氏は「言論の自由を重視する」として同年11月にトランプ氏のアカウントを復活させている。さらに、当時8000人とも言われたツイッター社のスタッフの8割をリストラした。この中には偽情報や誤情報対策を担っていたチームも含まれ、ファクトチェック部門は解体に追い込まれた。2023年にはツイッターは「X」に改名された。Xは誤情報への対策として「コミュニティノート」を導入している。登録した一部の利用者は、誤っている投稿に対して情報を追加できる仕組みだ。

  こうした流れの中で、メタ社のザッカーバーグ氏もフェイスブックやインスタグラムなどで行ってきた投稿内容のファクトチェックを廃止すると発表。まずはアメリカで止め、偽情報に対してはXと同様のコミュニティノートで対応する考えを示した。

  ファクトチェックは言論を弾圧しているわけでもなく、むしろ情報の透明性を重視するプラットフォーマーの行動規範ではなかっただろうか。今後、マスク氏が政権の中枢に入り、SNSがさらに変容していくのか。そして、ファクトチェックは死語となってしまうのか。

⇒20日(月)午後・金沢の天気   くもり

☆いよいよヤル気か 北朝鮮がまた日本海に弾道ミサイル

☆いよいよヤル気か 北朝鮮がまた日本海に弾道ミサイル

   また北朝鮮が弾道ミサイルを発射した。今月に入り弾道ミサイルや巡航ミサイルの発射の頻度高めている。防衛省公式サイトによると、北朝鮮は深夜の24日午後11時54分と59分に北朝鮮内陸部から、計2発の弾道ミサイルを東方向の日本海に向けて発射した。日本のEEZ外に落下した。1発目は最高高度100㌔で、350㌔飛翔、2発目は最高高度100㌔で、400㌔飛翔したと推定される=図、防衛省公式サイトより=。

   今月だけでも4回目だ。今月22日午前4時ごろに朝鮮半島西側の黄海に向けて数発の巡航ミサイルを発射している。19日午前3時台には日本海に向けて短距離弾道ミサイル2発を発射、EEZ外に落下。12日にはICBM(大陸間弾道ミサイル)1発を発射している。弾道ミサイルは74分間飛翔し、北海道の奥尻島の西方250㌔の日本海のEEZ外に落下。飛翔距離は1000㌔、最高高度は6000㌔を超えると推定されている。弾道ミサイルや、弾道ミサイル技術を用いたものの発射はことし14回目だ。

   なぜこれほどまで頻繁に北朝鮮はミサイルを発射するのか。メディア各社の報道から読み解くと、一つには戦意高揚があるのかもしれない。北朝鮮は、朝鮮戦争の休戦協定(1953年7月27日)の日を「戦勝節」と位置付けていて、ことしは70年の節目に当たる。二つめは、アメリカ軍の動きに過敏になっていることがある。きのう24日、アメリカの原子力潜水艦「アナポリス」が済州島に入港している。また、今月18日から21日まで、核兵器を搭載可能なアメリカの戦略原子力潜水艦「ケンタッキー」が南東部の釜山に寄港していた。北朝鮮とすれば、こうした米韓の軍事的な連携に神経を尖らせているだろう。

   三つめは自身の憶測だが、ロシアとの連携であえて軍事行動に出て、アメリカの意識をウクライナから朝鮮半島へとそらすことを想定しているのではないだろうか。ロシアとすれば、クラスター爆弾を供与するなどウクライナへのアメリカの肩入れがハードルになっている。そこで、朝鮮半島での紛争を北朝鮮に仕掛けさせてアメリカをここに注目させる。さらに、中国による台湾への軍事侵攻を仕掛けさせて、アメリカを巻き込む。そのようなシナリオではないだろうか。まったくの憶測である。

   このところ、ロシアの安全保障担当と中国外交担当トップが南アフリカで会議を行ったり、中国共産党幹部が北朝鮮を訪問するなど、ロシア・中国・北朝鮮の外交が妙に活発化しているような印象から、上記のシナリオを勝手に詮索してみた。

⇒25日(火)夜・金沢の天気   はれ

★世界が加盟に動く 新たな2極化なのか

★世界が加盟に動く 新たな2極化なのか

   これはロシアのプーチン大統領の「敗北」を意味しているのかもしれない。国連憲章違反であるにもかかわらず偽旗を掲げてウクライナを侵攻して500日が過ぎ、さらに国連安保理を拒否権で機能不全に落とし込んでいるロシアに対して世界の多くの国々が疑心暗鬼になっている。これまで伝統的に中立政策を掲げてきた北欧のスウェーデンとフィンランドでさえ、NATOの加盟を申請し、フィンランドはことし4月に正式加盟。スウェーデンも難色を示してきたトルコが議会で批准の手続きを進めることになり、加盟に向け前進することになった(11日付・NHKニュースWeb版)。

   プーチン大統領にとってはNATO拡大そもののがロシアの脅威に映っているに違いない。そして、ウクライナも去年9月にNATOへの加盟を正式に申請している。ただ、NATOは第三国からの攻撃に対し加盟国が互いに防衛参画することで合意しているため、ウクライナの加盟がNATOとロシアの全面的な対立となる可能性もあるとして、加盟に慎重な国もある。そのNATOの首脳会議が11日から12日まで、ロシアと国境を接するバルト三国のリトアニアで開かれる。この会議でウクライナの加盟についてどのような議論が交わされるのか。

   「ブレグジット(Brexit)」と呼ばれ、イギリスがEUから離脱したのは2020年1月だった。そのイギリスが今月16日にニュージランドで開催されるTPP(環太平洋連携協定)の閣僚級会合で加盟を認めることが正式に承認される。IMFによると、イギリスの加盟によりTPPの経済圏は世界全体のGDP合計額の15%を占めることになる(今月8日付・Bloomberg-Web版日本語)。

   TPPは当初、アメリカを含めた12ヵ国の協定だったが、2017年にトランプ大統領が離脱を決め、日本など11ヵ国で「CPTPP(環太平洋パートナーシップ経済連携協定)」として再出発した。日本は引き続きアメリカに復帰を求めている(同)。ただ、アメリカは対中包囲網の構築に向けて、ローバルサウスの代表格であるインドとインドネシアを加えた新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の構築を進めている。

   軍事の対ロシア包囲網をNATOが、経済の対中国包囲網をアメリカが、それぞれ担っている。世界の新たな2極化の動きでもある。

⇒11日(火)午後・金沢の天気    くもり

☆粛清へと向かうのか 「プリゴジンの乱」の余波

☆粛清へと向かうのか 「プリゴジンの乱」の余波

   たった一日とは言え、私兵を率いて政府軍に盾突いたプリゴンジはプーチン大統領にとっては、いわゆる「反逆者」だ。はたしてプーチン氏は彼を許すだろうか。ロシアには「チーストカ(粛清)」の歴史がある。あのソビエト連邦時代の最高指導者だったスターリン(1878-1953)は反革命や不正者を徹底的に弾圧したことで歴史上で知られる。粛清は、ある意味で敵の脅威をつくり出すことで国民を恐れさせ、団結させることにあるとされる。プーチン大統領も国民の団結の「道具」として、プリゴジンの粛清を行うのではないか、との読みもある。(※写真は、6月25日付・BBCニュースWeb版)

   たとえは適切でないかもしれないが、ロシアにはもう一つの粛清の方法がある。それは墓などをつくらず、地上に存在したことを消去することだ。第二次世界大戦で、ヒトラー率いるドイツ軍は1945 年5月 8 日に無条件降伏したが、ヒトラーは降伏前の4月30日に自決する。遺体はヒトラーの遺言によって焼却されたものの、焼け残った遺体は当時ベルリンを占領していたソ連軍によって東ドイツのマクデブルクに運ばれ、ソ連諜報機関の事務所前の舗装の下に埋められた。1970年になって、ネオナチの崇拝目的になることを怖れ、遺体を再び焼却して遺灰をエルベ川に流したとされる(Wikipedia「アドルフ・ヒトラーの死」より)。

   この粛清の方法はロシアだけではない。第二次大戦後、極東軍事裁判(東京裁判)で死刑判決を受けた元総理の東條英機ら7人のA級戦犯の遺骨もそうだった。アメリカ軍は1948年12月23日、東京・巣鴨プリズンから遺体を運び出し、横浜市内の火葬場で焼かれ、遺骨は別々の骨つぼに納められた。そして、小型の軍用機に載せられ、上空から太平洋に散骨されている。

   また、ニューヨークの同時多発テロ(2001年9月11日)の首謀者とされたオサマ・ビン・ラディンに対する斬首作戦が2011年5月2日、アメリカ軍特殊部隊によって実行された。パキスタンのイスラマバードから60㌔ほど離れた潜伏先を奇襲して殺害。DNA鑑定で本人確認がなされた後、アラビア海で待機していた空母カール・ビンソンに遺体は移され、海に水葬された。

   遺骨が遺族に返還され、墓がつくられることになれば、その墓が将来、聖地化や崇拝の地になることを想定しての処置なのだろう。「死をもって罪をあがなう」という発想ではなく、存在証明を許さないのだ。プリゴジンの処遇をめぐっての書き出だしだったが、話がずいぶんと逸れた。

⇒29日(木)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

★「チークナイフ」こだわるアメリの執念

★「チークナイフ」こだわるアメリの執念

   北朝鮮による弾道ミサイルの発射など挑発が相次ぐ中、米韓両軍は特殊作戦を展開しているようだ。韓国の朝鮮日報Web版日本語(3月1日付)によると、2月28日の米韓合同訓練では特殊部隊を動員した「チークナイフ(Teak Knife)」、別名「斬首作戦」と呼ばれる北朝鮮の指導部を狙った訓練が行われた。この訓練は1990年代以降で毎年実施されているが、尹錫悦政権の発足後の去年9月に続き今回と、わずか半年で2回訓練を実施し公開している。挑発の頻度を高める北朝鮮に向けた警告メッセージなのだろう。

   アメリカ軍はこれまで単独で2回、斬首作戦を実行している。2001年9月11日にニューヨ-ク・マンハッタンなどで起きた同時多発テロを仕掛けた国際テロ組織アルカイダの首謀者オサマ・ビン・ラディンに対して、2011年5月1日、パキスタンのイスラマバードから60㌔ほど離れた潜伏先をステルスヘリコプターなどで奇襲し殺害。2022年7月30日にもう一人の首謀者とされていたアイマン・アル・ザワヒリを潜伏先のアフガニスタンのカブール近郊のダウンタウンで、無人攻撃機に搭載した2発のヘルファイアミサイル(空からの対戦車ミサイル)で攻撃し殺害している。

   これで、アメリカによる対テロ戦争は終わったのか。「9・11」翌年の2002年の一般教書演説で当時のブッシュ大統領が述べた「悪の枢軸」。それ以前からイランやイラク、北朝鮮などを「テロ支援国家」や「ならずもの国家(rogue state)」などと称して敵視を続けている。

   アメリカが北朝鮮を悪の枢軸」に位置付けるのは、朝鮮戦争(1950年6月-53年7月)に由来する。北朝鮮が、国境線といわれた38度線を南下し、韓国に侵攻した。これにアメリカなど国連軍は反撃したが、アメリカ軍は3万6000人にもおよぶ多大な犠牲を払った。しかも、朝鮮戦争は終戦ではなく、現在も休戦状態にあり、一触即発の状況に変わりない。朝鮮戦争にどう決着をつけるか、アメリカにとって、冒頭のチークナイフはその選択肢の一つなのだろう。(※写真は「The White House」公式ホームページより)

⇒2日(木)夜・金沢の天気     くもり

☆朝鮮半島の争乱は対岸の火事なのか

☆朝鮮半島の争乱は対岸の火事なのか

   前回ブログの続き。共同通信Web版(19日付)によると、北朝鮮メディアは19日、新設組織とみられる「ミサイル総局」傘下の大陸間弾道ミサイル(ICBM)運用部隊が18日午後にICBM「火星15」の抜き打ちの発射訓練を首都平壌の平壌国際空港で実施したと伝えた。この訓練で「われわれの強力な物理的核抑止力の信頼性」を証明したとしている。金正恩党総書記は訓練に立ち会わなかった。この記事から読み取れることは、アメリカに対してICBMは実戦配備済みだと強調したかったのだろう。

   その狙いは、アメリカと韓国が来月実施する合同軍事訓練に対する威嚇にあるようだ。共同通信Web版(17日付)によると、韓国国防省は17日、北朝鮮の核・ミサイルの脅威への対応を目的とした、米韓合同軍事演習「フリーダムシールド(自由の盾)」を3月中旬に11日間連続で実施し、期間中に大規模な野外機動訓練も行うと発表した。また、韓国ハンギョレ新聞Web版日本語(19日付)は、演習はコンピューターシミュレーションを通じて北朝鮮の核実験と軍事的挑発を想定して合同防衛態勢を点検するものだが、両国は演習期間中に師団級の合同上陸訓練と20余りの米韓連合の野外機動訓練なども行う、と報じている。

   米韓の合同演習に対し北朝鮮外務省は17日に「持続的で前例のない強力な対応に直面することになる」と警告する報道官談話を出していた(18日付・朝日新聞Web版)。この談話の延長線上にきのうのICBM発射があったのだ。このまま朝鮮半島の緊張がさらに激化するとどうなるのか。

   以下、憶測だ。アメリカは北朝鮮を「テロ支援国家」や「ならずもの国家(rogue state)」と敵対視している。去年の米韓の合同軍事演習では野外機動訓練(8月)が4年ぶりに再開されるなど実に念入りだった。9月と10月には米原子力空母「ロナルド・レーガン」などが参加した海上機動訓練、11月にはステルス戦闘機と称されるアメリカの戦略爆撃機「B1B」が朝鮮半島周辺の上空で空中訓練を実施した。朝鮮戦争では休戦協定(1953年7月)が結ばれたものの、現在も戦争状態が継続している。米韓が攻撃とみなせば戦争は再開される。このとき、実施されるのが金総書記に対する斬首(ピンポイント)作戦だろう。

   ただ、戦争となれば対岸の火事ではない。斬首作戦が成功したとしても北朝鮮国内は騒乱状態になり大量の難民が船に乗って逃げ出すだろう。ガソリンが切れたり、エンジンが止まった船の一部はリマン海流、そして対馬暖流に乗って能登半島などに漂着する。無事漂着したとして大量の難民をどう受け入れるのか、武装難民だっているだろう。その影響は計り知れない。日本海側に住むがゆえの胸騒ぎではある。

⇒19日(日)夕・金沢の天気     あめ

★「たかが気球」で済まさない アメリカに漂うピリピリ感

★「たかが気球」で済まさない アメリカに漂うピリピリ感

   「たかが気球」と思っていたが、問題がエスカレートして、まるで開戦前夜の様相になってきた。気球は国際法上、航空機に位置づけられ、他国の領空に侵入するのは国際法に基づく領空侵犯となる。ここ10日間の動きを時系列で追ってみる。

   アメリカ軍は現地時間で今月4日午後、軍事施設を偵察する中国軍の気球を南部サウスカロライナ州の沖合の上空でF22ステルス戦闘機から空対空ミサイル1発を発射し、海に撃墜させた。これに対し、中国側は「私たちの気象観測気球がコース外に吹き飛ばされたのは遺憾だ」「アメリカの政治家とメディアは誇張している」「アメリカがこの飛行物体を攻撃したのは国際慣例の深刻な違反だ」などと述べた(6日付・BBCニュースWeb版日本語)。

   アメリカ連邦議会下院は9日、中国の偵察気球がアメリカの主権を侵害したとして中国共産党を非難する決議案を419対0の全会一致で採択した。アメリカ議会では特に共和党から、バイデン政権はアラスカ州沖で気球を発見した時点で撃墜すべきだったと、政権対応を批判する声も高まっているが、下院が一致団結して中国に対する姿勢を明確にしたものとして注目に値する(10日付・JETRO「ビジネス短信」)。

   FBIは回収した気球の残骸の分析を行い、この気球の製造に中国企業など6社が関わっていたと判断し、バイデン政権は10日に6社を禁輸リストに追加した。禁輸リストはアメリカの国家安全保障と外交政策に反する活動に携わる企業や団体が対象となる。

   さらに3日連続の撃墜。アメリカ軍は10日にアラスカ州の上空で「小型車のサイズ」の飛行物体を、11日にカナダ北西部のユーコン準州の上空で「円筒形」の飛行物体を、さらに12日にアメリカとカナダの国境付近にある五大湖の一つ、ヒューロン湖の上空で「八角形の構造」の飛行物体を、それぞれ撃墜している(13日付・BBCニュースWeb版)。アメリカ議会下院で非難決議が採択され、徹底して未確認飛行物体を追撃している。メディアも連日大きく報道している。神経過敏と言えるほどに、だ。

   ここからは憶測だ。幼いころ、父親から聞いた話だ。太平洋戦争で、日本軍はアメリカ本土に「風船爆弾」を飛ばしていた。「ふ号兵器」と称した、気球に掲載した小型爆弾だった。偏西風を利用してアメリカに向けて飛ばし、山火事などを各地で火災を発生させた。当時、日本国内では知られた話だった。父親は陸軍の軍曹で仏印(ベトナム)に進軍していたので、風船爆弾とは直接的な関わりはなかったが、戦友たちから聞いた話として語ってくれた。

   アメリカはベトナム戦争のとき、本土空襲を受けたことは一度もないと言い続けていた。おそらく国内の戦意を高揚させるために、戦争に強い国家を喧伝したのだろう。そのアメリカに軍事施設を偵察する中国軍の気球が飛んでいた。たんなる領空侵犯問題ではなく、まさに国家の威信にかかわる出来事としてバイデン政権をはじめ共和党も受け止めているのかもしれない。そのピリピリとした緊張感が伝わってくる。(※写真は、6日付・ CNNニュースWeb版)

⇒14日(火)夜・金沢の天気    あめ時々ゆき

★米中冷戦の新たな火ダネ 中国「スパイ気球」のてん末は

★米中冷戦の新たな火ダネ 中国「スパイ気球」のてん末は

         それにしても不気味な光景だ。得体の知れない気球が空を飛ぶ。それが、中国のものであると分かれれば、なぜ我々の頭上にあるのかと、なおさらうす気味悪いだろう。CNNニュースWeb版(6日付)によると、アメリカを横断していた中国の偵察気球を、アメリカ軍の戦闘機がサウスカロライナ州の沖合で撃墜した。「Why the Chinese balloon crisis could be a defining moment in the new Cold War」=写真=の見出しで、アメリカ人は初めて北京からの国家安全保障上の挑戦とも言える具体的な現象を経験したと伝えている。

   防衛省によると、気球は国際法上、航空機に位置づけられ、他国の領空に侵入するのは国際法に違反し、領空侵犯にあたるとされる。過去に軍用機や民間機が他国の領空に入ったことで、当事国だけでなく国際社会全体の緊張が高まったこともある(6日付・NHKニュースWeb版)。

   アメリカ側が気球を撃墜したことに対し、中国側は「私たちの気象観測気球がコース外に吹き飛ばされたのは遺憾だ」「アメリカの政治家とメディアは誇張している」「アメリカがこの飛行物体を攻撃したのは国際慣例の深刻な違反だ」などと述べている(6日付・BBCニュースWeb版日本語)。かりに、中国が主張するように気象観測が目的の気球であったとしても、アメリカの領空を通過するときは事前にアメリカ当局に通知して当然だろう。それをしないこと自体が主権侵害に当たるのではないか。

   アメリカ海軍や沿岸警備隊は撃墜した気球の回収に当たっている。気球の破片は回収後、FBIの研究所に移送される見通し(同・CNNニュースWeb版)。回収された画像データなどが分析されれば、気球の偵察目的が鮮明になってくる。米中の緊張がさらに高まる可能性が出てきた。

⇒6日(月)夜・金沢の天気    くもり

☆アメリカに渦巻くインフレ プーチンの「はったり」

☆アメリカに渦巻くインフレ プーチンの「はったり」

   アメリカのインフレとロシアの核に世界が翻弄されている。アメリカのCNNニュースWeb版は「Fed goes big again with third-straight three-quarter-point rate hike」の見出しで、FRBが21日まで開いた会合で、0.75%の大幅な利上げを決めたと報じた=写真・上=。3回連続で0.75%という異例の利上げに踏み切り、記録的なインフレを抑え込む姿勢を一段と鮮明にした。

   大幅利上げにより、政策金利の新たな目標は3-3.25%の範囲に決まった。これは世界的な金融危機が発生した2008年以来の高水準。この決定は、インフレと戦うための1980年代以来のFRBの最も厳しい政策だと指摘している。それはまた、住宅や乗用車、クレジットカードなどの借り入れのコストを押し上げることによって、何百万ものアメリカの企業や家計に経済的苦痛を引き起こす可能性が高い、とも述べている。

   今回の決定で円相場は24年ぶりとなる一時1㌦145円台をつけた。3月初めまでは1㌦=115円前後で安定していたが、半年余りで30円も円安が進んだ。日本も翻弄されている。 

   イギリスのBBCニュースWeb版は「Ukraine war: Putin orders partial mobilisation after facing setbacks」の見出しで、ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻についてテレビ演説で、予備役など30万人規模の動員を可能とする大統領令に署名した、と報じている=写真・下=。

   さらに、「西側諸国によるロシアへの核の脅威」と述べ、「反撃すべき兵器を多く持っている」、「わが国の領土保全が脅かされるとき、ロシアと国民を守るために、ロシアが持つすべての手段を用いる。はったりではない」と発言。プーチン大統領があらためて核兵器の使用をほのめかしたと報じている。

   ウクライナの猛反撃でロシアの劣勢が顕著となる中、戦況を打開したい考えなのかもしれないが、むしろプーチン大統領の焦りと窮地が浮き彫りになってきた。

   ちなみに、「はったりではない」のBBC記事原文は「It’s not a bluff」と記されている。

⇒22日(木)夜・金沢の天気     はれ