#みんなのブログ

☆「リアルタイム配信」でテレビ業界はどう変わる

☆「リアルタイム配信」でテレビ業界はどう変わる

   笑福亭鶴瓶が楽屋で「テレビは変わると何年言うてんねん」とつぶやく番宣=写真=が面白い。ようやく、民放テレビの「リアルタイム配信」が動画配信サービス「TⅤer」で始まった。きのう11日からいわゆる「ゴールデンタイム」や「プライムタイム」と呼ばれる、午後7時から11時の高視聴率の時間帯での番組を放送と同時にインターネットでも視聴できるようになった。去年10月2日から日本テレビのリアルタイム配信はスタートしていたが、今回はテレビ朝日、TBS、フジテレビ、テレビ東京の4局に加え、大阪の準キー局の5局も加わって、10局のリアルタイム配信が楽しめるようになった。

   「ようやく」と述べたのも、放送とネットのリアルタイム配信は、NHKが先行して2020年4月1日から「NHK+(プラス)」で始めているので、民放の新サービスはNHKに比べれば2年遅れでもある。

   民放とすれば、タイミングがよかった。新型コロナウイルスの感染拡大による「巣ごもり」や「在宅ワーク」でテレビの広告需要が高まっている。電通の「2021年 日本の広告費」によると、2021年「テレビメディア広告費」の地上波テレビは1兆7184億円で、前年20年に比べて11%も増えている。また、ネット上の「テレビメディア関連動画広告」も249億円とこれも前年比46%と大きく伸長している。リアルタイム配信はPC、スマホ、タブレットのアプリで視聴できるので、ネットの広告需要を今後さらに取り込むチャンスなのかもしれない。

   おそらく番組そのものもネットユーザーを意識したものに変化していくだろう。これまで地上波の番組は、年代を問わず視聴できる最大公約数のような番組づくりだが、ネットユ-ザーを意識するとターゲットに向けて付加価値をつけていくという番組づくりに傾斜していく。そのうち、シニア世代はこうした番組からは視聴者として意識されなくなるかもしれない。

   さらに、ローカル局は「ポツンと一軒家」化するかもしれない。そもそも、ローカル局には放送法で「県域」という原則があり、放送免許は基本的に県単位で1波、あるいは数県で1波が割り与えられている。1波とは、東京キー局の系列ローカル局のこと。しかし、リアルタイム配信によって地方や県境を超えて、PCやスマホ、タブレットで東京キー局のゴールデン番組を視聴する時代になった。同じ番組を放送しているローカル局の視聴率は大幅にダウンするだろう。

   これについて、総務省は救済策を講じている。一つのテレビ局が多数の放送局に出資し、経営支配することを避ける「マスメディア集中排除原則」を緩和する方針で動いている。これによって、東京キー局が系列ローカル局を経営の傘下に収めることになる。これによって、地域ごとにローカル局の経営統合も進むかもしれない。たとえば、北陸3県にそれぞれ同じ系列のテレビ局が存在する必要はない。3つの局を1つに統合して、ゴールデンタイムに独自の番組づくりをするテレビ局を新設してもよい。

   リアルタイム配信でテレビ業界は番組コンテンツ、そして経営の新たな転換点に立ったと言えるのではないか。冒頭の鶴瓶のつぶやき通り、テレビは本気で変わってほしい。

⇒12日(火)夜・金沢の天気     はれ

★「M6.0±0.5」地震が20日頃までに北信越で起きるのか

★「M6.0±0.5」地震が20日頃までに北信越で起きるのか

    週刊誌『週刊ポスト』(4月15日号)が「4月12日までに北陸で巨大地震」の地震予測の記事を書いた。このブログ(3月30日付)でも取り上げてから10日余り。いよいよ「4月12日」が近づいてきた。記事では、3月16日の福島県沖地震を発生7時前に予測、的中したとされる東大名誉教授、村井俊治氏の分析を基に警告を発している。村井氏は測量学が専門で、国土地理院が全国約1300か所に設置した電子基準点のGPSデータを使って地表の動きを捉え、基準点の1週間ごとの上下動の「異常変動」、長期的な上下動の「隆起・沈降」、東西南北の動きの「水平方向の動き」という3つの主な指標を総合的に分析している。

  記事によると、「(3月)23日午前9時23分頃に石川県能登地方で震度4の地震が発生したが、それを凌ぐ地震発生の可能性があります」「この半年、新潟県南部、富山県、石川県、岐阜県北部などで、〚異常変動』が集中しています。『隆起・沈降』では、北陸3県の広い範囲が沈降する一方、石川県の能登半島先端が隆起し、その境目にある電子基準点『輪島』や『穴水』周辺に歪みが溜まっていると考えられる」「北信越は、最新のAIによる危険度判定で東北に次ぐ全国2位で、衛星画像の解析でも地震の前兆と思われる異常が観測されている」

   能登半島では2007年3月25日の能登半島地震(マグニチュード6.9、震度6強)があった。2020年12月ごろから、能登半島の尖端を震源として再び揺れが多発している。震度1以上の揺れは去年は年間70回、ことしに入りすでに42回観測されていて、3月は8日=写真=と23日に、4月は4日と8日にはそれぞれ震度4の揺れだった。

   先日、村井氏らの地震分析チームが発信しているメールマガジン「週刊MEGA地震予測」を購読している知人から、「北陸の地震は4月12日までに」が「4月20日までに」と修正されたようだとメールが届いた。それによると、「(富山県、石川県、福井県、長野県、新潟県)ピンポイント予測を発出していましたが、新たに前兆を観測したため、エリアと期間を修正します。 警戒を怠らないでください」「北信越地方周辺でM6.0±0.5の地震が4月20日頃までに起きる可能性があります」という内容だった。

  「北信越地方周辺でM6.0±0.5の地震が4月20日頃までに」と修正予測されたことで、さらに不安が広がる。これまでの「北陸地方」から「北信越地方」と広範囲になった。最大で震度6強クラスの地震だ。警戒したい。

⇒11日(月)夜・金沢の天気     はれ時々くもり

☆「柳緑 花紅」そぼろきんとん

☆「柳緑 花紅」そぼろきんとん

   きょう午後から自宅庭の草むしりをした。4月の暖かさを超えて、夏日のような暑さだった。雑草は例年、桜のソメイヨシノの満開が過ぎたころから勢いが増す。ドクダミ、チドメグサ、スギナ、ヨモギ、ヤブカラシが顔を出していた。無心に雑草を抜き取り、そして、落ち葉を掃く。 

   草むしりを終え、心地よかった庭の風を連想して、床の間に『柳緑 花紅』の掛け軸を出した=写真・上=。「やなぎはみどり はなはくれない」と読む。ネットで調べると、11世紀の中国の詩人・蘇軾の詩の一部のようだ。柳は緑色をなすように、花は紅色に咲くように、それぞれに自然の理があるという意味のようだ。四文字の掛け軸は詩的であり哲学的でもある。そして、淡い二色が春の美しい景色が描き出す。ありのままの姿が真実だということ。

   夕方から金沢市内の茶席に出向いた。知人たちが趣味で始めている茶道の会の招きだった。そこで、お菓子が出された。名前は『都の春』という、市内の和菓子屋がつくったもの。よく見ると、緑とピンクの2色のそぼろを付けたきんとん=写真・下=。この季節に、予約してつくってもらった上生菓子という。

   思わずエッと口にした。家の床の間に掛けてきた掛け軸『柳緑 花紅』の和菓子と同じイメージだ。知人に尋ねると。にっこりと説明をしてくれた。お菓子の薄紅色は桜の花を表現している。緑色は若葉というより柳の葉を表している。京都の高瀬川などでは両サイドに桜の木と柳の木が並んでいて、この季節は重なり合うように咲く。『都の春』という生菓子は銘も含めて京都の和菓子文化なのだという。

   そして、知人は和歌を詠んだ。「見渡せば 柳桜を こきまぜて 都ぞ春の 錦なりける」。10世紀初頭の平安時代につくられた『古今和歌集』で、素性法師が詠んだ。『都の春』という銘もこの和歌が由来だとか。

   この後、濃茶の一服を楽しんだ。季節の自然は『柳緑 花紅』、菓子は『都の春』、ちょっとした旅気分に包まれた。

⇒10日(日)夜・金沢の天気     はれ

★甲府「特定少年」事件 「実名報道はしません」

★甲府「特定少年」事件 「実名報道はしません」

   この4月から施行された改正少年法では、事件当時18歳と19歳の「特定少年」が正式に起訴された場合、検察は実名を公表し、新聞・テレビなどメディアも実名報道が可能となる。ただ、日本新聞協会は少年保護を重視する法の趣旨を踏まえ、一部の場合を除き実名報道はすべきでないとの基本的な考え方は維持しており、実名報道は「各社の判断で行う」としている(2月16日付・公式ホームページ)。特定少年の実名公表の初めての事例がきのう8日、甲府地検であった。メディア各社の実名報道について対応が分かれた。

   まず事件が概要を。去年10月、甲府市の住宅で50代の夫婦がナイフで殺害され住宅が放火された。定時制の高校に通っていた19歳の少年が逮捕された。夫婦の長女と面識があり逮捕後の調べに対し「好意があったが思いどおりにならず、本人やその家族を殺害するつもりだった」などと供述した。3月、少年は家裁に送られたが、「凶器を計画的に準備し証拠を隠滅するために放火した。資質や成育過程の問題が影響を及ぼした可能性もあるが反省や謝罪の態度は見られず結果は重大で、刑事処分が相当だ」として検察に逆送された。甲府地検は、精神鑑定など行い、刑事責任を問えると判断して起訴し実名を公表した(8日付・NHKニュースWeb版)。

   けさ朝刊各紙をチェックしたが=写真=、実名報道をしていなかったのは北陸中日新聞のみだった。同系の中日新聞、東京新聞も同じだろう。その理由について、「本紙は匿名報道を続けます」の2段見出しで記載している。「中日新聞社は、事件や事故の報道で実名報道を原則としていますが、二十歳未満については健全育成を目的とした少年法の理念を尊重し、死刑が確定した後も匿名で報道してきました。少年法の改正後もこの考えを原則維持します。社会への影響が特に重大な事案については、例外的に実名での報道を検討することとし、事件の重大性や社会的影響などを慎重に判断していきます」

   一方、実名報道をした朝日新聞は「おことわり」として「改正少年法を受け、本社は甲府市で2021年に起きた放火殺人事件について、事件の重大性などを考慮し、起訴された少年を実名で報じます」としている。読売新聞も「おことわり」として、「読売新聞はこの事件について、これまで容疑者を匿名で報道してきましたが、2人の命が失われた事件の重大性や社会的影響などを検討した結果、実名で報じることが適切と判断しました」と記載している。各紙も事件の重大性を考慮して実名報道を判断したとしている。

  さらに、顔写真を掲載したのは産経新聞と北國新聞の2社。「公共の利益にかない、国民の『知る権利』に答えるものと判断した」(産経)、「実名で報じる必要性があると判断しました」と述べている。

   テレビメディアではNHKほか民放も実名での報道を行っている。ただ、顔写真を使うかどうかの判断は分かれている。NHK岐阜放送局のニュースをチェックすると顔写真は使っていないが、日本テレビ系列のNNNニュースでは顔写真を入れている報道している。判決が出たときは新聞・テレビの各社は顔写真を使うのだろうか。

   世論は実名報道に賛成が多い。共同通信Web版(3月20日付)によると、18歳以上を対象としたインターネット意識調査で、実名報道について「賛成」50%、「どちらかといえば賛成」30%を合わせ賛成は89%に上った。賛成理由は「民法上成人であり、大人と同じ扱いをするべきだ」が49%と最多だった。それにしても、中日新聞にこだわりの強さを感じる。

⇒9日(土)午前・金沢の天気      はれ

☆「虎穴」に入り、「墓穴」を掘る

☆「虎穴」に入り、「墓穴」を掘る

   「虎穴に入らずんば虎子を得ず」という言葉は今でもマスメディアの記者がよく使っている。権力の内部を知るには、権力の内部の人間と意思疎通できる関係性をつくらならなければならない。そこには取材する側とされる側のプロフェッショナルな仕事の論理が成り立っている。その気構えがなければ記者はつとまらない、という意味だと解釈している。

   その事例として、2020年5月、新型コロナウイルス禍の緊急事態宣言のさなかに東京高検の検事長と産経新聞記者2人と朝日新聞社員(元司法担当記者)が賭けマージャン問題がある。検事長の定年延長問題が国会などで問題となっていた時期で、渦中の人物と賭けマージャンをする行為は報道の独立性や公正性に疑念を抱かせるなどとして記者と社員は停職処分を受けた。では、このケースはどう考えるべきか。

   きのう7日付の朝日新聞は「本社編集委員の処分決定 公表前の誌面要求『報道倫理に反する』」との見出しで、編集委員の記者47歳を停職1ヵ月とする懲戒処分を決め、編集委員の職を解いたと報じている。記事によると、3月9日に「週刊ダイヤモンド」の副編集長が安倍元総理に外交や安全保障についてインタビュー取材した。翌日9日、記者はすでに顔見知りだったダイヤモンド社の副編集長の携帯電話に連絡し、「安倍(元)総理がインタビューの中身を心配されている。私が全ての顧問を引き受けている」「とりあえず、ゲラ(誌面)を見せてください」「ゴーサインは私が決める」などと語った。副編集長は断り、記事は3月26日号(同月22日発売)に掲載された。

   ダイヤモンド社編集部は朝日新聞社に対して、「編集権の侵害に相当する。威圧的な言動で社員に強い精神的ストレスをもたらした」と抗議し、朝日側は社内調査を進めていた。質問書を送った安倍事務所からは「ダイヤモンド社の取材を受けた際、質問内容に事実誤認があり、誤った事実に基づく誤報となることを懸念した」「(記者に)事実の誤りがないかどうかについて確認を依頼した」などと回答があった。

   この流れを読めば、記者は安倍事務所側の意向をくんで、かねてから知り合いだったダイヤモンド社の副編集長に、事前にゲラを見せるよう促した。安倍氏の代理人のような感覚だったのか。それにしてもダイヤモンド社に誤解や反感を頂かせたのは、「顧問を引き受けている」「ゴーサインは私が決める」という上から目線の言葉だろう。記者は「私が安倍氏の顧問をしている事実はない。ゲラは安倍氏の事務所に送るように言った」と社内調査で説明した。

   記者はネット上で「朝日新聞社による不公正な処分についての見解」と題して、「私は、最大の政治トピックの一つになっているニュークリアシェアリング(核共有)について、重大な誤報記事が掲載されそうな事態を偶然知り、それを未然に防ぐべく尽力し、幸いにして、そのような誤報は回避されました」「私は、安倍氏から過去にいかなる金銭等も受領していません。安倍氏からは完全に独立した第三者として専門的知見を頼りにされ助言する関係であった」と経緯を説明している。また、今回の処分の不当性については法的にも明らかにしていくと述べている。

   他紙も含めて記事を読んで思うことは一つ。インタビューとは関係のない第三者、それも別の報道機関の記者が安倍元総理の「代理人」のごとく事前チェックを要求する理由はどこにあったのだろうか。誤報が心配ならば、事務所の広報担当が電話して事前にゲラをもらい、それをチェックするのが筋ではないだろうか。「虎穴」に入り、「墓穴」を掘った。

⇒8日(金)午後・金沢の天気      はれ   

★のどかな花見日和に けん騒の春選挙

★のどかな花見日和に けん騒の春選挙

   金沢では桜、ソメイヨシノが満開になっている。自宅近くの桜の名所でもある神社の境内に行くと、青空にピンクの花が咲き誇り、絶好のコントラストを描いていた=写真・上=。「花見日和」とはこのことを言うのだろう。きょうは金沢市内の小学校の入学式もあり、親子連れで桜の木をバックに記念写真を撮るなど、楽しんでいる様子が見られた。

   うららかな春の本番の中で、石川県ではまた選挙戦が始まった。参院石川県選挙区の補欠選挙がきょう7日告示され、立候補を表明していた4人が届け出を済ませた。選挙は前職である山田修路氏が知事選(3月13日)の出馬で辞職したことに伴うもの。投開票日は今月24日。立候補したのは、比例代表からのくら替えを狙う自民党公認の宮本周司氏51歳、行政書士で立憲民主党公認の小山田経子氏43歳、共産党公認で県委員会書記長の西村祐士氏67歳、実業家秘書で「NHK受信料を支払わない国民を守る党」公認の齊藤健一郎氏41歳の4人。

   午後1時ごろ、近所に設置されているポスター掲示板の写真を撮影に行く。斎藤氏のポスターがまだ貼ってなかった。それもそうだろう、立候補を表明したのはきのう6日のこと。県内に活動拠点はなく、いわゆる「落下傘候補」だ。肩書は実業家秘書となっているが、実業家とはあのホリエモンこと、堀江貴文氏とメディア各社は紹介している。ただ、本人は選挙運動は告示日だけで、選挙期間中はほとんどを都内で過ごすようだ。供託金300万円は誰が払ったのかとふと考えた。午後6時ごろ、はがきを出し郵便局行く途中、ポスター掲示板を見るとようやく貼ってあった=写真・下=。

   参院石川県選挙区の補欠選挙とは言え、岸田政権の評価も問われ、立憲民主党が新しい代表に変わってから初めての国政選挙でもある。地元メディアなどは、与野党の対立構図が描かれていて、この夏に予定されている参院選の前哨戦だと位置づけている。17日間の戦いぶりが見ものだ。そこで一句。「国会の 桜ふぶきは 誰に舞う」

   春満開の風情で正午ごろは気温も19度と、4月下旬並みの暖かさだった。ただ、夕方からは日本海から低気圧が接近して、雨が降りそうとの天気予報だ。雨で桜が散らねばよいが。

⇒7日(木)夜・金沢の天気     あめ

☆国連安保理の機能不全を問いただしたゼレンスキー演説

☆国連安保理の機能不全を問いただしたゼレンスキー演説

   ついに、ウクライナのゼレンスキー大統領が国連安保理でオンライン演説を行った。メディア各社の報道によると、安保理に対して強烈なメッセージを発した。「”Are you ready to close the UN? And the time of international law is gone? If your answer is no, then you need to act immediately,” he said, adding that “accountability must be inevitable”.」「”We are dealing with a state that turns its veto at the UN Security Council into the right to [cause] death,” he said.」(6日付・BBCニュースWeb版)=写真=。

   国連の果たす役割は終わってしまったのか、国際法の時代は終わったのか、もし答えがノーなら、直ちに行動をとってほしいとゼレンスキー氏は述べた。安保理の拒否権が『死の権利』とならないよう、国連のシステムは直ちに改革されなければならないと語った。

   国際法や国連憲章の違反を無視してウクライナ侵攻を続けるロシアだけでなく、香港やウイグルにおける人権弾圧問題で国際批判を浴びている中国も常任理事国だ。常任理事国の座にあれば問題を起こしても国連では問われない。拒否権を発動すればよいだけだ。これが「世界平和の番人」安保理の現実の姿だ。

   機能不全に陥っている国連安保理を痛烈に批判したゼレンスキー氏に対し、拍手を送った日本人も多かったのではないだろうか。ウクライナ侵攻以前の調査だが、アメリカの世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」は、創設75年の国連の実績について世論調査(2020年6-8月)を行った。調査対象国は日本、韓国、オーストラリア、アメリカ、カナダ、デンマーク、ドイツ、オランダ、イタリア、スウェ―デン、ベルギー、フランス、スペイン、イギリスの14ヵ国で、その中で日本は国連に対する好感度が最も低かった。「好感を持つ」は29%で、「好感を持たない」が55%と半数を占めた。CNNは「Americans think the UN is doing a good job. Japanese people disagree.」と伝えた(2020年9月22日付・Web版)。

   日本人には解せないもう一つ国連の姿がある。国連憲章(第53、107条)の「敵国条項」だ。日本はいまだに第二次世界大戦の「敵国」だ。ある国を攻撃する場合は国連安保理の承認が必要だが、「敵国」に再侵略の企てがあるとみなせば先制攻撃が可能で、安保理の承認は不要という規定だ。ロシアや中国はいつでも日本に対する先制攻撃が可能なのだ。 

   ゼレンスキー氏の演説に戻る。ロシアに対して猛烈に非難した。前日にみずから訪れた首都キーウの北西の町ブチャについて、「ロシアが犯した第2次世界大戦後、最も恐ろしい戦争犯罪だ。ロシア軍と彼らに命令を下した者に直ちに法の裁きを下さなければならない」。そして市民の遺体だとするおよそ1分間の映像が、スクリーンに映し出された(6日付・NHKニュースWeb版)。

  このあと各国からもロシアの責任を厳しく問う声が相次ぎ、このうちアメリカの国連大使は「ロシアがいかに人権を尊重していないかが日々明らかになっている」と述べ、ロシアの国連人権理事会の理事国としての資格を停止すべきだと呼びかけた(同)。さらなる制裁の発動が重要だ。

⇒6日(水)午後・中能登町の天気   くもり

★西田幾多郎の「円相」オブジェ

★西田幾多郎の「円相」オブジェ

        先日、石川県かほく市にある「西田幾多郎記念哲学館」を見学した。西田幾多郎は哲学書『善の研究』で知られる。実在とは何か、善とは何か、宗教とは何か、人間の存在をテーマに考え抜いた哲人である。記念哲学館は生れ故郷の地に2002年6月に開館した。これまでツアーの見学コースの一つとして2度訪れた程度だった。

   1階の展示室「哲学へのいざない」に入ると、いきなりガツンと来る言葉があった。「いまだ研究もせない前にまずその利益を知ろうとする好奇心ほど有害なるものはない」(「哲学のアポロジー」より)。「カントの言った如く」と前置きをし、これを述べた。「近代哲学の祖」とも言われるイマヌエル・カントの言葉の引用なのだが、哲学にとどまらず、研究者たる者への心構えのように響く。

   展示室で一つだけ、アレッと感じるコーナーがあった。西田幾多郎はよく「円相」を書いていたという説明があった。中国・唐代の禅僧である盤山宝積の漢詩である「心月孤円光呑万象」(心月  孤円にして、光 万象を呑む)をイメージして描いた円相図がオブジェになっている=写真・上=。

   自身は茶道を習っているが、床の間に円相の掛け軸をかけ、眺めながら茶を点てる。満月のようにも見える円相は絵なのか、それとも文字なのか分かりにくいが、禅宗の教えの一つとされる。円は欠けることのない無限を表現する、つまり宇宙を表現している、と解釈されている。千利休の口伝書とされる『南方録』には「水を運び、薪をとり、湯をわかし、茶を点てて仏に供え、人に施し、吾ものみ、花をたて香をたく、皆々仏祖の行いのあとを学ぶなり」とある。雑念を払い、ひたすら無限の境地で、自らの心を円相とせよ、それが茶の道の心得であると教えている。

   「心月」は月のように澄みきって明らかな心、悟りを開いた心を澄んだ月にたとえた禅語とされる。ふと、前述の「いまだ研究もせない前にまずその利益を知ろうとする好奇心ほど有害なるものはない」を思い出した。雑念を払い、ひたすら無限の境地で研究に励むこと、と。

   ちなみに自身が床の間の掲げる円相の掛け軸は「人間万事 一場 夢(じんかんばんじ いちじょうのゆめ)」=写真・下=。世の中に起きる良し悪し全ては、はかない夢であり、動じることはない。そんな意味だろうか。作者は曹洞宗管長を務めた板橋興宗・大乗寺住職だった。西田幾多郎が円相をイメージしていたこと、そして自身も円相の掛け軸を好んでいることに、少しだけ接点が見いだせた思いだった。

   では、哲学者として円相を模索したきっかけは何だったのだろうか。ひょっとして、茶道をたしなんだのだろうか。そんなことを想いめぐらしながら、90分ほど館内を見学した。

⇒5日(火)午後・金沢の天気    くもり時々はれ  

☆能登の風力発電とトキの放鳥を考える

☆能登の風力発電とトキの放鳥を考える

     前回のブログの続き。では、再生可能エネルギーはどこまで可能なのか、問題点を含めて考える。たとえば風力発電だ。石川県内には既存の風力発電は74基で、能登地方に73基が集中している。能登半島は風の通りよく、面積の7割が低い山と丘陵地であることから、大規模な風力発電の立地に適しているとされる。

   能登半島の尖端、珠洲市には30基の風車がある。2008年から稼働し、発電規模が45MW(㍋㍗)にもなる有数の風力発電の地だ。発電所を管理する株式会社「イオスエンジニアリング&サービス」の許可を得て、見学させてもらったことがある。ブレードの長さは34㍍で、1500KWの発電ができる。風速3㍍でブレイドが回りはじめ、風速13㍍/秒で最高出力1500KWが出る。風速が25㍍/秒を超えると自動停止する仕組みになっている。風車1基の発電量は年間300万KW。これは一般家庭の8百から1千世帯で使用する電力使用量に相当する。(※写真・上は珠洲市提供)

   カーボンニュートラルの政府方針を受けて、東北や北海道で風力発電所の建設ラッシュが続く。能登半島でもさらに12事業、170基の建設が計画されているという。ここで気がかりになってきたことがある。バードストライク問題だ。

   国の特別天然記念物のトキについて、環境省は野生復帰の取り組みを進めている新潟県佐渡市以外でも定着させるため、2026年度以降に本州でも放鳥を行うことを決めた(2021年6月13日付・NHKニュースWeb版)。 これにさっそく名乗りを上げたのが、石川県だ。ことし2月1日の県議会本会議で当時の谷本知事は「能登地域は放鳥にふさわしい」と述べ、関係市町や団体などと受け入れの協議を始める意向を示した(2月3日付・毎日新聞Web版)。

   能登半島は本州最後の1羽のトキが生息した場所。オスのトキで、能登では「能里(のり)」の愛称があった。1970年1月に捕獲され、佐渡のトキ保護センターに送られた。佐渡にはメスの「キン」がいて、人工繁殖が期待されたが、能里は翌1971年に死んでしまう。環境省は1999年から同じ遺伝子配列である中国産のトキで人工繁殖を始め、2008年9月から放鳥を行っている。石川県は全国に先駆けて2010年に分散飼育を受け入れ、増殖事業に協力してきた。県が能登での放鳥に名乗りを上げた背景にはこうした思い入れがある。

   佐渡では野生のトキが480羽余り生息しているが、1500KWクラスの風力発電はなく、これまでバードストライクの事例は報告されていない。しかし、能登半島で今後、現在の73基に加えてさらに170基が稼働し、トキが放鳥されるとバードストライクの懸念は高まるのではないか。再生可能エネルギーの切り札としての風力発電、そして生態系の再生のシンボルとしてのトキの共生は可能なのか。日本野鳥の会は事業会社にバードストライクについて調査し公表するよう求めている。(※写真・下のトキは1957年に岩田秀男氏撮影、場所は輪島市三井町洲衛)

⇒3日(日)夜・金沢の天気      くもり

★石油に依存しない未来社会へ 退路を絶つという発想

★石油に依存しない未来社会へ 退路を絶つという発想

   ロシアによるウクライナへの侵攻、それにともなうロシアへの経済制裁は国内でもじわりと影響が出ている。日常生活でその影響が分かりやすいのは原油高によるガソリン価格の値上がりかもしれない。金沢市内のガソリンスタンドで目につくのは「1㍑173円」の看板。能登半島ではさらに輸送コストがかさんでいて「1㍑179円」となっているようだ。

   政府が石油の元売り会社に「価格抑制補助金」を支給しているにも関わらずこの価格だ。ともとも、ガソリン価格は新型コロナウイルスのパンデミックで上昇傾向だった。それに、ロシアによるウクライナ侵攻が追い打ちをかけたかっこうだ。ガソリン価格の上昇の背景にはもっと根本的な問題がありそうだ。それは円安。かつて国際紛争などが起きると、「有事の円買い」が起きて、円高状態になった。ところが、今回のロシアのウクライナ侵攻では、「円安ドル高」が一気に進んで一時125円という値動きになった(3月28日)。

   むしろ「有事のドル買い」が一方的に進んでいる。「有事の円買い」はいつの間にか忘れ去られたのか。むしろ貿易赤字が問題なのだろう。財務省が発表した2022年1月の貿易統計速報では、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆1910億円の赤字だった。2014年1月の2兆7951億円に次いで過去2番目の大きさだった。2月の速報では、赤字は6682億円と縮小したものの、原油などエネルギー価格の高騰と円安で貿易赤字は止まらず7ヵ月連続の赤字となった。

   話は冒頭のガソリン価格に戻る。アメリカはガソリン高騰に思い切った手を打った。BBCニュースWeb版日本語(1日付)によると、バイデン大統領は今後6ヵ月間にわたって備蓄石油を最大1億8000万バレルを放出する。1974年以降で最大規模の放出となる。ロシアのウクライナ侵攻で、世界2位の原油輸出国ロシアからの輸出が西側の制裁対象となり、原油の供給不安が起きている。アメリカ政府は今回の放出で状況を改善したい考え。

   日本政府もIEAと協調して備蓄石油750万バレルを放出する方向で動いているが、この際、大幅に放出してはどうか。石油の元売り会社に「価格抑制補助金」を支給するより買わせる。同時並行で岸田総理が去年11月のCOP26で世界に表明した「2030年までに温室効果ガス46%カット」「2050年にカーボンニュートラル」の宣言を進めるチャンスにする。石油に依存しない未来社会をどう構築するか、退路を絶つことで、まさに真剣勝負で考える時期が到来したようだ。

⇒2日(土)夜・金沢の天気     はれ