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☆田の神にもてなしを演じる「奥能登のあえのこと」

☆田の神にもてなしを演じる「奥能登のあえのこと」

   能登半島の北部、奥能登で伝承される農耕儀礼「田の神さま」がきょう各農家で営まれた。この行事は2009年のユネスコ無形文化遺産で、「奥能登のあえのこと」として登録されている。「あえ」は「饗」、「こと」は「祭事」の意で饗応する祭事を指す。

   一つの行事なのに、2つの呼び方がある。地元の人はこの行事のことを、「タンカミサン(田の神さま)」と言う。かつて、この地の伝統行事を取材に訪れた民俗学者の柳田国男が一部地域で称されていた「あえのこと」を論文などで紹介し、それが1977年に国の重要無形民俗文化財に、そしてユネスコ無形文化遺産の登録名称になった。もともとこの農耕儀礼には正式な名称というものがなかった。

   能登町の柳田植物公園内にある茅葺の古民家「合鹿庵(ごうろくあん)」では毎年公開で儀礼を行っていて、今回40人余りが見学に訪れていた。新型コロナウイルスの感染拡大もあり、人数に制限を設けたようだ。

   田の神はそれぞれの農家の田んぼに宿る神であり、農家によって田の神さまにまつわる言い伝えが異なる。夫婦二神、あるいは独神の場合もある。共通していることは、目が不自由なこと。働き過ぎで眼精疲労がたたって失明した、あるいは稲穂で目を突いてしまったなど諸説がある。

   目が不自由であるがゆえに、農家の人たちはその障がいに配慮して田の神に接する。座敷に案内する際に段差がある場合は介添えをし、供えた料理を一つ一つ口頭で丁寧に説明する。演じる家の主(あるじ)たちは、どうすれば田の神に満足いただけるもてなしができるかそれぞれに工夫を凝らしながら、独り芝居を演じる。

   「能登はやさしや土までも」と江戸時代の文献にも出てくる言葉がある。この農耕儀礼は健常者のちょっとした気遣いと行動で、障害者と共生する場を創ることができることを教えてくれる。「もてなし(ホスピタリティー)」や「分け隔てのない便益(ユニバーサルサービス)」の原点がここにあるのではないかと考える。

(※写真は能登町「合鹿庵」で執り行われた農耕儀礼「あえのこと」行事。田の神にもてなしを演じる中正道さん)

⇒5日(月)夜・金沢の天気    くもり

★團十郎の襲名酒の誉 農口杜氏の人生に酔う

★團十郎の襲名酒の誉 農口杜氏の人生に酔う

   今月で御年90歳、顔がつやつやしている。「酒蔵の階段の昇り降りが健康の素」と笑う。石川県小松市の造り酒屋で杜氏として蔵人たちを指導する農口尚彦さんは国が卓越した技能者と選定している「現代の名工」であり、日本酒ファンからは「酒造りの神様」と呼ばれる。「のど越しのキレと含み香、果実味がある軽やかな酒。そんな酒は和食はもとより洋食に合う。食中酒やね」。理路整然とした言葉運びに圧倒される。農口杜氏の山廃仕込み無濾過生原酒にはすでに銀座、パリ、ニューヨークなど世界中にファンがいる。

   きのう醸造所「農口尚彦研究所」を訪れ、杜氏が特別に造った酒を楽しませてもらった。そのブランド名は「十三代目市川團十郎白猿襲名披露 特別Ver」。歌舞伎俳優の市川海老蔵改め十三代市川團十郎白猿の襲名を記念した公式の日本酒だ。特別バージョンというのも、4年前から造りためた未発売の酒をブレンドしたもの。これまでの日本酒のイメージを超えた華やかな味わいだ。農口杜氏から「ブルゴーニュワインのロマネ・コンティをイメージして造った」と説明があった。低温で熟成させるため新鮮な香りがする。500本限定の特別Ver。御年90歳の杜氏のさらなる挑戦でもある。

   それにしても、十三代目市川團十郎白猿と結びつく、どのような縁があったのか。小松市の安宅海岸は「安宅の関」で知られる。源義経が都落ちして平泉に向かうとき、武蔵坊弁慶が杖で義経を叩いて検問をくぐり抜けたというこの地の伝説は、十三代目市川團十郎白猿のお家芸の歌舞伎十八番『勧進帳』として演じられる。来年3月には、襲名披露の巡業が小松市の「こまつ芸術劇うらら」である。うららは襲名を機に「小松市團十郎芸術劇場うらら」に改称されることも決まっている。こうした縁から襲名を記念した公式の日本酒を農口杜氏が造ることになった。

   先日、知り合いから写真を送ってもらった。東京の歌舞伎座の前では農口尚彦研究所の酒樽が積まれている=写真=。農口の「の」の字がデザインされた酒樽。「歴史がある市川家の襲名記念の酒を造れるのは光栄です。さらに、世界に通じる酒を造りたいと思いこの歳になって頑張っております」。まさに、酒造りのエンドレスな人生。ちなみに、「研究所」の名称は、この農口杜氏の技と発想を若い人たちに学んでもらいたいとの思いから付けられたそうだ。

⇒4日(日)午前・金沢の天気   あめ

☆あられの朝 ドーハの歓喜再び

☆あられの朝 ドーハの歓喜再び

   きょうは騒がしい朝を迎えた。何しろ、一時バシャバシャとまるで土砂降りのような音がした。あられだった。登校途中の児童たちは傘を差したまま立ち止まっていた。怖かったのだろう。金沢で初あられ。

   あられが降り始めると、物理学者で人工雪を世界で初めてつくったことで知られる中谷宇吉郎の言葉を思い出す。「雪は天から送られた手紙である」。雪の結晶は空の温度や湿度によりさまざまなカタチに変化する。逆に、地上で雪の結晶を観察すると空の様子が分析できる。まるで、雪は天空から地上に送られてくるメッセージだと。いよいよ雪の季節がやってきた。

   もう一つの騒がしさ。テレビメディアは再び「ドーハの歓喜」だ。サッカーのワールドカップカタール大会。グループEの日本は、第3戦でスペインと対戦し2-1で勝って1次リーグ2勝1敗とし、決勝トーナメントへの進出を決めた。正直な話が、FIFAランキング24位の日本が、7位のスペインに勝てるとは思えなかった。午前4時という試合時間も厳しく、中継番組の視聴はあきらめた。きょう午前7時30分ごろに冒頭の土砂降りのようなあられの降りに目覚めて、寝床でスマホを見て勝利を知った。

   日本はドイツ、スペインを押しのけ、グループ1位で16強に躍り出た。朝からのテレビ番組では、「アジアが、日本サッカーが世界の舞台で戦っていけるということ。大きな自信につながる。うれしい」と、歴史的な一歩を刻んだ森保監督の声が繰り返し流されていた。

   日本は決勝トーナメントの1回戦でグループFの2位のクロアチアと対戦する。試合開始は日本時間で6日午前0時の予定。この時間だったら、なんとか視聴できそうだ。

⇒2日(金)午後・金沢の天気   くもり時々あめ

★「天然能登寒ぶり」プロジェクト立ち上がる

★「天然能登寒ぶり」プロジェクト立ち上がる

   今回は能登寒ブリの話題。能登で水揚げされる天然の寒ブリをブランド化する試みがきょう1日から始まった。能登半島の中ほどにある七尾湾で今朝、水揚げされたうちの1本が第1号の「煌(きらめき)」に選ばれ、金沢港市場での初競りで400万円で競り落とされた。

   「煌」ブランドは、能登などで水揚げされる寒ブリのうち、重さが14㌔以上で傷がなく、鮮度管理が徹底されていることなどが条件となる最高級品で、石川県漁業協同組合が認定する。きょう能登沖の定置網などで水揚げされた522本のうち、審査で1本が認定された。「煌」第1号は重さ15.5㌔で体長94㌢の大物だ。例年、寒ブリは比較的高値がついても15万円から20万円なので、ブランド化によって今回は20倍ほど値が上がったことになる。

   競り落としたのは金沢や能登地方でスーパーを展開する「どんたく」。同社公式サイトによると、金沢の西南部店でお披露目があるというので行ってきた。15㌔の大物だけあって、どっしりした体つき=写真=。店員に「いつさばくのか」と尋ねると、あす2日にさばき、3日に西南部店と七尾市のアスティ店で刺し身や寿司として限定販売するとの返答だった。

   県漁協ではあす2日から、珠洲、能登、七尾、金沢の4ヵ所の市場で「煌」の認定作業を行い、画像や重さなどをインターネットで共有し、電子入札する「共通入札制度」を始める。また、11月6日に解禁されたズワイガニ漁でも、石川県内の雄の加能ガニについてブランド「輝(かがやき)」が初競りで100円で落札されている。雌の香箱ガニも「輝姫」として30万円の最高値が付いた。重量や鮮度、資源管理への積極的な取り組みなどの厳しい認定基準でブランド化が進む。

   海産物だけでなく、農作物のブランド化も各地で進んでいる。ブランド化は、競争力の強化を狙って、他の商品と差別化することを意図した名称やデザインなどを指す。ただ、海産物や農作物は自然条件に左右されるだけに、品質が規格化されにくい。寒ブリの「煌」はきょうは1本しか出なかった。それでも、いったん「天然能登寒ぶり」のプロジェクトを立ち上げた限りは、あすの2本、あさっての3本を求めて地道にブランド化作戦を続けるしかない。

⇒1日(木)夜・金沢の天気    くもり

☆「ノドグロ」と「かに面」の話 ~下

☆「ノドグロ」と「かに面」の話 ~下

   この時季、庶民の味から遠ざかっているのはノドグロだけではない。「かに面」も、だ。かに面は雌の香箱ガニの身と内子、外子などを一度甲羅から外して詰め直したものを蒸し上げておでんのだし汁で味付けするという、かなり手の込んだものだ=写真=。もともと金沢の季節限定の味でもある。

   それが、このところ価格が跳ね上がっている。なにしろ、金沢のおでん屋に入ると、品書きにはこれだけが値段記されておらず、「時価」とある。香箱ガニの大きさや、日々の仕入れ値で値段が異なるのだろう。今季はまだおでん屋で食べてはいなが、ことし1月におでん屋で食したかに面は2800円だった。それまで何度か同じ店に入ったことがあるが、数年前に比べ1000円ほどアップしていた。

   資源保護政策で香箱ガニの漁期は11月6日から12月29日に短縮された。そこで、値段は徐々に上がってはいたものの、それが急騰したのは2015年3月の北陸新幹線の金沢開業だった。金沢おでんが観光客の評判を呼び、季節メニューのかに面は人気の的となり、おでんの店には行列ができるようになった。

   ノドグロにしてもかに面にしても値段が急騰した背景の一つには北陸新幹線の金沢開業がある。極端に言えば、「オーバーツーリズム」なのかもしれない。この現象で戸惑っているのは金沢の人たちだけではない。能登や加賀もだ。金沢おでんが観光客の評判を呼び、季節メニューのかに面は人気の的となった。すると水揚げされた香箱ガニは高値で売れる金沢に集中するようになる。それまで能登や加賀で水揚げされたものは地元で消費されていたが、かに面ブームで金沢に直送されるようになった。

   食べる話ばかりしてきたが、問題は資源管理だ。富山県以西から島根県の海域にかけて、2007年には5000㌧だった漁獲量が2020年には2700㌧に減っている(水産研究・教育機構「令和2年度ズワイガニ日本海系群 A 海域の資源評価」)。今季は幸いなことに、2013年度から始まった卵を産む雌ガニの漁期を短縮が奏功して、漁獲量が増えているようだ。しかし、持続可能に資源量を回復させるには、さらに雌の漁獲をさらに制限することも想定される。はやい話が「かに面ストップ」ができるか、どうか。

⇒30日(水)夜・金沢の天気     あめ

★「ノドグロ」と「かに面」の話 ~上

★「ノドグロ」と「かに面」の話 ~上

        久しぶりにノドグロの塩焼きが食べたくなり、近所のス-パーに行く。鮮魚売り場ではブリやアジ、サンマなどの塩焼きパックは並んでいるが、ノドグロが見当たらない。調理場にいた店員に「ノドグロはないですか」と尋ねると、「このところ入荷そものがないんですよ」と返事が返ってきた。「入荷そのものがない」とは、どういうことなのか。

   身はやわらかく、脂がのった魚で、刺身や煮つけ、塩焼き、干物などどれも絶品だ。ノドグロが有名になったのは、2014年9月のテニスの全米オープンで準優勝した錦織圭選手が帰国後の記者会見で、何が食べたいかとの問いに、「ノドグロが食べたい」と答えたことがきっかけだった、と記憶している。それまで金沢に住んでいてノドグロという名前を知らなかった。アカムツのことと地元メディアなどで紹介されて初めて、錦織選手の出身地・島根県ではノドグロと呼んでいるのかと分かった。それ以降、金沢の居酒屋ではお勧めの料理の貼り紙にに「ノドグロあります」が目につくようになった。

   さらにノドグロがブームになったのが、翌2015年3月の北陸新幹線の金沢開業だった。観光客が急激に増え、金沢での食べ歩きや土産の需要として、ノドグロ人気が一気に高まった。まるで、「ノドグロ新幹線か」と思うほどに。この背景には、関東から観光客にとっては、北陸と山陰は同じロケーションで、金沢に行けばノドグロが食えると思われたに違いない。当時、知人らと「あのアカムツがノドグロに化けて、えらい人気やな」と笑っていた。ところが、値段も高騰して、いつの間にか「超高級魚」の様相になってきた。

   ブリのように成長するにつれて名が変わる魚のことを「出世魚」と言うが、人気が高まって値段が上がる魚も、現代風「出世魚」なのかもしれない。いつの間にか金沢ではアカムツではなくノドグロと呼ぶのが普通になっている。

   冒頭の話に戻る。ノドグロは能登半島付近では8月から10月にかけてが漁期なので、いまは水揚げ量も少ない。そして、政府の全国旅行支援もあって旅行への機運が回復したせいか、金沢も観光客でずいぶんとにぎわってる。おそらく、スーパーにノドグロは回ってこないのだろう。スーパーの棚をふと見ると、「のどぐろ」の文字が飛び込んできた。よく見ると、「のどぐろの煮付風味ふりかけ」とあった=写真=。まぎらわしい。それにしても、「ノドグロが食べたい」。

⇒29日(火)夜・金沢の天気     くもり

☆ドーハの戦い一喜一憂、勝とうが負けようがごみ拾い

☆ドーハの戦い一喜一憂、勝とうが負けようがごみ拾い

   前日の紙面までは勝利の喜びに沸いていたのに、きょう付の紙面は一転して、「痛恨の黒星」としょげた見出しに=写真・上=。サッカーのワールドカップ・カタール大会、一次リーグE組の第2戦(27日)。4度の優勝経験を誇る強豪のドイツに逆転勝ちして勢いに乗る日本は、スペインに0-7で大敗していたコスタリカと対戦した。自身も日本は勢いに乗ってイケイケに違いないと思っていた。

   テレビ中継を視聴していたが、日本はドイツ戦からスタメンを5人入れ替え、堂安選手や相馬選手らを起用して臨んで、前半は無得点で折り返し。後半36分、日本は先制ゴールを奪われた。以下、サッカーに詳しい知人の分析。

   「前半は明らかに相手チームが守りを固めながら、ゆっくりとゲームを支配するというペースでした。それに日本チームの人の良さからか、合わせてしまったのです。前線の動きは乏しく、ボールを簡単に失うシーンを繰り返す日本チームによって、コスタリカはスペインとの0対7の悪夢から自信を取り戻していったという前半でした。それを日本チームは0対0で終えたから狙い通りと判断していました」「ここですね。前半のゲームづくりの甘さが後々まで苦しむことになりました。監督からの指示がないと、ゲームの流れを選手自身、チームとしてプレーの質を変えられないという、指示待ちの悪癖が今回もありました」(28日付・「月刊ニューメディア」編集部ゼネラルエディターの吉井勇氏)

   海外メディアの分析はどうか。BBCWeb版(27日付)はその敗因を、「Japan boss Hajime Moriyasu opted for rotation over continuity, making five changes, and that resulted in a subdued performance and a scoreline that blew the group wide open.」と記している。森保監督が継続性よりもローテーションを選択したことから5人の変更を行い、その結果、抑えられたパフォーマンスとなった、と。

   一喜一憂するドーハの戦い。ちなみにドイツとスペイン戦は1-1の引き分けだったので、スペインが勝ち点4、日本が3、コスタリカが3、ドイツが1となり、最終戦にもつれ込む。スペインは日本戦に一層集中してくるだろう。そして、ドイツはスペイン戦で得たプレーの質を高めてコスタリカ戦に臨む。日本が勝てばE組のトップ通過となるが、引き分けになれば、ドイツがコスタリカに勝った場合、得失点差の争いになる。日本の差は0、ドイツはマイナス1なので僅差だ。コスタリカもドイツ戦に勝てば勝ち点6となり、通過の可能性もある。さまさに混戦、サッカーの醍醐味ではある。

   日本時間で12月2日の早朝4時から、日本対スペイン戦、ドイツ対コスタリカ戦が同時刻にキックオフする。

   そして、サポーターのごみ清掃はどうだったのか。「FOX Sports」公式ツイッターは、「Win or lose、Japan fans are all class 」(勝とうが負けようが、日本のファンは一流)と伝え、ごみ袋を手にスタンドに落ちているごみを拾い集めている画像で掲載している=写真・下=。

⇒28日(月)夜・金沢の天気   はれ

★どぶろくを飲み、カニを味わう 「時代食感」の楽しみ

★どぶろくを飲み、カニを味わう 「時代食感」の楽しみ

   庶民にとってカニの季節が訪れた。きのう午後、近くのスーパーに行くと、地元産のズワイガニがずらりと並んでいた。雄のズワイガニ(加能ガニ)はゆでたものをカットしたもので大パックで5800円、中パックで3800円の値段だった。今月6日に漁が解禁となり、上旬はご祝儀相場もあり、大パックは9000円ほどだったが、下旬に入って5000円台に。雌の香箱(こうばこ)ガニは大きめのもので1500円ほどだったが、いまは800から900円ほどで値が落ち着いている。今季で香箱ガニは2、3度食したが、今回は思い切って加能ガニに手を伸ばした。

   例年、カニは地酒の辛口吟醸酒で味わう。今回はちょっと趣向を変えて、能登産の「どぶろく」で味わうことにした。能登半島の中ほどに位置する中能登町には、連綿とどぶろくを造り続けている神社が3社ある。五穀豊穣を祈願するに供えるお神酒で、お下がりとして氏子に振る舞われる。同町ではこの伝統を活かして2014年に「どぶろく特区」の認定を受け、いまでは農家レストランなど営む農業者が税務署の製造免許を得て醸造している。

   蒸した酒米に麹(こうじ)、水を混ぜ、熟成するのを待つ。ろ過はしないため白く濁り、「濁り酒」とも呼ばれる。もともと、どぶろくは各家々で造る庶民の味だった。明治政府は国家財源の柱の一つとして酒造税を定め、日清や日露といった戦争のたびに増税を繰り返し、並行してどぶろくの自家醸造を禁止した。

   そして、ズワイガニもかつては庶民も味だった。能登半島で生まれた自身の記憶だが、子どものころにコウバコガニをおやつ代わりに食べ、カニ足をパキパキと折って身を吸い出して食べる「カニ食い競争」に興じたものだ。そのころ、乱獲などで漁獲量が減り、石川県から島根県の漁業者らが昭和39年(1964)に「日本海ズワイガニ採捕に関する協定」を結び、漁期や漁獲量を取り決めた。そのころから、カニは高嶺の花となっていく。

   今回ふと、いにしえの人々のように、どぶろくを飲みながらカニを食べるとどのような風味になるのだろうかと思い立った。そこで、中能登町へ行き、本場のどぶろくを手に入れ、今季初の加能ガニに挑んだ。ぴっちりと締まったカニの身を、とろりとしたどぶろくが包み込むような食感で、実にのど越しがいい。さらに、カニみそ(内臓)としっくりなじみ、満足度が高い。どぶろくとカニを味わっていた昔の人々と時代を超えて食感が共有できたひと時でもあった。

⇒27日(日)午後・金沢の天気    はれ

☆ドーハの美徳「来た時よりも美しく」

☆ドーハの美徳「来た時よりも美しく」

   サッカーのワールドカップ・カタール大会で23日、日本代表がこれまで4度の優勝経験を誇る強豪のドイツ代表に逆転で勝利を治めた。「ドーハの奇跡」とまで称され歓喜に沸いた。アメリカのスポーツ中継メディア「CBS Sports」は公式サイトで「Japanese fans help clean up trash at stadium following Japan’s upset win over Germany」の見出し=写真=で、ドイツに逆転勝利の後、日本人サポーターたちが勝利を祝う前にハリーファ国際スタジアムのごみ掃除を行ったと伝えている。

   CBSは詳細に伝えている。日本人サポーターたちは、開幕戦(現地時間11月20日)のカタール対エクアドル戦が行われた後、自分たちの国が参加する試合でもないにもかかわらず、スタジアムのスタンド席に置き去りにされていたボトルや食べ残しを拾い、ごみ袋に入れる姿が見られた。バーレーンのあるインフルエンサー氏が、サポーターの行いを映像で記録し、自身のインスタグラムで共有した。インフルエンサー氏はこのサポ-ターになぜごみを片付けるのを手伝ったのかと尋ねた。すると、そのサポーターは 「私たちは日本人で、ごみを残さないし、この場所を尊敬している」 と語った、と伝えている。

   この記事の反響として、SNSでは「You can’t hate on countries like japan. Wonderful people and beautiful country.」(日本のような国を憎むことはできない。素晴らしい人々と美しい国)と称賛している。

   小学生のころに、「来た時よりも美しく」という言葉を習う。遠足に行き、帰る際にはごみ拾いなど清掃をする。日常でも帰りに教室を清掃する。最初は道徳を実践的に習っているのだが、この精神は年を重ねると社会の課題解決や付加価値の高いモノづくりのモチベーションへとつながる。そして、大人社会では古くから伝えられる近江商人の心得「三方よし」という言葉を習う。売り手、買い手、作り手・社会がそれぞれが納得して利を得る。これが横つながりの共生社会や公共の福祉の理念へと結びつく。

   「来た時よりも美しく」の精神は世界のスポーツの場でも輝きを放つ。

⇒25日(金)午前・金沢の天気     はれ

★日本「ドーハの逆転劇」、ドイツ「ロシアの幽霊」再び

★日本「ドーハの逆転劇」、ドイツ「ロシアの幽霊」再び

   閣僚の辞任ドミノ、旧統一教会問題、物価高、そしてコロナ第8波の到来と、このところ暗い話題ばかりだったが、このニュースには気分が晴れた。サッカーのワールドカップで、世界ランキング24位の日本代表が同11位のドイツ代表に逆転勝ち。ドイツはこれまで4度の優勝経験を誇る強豪だ。そのチームに勝ったとなれば大金星、サムライブルーがまばゆい。

   昨夜のドイツ戦は中継で視聴できなかったが、けさダイジェスト版で見た。前半を1点でしのぎ、1点を追う後半は堂安選手や浅野選手、三笘薫選手といった攻撃的な選手を森保監督が次々と投入して徐々に主導権を握り、30分にゴール前のこぼれ球を堂安が押し込んで同点に。38分にはロングパスを受けた浅野がそのままドリブルで持ち込み右足でシュートを決めて勝ち越した。このあとはドイツの反撃をかわし、2対1で勝って、勝ち点3を獲得した。前回2018年のロシア大会に続く白星スタートだ。

   日本サッカー界の育ての親はドイツ人のデットマール・クラマー氏(故人)。同氏は日本サッカー界初の外国人コーチであり、サッカー日本代表の基礎をつくり、日本サッカーリーグの創設にも尽力したことから「日本サッカーの父」と称された人だ(Wikipedia「デットマール・クラマー」)。

   ふと気になったのは、ではドイツのメディアはどう伝えているのか。国営メディア「ドイチェ・ヴェレ (Deutsche Welle) 」は「Germany haunted by ghosts of Russia in opening-game defeat」の見出しで、「ロシアの幽霊に悩まされる」と。前回ロシア大会のときも、ドイツは初戦メキシコを相手に0-1で敗れた。2戦目のスウェーデン戦は2-1の勝利をおさめ、グループステージ突破の可能性を残したものの、3戦目の韓国戦で0-2の敗戦を喫し、まさかの最下位で敗退している。その悪夢がよみがえることを「ロシアの幽霊」と称しているようだ。

   日本は今月27日、1次リーグの第2戦で世界31位のコスタリカと対戦する。

⇒24日(木)夜・金沢の天気    はれ