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☆パリ五輪に漂う濃い霧 ロシア選手の参加めぐり

☆パリ五輪に漂う濃い霧 ロシア選手の参加めぐり

    ロシアのウクライナ侵攻は来年のパリオリンピックをも揺るがし始めた。ロイタ-通信Web版日本語(11日付)によると、アメリカ、ドイツ、オーストラリアなど35ヵ国が、2024年のパリ五輪にロシアとベラルーシの選手を出場禁止とするよう要請していることが分かった。

   35ヵ国の担当閣僚によるオンライン会議には、ウクライナのゼレンスキー大統領も参加し、ロシアの攻撃によりウクライナの選手やコーチら228人が死亡したと指摘し「テロとオリンピック精神は相反するものであり、両立はできない」と述べた。ウクライナはこれまでロシアやベラルーシの選手がパリ五輪に出場した場合、大会をボイコットすると警告している。   

   同じく会議に参加したイギリスのフレイザー・スポーツ大臣は、ツイッターに「プーチン大統領が野蛮な戦争を続ける限り、ロシアとベラルーシを五輪に参加させてはならないとのイギリスの立場を明確にした」と投稿した。また、北欧諸国の五輪委員会は7日、IOCに書簡を送り、ウクライナ侵攻を続けるロシアと隣国ベラルーシの選手の国際大会出場に反対する姿勢を改めて表明している。

   IOCはウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアとベラルーシの選手について、去年2月、両国の選手や役員を国際大会に招待したり、参加を許可したりしないよう、大会主催者などに勧告していた。今年1月25日の理事会で声明を発表し、「オリンピック憲章ではいかなるアスリートも差別なく扱われる権利を有する。パスポートを理由に競技に参加することが妨げられてはならない」などとして、「自国を代表しない”中立”の立場」「ウクライナでの戦争を積極的に支持していないこと」を条件に選手の復帰を検討することを明らかにしている(1月26日付・NHKニュースWeb版)。

  IOCとすれば、オリンピックとスポーツの政治化に反対するという立場を堅持したいのだろう。一方でロシアのウクラナ侵攻によって、ウクライナの選手やコーチら228人が死亡したことが事実アであれば、スポーツの世界でもロシアは国際社会を敵に回していることに等しい。今後、IOCに対する不信感が強まれば、パリ五輪は濃い霧の中に包まれる。

(※写真は2021年8月8日の東京オリンピック閉会式で映し出された2024年のパリ五輪の映像=NHKテレビ)

⇒12日(日)夜・金沢の天気    くもり

★「加賀百万石」レトロなキャッチいつまで続けられるか

★「加賀百万石」レトロなキャッチいつまで続けられるか

   金沢では「加賀百万石」は聞き慣れた言葉だが、違和感のある使い方があることを知ったのは、金沢大学で教員をしていたころだ。インドネシアからの留学生がこんな話をしてくれた。

   留学生は、兼六園を散策に行き、そのときインバウンド観光客の団体を案内していた日本人のガイドが「カガ・ワン・ミリオン・ストーンズ」と言っていたのを聞いて、「加賀百万石」のことかとガイドの案内に耳をそばだてた。そのとき、ガイドは金沢城の石垣を指さして説明していたので、とても腑に落ちたという。「百万個もの石を使って、お城を造り、そして金沢に用水をはりめぐらせた加賀のお殿様はとても有能な方だったのですね」と留学生は感心していた。

   ガイドは「加賀百万石」を「カガ・ワン・ミリオン・ストーンズ」と直訳していたのだ。話を聞いて、「それは誤解だよ」と留学生に説明した。「石(こく)」はコメの容量(1石は180㍑分)を意味し、ストーンではない、と。きょとんとした顔つきで留学生は聞いていたが、なんとか理解はしてくれたようだった。それにしても、現代に通用しない「百万石」という言葉を使ってどうするのか。日本人でも理解できない世代が増えているのではないか。ましてや、インバウンド観光では誤解を与えるだけではないか。

   ところが、石川県は「百万石」を多用している。ことし秋に開催される「第38回国民文化祭」(10月15日-11月26日)の名称は「いしかわ百万石文化祭2023」と銘打っている。インバウンド観光の寄港地の一つでもある金沢港クル-ズターミナルの愛称を「ひゃくまんごくマリンテラス」、新しく完成させた県立図書館を「百万石ビブリオバウム」としている。

   そもそも石川県人はどれほど「百万石」を意識しているだろうか。石川県には金沢、加賀、能登の3地区があり、「百万石」を名乗ったり、使ったりしているのは金沢だけではないだろうか。むしろ、加賀や能登の人たちには、かつての栄華をいつまで誇っているのかと揶揄する向きもある。一方で、加賀友禅や金沢蒔絵といった伝統工芸には雅(みやび)が漂い、加賀百万石の文化をイメージさせる。「加賀百万石」というレトロなキャッチフレーズはいつまで続けられるか。

⇒11日(土)夜・金沢の天気   くもり

☆「タラの子付け」に満足の田の神 豊作をもたらすか

☆「タラの子付け」に満足の田の神 豊作をもたらすか

   ユネスコ無形文化遺産に登録されている、能登半島の尖端・奥能登に伝わる農耕儀礼「あえのこと」は、農家が稲作を守る「田の神様」に労をねぎらいと収穫に感謝を捧げる伝統行事として知られる。「あえ」はごちそうでもてなすこと、「こと」はハレの行事を意味する。毎年12月5日の行事は「田の神迎え」と言われ、それぞれの農家が田んぼから田の神を自宅に向えて饗応する。2月9日は「田の神送り」と言われ、農家でくつろいでもらっていた田の神を再度ごちそうでもてなし、その後田んぼにお見送りをする。田の神の行事は家々で伝承されていて、迎え方や送り方、そして、もてなし方はそれぞれに違いがある。

   去年12月5日の「田の神迎え」を能登町の柳田植物公園内にある茅葺の古民家「合鹿庵(ごうろくあん)」で見学し、このブログで書き留めた。そして、きのう2月9日の「田の神送り」を同じ合鹿庵で見学した。

   12月5日のブログでも述べたが、田の神は目が不自由であるという設定になっている。働き過ぎで眼精疲労がたたって失明した、あるいは稲穂で目を突いてしまったなど諸説がある。目が不自由であるがゆえに、農家の人たちはその障がいに配慮して田の神に接する。座敷に案内する際に段差がある場合は介添えをし、供えた料理を一つ一つ口頭で丁寧に説明する。演じる家の主(あるじ)たちは、どうすれば田の神に満足いただけるもてなしができるか工夫を凝らして独り芝居を演じる=写真・上=。

   供されたごちそうで、季節の違いもある。12月5日「田の神迎え」では、メイン料理は寒ブリの刺し身だった。そして、2月9日「田の神送り」では、タラの子付けという刺し身が出されていた=写真・下=。タラの漢字は魚へんに雪と書く「鱈」。能登半島の沖で獲れるマダラはこの降雪の時季に身が引き締まって、味がのっている。そのまま刺し身ではなく、タラの子である真子をゆでてほぐし、タラの身にまぶしたもの、この「タラの子付け」はなかなかおつな味がする。さらに、昆布でしめたマダラの身に子付けをするとさらに旨みが増す。

   田の神送りを東京から見学にやってきたという料理研究家の女性は、「このタラの子付けは能登独特の刺し身ですよ。ほかに見たことはありませんね」と話していた。一部金沢の料理屋やスーパーでも見かけるが、能登が発祥かもしれない。迎えに寒ブリの刺し身をたしなみ、送りにはタラの子付けを堪能する奥能登の田の神様。なんともグルメで贅沢な神様ではある。「満足じゃ」と田に戻られたに違いない。ことしも豊作をもらたしてほしいと農家の切なる願いが込められている。

⇒10日(金)夜・金沢の天気     くもり

★またケチついた東京オリ・パラ組織委 その構造的な問題

★またケチついた東京オリ・パラ組織委 その構造的な問題

   オリンピックは汚職まみれ。これで札幌冬季五輪は絶望的になった。東京オリ・パラのテスト大会に関連する業務の入札をめぐる談合事件で、組織委員会の元次長や広告大手「電通」の元幹部ら4人が本大会の運営業務などを含めた総額400億円規模の事業を対象に、不正な受注調整を行っていたとして独占禁止法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。東京大会をめぐっては、汚職事件に続いて、今度は談合の疑いで組織委員会の当時の幹部が逮捕される事態となり、一連の事件で電通から逮捕者が出るのは初めて(8日付・NHKニュースWeb版)。

   今回の逮捕は、より金額が大きい本大会の業務の受注を視野にテスト大会の段階から談合していた、との疑いだ。逮捕された元次長は東京都出身で、大手鉄道会社に入社し、2004年に日本陸上競技連盟に転職した人物(同)。

   おそらくこれは構造的な問題だろう。ビッグイベントを仕切ることができる会社は数少ない。電通はその最大手だ。簡単に言えば、すべてを電通任せだったということだ。電通側とすれば、「談合」ではなく「調整」をしていたと釈明するだろう。メディア各社は電通の役割をよく理解しているはずだ。もちろん、この調整によって電通側が多額の利益を得ていたならば明らかな犯罪ではある。

   このニュースで怒っているのは、2030年の冬季五輪誘致を目指している札幌市民だろう。同市の秋元克広市長は「五輪・パラリンピックは極めて公共性の高い大会であり、その運営を担い、公正であるべき組織委職員から逮捕者が出たことで、30年大会招致への影響は避けられないと懸念している。市としてはクリーンな大会運営に向けた見直しを進めていく」とコメントを出した(同・朝日新聞Web版)。

   東京オリ・パラをめぐる一連の事件で国民も嫌気がさしているのではないだろうか。そもそも、大会組織委員会の会長だった森喜朗元総理がJOC臨時評議員会(2021年2月3日)で、「女性がたくさん入っている理事会は、理事会の会議は時間がかかります」「女性っていうのは競争意識が強い。誰か一人が手を挙げて言われると、自分も言わないといけないと思うんでしょうね」などと発言し、女性蔑視と批判され辞任することになった。ここがケチのつけ始めだった。オリ・パラはもう当分やらなくていい、そう思っている国民は多いのではないか。

⇒8日(水)夜・金沢の天気    くもり

☆トルコ・シリア大地震 ロシアが問われる支援か侵攻か

☆トルコ・シリア大地震 ロシアが問われる支援か侵攻か

   トルコ南東部のシリア国境に近いガジアンテプ市付近で6日未明、マグニチュード7.8の大きな地震があった。トルコやシリアの当局によると、両国で確認された死者は5000人以上(7日現在)に上っている。同日午後にも、近くでM7.5の揺れが起きている。救助活動が続く中、死者は今後さらに増すことが確実視されていて、WHOは死者数はその8倍に上る可能性があるとしている(7日付・BBCニュースWeb版日本語)。

   トルコのエルドアン大統領は同国が「この100年で最も甚大な災害」に直面していると述べた。トルコ当局者によると、国内の少なくとも4ヵ所の空港が被害に遭い、建物6200棟余りが倒壊したという。トルコで登録されているシリア難民370万人の多くも被災した(同・BloombergニュースWeb版日本語)。

   今回の一連の地震はトルコ南東部に延びる「東アナトリア断層」で発生した。北側のアナトリアプレートに向かって、南側のアラビアプレートが北上し、断層にひずみがたまる。アメリカ地質調査所(USGS)の分析では、震源の深さはM7.8の地震が17.9㌔、M7.5の地震は10.0㌔と、比較的浅い所で地震が発生したため、震源近くの地表が激しい揺れに見舞われたとみられる(同・読売新聞Web版)。

    震災への各国の救助支援も始まっている。メディア各社の報道によると、日本政府は6日、国際緊急援助隊75人を派遣することを決め、先遣隊の18人がトルコに向け出発。また、警視庁は7日、特殊救助隊に所属する警察官13人と救助犬4頭を派遣することにした。政府の国際緊急援助隊と現地で合流し、捜索や救助に当たる。アメリカのバイデン大統領は6日、エルドアン大統領と電話会談し哀悼の意を表し、トルコはNATOの同盟国でもあり、捜索活動や救助活動を支援すると同時に医療サービスや救援物資を支援を迅速に行うと述べた。

   そして、ロシアのプーチン大統領はシリアのアサド大統領、およびエルドアンと電話会談を実施し、両国に対し救助隊の派遣を申し出た。ロシア大統領府によると、両国はプーチン氏の申し出を受け入れた(6日付・ロイター通信Web版)。ロシア国防省によると、ロシア軍の300部隊がシリアでがれきを片付け、捜索救助活動を支援している(7日付・CNNニュースWeb版)。

   ロシアにとって、トルコとシリアは同盟国でもある。しかし、トルコは2011年の民主化運動「アラブの春」をきっかけに始まったシリア内戦で反体制派を支援し、アサド政権の打倒を主張してきた。そして、トルコはシリア弾圧から逃れた370万人にも上るイスラム教徒の難民を受け入れてきた。ところが、この難民受け入れが重荷となっていた。そこで、ロシアの仲介で関係改善をはかるため去年12月28日、モスクワでトルコとシリアの双方の国防大臣が顔合わせして、シリアの内戦情勢や難民問題について意見交換を行った。次はエルドアン、アサドの両大統領による対談が模索される中での大地震だった。

   以下は私見だ。プーチン大統領はウクライナ侵攻から撤退して、大地震に見舞われた同盟国のトルコとシリアの救援・復興支援に全力を尽くすべきではないか。侵攻と支援の両立は国力が疲弊するだけだ。この際、いさぎよくウクライナから撤退し、トルコとシリアを支援することで地に落ちたロシアの国際評価も高まるのではないか。

⇒7日(火)夜・金沢の天気     はれ

★米中冷戦の新たな火ダネ 中国「スパイ気球」のてん末は

★米中冷戦の新たな火ダネ 中国「スパイ気球」のてん末は

         それにしても不気味な光景だ。得体の知れない気球が空を飛ぶ。それが、中国のものであると分かれれば、なぜ我々の頭上にあるのかと、なおさらうす気味悪いだろう。CNNニュースWeb版(6日付)によると、アメリカを横断していた中国の偵察気球を、アメリカ軍の戦闘機がサウスカロライナ州の沖合で撃墜した。「Why the Chinese balloon crisis could be a defining moment in the new Cold War」=写真=の見出しで、アメリカ人は初めて北京からの国家安全保障上の挑戦とも言える具体的な現象を経験したと伝えている。

   防衛省によると、気球は国際法上、航空機に位置づけられ、他国の領空に侵入するのは国際法に違反し、領空侵犯にあたるとされる。過去に軍用機や民間機が他国の領空に入ったことで、当事国だけでなく国際社会全体の緊張が高まったこともある(6日付・NHKニュースWeb版)。

   アメリカ側が気球を撃墜したことに対し、中国側は「私たちの気象観測気球がコース外に吹き飛ばされたのは遺憾だ」「アメリカの政治家とメディアは誇張している」「アメリカがこの飛行物体を攻撃したのは国際慣例の深刻な違反だ」などと述べている(6日付・BBCニュースWeb版日本語)。かりに、中国が主張するように気象観測が目的の気球であったとしても、アメリカの領空を通過するときは事前にアメリカ当局に通知して当然だろう。それをしないこと自体が主権侵害に当たるのではないか。

   アメリカ海軍や沿岸警備隊は撃墜した気球の回収に当たっている。気球の破片は回収後、FBIの研究所に移送される見通し(同・CNNニュースWeb版)。回収された画像データなどが分析されれば、気球の偵察目的が鮮明になってくる。米中の緊張がさらに高まる可能性が出てきた。

⇒6日(月)夜・金沢の天気    くもり

☆「どぶろく」と「ペティアン・ナチュレ」の酔い話

☆「どぶろく」と「ペティアン・ナチュレ」の酔い話

   前回ブログの続き。金沢市内のワインバーでソムリエ氏に「どぶろく」の話をすると、「ヨーロッパでもどぶろくのような自然派ワインがちょっとしたブームになっていますよ」と乗ってきた。

   「ペティアン・ナチュレ」と言うそうだ。フランスの発泡酒で、スパークリングとは違った微発泡のワインのこと。そこでさっそく、ペティアン・ナチュレをオ-ダーする=写真=。発酵途中でビン詰されるため、ぶどうジュースのような味わいで、泡も柔らかくて飲みやすい。見た目と味は違うものの、ワイン版どぶろくのような雰囲気だ。

   ソムリエ氏によると、ペティアン・ナチュレはフランスのロワール地方などで盛んに造られている。フランスだけでなく、イタリアでも「フリッツァンテ」などと称され人気のようだ。そして、ペティアン・ナチュレの呼び名も「ペットナット(PETNAT)」と略されて、ナチュラルワインのファンに愛されている。ソムリエ氏は「日本でも原酒がちょっとしたブーム。どぶろくブームがやってくるのでは」と。

   ペットナットは有機農法でブドウを栽培。発酵途中で濾過せずに、そのままビン詰にする。酸化防止剤は使用しない自然派志向のワインとなる。どぶろくも同じような工程で、蒸した酒米にこうじ菌を混ぜてこうじを仕込み、こうじの甘酒を醸造し、さらに酵母を加え、20日ほど発酵させるとどぶろくが仕上がる。日本酒の製造工程では「もろみ」と呼ばれる。この「もろみ」を布で搾る、あるいは漉して取り出した液体が日本酒で、残ったものが酒粕(さけかす)となる。

   話は変わる。自身が「どぶろく」という言葉を初めて聞いたのは小学校低学年の夏休みだった。俳句で有名な加賀の千代女の「朝顔やつるべとられてもらい水」について、叔父が解説してくれた。千代女のころの江戸時代は、酒といえば「どぶろく」で、酔っ払いがたくさんいた。千代女が朝、近くの井戸に水を汲みに行こうとすると、顔が赤い酔っ払いや、青い酔っ払いの男たちが井戸に集まって水を飲んでいた。その様子を見た千代女は怖くなって井戸に近づくことができずに、よその井戸に水をもらいに行った。酔っ払いの赤い顔や青い顔を朝顔に見立てて皮肉を込めた俳句だと話してくれたのを覚えている。

   そして初めてどぶろくを飲んだのは岐阜県白川村の「どぶろく祭り」だった。獅子舞踊りの祭りとどぶろくが一体化した楽しい思い出がある。とりとめのない酒酔いの話になった。

⇒5日(日)夜・金沢の天気     

★日本酒を極めて行きつく酒「どぶろく」の価値

★日本酒を極めて行きつく酒「どぶろく」の価値

   能登半島の中ほどに位置する中能登町には、連綿と「どぶろく」を造り続けている神社が3社ある。五穀豊穣を祈願する新嘗祭に供えるお神酒で、お下がりとして氏子に振る舞われる。同町ではこの伝統を活かして2014年に「どぶろく特区」の認定を受け、いまでは農家レストランなど営む農業者が税務署の製造免許を得て醸造している。きょう同町で、どぶろくの研究をしている金沢工業大学の尾関健二教授(応用バイオ学)の講演会があった。どぶろくの驚くべき効能についてだった。

   どぶろくは、蒸した酒米に麹(こうじ)、水を混ぜ、熟成するのを待つ。ろ過はしないため白く濁り、「濁り酒」とも呼ばれる。そのどぶろくが大ブレークするかもしれない。以下、尾関教授の講演から。金沢工大学と酒造会社との共同研究で、日本酒の旨み成分「α-EG(アルファーイージー)」が皮膚真皮層のコラーゲン量を増やすことが学術的に実証された。さらに、どぶろくにはコメ由来のレジスタントプロテイン(RP)が濃縮されており、α-EGとRPが合わさることで、適量で数週間にわたって肌にはりやつやが高まる。とくに、年配層の女性の美容効果が大きいことも判明した。これはどぶろくの付加価値といえる。

   どぶろくの歴史は古い。中能登町は能登における稲作文化の発祥の地でもある。1987年に「杉谷チャノバ タケ遺跡」の竪穴式住居跡から、黒く炭化したおにぎりが発掘された。化石は約2000年前の弥生時代のものと推定され、日本最古のおにぎりと話題になった。毎年8月に営まれる「鎌打ち神事」は、鎌で平野を開墾し、田んぼの害虫などが退散することを願った神事とされる。どぶろくを造り、収穫を神々に感謝する祭りがこの地の3つの神社で脈々と続いている。

   そうしたどぶろくの歴史と付加価値をもっとPRしようと、同町の観光協会が中心となって、12月12日を「どぶろく宣言」の日と定めてキャンペーンを行っている。尾関教授の講演もそのプログラムの一つだった。肌の美容効果という付加価値もさることながら、日本酒を極めて行くと、最終的に行きつく酒、それが「どぶろく」ではないかと、講演を聴いて思った次第。(※写真は、中能登町の天日陰比咩神社でつくられているどぶろく)

⇒4日(土)夜・金沢の天気     あめ時々あられ

☆豆を投げつけたい「ミサイルの鬼」「偽旗の鬼」

☆豆を投げつけたい「ミサイルの鬼」「偽旗の鬼」

   きょう2月3日は「節分」。季節を分けるとの意味があり、あす4日の「立春」の前触れだと小さいころに教わった。伝統行事として、冬をしのぎ暖かな春の訪れを前に、邪気を払う「節分豆まき」が行われる。「鬼は外、福は内」と。

   「鬼は外」と叫びたいのは、頻繁に日本海に向けて弾道ミサイルを発射する北朝鮮だ。新年早々のことし元日にも弾道ミサイルを発射し、朝鮮半島東側の日本のEEZ外に落下させている。去年は37回、計70発を日本海に向け発射。2017年3月6日に能登半島の輪島市の北200㌔、去年11月18日に北海道・渡島大島の西約200㌔のEEZ内に着弾させている。朝鮮労働党機関紙「労働新聞」(ことし1月1日付・Web版)によると、党中央委員会総会で、金正恩総書記は演説し、戦術核兵器を大量生産する必要性を述べ、「核弾頭の保有量を幾何級数的に増やす」と方針を示している。

   ロシアのプーチン大統領がウクライナのゼレンスキー政権を「ネオナチ」と称して偽旗を掲げて去年2月24日に侵攻を始めてまもなく1年になる。その後の4月4日、ロシアのセルゲイ・ミロノフ下院副議長がロシアのオンラインメディアで「どんな国でも、隣国に対して権利を主張することはできる」「多くの専門家によると、ロシアは北海道に対してあらゆる権利を持っている」と述べた。同じ4月20日、ロシアは北部アルハンゲリスク州にあるプレセツク宇宙基地の発射場から新型のICBM「サルマト」を発射し、およそ5700㌔東のカムチャツカ半島にあるクーラ試験場の目標に命中させている。プーチン大統領が「北海道の権利の奪還」という偽旗を掲げて動き、プレセツク宇宙基地の発射場に再びICBMを構え、日本に向けた場合、反撃能力は可能なのだろうか。

   豆を投げてみたい「鬼」がいる。ドイツやオーストリアなどヨーロッパの一部の地域で伝承されている、「クランプス(Krampus)」。頭に角が生え、毛むくじゃらの姿は荒々しい山羊と悪魔を組み合わせたとされ、日本の伝承行事「ナマハゲ」や「アマメハギ」の鬼面より迫力と威圧感がある。家庭を回って、親の言うことを聞かない悪い子に警告して罰を与えると信じられている。欧州の子どもたちに豆を持たせて、「鬼は外」とクランプスに投げつけてはどうか。(※写真は、ドイツ・ミュヘン市の公式ホームページ「Krampus Run around the Munich Christmas Market」より)

⇒3日(金)午後・金沢の天気   くもり

★歴史と記憶、未来を紡ぐ能登半島「さいはての芸術祭」

★歴史と記憶、未来を紡ぐ能登半島「さいはての芸術祭」

  前回ブログの続き。能登半島の尖端に位置する珠洲市が力を入れて取り組んでいるイベントがある。それは「奥能登国際芸術祭」。ことしは第3回展となり、9月2日から10月22日まで51日間の予定で開催される。日本海に突き出た半島の尖端の芸術祭のキャッチフレーズは「最涯(さいはて)の芸術祭、美術の最先端」である。

   総合プロデューサーの北川フラム氏は「さいはてこそが最先端である」という理念と発想を芸術祭で問いかけている。かつて江戸時代の北前船の全盛期では、能登半島は海の物流によって栄えたが、近代に入り交通体系が水運から陸運中心へとシフトしたことで、「さいはて」の地となった。そこで、北川氏はアーチストたちと岬や断崖絶壁、そして鉄道の跡地や空き家など忘れ去られた場所に赴き、過疎地における芸術の可能性と潜在力を引き出してきた。

   2017年の作品の一つ、『神話の続き』(作者:深沢孝史)。珠洲の海岸に創作された「鳥居」である=写真・上=。かつて能登には寄神(よりがみ)信仰があった。大陸からさまざまな文明がもたらされた時代、海から漂着した仏像や仏具などは神社にご神体として祀られ、漂着神となった。神は水平線の向こうからやってくるという土着の信仰だ。時代は流れ、現代の「寄神」は大陸からもたらされる大量の漂着物(廃棄物)なのである。作者はその漂着物を地元の人たちといっしょに拾い集めて、作品を創った。文明批評を芸術として表現した。

         新型コロナウイルス感染拡大で一年延期となった2021年の第2回展で、北川氏は家仕舞いが始まった市内65軒の家々から1600点もの民具を集めて、モノが主役の博物館と劇場が一体化した劇場型博物館『スズ・シアター・ミュージアム』を造った。8組のアーティストが民具を活用して、「空間芸術」として展示している。

   江戸、明治、大正、昭和など各時代の文物を珠洲じゅうから集めたとあって、中には博物館として目を見張る骨董もある。「海揚がりの珠洲焼」がそれ=写真・下、「奥能登国際芸術祭2020+」公式ホームページより=。珠洲は室町時代にかけて中世日本を代表する焼き物の産地だった。各地へ船で運ぶ際に船が難破。海底に眠っていた壺やかめが漁船の底引き網に引っ掛かり、幻の古陶が時を超えて揚がってくることがある。まるで上質なタイムカプセルに触れるような心癒される作品だ。

   第3回展のことしはどのような作品にお目にかかれるのか。「より深く地域の潜在力を掘り起こし、諸外国にも珠洲の魅力を伝えていきたい」と北川氏は抱負を語っている(2023年度版パンフから引用)。インバウンド観光を意識した何か仕掛けがあるのかもしれない。

⇒2日(木)夜・金沢の天気   くもり