☆ウクライナ侵攻1年 世界の流れをどう読む=下
ロシアによるウクライナ侵攻からきょう24日で1年となった。ロシアが掲げる「偽旗(にせはた)=false flag」は世界から不信感を買った。偽の国旗を掲げて敵方をあざむいたり、被害者を装ったり、降参したふりをして相手のスキを突いたりと相手方を騙す意味で使われる。
~ディープフェイク vs ITアーミー 戦いはデジタル戦に~
去年3月11日にロシアの要請で国連安全保障理事会の緊急会合が開かれ、ロシアの国連大使は「ウクライナで渡り鳥やコウモリ、シラミなどを利用した生物兵器開発計画があり、テロリストに盗まれ使われる危険性が非常に高い」「生物兵器の開発にはアメリカが関与している」「同様の研究は悪名高い旧日本軍731部隊も行った」と一方的に主張し、まさに偽旗を掲げた。
これに対し、国連で軍縮部門のトップを務める中満泉事務次長が「国連としてはいかなる計画も把握していない」と報告。イギリスの国連大使は「うその情報を広げるために常任理事国の立場を悪用するロシアを許してはならない」と述べるなど、各国からはロシアを非難する発言が相次いだ。
ロシアの偽旗作戦はアナログな手法にとどまらず、デジタル戦も仕掛けている。去年3月、「ディーブフェイク」が問題となった。ウクライナのゼレンスキー大統領が自国民に降伏を呼びかける偽動画がSNSなどで拡散した。このディープフェイクはAI技術を使ってつくられたもので、ウクライナ国内の内部かく乱を狙ったものだった。そして、この一件で露呈したのがロシア系のハッカー集団の存在だった。
ウオールストリートジャーナルWeb版(2022年3月28日付)は「Secret World of Pro-Russia Hacking Group Exposed in Leak」の見出しで、ロシアのデジタル戦について報じている=写真=。コンピューターウイルスなど悪意のあるソフトウェアを総称して「マルウェア=malware」と呼ぶが、ロシア系のハッカー集団はマルウェアを駆使して400を超えるアメリカの病院を攻撃し、病院のコンピューターシステムを人質にすることを計画。失敗に終わったものの、欧米諸国とウクライナはこれを機にデジタル戦で協力体制を構築することになる。
さらに、ロシアはウクライナの都市の通信インフラを狙ってミサイル攻撃を仕掛けた。ウクライナはイーロン・マスク氏が率いる「SpaceX」の衛星インターネットアクセスの使用を要望し、マスク氏は許諾した。これをきっかけに、ウクライナのインターネット防衛とロシアへのサイバー攻撃を行う、「ITアーミー」と呼ばれるボランティア団体が世界各地で自発的に組織され、ロシア系のハッカー集団と暗闘を繰り広げている。戦争のカタチが大きく変わりつつある。
⇒24日(金)夜・金沢の天気 くもり時々あめ
23日に開催される緊急特別会合では、決議案を採択する予定で、ロシアに対し軍の撤退および敵対行為の停止を再び求めるとみられる。国連総会での決議に法的拘束力はないが政治的な影響は大きい(同)。では、国連の安全保障理事会はどう機能しているのか。(※写真・上は国連安全保障理事会の会議室=国連広報センター公式サイトより)
ロシアのプーチン大統領はさらに戦況を煽る宣言を出した。NHKニュースWeb版(23日付)によると、ロシア大統領府は「祖国防衛の日」と呼ばれる軍人をたたえるロシアの祝日にあわせて、プーチン大統領の動画のメッセージを公開。この中で、「ことし、大陸間弾道ミサイル『サルマト』の実戦配備を行う。また極超音速ミサイル『キンジャール』の大量製造を継続していく。そして、海上発射型の極超音速ミサイル『ツィルコン』の大量供給を始める」と述べ、ロシア軍が保有する陸や海そして空軍の核戦力を増強していくと宣言した。
バイデン大統領は声明で、
そして異例のこともあった。韓国の中央日報Web版(同)よると、きょう発射の2時間後の午前9時に、北朝鮮の朝鮮中央テレビの放送で、アナウンサーが「20日朝7時、放射砲射撃訓練を行った」とミサイル発射を速報した。 さらに正午には、今回発射したミサイルの写真も公開。ミサイル発射の直後に写真などを公表するのは異例だ。
また、北朝鮮の朝鮮中央通信(20日付)は、戦術核を搭載可能な「600㍉放射砲」2発を発射する訓練を行ったと発表した。北朝鮮は新年早々に弾道ミサイル1発を発射。前日の12月31日にも弾道ミサイル3発を日本海に向け発射している。国営メディアは、いずれも「超大型ロケット砲」だったと伝えた。朝鮮労働党機関紙「労働新聞」(1月1日付・Web版)によると、党中央委員会総会で、金正恩総書記は演説し、戦術核兵器を大量生産する必要性を述べ、「核弾頭の保有量を幾何級数的に増やす」と方針を示した。
その狙いは、アメリカと韓国が来月実施する合同軍事訓練に対する威嚇にあるようだ。共同通信Web版(17日付)によると、韓国国防省は17日、北朝鮮の核・ミサイルの脅威への対応を目的とした、米韓合同軍事演習「フリーダムシールド(自由の盾)」を3月中旬に11日間連続で実施し、期間中に大規模な野外機動訓練も行うと発表した。また、韓国ハンギョレ新聞Web版日本語(19日付)は、演習はコンピューターシミュレーションを通じて北朝鮮の核実験と軍事的挑発を想定して合同防衛態勢を点検するものだが、両国は演習期間中に師団級の合同上陸訓練と20余りの米韓連合の野外機動訓練なども行う、と報じている。
以下、憶測だ。アメリカは北朝鮮を
北朝鮮がICBMを発射したのは、去年11月18日以来で、今回が11回目となる。ミサイル技術は進化していて、最高高度が5700㌔、飛行距離が900㌔なので、角度をつけて高く打ち上げる、いわゆる「ロフテッド軌道」と呼ばれる発射方式だ。この日、記者の質問に答えた浜田防衛大臣は「飛翔軌道に基づいて計算すると、弾頭重量などによっては1万4000㌔を超える射程となりうるとみられ、その場合、アメリカ全土が射程に含まれる」との見方を示した(18日付・朝日新聞Web版)。(※図は防衛省公式サイト「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」より)
米韓への挑発行為に狙いを定め、エスカレートさせている。金正恩総書記は2021年1月の朝鮮労働党大会で、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼び、そして、去年1月の朝鮮労働党政治局会議で「アメリカ帝国主義との長期的な対決に徹底して準備しなければならない」とする方針を打ち出し、2018年に中止を表明していたICBMの発射実験や核実験について見直しを表明していた。去年6月、IAEA(国際原子力機関)は北朝鮮の豊渓里(プンゲリ)にある核実験場の坑道の1つが再び開かれたことを確認している。
白山は北陸3県ほか岐阜県にまたがる標高2702㍍の活火山であり=写真・上=、富士山、立山と並んで「日本三名山」あるは「三霊山」と古より称される。奈良時代には禅定道(ぜんじょうどう)と呼ばれた登山ルートが開拓され、山岳信仰のメッカでもあった。その白山を源流とする手取川は加賀平野を流れ、日本海に注ぎこむ。40万年前から火山活動が始まったとされる白山による噴出物によって大地がつくられ、その大地を手取川が削り、峡谷や扇状地、平野が形成されてきた。国内の世界ジオパークは、洞爺湖有珠山、アポイ岳、糸魚川、伊豆半島、山陰海岸、隠岐諸島、室戸、阿蘇、島原半島の9地域があり、白山手取川の認定が正式に決まれば10番目となる。
観光もさることながら学びも積極的に入れてはどうだろうか。手取川は加賀平野の水田を潤してきた=写真・下、石川県庁公式サイト「くらし・教育・環境」手取川扇状地より=。一方で、「暴れ川」の歴史があり、いまも自治体のハザードマップでは下流域は赤く染まっている。昭和9年(1934)7月11日の大水害は、いまでも語り継がれている。白山の雪解け水に加え、1日の雨量352㍉という記録的な豪雨に見舞われた。「百万貫岩」と地元で称される推定4800㌧もの巨大な岩が鉄砲水で流され、また流域の死者・行方不明者も110人余りと記録されている。
石川県がトキの放鳥に向けてチカラを入れる理由がある。本州最後の1羽だったオスのトキ、愛称「ノリ(能里)」が1970年に能登半島で捕獲され、繁殖のため新潟県佐渡のトキ保護センターに送られた経緯がある。なので、能登にトキが戻ってきてほしいという願いがあった。このため、県と能登の4市5町、JAなど関係団体は去年5月に「能登地域トキ放鳥受け入れ推進協議会」を結成し、環境省に受け入れを申請していた。
毎年のようにスパイ気球を飛ばしていたのだ。「気球であっても、我が国の許可なく領空に侵入すれば、領空侵犯となることから、防衛省としては、今後とも、外国政府の無人偵察用気球を含め、気球に対して、これまで以上に情報収集・警戒監視に努めてまいります」と。もし、アメリカが中国の偵察気球を撃墜していなければ、黙認を続けていたのではないか。
アメリカ連邦議会下院は9日、中国の偵察気球がアメリカの主権を侵害したとして中国共産党を非難する決議案を419対0の全会一致で採択した。アメリカ議会では特に共和党から、バイデン政権はアラスカ州沖で気球を発見した時点で撃墜すべきだったと、政権対応を批判する声も高まっているが、下院が一致団結して中国に対する姿勢を明確にしたものとして注目に値する(10日付・JETRO「ビジネス短信」)。