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☆「まるで独裁者の宴」旧統一教会の総裁とジャニー喜多川

☆「まるで独裁者の宴」旧統一教会の総裁とジャニー喜多川

   宗教の名を借りた巨大な集金システムだろう。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の教団トップの韓鶴子総裁がことし6月末、教団内部の集会で「日本は第2次世界大戦の戦犯国家で、罪を犯した国だ。賠償をしないといけない」「日本の政治は滅ぶしかないだろう」と発言していたことが、関係者への取材や音声データで分かった。教団側は6月中旬までに、年間数百億円にも上るとされる日本から韓国への送金を今後取りやめると説明していたが、トップが依然、韓国への経済的な見返りを正当化したことになる(7月3日付・共同通信Web版)。日本に戦前の罪を押し付け、信者からの「賠償金」を独り占めするという集金システムだ。

   金にまつわる話はそれだけではない。韓総裁と教団幹部らが2008年から11年にかけてアメリカ・ラスベガスのカジノを訪れ、日本円に換算して64億円もの金をギャンブルに注ぎ込んで、9億円の損失を出していた疑いがあることが分かった(アメリカ国防総省DIAのリポート)。教団のトップである韓総裁がギャンブルに興じていた疑いが浮上しているのだ(週刊文春・2022年11月10日号)。そのギャンブルの原資は、日本の信者による献金や霊感商法によって収奪された財産であることは容易に想像がつく。

   メディアの報道によると、旧統一教会をめぐる問題で文部科学省はきのう12日、宗教法人審議会を開き、教団の解散命令を請求することについて全会一致で「相当だ」と意見を得たとして、解散命令の請求を正式に決定し、きょう13日に東京地裁に請求した。それにしても、上記のラスベガスで64億円もの金をギャンブルに使うとはまるで「独裁者の宴」のような話だ。

   そうイメージしてみると、ジャニー喜多川も同じだ。少年に対する性加害は自宅兼合宿所や公演先のホテルなどで行われていたことになっていたが、仕事先のNHKでも性加害に手を染めていたという(10月9日付・NHKニュース)。ところかまわずやりたい放題、これもまるで「独裁者の宴」だ。

⇒13日(金)夕・金沢の天気    はれ

★ゲノム情報が健康管理に活用できる時代に

★ゲノム情報が健康管理に活用できる時代に

   先日、能登半島の真ん中にある志賀町で開催された「健康づくり講演会」を聴き行った。講演の一つ、「ゲノムは人類の共有財産~ゲノム情報が健康管理に活用できる時代に~」のタイトルに興味がそそられた。

   人は誰もが遺伝情報(ゲノム)を持つ。親の病気を知ると、自身にも遺伝性の病気にやがて罹ると思ったりする。「ゲノム」という言葉を意識したのは10年前の2013年。アメリカの女優、アンジェリーナ・ジョリーが公表した乳がん治療だった。母親が乳がんで命を落としたことをきっかけに自ら遺伝子検査を行い、発症率が高いことが判明したことから、予防のために両乳房を切除・再建手術を行った。日本でも大きく報じられ、遺伝カウセリングや遺伝子検査が広まるきっかけとなった。そして、ことし6月には遺伝情報に基づき患者に応じた治療を推進する「ゲノム医療法」が国会で成立し、遺伝医療に弾みがついた。

   志賀町でゲノムの講演会が開かれたのも理由がある。2011年から金沢大学の予防医学による住民の健康の維持と増進に取り組むための調査研究が行われてきた。2019年度からは「スーパー予防医学検診」のプロジェクトが始まり、定点観測的にデータを収集し、さらに遺伝子検査など行い、個人に合わせた保健指導プログラムを開発している。講演会は調査に協力している住民へのフィードバックの意味を込めている。

   冒頭のタイトルで講演したのは金沢大学附属病院遺伝診療部の渡邊淳部長=写真=。人体の細胞の中にはヒトの遺伝情報を保存しているDNAが含まれていて、DNAは細胞の中の染色体と呼ばれる物質の中で折りたたまれている。ヒトは父と母からそれぞれ1組の染色体のセット(22本の常染色体と1本の性染色体)をもらうので、1つの細胞には2セットの染色体が入っている。ただ、DNAは必ずしも安定した存在ではなく、さまざまな要因により変化し、病気の発症と関連するものは「ゲノム異常」とも呼ばれる。

   遺伝子が関わる病気は多岐にわたる。がんや糖尿病などを含めると、およそ9割が生涯に何らかの遺伝性疾患に罹るとの説明があった。がんは遺伝すると思いがちだが、ゲノム異常で起きる病気と遺伝する病気はイコールではないこと、がんと遺伝に関しては正しく理解することが必要、と。ただ、患者が治療で医師から説明を受ける際、専門性の高い用語が使われることが多い。どう患者や家族に理解してもうらうのか。その取り組みの一つとして、「遺伝カウンセラー」の話があった。ゲノム医療を受ける患者と医師の間に立って、患者側を支援する人材だ。金沢大学では2021年度から遺伝カウンセラーの養成を行っている。

   ゲノム医療では遺伝情報を調べることで患者の最適な治療薬の選択につながる。一方で、予め病気のリスクがわかるため、医療保険の加入や就職などで差別や不利益を受けることにもなりかねないので、医療側は徹底した情報管理が問われる、と。最後に、2002年のノーベル生理学・医学賞を受けたジョン・サルストン(イギリス)の言葉を引用して講演が締めくくられた。「人間の出発点となるゲノムは、各人にとっての制約ではなく、むしろ可能性ととらえるべきである」

⇒12日(木)午後・金沢の天気   はれ時々くもり

☆金沢でクマに襲われ人身被害 どうするリスク管理

☆金沢でクマに襲われ人身被害 どうするリスク管理

   今月8日付のブログで「10月に入ると、クマの出没が多くなる」と述べたが、その翌日の9日の早朝に金沢市の大乗寺丘陵公園=写真・上=で、遊歩道を1人でウオーキングしていた80代の男性がクマに襲われる人身被害があり、大きなニュース(11日付)になっている=写真・中=。石川県生活環境部では、「ツキノワグマ出没注意情報」を出して、注意を呼びかけている。

   報道によると、男性は額や右腕をけがしたものの、命に別状はないとのこと。近くを通りかかった男性の知人が119番通報をした。警察などが付近を調べたところ、現場から200㍍ほど離れたところでクマのフンが見つかり、その大きさから体長1㍍ほどの成獣と推定されるという。丘陵公園の周辺では今月に入って、4日と6日、8日にも目撃情報が県生活環境部に寄せられていた。

   けさ現場に行くと、「クマ注意」のプレートがあちらこちらにかかげられていた=写真・下=。大乗寺丘陵公園は住宅地に近い丘陵地で、周囲には小学校や中学校、大学もある。また、野田山墓地という市営墓地なども広がっていて、クマの出没はこの時季の最大のリスクかもしれない。近くの小学校や中学校では、児童・生徒に鈴の貸し出しを行っていて、「クマと遭遇しても大声を出さない」「複数人で登下校する」などの注意指導を行っているようだ。

   もともと丘陵公園周辺にはクマは生息していなかった。クマの目撃情報がニュースになるようになったのは、2000年代からではないだろうか。クマはもともと奥山と呼ばれる山の高地で生息している。ところが、エサ不足に加え、中山間地(里山)での人口減少が進み荒れ放題になった。人里近くに隠れ場所となる茂みが増えるなどクマが生息できる環境が広がっていると言える。そして、丘陵公園の周辺ではリンゴや柿などの果樹栽培も行わていて、この周辺での出没が近年増えていた。

   クマの行動域は25㌔から100㌔がテリトリーとされているが、ドングリなどのエサが不作のときのはさらに行動範囲を拡大することで知られる。県生活環境部自然環境課がことし8月中旬から9月上旬にかけて実施した「ツキノワグマのエサ資源調査」によると、金沢市は「豊作」「並作」だが、周辺の地域では「凶作」や「大凶作」のところもある。エサを求めてクマたちが金沢に群がってくるのではないか。そんなことを懸念したりする。

⇒11日(水)夕・金沢の天気    はれ      

★街路を彩る花、ムクゲ、ヒガンバナ

★街路を彩る花、ムクゲ、ヒガンバナ

   10月も半ばに入った。自宅近くの県道を歩くと、道路沿いにムクゲの花が競うように咲いている=写真・上=。真っ白な「祇園守」だ。花の中心部のシベが十文字になっていて、京都の八坂神社の護符の「祇園守」と似ているところから名付けられたとの説もあるが定かではない。清楚な花で、茶花として重宝される。ムクゲは梅雨の頃から咲き始めて夏に盛りを迎える。もうそろそろ見納めの頃だ。

   芭蕉の句がある。「道のべの木槿は馬にくはれけり」。道ばたのムクゲの花を馬がぱくりと食べた。芭蕉はその一瞬の出来事に驚いたかもしれない。花であっても、いつ何どき厄(やく)に会うかもしれない、と。中古車販売の「ビッグモーター」の店舗前の街路樹や植え込みのように、抜かれたり枯らされたりすることがないことを願う。

   道路の対面には赤い花が咲いていた=写真・下=。ヒガンバナ(彼岸花)は割と好きな花だ。ヒガンバナの花言葉は「悲しき思い出」「あきらめ」「独立」「情熱」。秋の彼岸に墓参りに行くと墓地のまわりに咲いていて、故人をつい思い出してしまう。「悲しき思い出」を誘う花だ。

   植物に詳しい友人から、かつてこんな話を聴いた。ヒガンバナは茎にアルカロイド(リコリン)という毒性がある。昔の人は死体を焼かずに埋葬した。そこで、犬が近づいて掘り返さないようにと毒性のあるヒガンバナを墓地に植えたのだという。犬よけの花でもある。

⇒10日(火)午後・金沢の天気    くもり時々あめ

☆見て見ぬふりできない「ビジネスと人権」問題

☆見て見ぬふりできない「ビジネスと人権」問題

   今月7日付のブログでも述べたが、ジャニー喜多川の性加害問題でメディアやスポンサー企業が問われたのは「ビジネスと人権」の視点が欠如していたことだった。企業活動における人権尊重は社会的に求められる当然の責務であるにもかかわず、ジャニー社長による性的搾取が続いていた。テレビ局はそれを知りながら、ジャニーズ事務所と契約し、タレントを番組に起用していた。スポンサー企業も広告代理店を通じてCMにタレントを使っていた。

   ビジネスと人権は、2011年に国連人権理事会で合意された「ビジネスと人権に関する指導原則」がベースとなっていて、企業活動における人権尊重の有り様は国際文書にもなっている。ビジネスと人権は単に企業活動を重視するだけでなく、人々を弾圧する国・政府との貿易や企業活動も問題視することになる。たとえば、中国だ。

   新疆ウイグル自治区の強制収容所に入れられたウイグル族の女性らが、組織的なレイプ被害を受けていると、BBCニュース(Web版日本語、2021年2月5日付)が報じている。また、強制収容所では、宗教的・文化的信仰を理由にウイグル族などの少数民族100万人以上が拘束されている可能性がある(同)。ウイグルでの状況について、アメリカ国務省の報道官は、中国がウイグル人に対して「ジェノサイド(大量虐殺)」を行っていると発言、バイデン大統領もこの発言を認めている(AFP通信Web版日本語・同)。

   そしてアメリカは、2021年12月にウイグル強制労働防止法(UFLPA)を成立させ、翌年6月より新疆ウイグル自治区が関与する製品は強制労働により生産されたものとみなし、輸入を原則禁止とした。ビジネスと人権を一体化させた措置だ。ところが日本は「政冷経熱」の言葉があるように、人権侵害は政治の問題と見なし、経済とは無関係と見て見ぬふりをしてきた。「ビジネスと人権」が欠落した日本の姿ではなかっただろうか。

   2020年10月、日本政府は「ビジネスと人権」に関する行動計画を策定した。企業活動における人権尊重は、社会的に求められる当然の責務であるだけでなく、国際社会からの信頼を高め、グローバルな投資家の高評価を得ることにもつながる(経産省公式サイト「ビジネスと人権~責任あるバリューチェーンに向けて~」からの引用)。日本政府には「政冷経冷」の姿勢が問われている。

(※写真は、ヴァチカン美術館のラファエロ作『アテネの学堂』。上のプラトンとアリストテレスは論争を繰り広げているが、下のヘラクレイトス(左)とディオゲネス(右)は我関せずの素振り)

⇒9日(月・祝)午後・金沢の天気   あめ時々くもり

★「ほったらかしの柿」を求めてクマやサルが出没する頃

★「ほったらかしの柿」を求めてクマやサルが出没する頃

   金沢地方気象台はきょう8日、石川・岐阜両県などにまたがる白山(2702㍍)で初冠雪を観測したと発表した。白山は平年より13日、昨年より17日早かった。例年10月に入ると、クマの出没が多くなる。金沢市内だけでも、今月に入って2回、9月以降で11回の目撃情報などが寄せられている。

   金沢市公式サイト「ツキノワグマ目撃痕跡情報」によると、直近で今月6日午前6時ごろ、同市末町にクマ1頭が出没。やぶに入っていくのが目撃された。近くには小学校や中学校、高校、大学があり、朝の登校時間だっただけに注意が呼びかけられた。

   ふだんは山奥にいるクマが人里に降りてくるのは、ドングリなどのエサ不足が主な原因とされる。とくに冬眠前になるとクマも必死にエサを探し求めて人里に降りてくる。ことし石川県自然環境課が8月中旬から9月上旬にかけて実施した「ツキノワグマのエサ資源調査」では、ブナ科植物(ブナ・ミズナラ・コナラ)は加賀地方の一部地域で「凶作」ではあるものの、全体として「並作」としている。「大凶作」や「凶作」が多かった去年に比べると、ことしはクマの出没回数は減るかもしれない。  

   山から人里に下りてくるのはクマだけではない。金沢の住宅街にサル、イノシシ、シカが頻繁に出没するようになった。こうした野生動物は本来、奥山と呼ばれる山の高地で生息している。ところが、エサ不足に加え、中山間地(里山)が荒れ放題になって、野生動物が奥山と里山の領域の見分けがつかずに人里や住宅街に迷い込んでくる、とも言われている。あるいは、野生動物が人を恐れなくなっている、との見方もある。

   その事例として知られるのが実りの秋の柿だ。クマやサルは柿が大好物だ。一度食べたら、また翌年も同じところに柿を食べにくると言われる。かつて里山や人里には柿が栽培され人々は食した。ところが、里山に人が少なくなり柿の実をもぎ取る人がいなくなった。そんな「ほったらかしの柿」をクマやサルが柿の木に登って食べに来るようになった。

   金沢市の近郊では、クマやサルの出没を恐れて、柿の木を地域ぐるみで伐採するところも増えているようだ。

(※図は石川県生活環境部自然環境課が作成している「令和5年ツキノワグマ出没マップ」。出没は能登、金沢、加賀と広範囲におよんでいる)

⇒8日(日)午後・金沢の天気   くもり

☆ジャニー問題で露見した報道姿勢と企業ガバナンス

☆ジャニー問題で露見した報道姿勢と企業ガバナンス

   ジャニー喜多川の性加害の問題が連日報道されている。ジャニーズ事務所本社では、61年の歴史に幕を下ろすため、看板の撤去が行われたようだ。事務所側はこれまで「ジャニー喜多川の痕跡をこの世から一切なくしたい」とコメントしていたので、社名変更と看板撤去はその手始めなのだろう。

    きょうのTBS番組「報道特集」もジャニーズとテレビ局、広告代理店、そしてスポンサーの相関関係を報じていた。その中で、TBSの報道や制作、編成の担当者80人におよぶ社内調査の結果を公表した。そのポイントの一つだったのがこの問題だった。

   週刊誌「週刊文春」は1999年10月から14週にわたってジャニー喜多川社長の性加害問題を告発する連載キャンペーンを張った。記事に対して、ジャニーズ事務所とジャニー社長は発行元の文藝春秋社を名誉毀損で提訴。二審の東京高裁は2003年5月、性加害を認定。ジャニーズ側は上告したが、最高裁は2004年に上告を退け、記事の真実性を認める東京高裁の判決が確定した。ところが、TBSなどマスメディアは判決を報道せず、判決後もジャニー社長による性的搾取が続いていた。報道しなかったことは、ジャニーズ事務所とジャニー社長への忖度だったのか。

   TBSの社内調査では、「忖度があったという証言は出てこなかった」とした。報道しなかった理由として、報道目線では、週刊誌ネタや芸能ネタを軽んじる傾向があり、ニュースとして取り上げる判断をしなかったのだ。当時の社会部デスクだった番組のキャスターは「伝えるべき事を伝えなかったのは一種の職務怠慢で、その結果、人権被害が広がったことを忘れてはならない」と話していた。「ビジネスと人権」の報道目線が欠如していた。さらに、編成の目線では、「圧力を感じたことは一度もない。忖度を強要されたこともない」との証言がある一方、「なぜ、忖度するかというと番組出演をなくされるのを恐れていたから」という現場の生々しい声が紹介された。

   番組の中で、スポンサー企業の事例も紹介していた。日本の企業はこの性加害をなぜ長年放置してきたのか。利益追求を優先するメディアと広告代理店、スポンサー企業が一体化して、売上げ至上主義にまい進していた。その中で、ネスレ日本はジャニーズ喜多川の性加害の噂を耳にした段階で、所属タレントを起用しない判断をした。ネスレ日本の前社長は「企業のガバナンス」という言葉を使い、取引先のグレーな噂や情報を得た段階で動くことが、「転ばぬ先の杖」として企業には大切、ネットの時代だからなおさら、とコメントしていたのが印象的だった。

   スピード感をもった企業のガバナンスが問われている。「君子(企業のガバナンス)危うきに近寄らず」のことわざを思い浮かべた。

(※写真は、ことし3月7日に放送されたBBCのドキュメンター番組「Predator: The Secret Scandal of J-Pop 」の紹介記事。この放送がなければ、ジャニー問題は日本で白日の下にさらされることはなかった)

⇒7日(土)夜・金沢の天気     くもり 

★持続可能な事業継承とは何なのか 茶道・天然忌の教え

★持続可能な事業継承とは何なのか 茶道・天然忌の教え

   茶道・表千家には「天然忌(てんねんき)」という行事がある。茶道を習っている社中でも、きのう5日に行われ、表千家の中興の祖といわれる七代・如心斎(1705~51)の遺徳をしのんで、お茶を供えた=写真=。如心斎は9月に亡くなったので本来は同月の稽古で天然忌を行うが、今回、参加者が多く集える日を優先して10月となった。如心斎が工夫し制定されたとされる七事式の一つ、「且坐(さざ)」と呼ばれる稽古をするのが習いとなっている。

   茶道の先輩諸氏から話を聴くと、如心斎は「求道者」のイメージがわく。その典型的なエピソードの一つが、大徳寺に毎日のように坐禅に通ったことだ。書物にもこう描かれている。「如心斎は、千家の伝統に従って、茶の湯は究極において禅に通ずる、と考えた。彼にとって、稽古は単に芸ごとの習練ではなく、悟りに達する自己鍛錬の道であった」(千宗左著『茶の湯 表千家』)。そして、死後も自分の肖像画を掛けることを禁じたという。ここから察するに、名誉欲をもたず、禅と茶道を極めた家元だった。

   このイメージが表千家では代々共有されて、天然忌では「円相」の掛け物を飾る。中国・唐代の禅僧である盤山宝積の漢詩である「心月孤円光呑万象」(心月  孤円にして、光 万象を呑む)をイメージして描いたのが円相と言われる。円は欠けることのない無限を表現する、つまり宇宙を表している、とされる。茶の道も同じで、物事にとらわれず、純粋に精進することが茶の湯の道である、と。その心の宇宙の象徴が満月、円なのである。

   如心斎が生きた江戸時代の中期は将軍家ほか大名も茶をたしなみ、茶道人口が増加したころだった。と同時に、茶の湯が遊芸化へと傾きつつあった時代ともいえる。そこで、原点回帰を進めた。茶道の祖といわれる千利休の150年忌を機に元文5年(1740)に利休像をまつった祖堂を建立。家元の一子相伝を明確にすることで、茶の湯の継承争いを避けることに苦心した。趣向に偏りがちな茶の湯の世界に禅の教えと厳しい作法を導入することで、その後、明治、大正、昭和と表千家の伝統が連綿と受け継がれることになる。   

   きのうの天然忌では、円相の掛け軸「人間万事 一場 夢(じんかんばんじ いちじょうのゆめ)」を掛けた。曹洞宗管長を務めた板橋興宗氏が金沢の大乗寺住職だったときの筆だ。そして、花は如心斎が好きだったとされる白い芙蓉を本来は飾るが、季節が少しずれたので白いムクゲを飾った。

⇒6日(金)夜・金沢の天気     くもり

☆ジャニーズ事務所の会見 メディアの質問なぜ荒れた

☆ジャニーズ事務所の会見 メディアの質問なぜ荒れた

           ジャニー喜多川の性加害の問題をめぐりジャニーズ事務所が今月2日に記者会見を開いた際、会見の運営を任されていたコンサル会社のスタッフが、質問の指名をしないようにする記者やフリージャーナリストの名前や写真を載せた「NGリスト」を会場で携えていたことが問題となっている。メディア各社が報じている。「NGリスト」と聞くと報道の自由を阻害するかのような印象なのだが、冷静に考えれば会見の運営をスムーズに運ぶための必携のペーパーだったのだろう。ところが、生中継で会見を視聴していたが、それでも、この会見は荒れていた。

   記者会見はジャニーズ事務所側が開催。一通りの説明を終えたあと、記者からの質問タイムとなった。質問に関しては「1社1問」で司会者が手を挙げた記者を指名した。ところが、指名を受けた記者が1社1問の原則にもかかわらず複数の質問をしたり、まるで説教のように長々と質問をする、など雰囲気が荒っぽくなり、司会者も「1問1社でお願いします」「質問は1つだけでお願いします」とルールを無視する記者に困惑していた。

   さらに、指名を受けていない記者が質問を乱発する場面もあった。司会者が「発言が求められてないので静かにお願いします」と注意を促したものの、それでも発言を続ける記者もいた。過熱する会見にジャニーズ事務所側のスタッフが「みなさん、落ち着いていきましょう」と呼びかけるほどだった。NGリストそのものが無意味だった。

   では、なぜこのような荒れた会見になったのか。以下、憶測だ。記者側には「締め切り」という時間的な制約がある。これはよくあることなのだが、記者はすでに記事を想定しているので、質問では事前説明をして最後に「これについてどう思いますか」と質問相手に振り、「その通りです」というコメントさえもらえば記事が書ける。そのために長々とした事前説明になったり、複数の質問になったりする。今回、司会者から指名を受けた記者がジャニーズ事務所側に求めた質問もそのような形式の内容だった。

   一方、会場には300人ほどの記者、フリージャーナリストがいたようだ。すると1社1問では記者側すべてに質問の順番は回ってこない。そこで、順番待ちに苛立った記者が不規則に質問をすると、一気に会見の雰囲気が荒れる。

   本来、記者会見はメディア側、たとえば記者クラブが設定するものだ。事前に事務所側と打ち合わせをして、司会者もメディア側で人選する。身内なので、長々と質問する記者には「手短に」と催促したり、不規則な質問を注意する。ジャニーズ事務所の会見が次回もあるとすれば、メディア側に設定を委ねてもよいのではないか。そうすれば、会見は荒れることもない、NGリストも必要ない。

(※写真はジャニーズ事務所の記者会見=10月2日付・NHKニュースWeb版)

⇒5日(木)夜・金沢の天気    くもり

★金沢人の「おでん」好き その季節がやってきた

★金沢人の「おでん」好き その季節がやってきた

   きょうの金沢は晴れ間が広がり、昼過ぎには25度以上の夏日となったが、夕方になるとずいぶんと涼しくなってきた。この時節に友人たちと話していて何かと話題に上るのが、「おでん」だ。「そろそろ、源助だいこんやガンモの季節だね」とか、「ことしは、かに面が食えるかな」などと。そして、家庭の食卓にガンモドキなどおでんが出るようになるのがこの季節だ=写真・上=。

   金沢人のおでん好きは、「金沢おでん」の言葉もあるくらいだ。季節が深まるとさらにおでん好きが高じる。「かに面」だ。かに面は雌の香箱ガニの身と内子、外子などを一度甲羅から外して詰め直したものを蒸し上げておでんのだし汁で味付けするという、かなり手の込んだものだ=写真・下=。季節限定の味でもある。資源保護のため香箱ガニの漁期が毎年11月6日から12月29日までと設定されている。

   漁期が限定されているため、価格が跳ね上がっている。なにしろ、金沢のおでん屋に入ると、品書きにはこれだけが値段が記されておらず、「時価」としている店が多い。香箱ガニの大きさや、日々の仕入れ値で値段が異なるのだろう。去年1月におでん屋で食したかに面は2800円だった。それまで何度か同じ店に入ったことがあるが、数年前に比べ1000円ほどアップしていた。   

   値段が急騰したのは2015年3月の北陸新幹線の金沢開業のころだった。金沢おでんが観光客の評判を呼び、季節メニューのかに面は人気の的となり、おでんの店には行列ができるようになった。極端に言えば、「オーバーツーリズム」だ。

   この現象で戸惑っているのは金沢人だけではない。能登や加賀もだ。金沢おでんが観光客の評判を呼び、季節メニューのかに面は人気の的となった。すると水揚げされた香箱ガニは高値で売れる金沢に集中するようになる。それまで能登や加賀で水揚げされたものは地元で消費されていたが、かに面ブームで金沢に直送されるようになった。

   かに面をめぐるぼやきを上げればきりがない。季節に一度食することができるかどうか。できれば幸せ、それだけのことだ。

⇒4日(水)夜・金沢の天気    くもり時々あめ