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☆北の五輪不参加と極超音速ミサイルは何を潰したのか

☆北の五輪不参加と極超音速ミサイルは何を潰したのか

   きのう11日に北朝鮮が発射した極超音速ミサイルについて防衛省は公式ホームページで落下地点を推定した図=写真・上=を掲載し、「詳細については現在分析中ですが、通常の弾道軌道だとすれば約700km未満飛翔し、落下したのは我が国の排他的経済水域(EEZ)外と推定されます」とコメントを書いている。この図を見て、ミサイルの発射角度を東南に25度ほど変更すれば、間違いなく能登半島に落下する。さらに、朝鮮新報(12日付)は「発射されたミサイルから分離された極超音速滑空飛行戦闘部は、距離600km辺りから滑空再跳躍し、初期発射方位角から目標点方位角へ240km旋回機動を遂行して1000km水域の設定標的を命中した」と記載している=写真・下=。この記載通りならば、北陸がすっぽり射程に入る。

   さらに、朝鮮新報の記事は金正恩朝鮮労働党総書記が発射を視察し、「国の戦略的な軍事力を質量共に、持続的に強化し、わが軍隊の近代性を向上させるための闘いにいっそう拍車をかけなければならない」と述べと伝えている。

   NHKニュース(12日付)によると、岸防衛大臣はきょう12日午前、記者団に対し、11日に北朝鮮が発射した弾道ミサイルについて、通常よりも低い最高高度およそ50㌖、最大速度およそマッハ10で飛しょうしたと分析していると説明した。今月5日に発射した極超音速ミサイルはマッハ5の速さで飛行したと報じられていた。去年9月28日の「火星-8」はマッハ3とされていたので、ミサイル技術が格段に高まっていると言える。

   そして、岸大臣が述べたように、今回の弾道ミサイルは通常より低く飛び、最高高度およそ50kmだった、非常に速く低く飛ぶ弾道ミサイルに日本は対応できるのだろうか。これまで北朝鮮のミサイル発射は、アメリカを相手に駆け引きの材料だと思い込んでいた。どうやらそうではないようだ。日本やアメリカの迎撃ミサイルなどはまったく寄せ付けない、圧倒的な優位性を誇る弾道ミサイルの開発にすべてを集中する。国際的な経済封鎖下でも、東京オリンピックと北京オリンピックをボイコットしてでも開発を急ぐ。そして、ダメージを受けたのは韓国だった。

   韓国の大統領府関係者は、北京オリンピックについて「慣例を参考にして、適切な代表団が派遣されるよう検討中」と語り、文在寅大統領の出席は検討していないと明らかにした(12日付・時事通信Web版)。文氏は「外交的ボイコット」を検討していないと訪問中のオーストラリアでの首脳会談後の記者会見で表明していた(12月13日付・朝日新聞Web版)。

   以下裏読みだ。文氏は北京オリンピック期間中に中国の仲立ちで北京での南北首脳会談を構想し、水面下で交渉していた。ところが、北朝鮮は今月5日に極超音速ミサイルを発射。同じ日に「敵対勢力の策動と世界的な感染症の大流行」を理由にオリンピックに参加しないことを中国側に通知した。そして11日にマッハ10の極超音速ミサイルを発射した。これで文氏の「北京での南北首脳会談」の構想は完全に潰えてしまった。というより、ひょっとして、北朝鮮は文氏の夢を潰すためにあえて発射と不参加をセットにしたのか。「敵対勢力の策動」とはこのことを指すのか。

⇒12日(水)夜・金沢の天気      あめ

★騒々しい3連休明け 弾道ミサイルどこに向けているのか

★騒々しい3連休明け 弾道ミサイルどこに向けているのか

   海上保安庁公式ホームページは11日7時29分の「【緊急情報】ミサイル発射情報」で、「北朝鮮から、弾道ミサイルの可能性があるものが発射されました。船舶は、今後の情報に留意するとともに、落下物を認めた場合は、近づくことなく、関連情報を海上保安庁に通報してください」と伝えた。同じく防衛省公式ホームページは7時35分の「お知らせ(速報)」で、「北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されました」と伝えている。総理官邸公式ホームページでは、「総理指示(7:33)」として、「情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対して、迅速・的確な情報提供を行うこと」「航空機、船舶等の安全確認を徹底すること」「不測の事態に備え、万全の態勢をとること」を出している。騒々しい連休明けだ。

   北朝鮮は今月5日の午前8時7分ごろにも、内陸部から「極超音速ミサイル」を日本海に向けて発射している=写真、1月6日付・朝鮮新報Web版=。落下地点は日本の排他的経済水域(EEZ)外と推定される。航空機や船舶からの被害報告などは確認されていない。去年10月19日にも北朝鮮は潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)を、9月には11・12日に長距離巡航ミサイル、15日に鉄道線路での移動式ミサイル、28日に極超音速ミサイルを発射している。

   NHKニュースWeb版によると、岸田総理は午前9時前、総理大臣官邸で記者団に対し、「先日、北朝鮮は弾道ミサイルを発射し、国連安全保障理事会で対応が協議されたところだ。こうした事態に北朝鮮が継続してミサイルを発射していることは極めて遺憾なことだ。政府としては、これまで以上に警戒監視を進めているが、発射の詳細は早急に分析を行っている」と述べた。また、岸防衛大臣は記者会見で、北朝鮮から発射された弾道ミサイルの可能性があるものは、通常の軌道であれば、日本のEEZの外側に落下したと推定されることを明らかにした。

   それにしても、この騒々しさは北京オリンピック・パラリンピックに影響をもたらさないのだろうか。弾道ミサイルを打ち上げている国がオリンピック開催国の隣国にあることに、各国のオリンピック選手団はどう思っているだろうか。そして、北朝鮮は北京オリ・パラに参加しない方針を明らかにしている(1月7日付・NHKニュースWeb版)。その理由に、アメリカなどの「外交的ボイコット」に関連して、「アメリカと追従勢力の中国への陰謀がより悪質になっている。中国の国際的なイメージを傷つけようとする卑劣な行為で排撃する」としている(同)。この言葉を真に受けると、「アメリカと追従勢力」を「排撃する」ことと、弾道ミサイルを関連づけて考えてしまう。

⇒11日(火)午前・金沢の天気      あめ

☆用心するに越したことはない

☆用心するに越したことはない

   新型コロナウイルスの感染が急拡大している。石川県でもきょう10日、新たに18人が感染、1人の死亡が発表された。県内で亡くなった人はこれで139人、県内での感染者も累計で8135人となった。そして、全国ベースではここ1週間の新規感染者は3万2081人で、前週(3200人)の約10倍に増加。オミクロン株の広がりとともに、増加幅が拡大している(10日付・時事通信Web版)。感染力が強いとされるオミクロン株の市中感染が全国的に広がっている。感染症者は人工呼吸器やエクモを使用するような重症患者は少ない、「インフルエンザと同じ程度」との情報があるものの、用心するに越したことはない。   

   きのう9日のNHK『日曜討論』で、岸田総理はいわゆる「敵基地攻撃能力」について、憲法など基本的な考え方を守ったうえで、具体的な対応を国民の理解を得ながら結論を出したいと述べた。これに対し、野党党首の考えは割れた。野党第一党の立憲民主と共産は否定的だった。日本維新と国民民主はおおむね賛同する考えだった。ただ、立民の泉代表の言い分は一理あると思った。北朝鮮の弾道ミサイルを念頭にして、「今の時代は発射台付き車両からミサイルを射出するわけで、動かない基地を攻撃したところで抑止できるのか」との問題提起だった。

   確かに、北朝鮮が去年9月15日に発射した弾道ミサイルは移動式だった。北朝鮮の朝鮮中央テレビ(同9月17日付)は、弾道ミサイルは鉄道を利用した移動式ミサイル発射台から発射されたもので、その動画を公開した=写真=。安倍政権時代に北朝鮮の弾道ミサイルの発射予測を検知して事前に破壊する「敵基地攻撃能力」の保持が議論されていたが、この弾道ミサイルは敵基地攻撃の意味がなさなくなったことを示すものだった。だからと言って、すべての弾道ミサイルが移動式ではない。「敵基地攻撃能力」を有したほうがよいのではないだろうか。用心するに越したことはない。

   日本気象協会の予報(10日付)によると、あさって12日から14日にかけて、冬型の気圧配置が強まり、日本海側は雪。積雪が急に増えたり、猛吹雪となるおそれがあるという。あのJPCZ(日本海寒帯気団集束帯)がまたやってくる。用心するに越したことはない。

⇒10日(月)夜・金沢の天気    くもり

★小銭はどこへ行く「さい銭箱」と「coinstar」の話

★小銭はどこへ行く「さい銭箱」と「coinstar」の話

   先日、石川県白山市の白山比咩(しらやまひめ)神社での初詣=写真・上=でたまたま見た光景だ。家族連れの参拝者の男性が小さなビニール袋をハンドバックから取り出し、さい銭箱に投げ入れた。ゴトッという重量感のある音がしたので、相当の小銭の入った袋だったのだろう。また、グループで参拝していた女性は大きめ財布から小銭を手で掴むようにして投げ入れていた。こんなことを言うと罰が当たるかもしれないが、まるで小銭を厄介払いしているようにも見えた。

   キャッシュレス決済の時代、買い物をカードで済ませるのが普通となってきたが、それでも小銭は財布に溜まる。現金のみ扱う商店はまだまだ多い。スーパーなど量販店でも取り扱っていないキャッシュレスカードは使えない。本来ならば財布の硬貨を数えて出せばよいのだが、時間がかかる。スーパーのジレの後ろに列ができている場合などはつい急いで紙幣を出してしまう。すると、どっさり釣銭が戻って来る。飲み物の自販機では硬貨の10円、50円、100円、500円、紙幣は扱っているが、1円と5円は使えない。 

   さらに小銭を厄介もの扱いにする風潮を煽っているのが銀行の手数料だ。年賀状を買いに行った近くの郵便局で、「硬貨取扱料金」を新設するとのチラシを手にした。ゆうちょ銀行は窓口で大量の硬貨を預け入れる時、これまでは無料だったが今月17日からは有料になる。チラシによると、50枚までは引き続き無料だが、51枚から100枚には550円がかかる。ということは、1円が100枚で550円の手数料だ。101枚から500枚は825円、501枚から千枚は1100円となる。そして、ゆうちょ銀行のATMでは、硬貨1枚から25枚の預け入れで110円を求められる「ATM 硬貨預払料金」が新設される、とある。

   硬貨はこのまま「悪銭」と化するのか、と初詣のときから小銭問題が頭から離れなかった。これもたまたまだが、コインを取り扱う「自動硬貨計数機」という自販機と出会った。きのう8日、金沢市内にあるスーパーに立ち寄った。入院している親戚への新年のあいさつとお見舞いの帰りに立ち寄り、このスーパーに入るのは初めてだった。レジの近くの自販機に「coinstar」と書かれ、「たまった硬貨を手軽に換金できます!」とある=写真・下=。近づいてよく見ると、「投入金額の9.9%が手数料としてかかります」と貼り紙がしてある。これを見た瞬間、「手数料が枚数ではなく、投入金額の9.9%だったら、ゆうちょ銀行よりお得かもしれない」と思った。1円を千枚入れても、手数料は99円だ。10円が千枚の場合でも990円。ゆうちょ銀行は1100円かかる。

   財布の小銭を試しに入れてみた。1円、5円、10円、50円、100円をバサーッと自販機のトレイに入れ、レバーを上げると硬貨が吸い込まれていく。すると、硬貨枚数と金額が表示され、引換券が出てきた。341円。この引換券をサービスカウンターに持って行くと、100円3枚と10円4枚、1円1枚と交換してくれた。その後、買い物をして帰宅。ネットで「coinstar」を調べると、アメリカに本社がある会社でアメリカとヨーロッパを中心にコイン換金機を展開していて、アジアでは2018年7月に初めて日本に導入された、とある。キャッシュレス決済の時代、コインはもはやグローバル問題なのだ。そして、小銭の取り扱いにちょっと困っている人たちへの救いの換金機なのかもしれない。フリーダイヤル(0120-347-502)が記されていた。347-502はサヨナラ・コゼニと読むそうだ。

⇒9日(日)午後・金沢の天気      くもり

☆「不幸を待つ」ような報道の倫理について

☆「不幸を待つ」ような報道の倫理について

   首都圏では6日に4年ぶりに10㌢ほどの雪が積もり、7日朝には氷点下3.5度の冷え込みで路面が凍結し、車のスタック(立ち往生)や玉突き事故が相次いだと新聞・テレビメディアが報じていた。テレビを視聴していると、人々が道路などで転倒する映像シーンが全国ニュースで繰り返し放送されていた。転倒によるケガで7日午前中だけで500人余りが病院に搬送されたというから驚きだった。

   ニュースを見ていて違和感も持った。ノーマルタイヤの乗用車やバス、トラックが凍結した路面を走行すれば必ずスリップ事故が多発する。関東や首都圏でスタッドレスタイヤに冬備えする個人や会社は少数だろう。路面凍結が予想された段階で首都高速道路などをなぜ封鎖しなかったのだろうか。そして、映像的に違和感があったのは、人が転倒するシーンだった。あるテレビ局の映像は都内の同じ場所で人々が靴を滑らせて一人また一人と転ぶシーンだった。確かに衝撃的な映像ではあるものの、カメラマンが同じポイントで時間をかけて次々と人が転ぶのを待っていたということだろう。カメラマンの目の前で起きたことではあるが、転倒を待っていたとなれば報道の倫理上の問題はないのだろうか。  

   この違和感は実際の報道カメラマンたちのシーンを思い出したからだ。2007年3月25日に能登半島地震(震度6強)があり、翌日、学生による復旧ボランティアの計画を立てるために現地を訪れた。輪島市門前町は全半壊の街となっていた。街の一角でテレビ局のカメラマンたち3組ほどが半壊の家屋が壊れるシーンを撮影しようとスタンバイしていた=写真=。余震で揺れるたびにカメラを構えていた。「でかいのがこないかな」という言葉が聞こえた。「でかいの」とは大きな余震のこと。余震で家が倒壊する瞬間を狙っていたのだ。

   確かに、報道カメラマンとすれば、大きな余震で家屋が倒壊するシーンを狙うのはプロとして当然なのだろう。しかし、「でかいのがこないかな」と倒壊を待つカメラマンたちの姿は被災地の人たちにはこのカメラマンたちの姿はどのように映っただろうか。また、餓死寸前のスーダンの少女にハゲワシが襲いかかろうとする写真〚ハゲワシと少女』。報道カメラマンのケビン・カーター氏が1993年にNYタイムズで発表し、ピューリッツァー賞を受賞した。受賞後、カーター氏が「ハゲワシがもっと翼を広げてくれれば、迫力ある写真になるのに」と話したことがきっかで、「写真を撮影する前に少女を助けるべき」と非難が殺到。その後、カーター氏は自死した。

   報道として衝撃的な画像や映像であっても、不幸な出来事を待つような撮影のプロセスが感じた視聴者は違和感を持つ。冒頭の転倒にしても、滑って転ぶのをカウントするかのような映像ははたして報道と言えるのかどうか。

⇒8日(土)午後・金沢の天気      はれ

★「かに丼」と「かに面」 オーバーツーリズムの相関関係

★「かに丼」と「かに面」 オーバーツーリズムの相関関係

   北陸の冬の味覚はカニに勝るものはない。きょう能登半島の尖端の珠洲市で評判の「かに丼」があると聞いて、会合の帰りに店に立ち寄った。かに丼というのは初めてだった。この店は10数年前から季節メニューとして出している。注文すると、ご飯と海藻の入った丼の上にズワイガニの雌の香箱ガニの甲羅が2つ乗って出てきた=写真・上=。

   机の上には「かに丼の召し上がり方」というマニュアルがあった。それを見ながら、甲羅から身と外子(卵)、内子(未成熟の卵)をかき出す。2つ分の甲羅からの分量はけっこう多く、丼の表面がカニの身でいっぱいになった。それをご飯とかき合わせる。ワサビを入れた皿があり、しょうゆを少々注ぐ。わさび醤油を丼にかける。

   さっそく食べる。これまで、丼の上にブリやイカ、カニの身が乗っている海鮮丼は能登で何度か食べたことがある。香箱ガニだけの丼となると贅沢な気持ちになる。細く刻んだ海藻、そしてご飯は少々酸味がつけてあり、これがカニの身と合う。さらに、わさび醤油がアクセントとなって、カニのうまみを引き立てる。勘定は税込みで2750円。満足感が勝り、高いとは思わなかった。

   カニの話をもう一つ。先日、金沢のおでん屋に入った。「かに面」を注文した=写真・下=。このかに面は香箱ガニの身と内子、外子などを一度甲羅から外して詰め直したものを蒸し上げておでんのだし汁で味付けするという、かなり手の込んだものだ。この店のだし汁は昭和30年代の創業以来ずっと注ぎ足しながら今にいたるものなので、半端な味ではない。カニの身とおでんのだし汁がミックスして独特の食感がある。

   金沢のおでんの中ではかに面は季節限定の高級品だ。品書きにはこれだけが値段記されておらず、「時価」とある。香箱ガニの大きさや、日々の仕入れ値で値段が異なるのだろう。勘定をしてもらうと、2800円だった。これまで何度かこの店に来たことはあるが、数年前に来た時よりも1000円ほどアップしていた。

   金沢や能登では香箱ガニは庶民の味だったのだが、最近は高級品となっている。その原因の一つは資源保護のため香箱ガニの漁期が毎年11月6日から12月29日までと設定されていることだ。冒頭の能登の店でも漁期に買い求めたものを冷凍で保存し、漁期外は冷凍ものを出していると、店のマスターが話してくれた。店では10数年前にメニューとして初めて出したときは1280円だった。「むしろ値段が上がったのは金沢のかに面のせいなんです」と少々渋い顔で話してくれた。

   資源保護の政策で香箱ガニの値段は徐々に上がってはいたものの、それが急騰したのは北陸新幹線の金沢開業(2015年)以降だったという。金沢おでんが観光客の評判を呼び、季節メニューのかに面は人気の的となり、おでんの店には行列ができるようになった。すると水揚げされた香箱ガニは高値で売れる金沢に集中するようになる。それまで能登で水揚げされたものは地元で消費されていたが、かに面ブームで金沢に直送されるようになった。この店がかに丼を値上げせざるを得なくなったのもこのころからだったという。香箱ガニの地元素通りと値段高騰。能登の「かに丼」と金沢の「かに面」の値段の相関関係がオーバーツーリズムから見えてくる。

⇒7日(金)夜・金沢の天気  

☆「極超音速ミサイル」をどこに向けているのか

☆「極超音速ミサイル」をどこに向けているのか

   北朝鮮がきのう5日に打ち上げた弾道ミサイルは「極超音速ミサイル」だったとメディア各社が報じている。この型のミサイルは去年9月28日にも日本海に向けて撃ち込んでいる。再録になるが、このブログで当時のことをこう記した。

                   ◇

   労働新聞Web版(2021年9月29日付)によると、打ち上げたのは新開発の極超音速ミサイルだと写真付きで掲載している。「국방과학원 새로 개발한 극초음속미싸일 《화성-8》형 시험발사 진행」の見出しの記事=写真=によると、極超音速ミサイルの名称は「火星-8」。北部のチャガン(慈江)道から発射した。金正恩党総書記の側近のパク・チョンチョン党政治局常務委員らが立ち会った。

   記事では極超音速ミサイルについての詳細な記載はない。「令和2年版防衛白書」によると、アメリカや中国、ロシアはすでに開発していて、弾道ミサイルから発射され、大気圏突入後に極超音速(マッハ5以上)で滑空飛翔・機動し、目標へ到達するとされる。弾道ミサイルとは異なる低い軌道を、マッハ5を超える極超音速で長時間飛翔すること、高い機動性を有することなどから、探知や迎撃がより困難になると指摘されている。

   また、記事では極超音速ミサイルの開発について、2021年1月5-12日で開催した朝鮮労働党第8回党大会で提案された戦略兵器開発(5ヵ年計画)におけるトップ5の主要なタスクの一部と位置付けている。確かに、この8回党大会で金総書記は、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼び、より高度な核技術の追求などを通じて、アメリカの脅威に対する防衛力を絶えず強化する必要があると述べた。核兵器の小型・軽量化と大型核弾頭の製造推進、1万5000㌔射程内の戦略的目標に命中させ破壊する能力の向上を目指す方針も表明。固体燃料を用いる大陸間弾道ミサイル(ICBM)と原子力潜水艦の開発、衛星による情報収集能力強化にも言及していた(2021年1月9日付・BloombergニュースWeb版日本語)。

   北朝鮮は各地の代表からなる党最高人民会議を9月28日からピョンヤンで開催している。ということば、打ち上げた極超音速ミサイルは、同月11・12日の長距離巡航ミサイル、15日の移動式ミサイルの発射と合わせて、戦略兵器開発は順調に進んでいるとの党幹部向けのアピールの狙いもあるのかもしれない。

   それにしても、日本の防衛システムは北朝鮮が次々と開発を進める戦術兵器に対応できるのか。弾道ミサイルは楕円軌道を描きながら標的の上に落ちてくるので迎撃が可能とされている。が、極超音速ミサイルは上下左右に飛び方を変えながら標的に向かうので迎撃が困難とされる。極超音速ミサイルの実用化までには時間がかかるとしても、日本の防衛システムが翻弄されることだけは間違いない。

                  ◇

   今回の極超音速ミサイルは音速の5倍の速さで飛行したと報じられている。去年9月の火星-8は音速3倍だったとされるので、技術を高めているとも言える。国連食糧農業機関(FAO)と国連児童基金(UNICEF)がまとめた報告書「2021アジア・太平洋地域の食糧安保と栄養概観」によると、北朝鮮は住民の42.4%が栄養不足と集計されている。極超音速ミサイルはどこに向けているのか。

⇒6日(木)夜・金沢の天気      はれ時々くもり

★「日本海の脅威」ロシアの軍用船漂着、北の弾道ミサイル

★「日本海の脅威」ロシアの軍用船漂着、北の弾道ミサイル

   前回のブログの続き。きのう4日午前8時30分ごろ、能登半島の尖端、珠洲市真浦町の海岸に船体の全長が50㍍ほどある鉄製の船が海岸に流れ着いているのを住民が見つけ、海上保安庁に連絡した。船体にはロシア語が書かれている。能登海上保安署では、ロシアで射撃訓練の際に「標的船」として使われる船に似ているという(4日付・朝日新聞ニュースWeb版)。きょう漂着船を実際に見に行ってきた。

   現地に到着したのは午前11時45分ごろ、金沢から2時間ほどかかった。現場は車が通行できない旧道のトンネルの近くにある。通行禁止の柵が設けられ、警察パトカー2台が見張っていた。そこで、トンネルの反対側の道路から入ることにした。その道路はがけ崩れ現場で、車は入れない。パトカーは配置されていなかったので、車を近くに置いて徒歩で現場に向かった。

   途中で道は土砂崩れで陥没していた。引き返そうかとも思ったが、思い切って山積みになった土石を登ってみた。すると、100㍍ほど先に漂着船が見えた=写真・上、5日午後0時5分ごろ撮影=。船体は岩の入り江のようなところにあり、高波で船体が岩に打ち付けられている。前日の新聞写真の船体よりもかなり崩れていて、船体そものが2つに折れているようにも見えた。この鉄製の漂着船の処分費用にはどれほどかかるのか。木造船とは違って、相当な税金が使われるのだろう。日本海のごみ問題を考えてしまう。

   きょうはこの海の向こうでも大変なことが起きていた。北朝鮮が日本海に向けた弾道ミサイルを発射したのだ。防衛省公式ホームページによると、北朝鮮はきょう午前8時7分ごろ、内陸部から弾道ミサイルの可能性があるものを東方向に発射した。落下地点は排他的経済水域(EEZ)外と推定される。航空機や船舶からの被害報告などは確認されていない。去年10月19日にも北朝鮮は潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)を、9月には11・12日に長距離巡航ミサイル、15日に鉄道線路での移動式ミサイル=写真・下、朝鮮中央テレビ動画=、28日に極超音速ミサイルを発射している。

   その脅威は狙いを定めて発射していることだ。弾道ミサイルを撃ち込む標的の一つが能登半島だ。2017年3月6日、北朝鮮は「スカッドER」と推定される弾道ミサイルを4発発射し、うちの1発を能登半島から北に200㌔の海上に着弾させた。半島の先端・輪島市の高洲山(567㍍)には航空自衛隊のレーダーサイトがある。その監視レーダーサイトの目と鼻の先にスカッドERが撃ち込まれた。

   ロシアの軍用船の漂着も北朝鮮の弾道ミサイルも海の向こうからの脅威だ。これらをなぜ外交問題としないのか。

⇒5日(水)夜・金沢の天気     くもり

☆地震と漂着船 漂う不気味さ

☆地震と漂着船 漂う不気味さ

   きょう新年の初詣に白山比咩神社(白山市)に行ってきた。「ことし1年、無事でありますように」と祈った。このところ地震と漂着ごみの不気味な動きが続いている。5日前の大晦日の午後2時時52分ごろ、能登半島の尖端を震源とする震度3、マグニチュード4.2の揺れがあった。金沢地方気象台によると、2021年1月から12月までの1年間で震度1以上の地震が70回以上も発生している。9月16日には震度5弱の地震もあった。不気味だったのは、9月29日に能登半島沖が震源なのに太平洋側が揺れた「異常震域」の地震があった。震源の深さは400㌔、マグニチュード6.1の地震に、北海道、青森、岩手、福島、茨城、埼玉の1道5県の太平洋側で震度3の揺れを観測した。

   これは人為的な原因によって誘発される「誘発地震」か、と考え込んでしまった。というのも、北朝鮮が同じ9月の15日正午過ぎに弾道ミサイル2発を発射、その1発が能登半島沖の舳倉島の北約300㌔のEEZに落下した(同月15日・防衛大臣臨時会見「北朝鮮による弾道ミサイル発射事案」)。この落下地点と29日の震源が近かった。不気味だ。

   そして、寒風吹きすさぶ冬の日本海から漂着船が流れ着いている。きょう4日午前8時30分ごろ、珠洲市真浦町の海岸で、船体の全長が50㍍ほどある鉄製の船が海岸に流れ着いていると住民から海上保安庁に連絡があった。船体にはロシア語が書かれている。能登海上保安署では、ロシアで射撃訓練の際に「標的船」として使われる船に似ているという(4日付・朝日新聞ニュースWeb版)。では、ロシアは日本海でなぜ、どのような理由で射撃訓練をしたのか。これも不気味だ。

   このほかにも、先月だけでも輪島市、かほく市、珠洲市、志賀町の海岸に木造船や船の一部が相次いで漂着している。ハングルで数字や文字が書かれていて、北朝鮮の木造船の可能性があると報じられている。不審な人物や遺留品などはいまのところ見つかってはいない。

   能登半島の沖合には北朝鮮の木造船がよく流れて来る。大陸側に沿って南下するリマン海流が、朝鮮半島の沖で対馬海流と合流し日本の沿岸に流れてくる。ロシアや北朝鮮の沖合で難破した船や、海に廃棄された産業や生活ごみなどが漂着する。日本海に突き出た能登半島は近隣国の漂着ごみのたまり場の一つなのだ。

⇒4日(火)夜・金沢の天気     あめ

★経済と環境が同時に同等に語られる時代

★経済と環境が同時に同等に語られる時代

   石川県内の繊維産業に関わる人から聞いた話だ。繊維をヨーロッパに輸出する際に、現地の繊維加工会社からいろいろ問い合わせがある。繊維の素材(綿など)はどのような労働環境でつくられているのか、さらに、繊維機械はバイオ燃料で動いているのか、あるいは化石燃料を利用しているのかなど細かく聞いてくるそうだ。「そのうち、使用している電力は石炭火力か原子力か再生可能エネルギーかと尋ねてくるだろう」と少々困惑した顔つきだった。

   ヨ-ロッパの企業は、環境・社会・企業統治に配慮した、いわゆる「ESD投資」を得るために生産元をチェックているのだという。話を聞いたのは、イギリスのグラスゴーで開催されていた国連の気候変動対策会議「COP26」が終わった去年の11月終わりごろだった。COP26では、世界の平均気温の上昇を産業革命前から1.5度に抑える努力を追求すると成果文章で明記された。世界全体の温室効果ガスの排出量を2030年までに2010年比で45%削減し、さらに2050年にほぼゼロに達するまで排出量を削減し続ける。今後、石炭火力などが主な電力の国の生産品は敬遠されるのかもしれない。

   経産省がまとめた第6次エネルギー基本計画(2021年10月2日・閣議決定)によると、2030年度の電力構成を火力42%(LNG20%、石炭19%、石油2%、水素・アンモニア1%)、原子力20-22%、再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱、水力、バイオマス)が36-38%となっている。第5次基本計画(2018年7月)では2030年度の火力の電源構成が56%だったので、14ポイント削減している。日本は「カーボンニュートラル先進国」としての国際的評価を高めるために舵を切ったようにも思える。

   日本だけでなく、脱炭素化の動きは世界的な潮流だろう。ところが、いくつか矛盾点や議論すべき課題が世界各地で起こり始めている。NHKニュースWeb版(3日付)によると、EUの執行機関にあたるヨーロッパ委員会は1日、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標の実現に向け、一定の条件のもとで天然ガスに加え、原子力発電についても持続可能なエネルギー源として位置付ける方針を明らかにした。これに対して脱原発を進めるドイツは反発し、経済気候保護担当大臣は「リスクの高い原子力を持続可能とするのは間違っている」とメディアに対して述べた。一方、フランスはエネルギー価格の高騰などを理由に、原発を持続可能なエネルギーと認めるべきだと主張している。「Decarbonization(脱炭素化)」をめぐる論点が鮮明化してきた。

   さらに、バイオ燃料の確保のために森林伐採が世界規模で行われている現実がある。その事例として引き合いに出されるのが、熱帯雨林のアマゾンの3分の2を有するブラジルだ。森林を伐採してサトウキビ畑を広げ、石油の代替燃料としてバイオエタノールを生産している。地球環境と開発の問題に取り組む「WRI」公式ホームページによると、ブラジルでは農地開発だけでなく森林火災も含め、2020年に170万㌶の森林が失われている。ちなみに、コンゴやインドネシアを含めて世界では420万㌶だった。これはオランダの国土面積、日本では九州に相当する。

   ブラジルの森林の消失面積は世界で最も多い。BBCニュースWeb版日本語(202年11月19日付)によると、ブラジルはCOP26で2030年までに森林破壊を終わらせると約束する文書に署名した。アマゾンの熱帯雨林には300万種の動植物が生息し、100万人の先住民族が暮らしている。地球温暖化を引き起こしている炭素を吸収する重要な場所でもある。

   新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退への対策で、環境を重視した投資などを通して経済を浮上させる「Green Recovery(グリーン・リカバリー)」が国際的なトレンドになっている。冒頭のESD投資を含め、経済の動きは環境問題と同時に同等に語られる時代に入ってきたのだろう。

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