★能登さいはての国際芸術祭を巡る~11 さいはてのアート
能登半島の尖端で開催されている奥能登国際芸術祭もあと10日となった。先日日帰りで足を運んだ。木ノ浦海岸は風光明媚で海水の透明度も高く、国定公園特別地域に指定されている。映画『さいはてにて』(チアン・ショウチョン監督、2015年公開)のロケ地にもなった。幼い頃に生き別れた父の帰りを待つため、故郷の奥能登に焙煎コーヒーの店を開いた女主人と、隣人のシングルマザーの物語。さいはての地で女たちが身を寄せあいながら生きる道を探る。人生の喜びを知る奥深い映画だった。この地をアートのテーマとしたのが、リチャード・ディーコン氏(イギリス)の作品『Infinity 41.42.43』。
ガイドブックによると、作者は45度の角度で空からの光を集めて反射する送受信機のような彫刻作品『Infinity』を2001年からシリ-ズで創っていて、木ノ浦海岸で3点を制作した。写真はInfinity 41にあたる。たしかに、作品の向こうに見える岬と交信しているようにも感じられ、SFっぽいイメージが面白い。能登半島にはUFO伝説もあり、作者はその話を聞いて、この作品を喜んで創ったのかもしれない。
能登半島の最尖端は珠洲市狼煙(のろし)地区。禄剛崎灯台という「さいはての灯台」が観光名所にもなっていて、その
下の漁港に音楽家、小野龍一氏の作品『アイオロスの広場』=写真・下=がある。かつて保育所で使われていたアップライトのピアノ。ピアノから伸びたワイヤーに触れると音が鳴る。そして、ピアノは自然の風で音を鳴らすエオリアンハープになっていて、さいはての漁港からの風が音となって奏でられる。
最初見たとき、古ぼけたピアノと朽ち果てた柱が並んでいて、さいはてとは「朽ちる」ということをイメージした。ところが、そこで奏でられる自然の音を聴いていて、癒された。さいはてのアートだ。
⇒2日(木)夜・金沢の天気 はれ
地元紙によると、きのう同市で芸術祭の実行委員会総会が開かれ、名称を「奥能登国際芸術祭2023」とし、期間を9月2日から10月22日までとすることを決めた。実行委員長の泉谷満寿裕・珠洲市長は「来年秋に3回目を開催することで、珠洲市の活性化につなげたい」と述べ、総合ディレクターの北川フラム氏も同席しあいさつした。また、開催にあたっては、来年秋に31年ぶりに石川県で開催される国民文化祭(10月14日ー11月26日)と連動した企画するとすることにした(6日付・北國新聞)。
来年の開催を判断した珠洲市はどのような工夫を凝らせば、震災のリスクを回避しながら芸術祭の開催が可能か、そのような知恵と経験則を行政と住民が共有しているに違いない。去年9月5日に一年遅れで開催した「奥能登国際芸術祭2020+」は石川県にまん延防止等重点措置が出されていて、当初は屋外の作品のみの公開だった。珠洲市民のコロナワクチンの接種率は県内の自治体でトップだった。そして、9月16日には震度5弱の地震に見舞われた。幸い人や作品へ影響はなかったものの多難な幕開けだった。後半の10月以降は屋内外の作品が公開され、来場者は63日間で総数4万9千人を数えた。