★能登半島の真ん中、JR能登部駅に夢のある「トキ舞う壁画」
能登半島を走る列車のJR七尾線の能登部駅がちょっと面白い。このブログ(2025年12月17日付)でも述べたが、歌手の一青窈さんがこの駅の前でポーズを取っている写真が中能登町の広報(2025年1月号)に掲載されている。そして、列車の発着を知らせるメロディーは一青窈さんの曲『ハナミズキ』だ。電車が通るたびにこのメロディーが流れる。「♪果てない夢が ちゃんと終わりますように 君と好きな人が百年 続きますように」。駅で列車が近づいてくると、このメロディーがじんわりと心に響いてくる。この町は一青窈さんの先祖の地でもあり、「一青」という地名もある。

そして駅でもう一つ面白いのが、鉄道線路の上をまたぐ渡線橋に描かれた壁画だ。トキやツルが能登の伝統的な祭りのキリコと青柏祭の「でか山」の周りを飛ぶ姿が描かれている=写真=。駅近くの石川県立鹿西高校の生徒たち4人が『能登の明るい未来』をテーマにJRの許可を得て、描いた。
確かに能登の未来を感じさせる壁画ではないだろうか。近くにある邑知潟にはナベヅルが飛んできたことが確認されている。そして、トキ。ことし5月31日に本州で初めてトキが能登で放鳥される。その場所が能登部駅とも近い邑知潟の周辺なのだ。生徒たちは列車の上をツルやトキが舞い、伝統のまつりと重ね合わせることで能登の新たな光景、能登の未来可能性を描いたのではないだろうか。
能登は自然環境と調和した農林漁業や伝統文化が色濃く残されていて、2011年には国連の食糧農業機関(FAO)から「能登の里山里海」が日本で最初の世界農業遺産(GIAHS)の認定を受けるなど、国際的にも評価されている。一方で、能登半島地震による人口減少、そもそも能登の将来推計人口は2045年には現在の半数以下になるとされ、「課題先進地域」でもある。そこに高校生たちが、この社会課題に挑んで能登の可能性を描いた。それがトキの壁画ではなかったろうか。
伝統文化を大切にする能登に、新たにトキがやって来る。かつて、本州最後の一羽のトキが能登にいた。「能里(のり)」との愛称で呼ばれていた。国の指示で1970年1月に捕獲され、繁殖のために佐渡トキ保護センターに移された。しかし、翌71年3月にケージの金網でくちばしを折ったことが原因で死んでしまった。もう半世紀も前のことだ。そのようなトキへの想いを祖父母から聴いて、あるいはトキの棲息の歴史を学んで描いたのだろうか。夢のある壁画だと思った。
⇒5日(木)夜・金沢の天気 くもり

