2025年 12月 6日の投稿一覧

★田の神さまへの感謝の気持ち忘れない 奥能登の「あえのこと」

★田の神さまへの感謝の気持ち忘れない 奥能登の「あえのこと」

JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」が日本海を南下して大雪をもたらす可能性があるとの予報を前回ブログ(今月3日付)で述べた。除雪を行うスコップを用意して身構えていた。金沢では3日の夜に初雪が観測され、4日朝は1.7度とこの冬一番の冷え込みとなった。豪雪地帯でもある白山のふもとの山間地では5日午前で20㌢余りの積雪となった。写真は、きのう5日午前8時40分ごろの金沢の自宅前の庭の様子だ。雷鳴とともに霰(あられ)が一時的に激しく降ってきた。その後は雨となり自然と霰も消えていった。そしてきょうは午後から晴れ間も出て、気温は13度まで上がり、寒波は峠を越えた。用意したスコップは一度も使わなかった。

話は変わる。不安定な天気の中で、きのう5日、能登半島の北部の奥能登では、民俗行事の「あえのこと」が営まれた。ユネスコ無形文化遺産にも登録(2009年)されているこの行事は各農家で営まれ、目が不自由とされる田の神さまを丁寧にもてなす農耕儀礼として知られる。家の主(あるじ)は、そこにあたかも田の神さまがいるかのように家に迎え入れ、食事でもてなし、一年の労をねぎらう。12月5日に迎え、春耕が近づく翌年2月9日に送り出す。「あえのこと」の「あえ」は饗応、「こと」は祭りを指し、「もてなし」を意味する。

去年元日の能登半島地震でこの年12月の「あえのこと」を中止した農家や簡素化した農家の話をよく耳にした。被害が大きかった奥能登(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)では震災による農地の亀裂や水路の破損、ため池の決壊などのため、奥能登の水田の作付面積は震災前の2800㌶から1800㌶に落ち込んだ。さらに奥能登を襲った9月の記録的な大雨に見舞われた。その後、土砂や流木の撤去、水路の整備などが行われ、ことしの作付面積は去年より100ha多い1900haとなり、7割近くに回復した。輪島市の白米千枚田では多数のひび割れが入り、耕せたのは去年は1004枚のうち120枚だったが、ことしは250枚に増やすことができた。(※写真は、能登町「合鹿庵」で執り行われた農耕儀礼「あえのこと」。田の神にコメの出来高などを報告する農業者=2016年12月5日撮影)

田んぼの復旧とともに田の神さまへの感謝の気持ちも戻ってきたようだ。地元メディア各社の報道によると、自宅が全壊した農家では隣家の納屋を借りて、あるいは敷地内に設置したインスタントハウス、あるいは仮設住宅で行ったりと、工夫して「あえのこと」が営まれたようだ。震災と豪雨に遭っても田の神さまへの感謝は忘れない。能登人の素朴で根強い精神性ではある。

⇒6日(土)夜・金沢の天気