★きょうから11月、冬の訪れ前に兼六園で「雪吊り」始まる
きょうから11月。金沢に住んでいて、そろそろ冬の準備をしましょうと告げるのが兼六園の「雪吊り」ではないだろうか。毎年11月1日から雪吊りが始まり、唐崎松(からさきのまつ)などの名木に施される=写真、2022年11月撮影=。木の横にモウソウ竹の芯(しん)柱を立て、柱の先頭から縄をたらして枝を吊る。唐崎松には5本の支柱がたてられ、800本もの縄が吊るされる。まるで天を突くような円錐状の雪吊りはアートのようにも見える。

なぜ雪吊りを施すのか。金沢の雪はさらさら感のあるパウダースノーではなく、湿っていて重い。庭木に雪が積もると「雪圧」「雪倒」「雪折れ」「雪曲」といった雪害が起きる。そこで、金沢の庭師は樹木の姿を見て、「雪吊り」「雪棚」「雪囲い」といった雪害対策の判断をする。唐崎松に施されるのは「りんご吊り」という作業で、このほかにも「幹吊り」(樹木の幹から枝に縄を張る)や「竹又吊り」(竹を立てて縄を張る)、「しぼり」(低木の枝を全て上に集め、縄で結ぶ)など樹木の形状に応じてさまざまな雪吊りの形式がある。
毎年の光景だが、雪吊り作業の様子をインバウンド観光の人たちが珍しそうに眺め、盛んにカメラを向けている。とても珍しい光景なのだろう。兼六園はミシュラン仏語ガイド『ボワイヤジェ・プラティック・ジャポン』(2007)で「三つ星」の最高ランクを得てから、インバウンド観光客が多く訪れるようになった。名木を守り、庭園の価値を高める作業ではある。兼六園では12月中旬ごろまで、800ヵ所で雪吊りが施される。
季節の話題をもう一つ。今月6日には北陸の冬の味覚の主役、ズワイガニ漁が解禁となる。石川県内の店頭ではオスの「加能(かのう)ガニ」、メスの「香箱(こうばこ)ガニ」が並ぶ。ズワイガニはご当地独自の呼びかたがあって、山陰地方では「松葉ガニ」、福井県では「越前ガニ」、そして石川県では「加能ガニ」と呼んでいる。ちなみに、加能とは、加賀と能登のこと。
「初物七十五日」という言葉がある。旬の時期に出回り始めた初物を食べると寿命が「七十五日」延びるという意味。 四季に恵まれた日本ならではの季節感で、それほど旬の食材を大切にしてきたということだろう。この11月は兼六園の雪吊りに始まり、ズワイガニ漁の解禁と続き、季節感が漂う。
⇒1日(土)夜・金沢の天気 あめ

