2025年 10月 の投稿一覧

☆どこまで続く株高「サナエノミクス」 どう手を打つ物価高対策

☆どこまで続く株高「サナエノミクス」 どう手を打つ物価高対策

自民党新総裁の高市早苗氏はこれまで経済政策として「積極財政」と「積極緩和」を訴え、「サナエノミクス」と称してきた。週明けの市場はそれを敏感にとらえ、日経平均は2100円を超えて、一時4万8000円台を突破した。一方で円相場は下落して、1㌦=150円台で推移した。サナエノミクスはこれがスタ-トとなるのかどうか。ただ、国民が求めるのは物価高対策だろう。高市氏はこれまで消費税率引き下げなどを論じてきたが、それは可能なのか。自民党本部で行われた新総裁の就任記者会見(今月4日)からその文脈を拾ってみる。(※写真は、今月4日に行われた総裁選で、決選投票前の「最後の訴え」を語る高市早苗氏=自民党公式サイトより)

物価高対策では、「国民が直面している課題に取り組まなければならない」と語り、臨時国会を開いて物価高対策に取り組む考えを示した。公約に掲げたガソリンと軽油の価格引き下げを前向きに述べ、財源には税収の上振れや基金を充てるとした。では、米価高騰など食品の物価高対策をどうするのか、対策が示されていない。

消費税引き下げについては、「自民党の税制調査会では多数意見とはならず参院選の公約にも入りませんでした。これから自民党の税制調査会の中で活発に議論をして、選択肢としては決して放棄するものではありませんけれども、すぐに私たちが対応できることをまず優先したい」と述べた。「選択肢として放棄しない」という言い方ははぐらかしのような表現だ。

 高市氏は現在の物価高について、「これでもうデフレではなくなったと安心するのは早い。賃金の上昇が主導して需要が増え、緩やかにモノの値段も上がっていく形のインフレがベストだ」と語っていた。おそくらこの発想には年金生活者の視線が欠けている。日本の人口の4割が「給与所得者」で3割が「年金生活者」というのが現実だ。誰しもが賃上げとインフレをベストと思っているわけではない。

以上は就任記者会見の動画配信を視聴して、物価高対策と消費税引き下げについて述べている部分を切り抜いての感想だ。物価高対策や消費税引き下げにしても公約として言葉を鮮明にしていたが、自民党総裁が決まったとたんにトーンダウンした印象がぬぐえない。

今月15日を軸に招集が検討されている臨時国会の首班指名選挙では、野党各党が候補を一本化するのが厳しい状況のため、自民党総裁が首相に指名される可能性が高い。その後はアメリカのトランプ大統領との信頼構築など難題が山積だろう。そんな中でも、国民の信頼を得るために、まず物価高対策に前向きに取り組んでほしいものだ。

⇒6日(月)夜・金沢の天気     はれ

★茶席のさりげない花入れはあの日本の歴史事件を伝える器

★茶席のさりげない花入れはあの日本の歴史事件を伝える器

金沢市の21世紀美術館の敷地にある茶室「松涛庵」で開催された茶会に出かけた。開催名が「スペシャルオリンピクス石川 チャリティー茶会」という、初耳の名称だ=写真・上=。待合にいた係りの人に、「スペシャルオリンピクスとは何のことですか」と尋ねると、こうだった。「知的障がいのある人たちに様々なスポーツトレーニングとその成果の発表の場である競技会を、年間を通じ提供しているスポーツ組織なんです」と。

さらに丁寧な説明があった。障がい者のスポーツにいくつかの分類があって、オリンピックと並行して開催されているパラリンピックは身体障がい者が集う国際スポーツ大会であり、聴覚障がい者の国際大会はデフリンピック、そして知的障がい者の大会はスペシャルオリンピックスと称されている。今回の茶会はスペシャルオリンピックの地方組織であるNPO法人「スペシャルオリンピックス日本・石川」を支援するために開催された茶会という。

このチャリティー茶会は金沢の裏千家の社中が主催していて、27年前に始まり、コロナ禍の中止をはさんで今年で25回目だという。今回初めてお誘いを受けた次第。そんな歴史といわれのある茶会とは知らずに出席して、正客をと勧められるままに席に着いてしまった。

掛け軸は「山色不離門」。その意味を席主の山本宗茂氏に尋ねる。山の景色が門から離れない、つまり、門を開ければいつでも山の景色が目の前にあるという意味という。掛け軸の前にある花入れ=写真・下=のカタチが気になり、尋ねた。すると驚きだった。花入れは、25年ほど前に玄界灘から揚がった「海揚がりの筒」という。この土で焼かれた筒は独特の形状から、鎌倉時代中期にモンゴル帝国(元朝)と朝鮮半島の高麗が2度にわたり日本への侵攻を仕掛けた、いわゆる「元寇」に使われた火薬を入れた器だと分かった。

ある意味で歴史的に価値のあるものだが、席主の山本氏は「茶席では花を入れて床の間に飾り、平和の証として使っているんですよ」とほほ笑んだ。会記には「高麗筒」と記されている。茶道の世界では、歴史的な価値というより、場を和ませる発想で珍しい焼き物が使われることがよくある。その意味で茶席という場はじつにクリエイティブな世界と言えるかもしれない。おかげで日曜のお茶を楽しませてもらった。

⇒5日(日)夜・金沢の天気   はれ

☆高市・自民新総裁の「ワークライフバランスを捨てる」という言葉

☆高市・自民新総裁の「ワークライフバランスを捨てる」という言葉

「火中の栗を拾います」。自民党の総裁選がきょう4日に行われ、高市早苗・前経済安保相が選出された。上位2人による決選投票で小泉進次郎農相を破った。今月15日召集を軸に調整が進む臨時国会で、首相に指名される見込みで、女性の首相就任は日本史上初めてとなる。冒頭の「火中の栗」は、総裁選の投開票に向けて開いた陣営の決起大会での言葉で、「私は火中の栗だろうが何だろうが拾う。先見性と実行力が自分の強み」と述べた。

午後6時からの総裁採択後の記者会見で、高市氏は「今の暮らしの不安や未来への不安を夢や希望に変える政策を打ち出してくれる政党だな、と感じていただける党運営をしていきたい」と冒頭で述べていた。今後の政策決定の方針については、「私自身が総裁選で訴えた政策の方向性だけでなく、多くのみなさんの意見を聞きながら議論しながら、皆様に『そうだな』と思っていただける方針を打ち出せる政党にしたい」と話した(4日付・日経新聞Web版)。

さらに、臨時国会で物価高対策などに取り組む考えを示し、「できるだけすみやかに国民が直面する課題にとりくまなければならない。物価高対策に力を注ぎたい」と強調。外交について、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)に触れ、「もっともっと日本が前に出て世界平和に貢献ができる、多くの方々が共通課題から救われる、そういった姿を見せていきたい」と述べた(同)。

総裁選後の直後に述べた高市氏の演説。「私は約束を守ります。全世代総力結集で、全員参加で頑張らなきゃ立て直せませんよ。だって、人数少ないですし、もう全員に働いていただきます。馬車馬のように働いていただきます。私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます。働いて働いて働いて働いて働いて参ります。皆様にもぜひとも日本のために」

ここで気になったのは、「ワークライフバランスという言葉を捨てます」という言葉。ワークライフバランスは仕事と生活の調和のことを言う。高市氏はある意味で北陸では知られた人でもある。夫の山本拓氏は福井県出身の元衆院議員で、去年の衆院選で福井2区で落選した。その後、脳梗塞を患い右半身が動かない後遺症が残り、高市氏が介護していることで知られている。ワークライフバランスを捨てることで今後、夫の介護とどう関わるのか。少々気になった。(※写真は、4日付・NHKニュースWeb版から)

⇒4日(土)夜・金沢の天気  くもり

★自民総裁選は終盤~党員票は高市、ステマ騒動が尾を引く小泉~

★自民総裁選は終盤~党員票は高市、ステマ騒動が尾を引く小泉~

自民党総裁選はあす4日に投開票が行われる。メディア各社は終盤の情勢を追っている。フジ系FNNによる全国の党員票の動向調査(3日付・Web版)では、高市前経済安全保障担当相が地元の奈良県など関西圏をはじめ17の都道府県で他の4候補をリードしている。小泉農水相は地元・神奈川県など15の県で優勢で、高市氏を追っている。高市氏と小泉氏は6つの県で競り合っている。林官房長官は地元の山口県など4つの県で優勢で、茂木前幹事長と小林元経済安保相は苦戦している。

一方、国会議員票の動向については、小泉氏が80人を上回る支持を固め、党員票の動向と合わせ、現時点で総合的にトップとなっている。次いで林氏が約60人、高市氏が40人を超える議員の支持を固めていて、党員票の動向を踏まえると、高市氏、林氏による2位争いが展開される見通し。ただ、態度を明らかにしていない議員が50人ほどいるため、トップを巡る争いは予断を許さない情勢となっている。

NHK「マイあさ!」(2日付・Web版)から。議員票について、記者のコメント。「小泉さんがおよそ70人、高市さんがおよそ40人を固めています。この2人の間に、およそ60人を固めている林さんがいます。小林さんと茂木さんはおよそ30人を固めています。小泉さんはもともと派閥には所属していなかったこともあって、党内幅広く支持を集めています」

党員票について記者のコメント。「高市さんが、ほかの4人を先行しています。そのあとに、小泉さんと林さんが続く展開となっています」「高市さんは、去年(令和6年)の総裁選でも党員票はトップでしたが、その後も全国各地を歩いていますので、知名度はありますし、ネット戦略は、ほかの陣営が一目置いています。一方の小泉さんは、先週、陣営内でのステマ問題が明らかになりましたよね。好意的なコメントを動画配信サイトに投稿するよう要請していたわけですが、陣営の中から党員の支持獲得への影響を懸念する声が聞かれます」

読売新聞社は終盤の情勢を淡々と報じている(3日付・Web版)。「小泉進次郎農相と高市早苗・前経済安全保障相が先行し、林芳正官房長官が追う展開となっている。小林鷹之・元経済安保相、茂木敏充・前幹事長も支持拡大を図っている」

朝日新聞系のAERAは面白い分析をしている(1日付・Web版)。「実は永田町では、小泉氏のステマ疑惑の前から、『小泉VS.高市では小泉が勝つが、小泉VS.林では林が勝つ』との声が多かった。決選投票では安定感がある林氏に議員票が流れるとの見方だ」

⇒3日(金)夜・金沢の天気   くもり

☆大阪万博の大屋根リングを能登震災の復興公営住宅に再活用へ

☆大阪万博の大屋根リングを能登震災の復興公営住宅に再活用へ

大相撲秋場所で横綱昇進後で初の優勝を果たした大の里関の故郷・石川県津幡町では栄誉を称える懸垂幕が町役場で掲げられている=写真・上=。千秋楽(9月28日)の優勝決定戦を見事制しての賜杯だっただけに、町の人たちの喜びもひとしおだろう。ことし6月には横綱昇進を讃える懸垂幕が掲げられていたので、それに続いて10回目の掲揚となる。「唯一無二」を座右の銘に突き進む25歳の活躍、そして掲げられる懸垂幕は町の人たちにとっての誇りであるに違いない。町の係の人に尋ねると、懸垂幕は大相撲九州場所の番付が発表される11月27日まで掲げられるようだ。

話は変わる。去年元日の能登半島地震から1年9ヵ月となる。被災地ではいま復興公営住宅の建設などが進めてれている。そんな中、地元メディアのこの報道には驚いた。仕掛け人は誰だろうか、と。大阪・関西万博の閉幕まで2週間を切り、連日多くの来場者でにぎわっているようだ。その万博会場の「大屋根リング」=写真・下=が、能登地震の復興公営住宅などに再利用されることが決まったとニュースで報じられている。

大屋根リングは1周2㌔、高さ最大20㍍の世界最大の木造建築物としてギネス世界記録にも認定されている。報道によると、使用された木材は2万7000立方㍍で、今月13日の閉幕後は一部を除いて解体されることが決まっている。万博協会は解体後の木材を無償で譲渡することにしていて、能登半島の尖端に位置する珠洲市が「復興公営住宅への活用」をテーマに応募していた。このほど譲渡が採択され、9月30日に珠洲市に譲渡決定の通知が届いた。万博協会と珠洲市との正式な契約は今月中旬に行われる見込みで、譲り受ける木材の量は未定だという。

このニュースを読んで、建築家の坂茂(ばん・しげる)氏の関わりを想像した。坂氏は1995年の阪神大震災を契機に災害支援に取り組んでいて、能登半島地震でもいち早く行動を起こしたことで知られる。珠洲市には坂氏が監修した仮設住宅が整備されている。木造2階建ての仮設住宅は木の板に棒状の木材を差し込んでつなげる「DLT材」を積み上げ、箱形のユニットとなっている。石川県産のスギを使い、木のぬくもりが活かされた内装となっている。

今後、珠洲市で進められる復興公営住宅の建設資材に万博のシンボルである大屋根リングがどのように再活用されるのか。そこに著名な建築家のアイデアが凝らされるとしたら、まさにレガシーを感じさせるストーリーではないだろうか。

⇒2日(木)夜・金沢の天気  くもり

★能登の隆起海岸の見どころ~上陸したゴジラ岩、白い貝付き岩~

★能登の隆起海岸の見どころ~上陸したゴジラ岩、白い貝付き岩~

能登半島の尖端に位置する珠洲市馬緤(まつなぎ)町の沿岸に「ゴジラ岩」と呼ばれる奇岩がある。空に向かって炎を吹き出す怪獣ゴジラに似ていて、その名が付けられた。日本海の高波に向かって、ゴジラが吠えているようにも見え、なかなか面白い。ことし9月13日、同市の須須神社に「寺家キリコ祭り」を見学に行った帰りにこのゴジラ岩を見るため立ち寄った。ことし2月8日にもこの地を訪れているが、この日は吹雪と高波で周囲はよく見えなかった。なので去年元日の能登半島地震以降でゴジラ岩をじっくり眺めるのは9月のこの日が初めてだった。

地震で海岸線は最大で4㍍隆起したことが観測されているが、ゴジラ岩周辺も例外ではなかった。もともとこの岩は波打ち際にあったが、1㍍ほど隆起したのだろうか、周囲の岩石とともに陸地に上がっている。まるでゴジラが上陸したようなイメージだ。このほかにも、輪島市門前町では細長い砂浜が隆起して砂丘地のようになったところもある。(※写真・上は、震災前のゴジラ岩、その下は震災後の隆起したゴジラ岩)

地震による隆起で石川県の面積が広がったようだ。国土地理院は全国の都道府県と市区町村の面積を公表した(9月26日)。それによると、能登半島地震による海岸線の隆起の影響で、石川県の面積が4.74平方㌔拡大した。顕著だったのは能登外浦の2市1町(輪島、珠洲、志賀)で、輪島市は2.78平方㌔、珠洲市で1.72平方㌔、志賀町で0.24平方㌔だった。ちなみに金沢の兼六園の広さ0・11平方㌔なので、隆起で拡大した面積は兼六園の43倍に相当する。

では、広がった海岸線をどのように活用すればよいのだろうか。すでに、国道249号で崩落したトンネルや土砂崩れの道路では、隆起した海岸を活用した「緊急復旧道路」が整備されている。海岸線を走る実にダイナミックな道路だ。これは個人的に感じたことだが、4㍍隆起した輪島市の鹿磯海岸では海底の岩石がそのまま陸地化して、岩石にはアワビやサザエ、二枚貝などがびっしりと付着していて 全体が白くなっている=写真・下=。ここを能登の多様な貝類の観察の場にしてはどうか。冒頭で述べた、上陸したゴジラ岩も面白い。これらを震災の復興観光として活かせないだろうか。

⇒1日(水)夜・金沢の天気   はれ