2025年 9月 25日の投稿一覧

★北斎と広重の浮世絵236点 叙情豊かに迫る臨場感

★北斎と広重の浮世絵236点 叙情豊かに迫る臨場感

芸術の秋来る。金沢市の石川県立美術館で、浮世絵の二大絵師、葛飾北斎と歌川広重の展覧会が開催されている。タイトルが面白い。「北斎・広重 大浮世絵展 巨匠対決!夢の競演 あなたはどっち派?」=写真=。きょう鑑賞に行ってきた。

会場には北斎の『冨嶽三十六景』や、広重の『東海道五拾三次之内』など作品236点が展示されている。タイトルにある、北斎と広重の対決の第一章が「東海道五十三次」。解説書によると、広重は天保3年(1832)、江戸幕府が京都の朝廷へ馬を献上する「八朔の御馬献上」の一行に加わり京を目指し、その時のスケッチをもとに、翌年『東海道五拾三次之内』を刊行した。当時広重は37歳で、これが大ヒットし人気絵師となる。一方の北斎はこれより30年以上も前の享和~文化年間(1801~1817)に7種の『東海道五十三次』シリーズを描いている。

ポスターにある絵を鑑賞する。上はよく知られた北斎の『冨嶽三十六景』の「神奈川沖波裏」。北斎が生涯こだわりを持って挑み続けたのが「波」の表現とされる。この作品の波はまさに変幻自在に描かれ、海外では「The Great Wave」という名で知られる。今にも飲み込まれそうな小舟、小さく聳(そび)える富士山が大波の臨場感を引き立てる。そして、ポスターの下は広重の『東海道五拾三次之内』の「日本橋 朝之景」。朝焼けを背に国許(くにもと)へ帰る大名行列が橋を渡り始める様子が描かれている。箱持ちを先頭に毛槍と続き、陣笠の武士たちが整然と列をなしている。日本橋の手前には魚河岸から帰った魚屋や野菜売りがいて、人々の営みが生き生きと描かれている。

会場では広重の絵をじっくり鑑賞した。伝わってくるのは、自然をめでる人の感性に寄り添うような親しみやすさだ。『東海道五拾三次之内』の「沼津 黄昏図」から感じたこと。夕闇の中、宿へ急ぐ巡礼の親子と、その後ろに祭りの神「猿田彦」の面を背負った、おそらく金毘羅詣の旅人の姿がある。並木の間に月が浮かぶ。何とも風情ある光景だ。どんな気持ちで旅路を行くのか。日本人の感性として、画中の人物に感情移入したくなる。

北斎は巧みな線による大胆な構図と独創的な画風で風景を、そして広重は旅情を感じさせる光景を描いている。このほか北斎と広重の役者絵や妖怪絵、滑稽絵など浮世絵の競演が楽しめる。236点を鑑賞するのに3時間余り費やした。

⇒25日(木)夜・金沢の天気