2025年 5月 の投稿一覧

★能登地震1年4ヵ月 復興の現状は~隆起沿岸を使う~

★能登地震1年4ヵ月 復興の現状は~隆起沿岸を使う~

能登の海岸は日本海側を外浦(そとうら)、そして七尾湾側の方を内浦(うちうら)と呼んでいる。去年元日の地震で外浦は海岸の隆起、内浦は津波や地盤沈下が起きた。外浦の輪島市門前町の鹿磯(かいそ)漁港では、地震で海底が4㍍も隆起した。漁港の海底の一部が陸になり、漁船が乗り上げたような状態になった写真・上、2024年3月4日撮影=。これだけ隆起したので、漁船が港に入れない状態が続いていた。  

輪島漁港でも海底が1㍍から2㍍盛り上がって、漁船200隻が港から出れなくなった。船を動かすと、船の底が海底にぶつかる可能性があるので動かせない状態が続いていた。輪島漁港は石川県で一番の漁獲高を誇る港だったが、ほぼゼロに。水産庁などが一刻もはやく漁船が港から出れるようにと、海底の土砂をさらう浚渫(しゅんせつ)作業をいまも行っている。漁船は11月ごろから徐々に漁に出れるようになり、いまはノドグロなどを取っている。

鹿磯漁港に漁船が接岸できるようになったと地元メディアが報じていたので、現地に行ってみた(今月3日)。漁船が海で取った魚を陸に移すことを「水揚げ」と言うが、沿岸が隆起して陸に近づけなかったのでこれまで水揚げはできなかった。実際に鹿磯漁港に行ってみると、なるほどと思った。隆起した部分に道をつけ、漁獲した魚を水揚げする場所が新たに設けられていた=写真・下=。

隆起した部分をうまく使っている。復旧・復興というのは元通りに戻すのではなく、変化した現場をうまく活用して現状復帰することではないかと、このとき教えられた。鹿磯漁港のほかにも、外浦でトンネルが崩落し、国道249号が部分的に通行止めとなっていたが、トンネル横で隆起した海岸に道路が造られ、いまでは全線で通行が可能になっている。

⇒5日(月・祝)午前・金沢の天気  はれ 

☆能登地震1年4ヵ月 復興の現状は~オフグリッドの先端へ~

☆能登地震1年4ヵ月 復興の現状は~オフグリッドの先端へ~

「奥能登 人口5万人割れ」とメディア各社が報じている。石川県がきのう(1日)発表した県内の「人口と世帯の推計結果」によると、能登半島地震の被害が大きかった奥能登の2市2町(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)の人口は4万9558人となった。去年元日の地震発生からことし4月1日までの1年3ヵ月の人口推計で、5655人減り、減少率は10.24%となった。奥能登はもともと過疎・高齢化による人口減は進んでいたが、地震が拍車をかけた。

その奥能登で時代の先端を行くような試みを行っているチ-ムがある。一般社団法人「現代集落」のプロジェクト。能登の「限界集落」が「現代集落」になる可能性があるのと発想で、水や電気や食を自給自足でつくる集落をつくり、自然のなかで楽しむ生活を「ビレッジDX」と位置付けている。金沢町家の一棟貸し民宿の経営を行っている林俊伍氏が代表理事となり、建築家らが参加している。

プロジェクトのモデル地区となっているのが、珠洲市の真浦(まうら)地区=写真=。これまで何度か現地を訪れている。去年8月に行くと、住家の庭に四角のテーブルのようなものがあった。近くの人に訪ねると、衛星インターネットの「スターリンク」とのことだった。あのアメリカの実業家イーロン・マスク氏が率いる「SpaceX」のインターネット。光ファイバーによるネット環境が整った都市部や平野部などとは違い、真浦地区は回線環境が整っていない。そこで、アンテナを設置するだけで高速インターネットが利用できるスターリンクはリモートワークをする人たちにとっては不可欠との説明だった。

その真浦で今度は、自給自足の生活を理解してもらうための「モデルルーム」が完成した(メディア各社の報道)。薪ストーブでの発熱や、地下水をろ過装置した生活用水など。太陽光での発電(電力は蓄電池でにためる)もある。電力の日常使いでは、電力会社からの電気と自家発電した電気を手動で切り替えながら使う。取り組みに参加する世帯が広がることで、将来は集落全体でエネルギーをまかなう構想という。

モデルルームの披露会に出席した珠洲市の泉谷満寿裕市長は「オフグリッド化は珠洲市のモデルになる仕組み」と述べた(今月29日付・日経新聞)。オフグリッド(off-grid)という言葉は、公共のインフラに依存せずに電力や水道などを独立して確保する生活様式の意味でまさに自給自足のこと。珠洲市では地震による水道管の破損で大規模な断水を起きたことから、水源を集落単位で確保するオフグリッド化を目指している。真浦の取り組みは行政に先んじていると市長が評価した。

一社現代集落では今年度内にオフグリッドの生活を営む5世帯から10世帯の参加を見込んでいる(同)。オフグリッドは世界が注目するトレンドでもある。この取り組みが被災地、過疎化の復興の先端となるか。

⇒2日(金)午後・金沢の天気 あめ

★能登地震1年4ヵ月 復興の現状は~仮設から公営住宅へ~

★能登地震1年4ヵ月 復興の現状は~仮設から公営住宅へ~

きょう5月1日で能登半島地震から16ヵ月となる。震災の被害状況を公表している石川県危機対策課のまとめによると、県内の犠牲者は581人に増えている。震災で家屋の下敷きになるなどして亡くなった直接死は228人、避難所などでの疲労やストレスが原因で持病などが悪化して亡くなった災害関連死が353人(うち7人は自治体の公式認定待ち・4月30日時点)。石川以外にも富山県で4人、新潟県で6人が関連死と認定されていて、3県で591人が震災で亡くなったことになる。

建物も甚大な被害となっている。住家は全壊が6151棟、半壊が1万8646棟となっており、一部損壊を合せた住家被害は11万6069棟に上る。空き家や納屋などの非住家の損壊は3万7103棟(半壊以上)、公民館など公共施設443棟にも被害が及んでいる(県危機対策課まとめ・4月30日時点)。

石川県が整備していた地震被害の仮設住宅6882戸は入居を終えている。仮設住宅はあくまでも応急措置であり、契約期間は原則2年だ。復興となると、長年にわたって使える公営住宅が急がれる。県の公式サイト「復興公営住宅の整備状況について」によると、能登を中心に9市町(輪島市、珠洲市、能登町、穴水町、七尾市、志賀町、中能登町、羽咋市、内灘町)で被災者向けの公営住宅を建設する。

被害が大きかった輪島市では4ヵ所で公営住宅が整備される計画で、中心街に近い同市宅田町ではRC造(鉄筋コンクリート造り)の集合住宅150戸が2027年3月までに建設される。県では9市町で計3000戸程度の公営住宅を建設する見通しを示していて、「災害に強く地域の景観やコミュニティの維持に寄与し、子供から高齢者まで安心して暮らせる環境や持続性を持った住まいづくり」を整備指針に掲げている。

災害に強く持続性を持った公営住宅が復興のシンボルの一つとなるのか、どうか。(※写真は、能登半島の尖端に位置する珠洲市の仮設住宅。建築家・坂茂氏が設計などを手掛けた)

⇒1日(木)午前・金沢の天気 はれ