★「清く貧しく美しく」哲人政治家ホセ・ムヒカ氏逝く
金沢の自宅庭にシャクヤクが花を咲かせている=写真・上=。「立てばシャクヤク、座ればボタン、歩く姿はユリの花」という言葉があるように、上品な女性の姿をイメージさせる。花言葉は「恥じらい」。とても優雅な花なのに、「恥じらい」とは、なぜと

思ってしまう。その由来は、シャクヤクは夜になると花を閉じる習性があり、その姿から「恥じらう様子」がイメージされたようだ。それにしても花は精気を放ち、心を和ませてくれる。
話は変わる。 「世界一貧しい大統領」として知られたウルグアイの元大統領、ホセ・ムヒカ氏が今月13日、亡くなったと報じられている。享年89歳、2010年から15年まで大統領を務めた。4年半ほど前になるが、朝日新書『ホセ・ムヒカ 日本人に伝えたい本当のメッセージ』(2016)を読んでその人となりに感動し、このブログで書いたことがある。以下、再録する。
ムヒカ氏の言葉は日本人に心によく刺さる。「私が思う『貧しい人』とは、限りない欲を持ち、いくらあっても満足しない人のことだ。でも私は少しのモノで満足して生きている。質素なだけで、貧しくはない」。まさに人生訓だ。もう一つ。「生きていくには働かないといけない。でも働くだけの人生でもいけない。ちゃんと生きることが大切なんだ。たくさん買い物をした引き換えに、人生の残り時間がなくなってしまっては元も子もないだろう」

ムヒカ氏がよく使う言葉は「Nobody is more than nobody」(英訳、同書)。誰も誰かより偉いということはない、という意味だろう。近い響きが、福沢諭吉の「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずといへり」(『学問のすゝめ』)ではないだろうか。こうしたムヒカ氏の言葉はどこからくるのだろか。ウルグアイの軍政下で13年にも及んだ刑務所生活での悟りのなのだろうか。ちなみに福沢の「天は人の上に・・」はアメリカの独立宣言の一節「・・ that on all men are created equal on、・・」 を意訳したものといわれている。(※写真・下は、朝日新書『ホセ・ムヒカ 日本人に伝えたい本当のメッセージ』の帯から)
ムヒカ氏は世界に向けても言い放った。2012年6月、ブラジルのリオデジャネイロで開催された「国連持続可能な開発会議」(Rio+20)での演説。「西洋の豊かな社会と同じような消費と浪費を、世界の70億、80億の人ができると思いますか」「発展することが幸福を損なうものであってはなりません。発展とは、人間の幸せの味方でなくてはならないのです」と。
この著書を読んで思い浮かべたのは「清貧」という言葉だった。大統領在任中は公邸ではなく、質素な農場の自宅で暮らし、収入の大半を貧しい人たちに寄付した。あえて「清く貧しく美しく」という生き方を実践した人物だった。冒頭のシャクヤクのような、人生の花を咲かせた。冥福を祈りたい。
⇒15日(木)夜・金沢の天気 はれ