★能登の湾に浮かぶソーラーパネル 「とり貝」をICT養殖
能登の海を眺めているといろいろなことに気づく。内浦(うちうら)と称されている半島の東側の湾沿いでは、たくさんの「浮き」が並んでいる。浮きの下には、カキの種苗を付着させたホタテの貝殻をロープに通したものを吊り下げている。こうしたカキの養殖が盛んで、「能登かき」は人気ブランドになっている。
能登の里山の栄養分が川を伝って流れ、七尾湾に注ぎこむ。その栄養分が植物プランクトンや海藻を育み、海域の食物連鎖へと広がり、カキがよく育つとされる。とくに、里山の腐葉土に蓄えられた栄養分「フルボ酸鉄」が豊富にあるとされる。

そうした大量の浮きに交じって、湾の中にソーラーパネルが浮いている=写真・上=。何だろうと思って眺めていると、近くに漁師らしき人が通りかかったので尋ねた。「あれ何ですかね」と。すると、「トリガイだよ」と。「最近はあんなの使って養殖しとるんや」と。ソーラーパネルの筏(いかだ)の横には養殖用らしき筏も並んでいる。自宅に戻ってネットで調べた。分かったのは「スマート養殖」と呼ばれる、ICTを活用した養殖方法のようだ。
トリガイはホタテやアサリと同じ二枚貝の仲間で、寿司ネタとして利用される高級品種だ。ただ、養殖が難しい貝で、能登での生産量も数千個ほどとされ、市場にもそれほど多く出回ってはいなかった。それが、このところ「能登とり貝」として人気となっている。先日(今月8日)金沢市の卸売市場でことしの初競りが行われ、最も大きなものは1個6万円で落札されたと地元メディア各社が報じていた。
その「能登とり貝」を成長させているのが、どうやらICT養殖のようだ。筏にセンサーを設置して海の水温や塩分、酸素濃度、そして餌となるプランクトンの量などをチェックする。そして、稚貝の入ったかごを吊るした養殖筏を適切な海域に移動して育てる。これまで漁師の経験と勘で筏を設置する海域を決めていたが、海水温などの環境変化が著しいことから、センサーで監視するようになったようだ。その電源としてのソーラーパネルの筏が養殖筏の近くにある、という訳だ。
ことしは6万個の水揚げが見込まれ、生産量の6割が東京に、4割が金沢に出荷される(9日付・日経新聞)。「能登かき」に次いで、「能登とり貝」も人気ブランド化する日が近い。
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