2025年 4月 の投稿一覧

★被災地輪島で野口健氏の野菜プロジェクト 民間新築に復旧・復興の足音

★被災地輪島で野口健氏の野菜プロジェクト 民間新築に復旧・復興の足音

能登半島地震や豪雨災害で被害を受けた能登のニュースを地元紙でチェックしている。とくに、被災住宅などを所有者に代わって自治体が解体や撤去を行う「公費解体」がどの程度進んでいるのか、復旧・復興のステップとなるだけに気になる。きのう(5日付)の記事で、「公費解体2万2485棟完了」の見出しで3月末時点で、解体見込み数の57%に当たる2万2485棟で完了したとの石川県の発表があった。詳細に読むと、豪雨分を含めた解体見込み数は3万9235棟で、解体率は前月から9ポイント上昇した。解体率を市町別でみると、穴水町が73%、珠洲市が67%、輪島市が59%、志賀町が57%などとなっている(※小数点以下は四捨五入)。

県ではことし10月までに公費解体を終わらせる予定だ。そこで、きのう「57%の現状」を見に輪島市に行ってきた。同市では自治体の中でも最も多い1万1267棟の解体を予定していて、解体作業には4、5人の作業グループが329班が市内に入っている。土曜日にかかわらず、多くのパワーショベルやトラックが忙しく動いていた。

これまで輪島の被災地へは何度か足を運んでいるが、これまでに見たことのない光景がいくつかあった。その一つが市内の中心部・河井町にある重蔵神社でのテントと人の行列だった=写真・上=。「KEN NOGUCHI」と横断幕がかかったテント。登山家の野口健が代表を務める環境と国際協力の団体「認定NPO法人ピーク・エイド」が主催して行っている震災支援の野菜プロジェクト。ネットで調べると、ピーク・エイドでは全国から有志の自治体を募り資金を調達し、輪島市内の業者から野菜を購入して市民に無料で配布している。すでに、40回余りに及んでいるようだ。

もう一つの光景が民間の新築。これまでブログでも紹介したように被災者は避難所から仮設住宅に住んでいて、さらに行政は公営住宅の建設にまもなく着手する。そんな中で、民間の新築と思われる建物を初めて見た=写真・下=。場所は輪島市街地の入り口にあたる県道沿いで、平屋建てだ。車を降りて眺めてみると、作業員が屋根の部分の作業に携わっていた。見た限りでは、住宅というより、アパートか、あるいは作業場のようにも見える。トントントン、カンカンカンと音がして、復旧・復興の足音のように感じた。

⇒6日(日)午後・金沢の天気    くもり時々あめ

☆「森は海の恋人」畠山重篤氏逝く 里山と里海の連環を説いた先駆者

☆「森は海の恋人」畠山重篤氏逝く 里山と里海の連環を説いた先駆者

朝から日差しが届き、春らしい穏やかな天気となった。金沢の桜は満開間近となっている。犀川と並んで市街地を流れるもう一つの河川、浅野川の河川敷を散歩した。近くには茶屋街として知られる東山界隈があり、観光客が大勢訪れていた。河川敷では花見宴会を楽しむグループも。絵になる風景があった。菜の花とソメイヨシノの競演だ。黄色とピンクの花が咲き誇り、気持ちを和ませてくれる=写真・上=。

話は変わる。ブログのことし3月11日付「★『3・11』あれから14年 目に焼け付くあの光景、心に刻む畠山重篤氏の言葉」で紹介した畠山重篤氏が今月3日に逝去されたときょう5日付の新聞で掲載されていた。享年81歳。宮城県気仙沼市でカキの養殖を営んでいて、カキの栄養分は里山でつくられるので海の環境を守るためにと、1989年に植林活動を始めた。山に大漁旗を掲げ、漁師たちが植林する活動は「森は海の恋人」運動として全国で知られるようになった。国際的にも評価され、2012年2月には世界の森林保護に取り組む国連機関「国連森林フォーラム」(UNFF)から「国際森林ヒーロー」に選ばれている。

畠山氏と知り合うきっかけは、2010年8月に金沢大学が能登で実施していた社会人人材育成事業「能登里山マイスター養成プログラム」で講義をいただいたことだった。事前に気仙沼のご自宅に伺い、プログラムの趣旨を説明すると、「それは森は海の恋人と同じ」と快く引き受けていただいた。翌年、東日本大震災の直後の2011年5月に東京でお会いして、その年の9月に能登で開催したシンポジウムで、「人は自然災害とどのように向き合っていけばよいのか」をテーマに基調講演をいただいた。

直近ではもう10年前になるが、2015年3月15に金沢大学「能登里山里海寄付研究部門」設立記念フォーラムを能登で開催。基調講演を「森里海の復興から地域再生へ」と題していただた=写真・下=。印象に残る話が、森は海の恋人運動がルイ・ヴィトンから支援を受けているという内容だった。ルイ・ヴィトンの創業者はフランスとスイスの国境にあたるジュラ山脈の出身で、森林の再生にチカラを入れている。さらに60年前、フランス・ブルターニュ地方の牡蠣が病気によって壊滅的被害に遭った際に、宮城県産の種牡蠣がフランスに渡り牡蠣業界を救ったという経緯もある。東日本大震災を契機にルイ・ヴィトンが恩返しに森は海の恋人運動を支援するようになった。

ルイ・ヴィトンの支援があり、畠山氏は「おかげで(震災から)3年目にはイカダが沈みかけるほどカキが実った」と。その語りは、心と心が自然に響き合うような口調で心に残っている。桜と菜の花を添えて、冥福をお祈りしたい。

5日(土)夜・金沢の天気    くもり

★「独裁者」なのか、「改革者」なのか~アメリカ・韓国の大統領の振る舞い方

★「独裁者」なのか、「改革者」なのか~アメリカ・韓国の大統領の振る舞い方

それにしてもよく分からないニュースだ。メディア各社の報道によると、韓国の尹錫悦大統領による「非常戒厳」の宣布(2024年12月3日夜)をめぐり、憲法裁判所はきょう4日、弾劾訴追された尹氏の罷免を8人の裁判官の全員一致で決定した。尹氏は即時失職し、60日以内に大統領選が行われる。憲法裁は戒厳令は違憲で、国会に対する軍の投入などについても違法かつ重大だと認めた。大統領が弾劾・罷免されたのは2017年3月の朴槿恵氏以来2人目だ。

よく分からないのは、尹氏が「非常戒厳」を宣布した理由だ。政府の方針に反対し続ける最大野党「共に民主党」を国政をマヒさせる「反国家勢力」と指弾し、戒厳令を出して国会などに軍や警察を投入した。が、国会が2時間半後に戒厳令の解除を要求する決議案を可決し、その後に解除された。このときの尹氏は大統領の権限をさらに超えた「独裁者」として立ち振る舞おうとしたのか、あるいはマヒした国政を改革するための手立ての第一歩として、「非常戒厳」の宣布をしたのか。独裁者になろうとしたのか、改革者になろうしたのか。

アメリカのトランプ大統領についてもよく分からない。今月2日に世界各国からの輸入品に対して「相互関税」をかけると公表し、各国に一律10%の関税をかけたうえで、国・地域ごとに異なる税率を上乗せした。トランプ氏はこのとき、「2025年4月2日はアメリカの『Liberation day(解放の日)』として永遠に記憶される」と演説し、相互関税を実施するための大統領令に署名した。アメリカは第二次世界大戦後に率先して関税を引き下げ、いわゆる自由貿易体制を構築した。それをぶっ壊し、先進国で最も閉ざされた孤立市場に変質した。

大統領権限で相互関税を発動する根底には、トランプ氏がこれまで何度も述べているように、年1.2兆㌦を超えるアメリカの貿易赤字や工業を中心とした国内産業の空洞化がある。このため中間層が破壊され、勝者と敗者を生み出す経済構造になったと憂い、これをトランプ氏は今回の演説でも「国家の非常事態」と強調した。そして、相互関税により6兆から7兆㌦がアメリカに流入するとの見通しを示し、「市場は活況となり、株価は上昇し、国は急成長するだろう」と語った。

しかし、今回の一律関税および相互関税が額面通りに実行に移された場合、もっとも割を食うのはアメリカ経済ではないのか。個人消費がGDPの7割を占めるので、輸入品の値上がりの影響を直接こうむることになる。そして今、アメリカ株の全面安、ドル安など金融市場に激震が走っている。このまま景気後退へと突入していくのか。

⇒4日(金)夜・金沢の天気   くもり

☆クルーズ船入港ラッシュの金沢港 港の有事利用もこれから整備へ

☆クルーズ船入港ラッシュの金沢港 港の有事利用もこれから整備へ

金沢港ではクルーズ船の入港ラッシュが始まっている。先日(先月30日)能登へ行く途中に金沢港に立ち寄ると、モナコ船籍のクルーズ船「シルバー・ミューズ」(4万791㌧・定員596人)が停泊していた=写真=。港の埠頭には観光バスが10台ほど並び、インバウンドの乗船客が乗り込んでいた。一般社団法人「金沢港振興協会」公式サイトによると、この日の朝に韓国の釜山から到着し、翌31日夜に青森港に向けた出発したようだ。このほかにも、今月8日にはこの船の4倍の大きさのスイス船籍「MSCクルーズ」(17万1598㌧・定員4386人)が入港する予定のようだ。3月から6月までの4ヵ月間で計32隻が寄港することになっている。

その金沢港に関する気になるニュース。メディア各社の報道(2日付)によると、政府は有事の際に自衛隊や海上保安庁による利用に備えて整備する「特定利用空港・港湾」に7道県の計8ヵ所を追加すると決定した。追加された8ヵ所のうちの港湾として金沢港が入っている。港湾では輸送鑑や護衛艦などの接岸に向けて海底の掘り下げや岸壁整備が行われる。個別の経費は掲載されていないが、2025年度予算で8ヵ所で計968億円を充てる。

記事によると、同じ日本海側で鳥取・島根両県の境港も今回、有事利用施設に追加されている。これまで北海道や沖縄で港湾の有事利用施設が整備されてきたが、新たに日本海側でも整備を急いでいるような印象を受ける。ちなみに、同じ日本海側ではこれまで福井県の敦賀港と福岡県の博多港の2港だった。なぜ日本海側で有事利用施設を増やすのか。

去年2024年6月に日米韓の海上保安機関による合同訓練「フリーダム・エッジ」を初めて実施。アメリカ沿岸警備隊の巡視船など3ヵ国の船が日本海に集結し、京都・丹後半島沖で大掛かりな訓練を実施している。11月には自衛隊とアメリカ軍、韓国軍による共同訓練を東シナ海で実施し、アメリカ軍の原子力空母「ジョージ・ワシントン」など艦艇7隻が参加している。一方のロシア海軍は去年9月に「オケアン(大洋)2024」と名付けた大規模な海上演習を実施し、極東ウラジオストクに近い日本海では中国軍の艦船4隻が参加している。まさに、海上でのにら見合いの様相だ。金沢港にアメリカ軍の原子力空母が入る日がやってくるのか。

⇒3日(木)午前・金沢の天気   くもり時々あめ

★テレビ局という「ムラ社会」の発想と人権社会の感覚の隔たり

★テレビ局という「ムラ社会」の発想と人権社会の感覚の隔たり

かつて民放テレビ局に籍を置いたことがある自身の読みだが、一連のフジテレビ問題、これは民放の企業風土の問題そのものではないだろう。ある意味で民放はタテ割り社会で、たとえば番組のプロデューサーが番組制作に関わる人選(ディレクターや出演スタッフ)や制作会社の選定など担う。キー局のゴールデン番組ともなれば、おそらく数百人の規模ではないだろうか。なので、スタッフはプロデューサーには逆らえない。番組では絶対的な権力者でもある。言葉は適当でないかもしれないが、番組という「ムラ社会」だ。このムラの中では長(おさ・プロデューサー)に視聴率という数字を献上する従者(ずさ・ディレクター)がいて、中には数字を上げるために「やらせ」や「捏造」という悪さをする者もいる。

今回のフジテレビの一連の問題で焦点となっているのが、ムラの長が女衆(女性社員)に「晩酌の付き合いをせい」と半ば迫ったことだろう。長とすれば、同じムラという共有意識があれば、付き合いは当たり前という身勝手な思惑があったのだろう。そのムラ社会の発想と人権社会の感覚の隔たりが見えてきたのがフジテレビ問題だった。繰り返しになるが、これは民放の企業風土の問題なので、ほかのキー局や系列局などでも起こりうる、あるいは起きていることなのかもしれない。

フジ・メディア・ホールディングスはきのう(31日)、元タレントの中居正広氏と女性とのトラブルをめぐる第三者委員会の調査報告書を公表した。その様子をフジ系のローカル局で視ていた。委員長の弁護士は手厳しく指摘していた。人権侵害の疑いがあるにもかかわらず、フジテレビの社長ら幹部が「プライベートな男女間のトラブル」と即断したことが「対応を誤る大きな要因となった」「経営判断の体をなしていない」と断じていた。また、情報公開のあり方についても、2024年12月に公開した一部報道に対する会社見解について否定すべき部分は否定するという方針ありきで、「問題があったと言わざるを得ない」と指摘した。(※写真は、フジテレビ社長の生中継での記者会見の様子)

午後8時からのBSフジ「プライムニュース」では、冒頭で女性キャスター2人が「反町キャスターからは『状況に鑑み、番組の出演を見合わせたい』との申し出がありました。BSフジとプライムニュースではこれを受け、今夜は2人でお伝えします」と述べていた。第三者委員会の報告書では、反町氏が総理官邸キャップや政治部デスクだった2006年から2008年にかけて、後輩の女性記者2人に対するハラスメント行為があったと報じられている。食事の誘いを女性から断わられると、この女性に対して原稿が遅いなどと叱責のメールを部内共有で送信するなどしていたようだ。その後、キャスターとなり、報道局解説委員長、取締役なども務めることになる。フジテレビのムラ社会がよく見えてくる。

⇒1日(火)夜・金沢の天気  くもり時々あめ